フォトとちぎ2012夏号
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 光と電波との境界領域の電磁波=テラヘルツ波は、未開拓の電磁波とも言われ近年研究が活発化しています。電磁波を用いた測定に欠かせないもののひとつに発振器があります。 八巻さんは、発振素子の開発にあたって超伝導のある特性に着目しました。超伝導は超低温下で電気抵抗がゼロになる現象ですが、2つの超伝導体を弱く結合させ、定電圧を与えると交流電流が発生する(ジョセフソン効果)ことも知られています。 BSCCOという銅酸化物超伝導体が高温(液体窒素で冷却できる温度)でもジョセフソン効果と同様の現象が起こることは、20年ほど前に宇都宮大学の入江晃あきのぶ亘教授らによって明らかにされました。八巻さんはこの研究の成果を受け継ぎ「高温超伝導体ウイスカー(針状の結晶)を用いた世界一の高出力小型テラヘルツ発振器」の開発を目指しています。 「テラヘルツ波は現在、セキュリティ分野などで限定的に使われています。エネルギーが低いので、人体には無害といわれています。がんの診断など医療のほか、工業や農業など幅広い分野への応用が期待されています」と、八巻さん。世界一の超伝導テラヘルツ発振器宇都宮大学大学院工学研究科(宇都宮市)助教 八やまき巻 和宏さん(28)酸化物粉末を固めたペレットから成長した針状結晶(ウィスカー)(写真提供:八巻和宏さん)ウィスカーを用いた素子の試作品ウィスカーの顕微鏡写真発振素子の光学顕微鏡写真フォトとちぎ2012夏7

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