○災害に強いとちぎづくり条例

平成26年3月27日

栃木県条例第7号

災害に強いとちぎづくり条例をここに公布する。

災害に強いとちぎづくり条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第9条)

第2章 県民等による防災対策の推進(第10条―第17条)

第3章 県による防災対策の推進(第18条―第26条)

附則

私たちのふるさと栃木県は、大規模な災害が少ない県と言われている。しかし、過去には、茂木水害、那須水害をはじめとする豪雨、洪水、竜巻等による甚大な被害を受けた経験を持つ。また、東日本大震災では、県内においても震度6強を観測し、尊い人命や貴重な財産が失われたほか、福島第一原子力発電所の事故は、今なお社会生活や経済活動に深刻な影響を及ぼしている。

県では、これらの過去の災害の教訓を踏まえ、様々な防災対策を進めているが、災害が発生した場合における被害を最小化し、その迅速な回復を図るためには、行政による防災対策に加え、県民1人1人が真剣に災害に備え、防災対策に取り組むことが必要である。さらに、地域の住民、学校、企業等が、平時から共に地域の特性に応じた防災対策を推進すること、また、災害時には共に被害の拡大の防止や復旧に取り組むこと等、地域における多様な主体が連携協力して災害に対応する能力を高めていくことが重要である。

ここに、私たちは、災害から尊い生命、身体及び財産を守り、全ての県民が安全に安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、災害に強いとちぎづくりに一体となって取り組むことを決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、災害に強いとちぎづくりに関し、基本理念を定め、並びに県民、自主防災組織及び事業者(以下「県民等」という。)並びに県の責務を明らかにするとともに、災害に強いとちぎづくりのための防災対策(以下「防災対策」という。)の基本となる事項を定めることにより、防災対策を総合的かつ計画的に推進し、もって災害に強いとちぎづくりに寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 災害に強いとちぎづくり 本県において、災害から尊い生命、身体及び財産を守り、全ての県民が安全に安心して暮らすことのできる社会を構築することをいう。

(2) 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、地震、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事、爆発、放射性物質の大量の放出その他の大規模な事故により生ずる被害をいう。

(3) 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。

(4) 防災関係機関 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第2条第4号に規定する指定地方行政機関、同条第5号に規定する指定公共機関、同条第6号に規定する指定地方公共機関並びに知事が別に定める公共的団体及び防災上重要な施設の管理者をいう。

(5) 自主防災組織 住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織をいう。

(6) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校及び同法第134条に規定する各種学校をいう。

(7) 避難行動要支援者 地域に居住する高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者のうち、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するものをいう。

(基本理念)

第3条 災害に強いとちぎづくりは、自らの安全を自ら守る自助、地域の住民が互いに助け合う互助、事業者その他の地域に関わる人々が連携し助け合う共助及び公的機関が援助を行う公助を基本として実施されなければならない。

2 災害に強いとちぎづくりは、県民等並びに県及び市町村が、それぞれの責務又は役割を担うとともに、相互に連携を図りながら協力して着実に実施されなければならない。

(県民の責務)

第4条 県民は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、災害に備える意識を高め、自ら防災対策を実施するよう努めるものとする。

2 県民は、地域における防災活動に積極的に参加するとともに、県、市町村及び防災関係機関(以下「県等」という。)並びに自主防災組織が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。

(自主防災組織の責務)

第5条 自主防災組織は、基本理念にのっとり、地域の住民と連携し、地域における防災対策を実施するよう努めるものとする。

2 自主防災組織は、県等が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、従業員等の安全を確保するため、自ら防災対策を実施し、かつ、地域の住民及び自主防災組織と連携して地域における防災対策を実施するよう努めるものとする。

2 事業者は、災害時において事業を継続し、又は早期に復旧するための計画を作成し、及びこれを実施するための体制の整備に努めるものとする。

3 事業者は、県等及び自主防災組織が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。

(県の責務)

第7条 県は、基本理念にのっとり、防災対策を総合的に推進し、及び実施するものとする。

2 県は、災害時において必要な事務及び事業を継続し、又は早期に復旧するための計画を作成し、及びこれを実施するための体制を整備するものとする。

3 県は、県民等が実施する防災対策の支援に努めるものとする。

(県と市町村との協力)

第8条 県及び市町村は、それぞれが実施する防災対策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。

(防災対策の実施に当たっての配慮)

第9条 県民等及び県は、次に掲げる事項に配慮して、防災対策を実施するものとする。

(1) 気象、地形、社会、文化その他の地域の特性を踏まえること。

(2) 男女共同参画の視点を踏まえること。

(3) 避難行動要支援者の実情を踏まえること。

(4) ボランティアの自主性を尊重しつつ、これとの連携協力を図ること。

第2章 県民等による防災対策の推進

(防災知識の習得等)

第10条 県民等は、防災に関する知識の習得に努めるものとする。

2 自主防災組織は、地域において、防災に関する知識の普及及び避難場所、避難経路その他の防災に関する情報の周知に努めるものとする。

3 事業者は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において従業員が適切な対応がとれるよう、防災に関する知識の普及に努めるものとする。

4 学校の設置者は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において児童、生徒、学生又は幼児(以下「児童生徒等」という。)が避難その他の適切な行動がとれるよう、防災に関する教育の実施に努めるものとする。

(防災訓練への参加等)

第11条 県民等は、県等が実施する防災訓練に積極的に参加するよう努めるものとする。

2 自主防災組織及び事業者は、定期的に防災訓練を実施するよう努めるものとする。

(物資の備蓄等)

第12条 県民等は、食品、飲料水その他の生活必需物資の備蓄に努めるとともに、生活必需物資、災害に関する情報を収集できる機器その他の災害時に有用な物資を避難の際に直ちに持ち出すことができるよう準備に努めるものとする。

2 自主防災組織及び事業者は、初期消火、負傷者の救出等のための資機材の整備に努めるものとする。

(建築物の倒壊等の防止)

第13条 県民等は、自らが所有し、又は管理する建築物及び工作物並びに家具及び家財について、あらかじめ、倒壊等及びこれに伴う火災の発生その他の被害を防止するための措置を講ずるよう努めるものとする。

(円滑な避難等)

第14条 県民等は、避難場所、避難経路及び家族等との連絡方法を確認し、並びに災害が発生し、又は発生するおそれがある場合にとるべき行動を整理しておくよう努めるものとする。

2 県民等は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、当該災害に関する情報の収集に努め、自ら必要と判断したとき、又は避難の勧告等があったときは、円滑に避難するよう努めるものとする。

3 自主防災組織は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、当該災害に関する情報の伝達、避難の誘導その他地域の住民の安全を確保するための措置を講ずるよう努めるものとする。

4 事業者は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、避難の誘導その他従業員、来所者等の安全を確保するための措置を講ずるよう努めるものとする。

5 学校の設置者は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、児童生徒等の特性を踏まえ、避難の誘導その他児童生徒等の安全を確保するための措置を講ずるよう努めるものとする。

(災害情報の提供)

第15条 県民等は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、自らの安全に十分留意しつつ、必要に応じて、当該災害の発生状況等、自ら得た当該災害に関する情報を県等に提供するよう努めるものとする。

(災害教訓の伝承等)

第16条 県民等は、過去の災害から得られた教訓を伝承し、防災対策へ活用するよう努めるものとする。

(自主防災組織及び消防団への参加等)

第17条 県民等は、自主防災組織及び消防団の防災活動に参加するよう努めるものとする。

2 事業者は、従業員の自主防災組織の防災活動への参加並びに消防団への加入及び消防団の活動への参加について協力するよう努めるものとする。

第3章 県による防災対策の推進

(防災に配慮したまちづくりの推進)

第18条 県は、市町村及び防災関係機関と連携し、防災の観点を踏まえた市街地、道路、公園、河川、砂防設備等の整備、建築物の耐震性の向上その他防災に配慮したまちづくりを総合的に推進するものとする。

(防災意識の高揚)

第19条 県は、市町村及び防災関係機関と連携して広報活動を実施し、県民等の防災に関する意識の高揚を図るものとする。

(防災学習の振興等)

第20条 県は、市町村及び防災関係機関と連携し、学校教育及び社会教育における防災に関する学習の振興を図るものとする。

2 県は、市町村及び防災関係機関と連携し、地域における防災対策を担う人材の育成及び確保に努めるものとする。

(防災訓練の実施等)

第21条 県は、市町村及び防災関係機関並びに県民等と連携協力し、総合的な防災訓練を実施するものとする。

2 県は、地域において多様かつ実践的な防災訓練が実施されるよう、県民等及び市町村に対する支援に努めるものとする。

(災害情報の周知)

第22条 県は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、市町村及び報道機関等と連携し、県民等が適切な対応がとれるよう、当該災害に関する情報の周知に努めるものとする。

(自主防災組織及び消防団への支援等)

第23条 県は、市町村及び防災関係機関と連携し、自主防災組織の結成及び活動並びに消防団の活動に対して必要な支援を行うものとする。

2 県は、市町村及び防災関係機関と連携し、県民及び事業者に対し、自主防災組織及び消防団の活動に関する普及啓発を図るものとする。

(事業者等との協定)

第24条 県は、災害時における食品、飲料水、医薬品等の供給、必要な人員及び物資の緊急輸送の確保その他の応急対策等に関し、事業者等との協定の締結に努めるものとする。

(ボランティアの防災活動の環境整備)

第25条 県は、市町村及び防災関係機関と連携し、災害時における防災活動に従事するボランティアに関し、受入体制の整備その他ボランティアの防災活動を推進する上で必要な環境の整備に努めるものとする。

(とちぎ防災の日)

第26条 県は、防災対策の重要性について県民等の理解を深める日として、とちぎ防災の日を定める。

2 とちぎ防災の日は、3月11日とする。

この条例は、平成26年4月1日から施行する。

災害に強いとちぎづくり条例

平成26年3月27日 条例第7号

(平成26年4月1日施行)

体系情報
第3編 県民生活/第2章 消防防災
沿革情報
平成26年3月27日 条例第7号