○栃木県県産木材利用促進条例

平成29年10月18日

栃木県条例第34号

栃木県県産木材利用促進条例をここに公布する。

栃木県県産木材利用促進条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第11条)

第2章 県産木材の利用の促進に関する指針(第12条)

第3章 県産木材の利用の促進に関する施策(第13条―第22条)

第4章 県産木材の利用の促進に関する協議会(第23条)

第5章 雑則(第24条・第25条)

附則

県土の約55パーセントを占める森林は、県土の保全、水源のかん養、地球温暖化の防止、木材をはじめとする林産物の供給等の多面的機能を有しており、私たちが生きていく上で欠かせないものであり、本県の経済にとっても重要な役割を果たしてきた。

また、木材は我々により豊かな生活環境を提供するとともに、再生可能でクリーンなエネルギーとしての役割が期待されているほか、利用技術の開発、新たな用途への活用など、木材の利用を促進する余地はますます広がっている。

しかしながら、近年、木材需要の低迷等を背景に林業及び木材産業が衰退し、中山間地域の過疎化が進行するとともに、森林の荒廃によって引き起こされる洪水や土砂災害の発生が懸念されている。

さらに、戦後に植林された県内のスギ、ヒノキ等の人工林の多くは、成熟期を迎えているが、建築材料等に十分に利用されていない状況にある。

そのため、これらの森林資源を積極的に活用し、「植えて、育てて、って、使って、植える」を繰り返す森林資源の循環的な利用を推進することにより、林業及び木材産業の成長産業化並びに木材需要の更なる増進を図るため、100年後の森林を見据えた、的確な施策が展開されなければならない。

ここに、私たちは、唯一都道府県名に「木」の文字を冠した栃木県の森林を県民共有の財産として健全な姿で次の世代に引き継ぐため、県を挙げて県産木材の積極的な「木づかい」を進めることを決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、県産木材の利用の促進について、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、県産木材の利用の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県産木材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって林業及び木材産業の振興による本県の経済の活性化、循環型社会の形成並びに豊かな県民生活の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 県産木材 県内で生産された木材をいう。

(2) 森林の有する多面的機能 県土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の森林の有する多面にわたる機能をいう。

(3) 森林所有者 森林法(昭和26年法律第249号)第2条第2項に規定する森林所有者をいう。

(4) 林業事業者 森林施業(造林、保育、伐採その他の森林における施業をいう。以下同じ。)を行う者をいう。

(5) 木材産業事業者 木材の加工又は流通の事業を行う者をいう。

(6) 建築関係事業者 建築物の設計又は施工の事業を行う者をいう。

(7) 県産木材の利用 建築材料、工作物の資材、製品の原材料及びエネルギー源として県産木材を使用すること(県産木材が使用された木製品の使用を含む。)をいう。

(基本理念)

第3条 県産木材の利用の促進は、林業及び木材産業の持続的な発展が本県の経済の活性化に不可欠であることに鑑み、その経済的価値の向上が図られるよう行われなければならない。

2 県産木材の利用の促進は、植林、育林、伐採、使用及び再植林を繰り返すことによる森林資源の循環的な利用により、本県の豊かな森林資源が枯渇することなく次の世代に継承され、及び森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう行われなければならない。

3 県産木材の利用の促進は、木材の優れた特性を生かすことにより、県民の快適な居住環境の形成及び県民に癒やしをもたらす生活環境の創造に資するよう行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、県産木材の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者、建築関係事業者、事業者及び県民との協働に努めるものとする。

(森林所有者の役割)

第5条 森林所有者は、基本理念にのっとり、その所有する森林の適切な整備及び保全並びに良質な県産木材の安定的な供給に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(林業事業者の役割)

第6条 林業事業者は、基本理念にのっとり、地域における森林の経営の中核的な担い手として、森林の適切な整備及び保全、良質な県産木材の安定的な供給、森林資源の最大限の活用、人材の育成並びに林業の振興に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(木材産業事業者の役割)

第7条 木材産業事業者は、基本理念にのっとり、県産木材の有効利用及び安定供給の推進、加工技術の継承及び一層の向上、県産木材の新たな用途の開発、人材の育成並びに木材産業の振興に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(建築関係事業者の役割)

第8条 建築関係事業者は、基本理念にのっとり、県産木材に係る知識の習得、県産木材の利用及び普及、木造建築技術の継承及び一層の向上並びに人材の育成に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第9条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を通じて県産木材の利用に自ら努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県民の役割)

第10条 県民は、基本理念にのっとり、その日常生活を通じて県産木材の利用に自ら努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県と市町村との協力)

第11条 県及び市町村は、それぞれが実施する県産木材の利用の促進に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。

第2章 県産木材の利用の促進に関する指針

第12条 知事は、県産木材の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、県産木材の利用の促進に関する指針(以下「指針」という。)を策定するものとする。

2 指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 県産木材の利用の促進に関する基本的事項

(2) 県産木材の利用の目標

(3) 前2号に掲げるもののほか、県産木材の利用の促進に関し必要な事項

3 知事は、指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、市町村長に通知しなければならない。

第3章 県産木材の利用の促進に関する施策

(県産木材の安定供給の促進等)

第13条 県は、県産木材の安定的な供給の促進及び生産性の向上を図るため、次に掲げる事項について必要な施策を講ずるものとする。

(1) 森林資源の利用及び再生産を図るための森林の整備に関すること。

(2) 県産木材の生産に係る基盤の整備、森林施業の集約化及び林業機械の高度化に関すること。

(3) 県産木材の加工及び流通の体制の整備に関すること。

(4) 林業及び木材産業を担う人材の育成及び確保に関すること。

(県産木材の利用の促進)

第14条 県は、県産木材の利用の促進を図るため、次に掲げる事項について必要な施策を講ずるものとする。

(1) 建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の建築等における県産木材の利用に関すること。

(2) 県産木材の製材品(原木等を切削加工して生産した角材、板材等をいう。)としての利用をはじめ、集成材、直交集成板等への利用に関すること。

(3) 県産木材のブランド化(県産木材及び県産木材を使用した製品に対して信頼感等を与える独自の印象を創出することをいう。)及び産地の認証に関すること。

(4) 県産木材及び県産木材を使用した製品の販路の拡大に関すること。

(木質バイオマスの利活用の促進)

第15条 県は、木質バイオマスの利活用の促進を図るため、木質バイオマス施設の整備への支援、農業、畜産業、工業等への新たな利用を推進するための調査及び情報収集その他の必要な施策を講ずるものとする。

(設計者等の育成及び確保)

第16条 県は、県産木材を使用した建築物を建築するために必要な知識又は技術を有する設計者等を育成し、及び確保するために必要な施策を講ずるものとする。

(研究開発の推進等)

第17条 県は、県産木材の利用を促進するため、林業経営の効率化、県産木材の品質の向上及び新用途への活用その他の県産木材の利用の促進に関する研究開発の推進並びにその成果の普及の措置を講ずるものとする。

(県の建築物等における県産木材の利用)

第18条 県は、県産木材の需要の増進に資するため、自ら率先してその整備する建築物等における県産木材の利用に努めなければならない。

(市町村への支援)

第19条 県は、市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策を支援するため、技術的な助言その他の必要な措置を講ずるものとする。

(学習機会の確保等)

第20条 県は、児童をはじめ広く県民が、県産木材の利用の意義を学ぶ機会を確保するために必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、前項の規定による施策のほか、県産木材の利用の意義に関する情報の発信、県産木材に親しむための催しの開催その他の必要な施策を講ずるものとする。

(県産木材利用推進月間)

第21条 県民及び事業者の間に広く県産木材の利用についての関心と理解を深めるため、県産木材利用推進月間を設ける。

2 県産木材利用推進月間は、10月とする。

(顕彰)

第22条 知事は、県産木材の利用の促進に関し特に優れた取組を行った者を顕彰することができる。

第4章 県産木材の利用の促進に関する協議会

第23条 県は、県産木材の利用の促進に関する取組を円滑かつ効果的に実施するため、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者又は建築関係事業者の組織する団体、関係機関その他の関係者(以下「関係団体等」という。)により構成される協議会(以下「協議会」という。)を組織する。

2 協議会は、関係団体等が、県産木材の利用の促進に関する課題について情報を共有し、緊密な連携を図るとともに、県産木材の利用の促進について協議を行うものとする。

3 前2項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定めるものとする。

第5章 雑則

(財政上の措置)

第24条 県は、県産木材の利用の促進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(施策の実施状況の公表)

第25条 知事は、毎年、県産木材の利用の促進に関する県の施策の実施状況を公表するものとする。

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 この条例の施行の際現に策定されている県産木材の利用の促進に関する県の指針であって、県産木材の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、第12条第1項及び第2項の規定により策定された指針とみなす。

栃木県県産木材利用促進条例

平成29年10月18日 条例第34号

(平成29年10月18日施行)