1章 ビジョン策定の基本的考え方

3.新エネルギーとはなにか
(1) 新エネルギーとは
 新エネルギーとは、石油や石炭、天然ガス、原子力などの現在一般的に普及している従来型エネルギー以外のエネルギーや新たなエネルギー利用形態を総称するものであり、一般的に、環境への負荷が小さく石油代替エネルギーとしてその導入が大きく期待されているエネルギーです。また、新エネルギーは、地域に存在する自然のエネルギーや地域で発生した廃棄物などを利用するという性質から、地域分散型エネルギーとも呼ばれています。
 新エネルギーは、一般的に、太陽エネルギーや風力エネルギーなどの無尽蔵で再生が可能な「再生可能エネルギー(自然エネルギー)」、今まで捨てられていたエネルギーを回収して有効的に利用する廃棄物発電やごみの焼却熱利用などの「リサイクル型エネルギー」、また燃料電池やコージェネレーション、クリーンエネルギー自動車などのような「従来型エネルギーの新利用形態」の3つに大別されます。

(2) 本ビジョンで取り扱う新エネルギーの範囲
 本ビジョンにおいては、新エネ法(※)で定義されている10種類の新エネルギーに加えて、本県において多く賦存していると考えられる地域エネルギーとして導入可能な中小水力発電や地熱エネルギー、バイオマスエネルギーも検討の対象とします。また、エネルギーの総合効率の向上を目的としたその他排熱利用(工場排熱、変電所排熱等)も本県において導入が大きく期待されるリサイクル型エネルギーであることから、あわせて検討の対象に加えることとします。本ビジョンで対象とする新エネルギーの体系は以下のとおりです。

自然エネルギー(再生可能エネルギー) 太陽光発電
太陽熱利用
風力発電
温度差エネルギー
中小水力発電
地熱エネルギー
リサイクルエネルギー 廃棄物エネルギー 廃棄物発電
廃棄物熱利用
廃棄物燃料製造
その他排熱利用(工場排熱、変電所排熱等)
バイオマスエネルギー
従来型エネルギーの新利用形態 天然ガスコージェネレーション
燃料電池
クリーンエネルギー自動車
(※) 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)

 新エネ法は、 新エネルギー利用等についての国民の努力を促し、また、新エネルギー利用等を円滑に進める上で必要な措置をさらに体系的に進めることを目的として1977(平成9)年6月に施行されたものです。また、本法において定義される新エネルギー利用等は以下の10種類です。

太陽光発電
太陽熱利用
風力発電
温度差エネルギー
廃棄物発電
廃棄物熱利用
廃棄物燃料製造
天然ガスコージェネレーション
燃料電池
クリーンエネルギー自動車

(3) 新エネルギー導入の意義
 新エネルギーを導入する主な意義・効果としては、以下のようなものがあげられます。

・ 地球温暖化の防止
   新エネルギーは、種類によっても異なりますが、エネルギーとして取り出す際に、二酸化炭素の発生が全くないか、もしくは化石燃料を使用する場合に比べて非常に少ないため、地球温暖化の防止に極めて有効です。
国全体においては地球温暖化防止京都会議(COP3)で2008年から2012年の間に温室効果ガス排出量を1990年レベルから6%削減することを約束しています。新エネルギーは、この目標を達成する有効かつ重要な手段として大いに期待されます。
・ 有限な化石エネルギーの合理的使用とエネルギーの安定供給
   石油、石炭等の化石エネルギーは有限な資源です。我が国は、一次エネルギー供給の多くを中東地域からの石油の輸入に依存しており、他の主要先進国と比較しても、エネルギーの輸入依存度、石油依存度、中東依存度等が極めて高くなっています。
 基本的に石油等の化石エネルギーに依存しない新エネルギーの導入は、有限資源である化石エネルギーの保全とエネルギーの安定供給の観点から非常に有効です。
・ 電力の負荷平準化
   現在の電力需要は、全体の需要量が増加傾向にあり、特に、夏季の昼間のピーク電力が大きな伸びを示しています。そのため、ピーク電力に合わせた発電所施設の整備が必要となっています。ピーク時の電力需要を抑制するため、新エネルギーの導入が有効です。
・ 災害時のエネルギー確保
   阪神大震災などで経験したように、大規模災害時には、電気、ガス、水道などのいわゆるライフラインが断たれ、日常生活を営むうえで必要最小限のエネルギーや物資についても、入手することが非常に困難な状況になる恐れがあります。
 新エネルギーは、石油、石炭、天然ガスによる火力発電所や原子力発電所などの大規模な「集中型」電源に対して、エネルギーの消費地に近い小規模な「分散型」エネルギー、地域自立型のエネルギーシステムと言われています。太陽エネルギー等の新エネルギーの活用は、こうしたライフラインからのエネルギー供給がストップした場合の、「分散型」の地域自立型電源等としての役割が期待できます。
・ 産業振興・地域振興への貢献
   2010(平成22)年度の国の新エネルギーの供給目標に向けて、今後、新エネルギー技術の研究開発や設備の製造・販売など、新エネルギーに関連した産業の新たな市場が見込まれます。また、大規模な風力発電など新エネルギー設備を地域の観光資源として活用している事例も見られます。
 新エネルギーの導入を積極的に推進することにより、地域における新エネルギー市場の確保、成長産業の一つとして新エネルギー産業の育成をとおして、地域振興を図ることができます。
・ 環境・エネルギー教育の教材としての必要性
   地球温暖化の主要な原因となる二酸化炭素の発生は、産業活動や私たちのライフスタイルと密接に関係しています。地球温暖化防止のためには、私たち一人ひとりが大量生産・大量廃棄型のライフスタイルを改め、省資源・省エネルギーを中心とした環境配慮型のライフスタイルを実践していくことが重要となっています。同時に、エネルギー問題についても、二酸化炭素の排出が少ない新エネルギーなどの非化石エネルギーの利用について考えていくことが必要となっています。
 このような状況の中で、新エネルギーを導入した公共施設は、一人ひとりが地球環境問題やエネルギー問題に関しての理解を深めるための体験型環境教育施設となり、「生きた教材」としての普及啓発効果が期待できます。

(4) 新エネルギーの概要
 本ビジョンで対象とする新エネルギーを紹介します。各項目をクリックすると、その説明ページが開きます。

  ア.太陽光発電
  イ.太陽熱利用
  ウ.風力発電
  エ.温度差エネルギー
  オ.中小水力発電
  カ.地熱エネルギー
  キ.廃棄物エネルギー(廃棄物発電)
  ク.廃棄物エネルギー(廃棄物熱利用)
  ケ.廃棄物エネルギー(廃棄物燃料製造)
  コ.その他排熱利用(工場排熱・変電所排熱)
  サ.バイオマスエネルギー
  シ.天然ガスコージェネレーション
  ス.燃料電池
  セ.クリーンエネルギー自動車
 

 
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