栃木県水環境保全計画

第2章 栃木県の水環境の現況

 

水辺

(1)水辺の生き物

 河川や水路等の水辺では、これまで人為的な改変が行われてきたことなどから、本来水辺環境が自然の遷移の中で育んできた生物の生育・生息の場が徐々に失われてきた。このため、メダカやタガメなどの身近な水辺の生き物の減少や生物相の単純化、水辺を採餌場所や繁殖地として利用する鳥類等の減少等をもたらしたと考えられる。さらに、近年では、無秩序な外来種の放流により、バス類やブルーギル等が増加し、地域固有の生物相や生態系への影響が懸念されている。

 1.魚類

 河川水辺の国勢調査(平成11年国土交通省)では、那珂川は29種、鬼怒川は34種、渡良瀬川は26種の魚類が確認されている。希少種では、ミヤコタナゴやホトケドジョウ等が確認されている。

 2.両生類・は虫類

 栃木県自然環境基礎調査(平成13年栃木県)では、両生類は18種、は虫類は15種が報告されている。
 トウキョウサンショウウオは県南部で多く確認され、トウホクサンショウウオ、クロサンショウウオ及びハコネサンショウウオは県西部から北部の山岳地帯に多く確認されている。
 モリアオガエルやカジカガエルは、河川上流域から中流域の山地に分布が見られる。
 また、ツチガエルやイモリは全県的に分布しているが、近年、個体数の減少が指摘されている。

 3.鳥類

 栃木県自然環境基礎調査(平成13年栃木県)では、昭和21年から平成12年までに県内で記録された鳥類は、293種である。鬼怒川や那珂川などでは、繁殖期にはセキレイ類、シギ・チドリ類、サギ類、カワセミなどが見られる。冬季にはホオジロ類やカワヒラ等の重要な越冬環境となっている。平野部の湖沼では、多くの水鳥が越冬のため渡来する。
 渡良瀬遊水地では、ヨシやオギといった高茎植物が広範囲にわたって繁茂し、沼や水路、ヤナギ林など、多様な環境を有していることから、多くの鳥類が生息している。

 4.植物類

 栃木県自然環境基礎調査(平成14年栃木県)では、本県には約3千種の植物があるが、昭和43年発行の栃木県植物目録と比較すると、減少が著しく絶滅が危惧される種は、草原性の種及び池沼・湿原に生育する種に多い。水草ではクロモが著しく減少し、サンショウモ等の水田に生育する種の減少も見られる。これらは、除草剤の影響や湿田の減少の影響と考えられる。一方、増加の顕著な種は、休耕田や河川敷に群生するセイダカアワダチソウや河川沿いに群落が見られるブタクサなどの帰化植物である。水草で増加の著しいのはコカナダモで、湯ノ湖等では藻が異常繁殖する状況が見られる。

(2)水辺の景観

 河川上流の渓谷や滝は、新緑や紅葉の美しさとあわせ、観光名所となっているところも多い。特に華厳滝(日光市)や龍王峡(藤原町)など、鬼怒川上流に観光名所が多く分布しており、また箒川上流の塩原町周辺にも集中している。

(3)水とのふれあい

 1.水辺の利用

 水辺は、水遊びをはじめ、釣り、カヌー等の水上スポーツ、バーベキューなどのレジャー、憩いの場として利用されている。また、本県では古くから各地でやなが設けられ、川を下ってゆくアユ等を捕獲しており、現在では、「観光やな」として受け継がれている。

 2.湧水

 本県には463か所の湧水があり、農業用水などに利用されるほか、水生生物の生育・生息場所を提供し、緑豊かな憩いのある水辺空間を形成している。
 また、古くから人々に生活の中で親しまれている水、歴史的ないわれのある水、水質や水量・自然性などから価値の高い水など、いわゆる「名水」と呼ばれる水が、各地に分布している。本県では、尚仁沢湧水(塩谷町)、出流原弁天池(佐野市)が環境省の「名水百選」に選ばれている。
 水道水でも、地下水や清流を水源とする水は「おいしい水」と言われることが多い。宇都宮市や小山市の水道水は、旧厚生省の「おいしい水研究会」により、水道水のおいしい都市(人口10万人以上)に選ばれている。

 3.親水施設

 地域のまちづくりと調和のとれた良好な水辺空間を創出するため、那珂川(湯津上村、黒羽町)、秋山川(佐野市)等で、親水性のある河川環境の整備が進められている。また、ため池や農業用ダム等の農業水利施設において、地域住民が水に親しむことができるよう、大沼(小山市)、大室ダム(今市市)等において、親水空間や憩いの場を整備している。

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