栃木県水環境保全計画

第6章 各主体の取組方向


 本県の良好な水環境を確実に次世代に引き継いでいくためには、県民、事業者、民間団体、行政といったあらゆる主体がそれぞれの役割や能力に応じて、自主的かつ積極的な取組を行っていく必要がある。このため、各主体に期待される水環境保全の取組方向を示す。

県 民

○ “水”を感じる心を育む

 水は、私たちの身近に存在する生活に不可欠な環境資源である。しかしながら、急激なライフスタイルの変化等により、私たちの生活と水との関わりが希薄化し、近年では、身近な水環境の魅力や、それが抱えている問題に気付かなくなっている。このため、身近な水の存在と魅力を再発見するとともに水環境と親しむことにより、水の持つ様々な恩恵を感じる心を育んでいく。

例えば

  • 今の生活の中の最も身近な水がどこから来るのか、どこへ行くのか探検してみる。

  • 水辺で遊んでみる。

○ 自ら主体的に行動する

日常生活においては、「水道の蛇口の向こうには水源があり、排水口の先には川がある。」という意識を常に持ちながら水環境に配慮した行動をとると同時に、自らの職場や地域の活動等において、水環境への配慮の提言や実践を行う主体として行動する。

例えば

  • 雨水の浸透ますを設置したり、雨水を貯めて庭のまき水や洗車などに利用する。

  • 洗剤の適正使用等に努める。

  • 下水道が利用できる地域では速やかな接続に努める。また、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽へ転換したり、浄化槽の法定検査や定期清掃を受け、維持管理を徹底する。

○ 地域の主役になる

多様な水環境問題の解決には、家庭や地域における日々の水環境への配慮や継続的な行動を着実に積み重ね、その地域にふさわしい行動となるよう根付かせていくことが必要である。このため、地域においては一人ひとりが、水辺環境の美化や水質の改善、水生生物の保全等の様々な取組に主役として行動することが必要である。さらにこのような取組を様々な場面で率先して実施していくことにより、県下全体に行動を拡げていく。

例えば

  • 河川や湖沼等の環境調査、地域や河川愛護会等による道路、河川等の清掃活動等、水環境に関わる行事に積極的に参加する。

  • グラウンドワーク活動*1などにより住民参加を進めた自然保護に取り組む。

*1 Ground Work:1980年代にイギリスで始められた身近な地域の環境改善を目的とする運動。

 

事業者

○ 事業活動による水環境への負荷を低減する

 事業者は、自らの事業活動が与えている水環境への負荷を認識し、その低減に積極的に取り組む。

例えば

  • 特定施設及び排水処理施設等の点検を行い、その結果を記録しておく。また、定期的に排水の水質測定を実施し、排水基準に適合しているかどうかを確認する。

  • 事業場の敷地内や駐車場、側溝等の清掃に努める。

○ 水環境保全のための技術を提供する

 我が国の公害防止対策においては公害防止技術の果たした役割は大きく、事業者は水環境保全に対する豊富な知識やノウハウ、人材や組織を有している。これらを地域社会に提供していくことにより、住民の活動の支援や活性化につなげていく。

例えば

  • 事業所が有する水環境保全に関する取組や情報等を地域住民に公開し、理解と協力を求める。

  • 工場・事業場を県民の環境学習の場として提供し、水環境保全への理解を促進する。

○ 地域の一員として水環境保全に貢献する

 事業者は、地域を構成する重要な一員であり、社会貢献の一環として従業員のボランティア活動を推進したり、地域の水環境保全活動を積極的に支援する。

例えば

  • 従業員に対する環境教育を実施し、水環境の保全に努める。

  • 地域の清掃活動に参加するなど、地域の水環境の保全活動に積極的に取り組む。
    また、地域の水に関わる伝承行事を保護、継承するための支援を行う。

  • 自然とふれあえる場を地域住民に開放する。

 

民間団体

○ 水環境保全活動を活発にする

 県民、事業者などにより組織され、環境美化活動、緑化活動、環境学習等の環境保全に関する活動を実施する環境NPO等の民間団体は、県民の立場、行政の立場、事業者の立場などの既成の枠を超えた独自の自由な取組が可能である。
これらの取組を継続し活発化していくため、活動を効率的・効果的に実施できる仕組みを整える。また、取組に参加する各主体を啓発しつつそれぞれの役割を調整する能力を有するリーダーをはじめ、実際に活動に携わる人材、助言・指導できる人材など取組を支える幅広い人材の確保を図る。

例えば

  • 地域の河川や水路等の水質調査、水生生物調査を行うなど、地域の水環境の現状を把握し、蓄積する。

  • 農業利水団体等は、農業用水利施設の環境保全に果たす役割等を啓発し、地域、流域住民等との相互理解に努める。

○ 各主体の活動をつなぐ

 活動団体の組織を生かした環境学習の実践、地域における各種の調査活動、民間団体のネットワークを生かした交流、国、地方公共団体等との活動連携による施策の実施など、各主体をつなぐ橋渡し役を担う。さらに、長期的には、民間団体が主体となって水環境を保全し、その活動を行政が支援し、協力していくといった関係を構築するよう努める。

例えば

  • 行政と連携して生活排水対策や水環境の保全の重要性について啓発を進める。

  • 地域における様々な主体による河川の浄化活動をコーディネートするとともに相互のネットワーク化に努める。

 

行 政

○ 自ら率先して水環境の保全に取り組む

 自ら率先して水環境の保全への取組を進めると同時に、公共事業の実施に当たっては、計画段階から施工後に至るまで水環境の保全に配慮する。

○ 各主体の自主的な取組を促進する

 「地域の個性を映す鏡」としてその地域の水環境をどのようなものとするか、地域住民自らが、その地域の望ましい水環境の将来像を描くことが大切である。このため、行政は、住民が将来像を検討するために必要となる地域の水環境に関する現状や課題等について、県民に分かりやすく質の高い情報を提供する。

《市町村》

 市町村は、地域の実状を最も身近なところで把握しており、地域の自然的、社会的条件に応じた施策を展開するに当たってその役割は大きい。このため、地域の特性を生かしながらきめ細かな対応を図るとととも、県の施策と連携、協力して地域の水環境の保全に努めるほか、住民の自主的、主体的な行動を喚起し、創意と工夫を凝らした取組となるよう積極的に支援する。

《県》

 県は、本県の水環境の保全を図るため、基本的かつ総合的な施策を策定・実施すると同時に、市町村の施策を支援し、その実施に協力するよう努める。また、当面は、各主体が、効果的な取組を実施できるよう、各主体間のコーディネーターとしての役割を果たしていく。しかしながら、長期的には、パートナーシップの関係を構築し、コーディネーターは民間団体に移行していく。さらに、下流域の自治体に対して、水源や流域の水循環、水環境に対する理解や行動を促すため、国等と協力しながら啓発等を積極的に行い、本県の水環境保全施策への協力を求めていく。

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