栃木県水環境保全計画

第3章 栃木県が目指す水環境

 

第2節 基本目標

 水環境保全の理念の実現に向けて、水環境を構成する水質、水量、水生生物、水辺地という構成要素を全体として包括的にとらえ、本県の経済社会の持続的な発展と豊かな水環境の恵みを将来にわたって受け続けていくことを可能とするため、私たちの目指す4つの基本目標を掲げる。併せて、目標の達成状況を客観的に把握するための指標を設定する。

【指標設定の考え方】

 指標は、基本目標の達成状況を客観的な尺度を持って把握できるよう、可能な限り数値で示すこととする。しかしながら、生態系の保全に関する事項や普及啓発事業の成果等、単純に数値で表すことが困難なものや、既存の統計資料等を活用している等の制約から、必ずしも基本目標全体の成果を的確に示すことができない場合もある。
 また、既存の個別計画で設定されている指標の場合には、目標年度が当該計画の終了年度となっており、本計画の目標年度と必ずしも一致していないなどの課題がある。
 このため、本計画では、基本目標の実現に寄与している事項に加え、特定の施策や一部の事業等の達成状況のみを評価することが適当な事項についても、客観的な判断材料の一つとして掲げることとし、目標数値を掲げることが困難であると考えられる場合には、今後の方向性及びその考え方を示すこととした。また、既存の個別計画により目標年度が定まっている指標については、当該計画が見直された時点で、本計画においても適宜変更していくものとする。
 今後も、評価手法等の研究を重ね、より適切な指標を追求していくこととする。

 

基本目標1

きれいで安全な水を確保する

 水質の保全は、県民の健康や暮らしを良好に保持していく上で不可欠の要素である。このため、可能な限り水環境への汚濁物質負荷量を低減していくとともに、各般の取組を推進し、きれいで安全な水を将来に引き継いでいくことを目指す。

【目標達成状況の把握に関する指標】

○公共用水域の環境基準(BOD)達成率
 生活環境項目に関する環境基準の設定されている水域について、環境基準が達成されていない場合はその向上及び達成を目指し、達成されている場合は引き続き水質を良好に保つことにより、全県的な環境基準の達成率を上げる。

○汚水処理人口普及率
 公共用水域への生活排水による汚濁物質の排出削減の観点から、公共下水道、農業集落排水施設、浄化槽等の普及向上を目指す。

○水道普及率
 一人でも多くの県民が安全で良質な水道水の供給が受けられるようにする。

 

基本目標2

豊かな水を育む流域を保全する

 私たちは、自然の水循環から多くの恩恵を享受している。このため、日常生活や事業活動において水の有効利用に取り組んでいくととともに、水源のかん養に重要な役割を果たしている森林、農地等の保全に努め、また、都市化の進展等により雨水の浸透域の減少した市街地等においても地下水のかん養に配慮したまちづくりを目指す。

【目標達成状況の把握に関する指標】

○工業用水使用量(1日当たり)に占める回収水の利用割合
 工業用水の使用量のうち、一度使用した水を再利用する回収利用(回収水)を進め、水道水や井戸水等から新たに取水する補給水の量を低減するなど、水の合理的利用を促進する。

○保安林の指定面積
 水源かん養機能を高めるため、水源地域の保安林の指定面積を拡大する。

○水源地域における森林整備面積
 水土保全林*1等については、適切な森林整備を進め、その機能の維持増進を図る。

○平地林の整備面積
 減少や荒廃等が見られる平地林を保全するため、地域住民と市町村の連携、協力により、 平地林での下草刈りや休憩施設の整備等を進める。

*1 水源かん養や土砂の流出・崩壊防止を図るための森林をいう。

 

基本目標3

生き物が息づく水辺を守り、人々とのふれあいを築く

 水辺は、多様な生物の生育・生息場所であるとともに、人々の心にやすらぎとうるおいを与えてくれる場所である。このため、地域固有の動植物や生態系を保全しつつ社会基盤を整備し、次世代においても人々が水環境を身近なものと感じ、気軽に水と親しむことのできる場所として、地域の特性に配慮した水辺づくりを目指す。

【目標達成状況の把握に関する指標】

○親水性のある水辺空間の整備面積
 地域のまちづくりと調和したうるおいと安らぎのある水辺を創出する。

○自然公園等の地域指定面積
 自然公園法、自然環境保全法、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、県立自然公園条例、自然環境の保全及び緑化に関する条例、とちぎふるさと街道景観条例等に基づき、景観や自然環境の保全を図ることとした地域を適正に管理していく。

○メダカの生息地数
 水辺生態系の健全性を確保していくことが重要である。このため、農村地域の魚類の象徴であるメダカを一つの指標として、今後の動向に配慮していく。

 

基本目標4

みんなが水環境づくりに参加する体制をつくる

 本県の良好な水環境を保全していくため、県民一人ひとりが地域の水環境に関心と愛着を持ち、水環境への負荷の少ない活動を進めていくことが必要である。このため、水環境を学ぶ機会の充実や水環境の保全活動に関する体制の整備に努め、県民、事業者、民間団体、行政等のすべての主体の参加と協働により、流域全体を考えながら足下から行動していくことを目指す。

【目標達成状況の把握に関する指標】

○指導者の養成
 自然と親しんだり、水環境の保全活動に参加する県民を増やすため、指導者の養成を行う。

○森林ボランティア登録制度による活動件数
 森林ボランティアによる活動に参加する県民を広報誌やホームページ等で募集する。

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