栃木県 水環境保全計画 Water Environment Preservation Plan

第4章 水環境に関する施策

 

基本目標3

生き物が息づく水辺を守り、人々とのふれあいを築く

1 多様な生物が生育・生息する水辺の保全

(1)水辺環境の保全・創出

課 題

  • 河川や湖沼、ため池、湿原等の水辺環境は、水生生物の大切な生育・生息場所であり、その水辺が本来有している自然状態の保持に留意し、水生生物の保護や生育・生息環境の確保を図る必要がある。

施策の内容

 1 多自然型水辺づくりの推進

  • 河川や渓流の自然環境や景観に配慮し、水生生物と共生する水辺の整備を推進する。

  • 農業用用排水路やため池の整備に当たっては、関係土地改良区や農業者の合意形成を図りながら生態系に配慮した整備を進める。

 2 魚道の整備

  • 河川の整備においては、魚類の上下流方向の連続した生息環境を確保するため、適切な魚道の整備を図るとともに、魚類が自由に移動できる魚道の構造について調査研究を行い、漁場における水産資源の維持増大を図る。

 3 開発等に当たっての配慮

  • 大規模開発に対しては、水辺の自然環境に及ぼす影響を最小限に止めるため、環境影響評価制度や各種開発規制関係法令等を活用して、適切な開発の誘導あるいは開発規制を行う。

  • 自然公園法等*1に基づく地域指定制度を活用し、優れた自然環境を持つ湖沼、湿原等の保全を図る。

  • 水力発電所の建設に当たっては、河川維持流量の放流を前提とした取水量とし、水環境への影響を低減させる。

(2)生物多様性の保全

課 題

  • 河川や渓流、水路等のコンクリート化や直線化等の水辺環境の人工的な改変、河川に流入する砂礫の減少、水田の乾田化等により、水生生物の生育・生息場所が失われ、生物相の単純化を招いている。

  • 冬季における河川や水路等の水量の減少は、水辺の生態系に影響を及ぼす可能性がある。

  • バス類やブルーギル等の外来魚が増加し、地域固有の生物相や生態系、水産業への影響が懸念されている。

施策の内容

 1 水辺の生態系の保全

  • 洪水を安全に流下させることはもとより、平常時には生物の多様な生育・生息の場を確保するため、多様な河川形状(もともとの蛇行の法線形や瀬・淵など)を配した整備を図る。また、多様性や連続性のある河川空間を保全、創出するため、河畔の樹木の保全、復元に努める。

  • 多様な野生生物の生育・生息空間である湿地等を保全する。

  • メダカやドジョウ、水草やヨシなど多様な水生生物の生育・生息環境に配慮しながら、水路やため池、水田などの水辺環境を整備する。

 2 水生生物の保全

  • 県版レッドデータブック*2等を作成し、広く県民へ自然環境情報の提供を行う。

  • 希少水生生物について、種の特性に応じた保全対策を調査、検討する。

 3 外来種の駆除

  • オオクチバス等の外来種について個体数抑制手法を開発し、在来生態系の保全を図る。

 4 水生生物の調査研究

  • 河川環境を構成する様々な要素を長期的かつ総合的に把握するため、水生生物を指標とする環境調査を計画的に行う。

  • 水田生態系のモニタリング調査等を実施し、生態系保全工法の検討・検証を行う。

*1 景観や自然環境の保全を図ることを目的とした法令等には、自然公園法のほかに、自然環境保全法、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、自然環境の保全及び緑化に関する条例、とちぎふるさと街道景観条例がある。
*2 本県の自然環境を保全するため、野生動植物の現状をとりまとめた資料をいう。

2 親しみのある水辺づくりと水文化の共有

(1)身近な水辺空間の保全・創出

課 題

  • 洪水対策や危険防止の必要性から、人々が容易に水辺に近づくことができなくなるなど、水と親しむ機会が減少してきており、水と親しむことができる場所と機会を確保することにより、水環境への興味・関心を高める必要がある。

施策の内容

 1 親水性のある河川等の整備

  • 平常時には水辺に親しめるように、河川や渓流の整備と併せて、必要な箇所の護岸の階段形状化や緩傾斜化を図る。

  • 平常時に地域住民のレクリエーションの場となるよう、沿川の自治体等と一体となって、高水敷*1の整備等を図る。

  •  渓流沿いの渓畔林の景観・レクリエーション機能を保全し、水辺に親しめる場所の提供を図る。

 2 水辺景観の保全・創出

  • 河川を整備する際は、各河川がもともとあった本来の姿を参考に、できるだけ水辺景観の改変を避ける。

  • 水路やため池、水田などの生産基盤の整備に加え、水と親しめる憩いの場の設置や 環境保全に向けた地域活動等を支援し、農村景観や水辺景観の保全・創出を図る。

  • 農業用用排水路の整備に当たっては、周辺の景観との調和に配慮し、美しい農村地域の水辺環境を保全する。

  • 大規模な開発や建築行為及び公共事業の実施に当たっては、栃木県景観条例に基づき、水辺空間を含めた良好な自然景観の保全を図る。

(2)水文化の共有

課 題

  • 水にまつわる歴史や文化を広く共有・継承しながら、地域の特性に配慮した水辺づくりを進める必要がある。

施策の内容

 1 まちづくりにおける水辺空間の活用

  • まちづくりに当たっては、地域独自の水文化に配慮しながら、都市内の河川や水路等と調和した整備を行うなど、良好な水辺空間の活用を図る。

 2 湧水地の保全

  • 湧水は、貴重な自然水であり、地域の水資源として活用されているほか、動植物の良質な生育・生息環境を形成しているため、湧水地の保全に係る地域活動等の取組を推進する。

 3 水文化の保護・継承

  • 水に関わる伝統行事等、地域の人々により保護・継承されている貴重な水文化については、公開する機会の確保や普及等を図り、今後とも保護・継承を図っていく。

表紙へ