栃木県デジタル社会形成推進条例 (令和6(2024)年3月25日公布)  デジタル技術は、人々の生活の質を向上させるとともに、人口減少や少子高齢化により顕在化する地域の課題の解決に資するものである。近年、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備が進み、個人でも、スマートフォン等の通信端末機器を利用し、ウェブサイト等を通じて情報発信、商品購入等を行えるようになるなど、デジタル社会の形成が進んできている。個人番号カード、いわゆるマイナンバーカードの普及等に伴い、この流れは加速していくものと思われる。  本県においてもデジタル社会の形成は着実に進んでいる一方、デジタル技術の利用を苦手とするなど、これを使うことに不自由を感じる者も少なくない。また、デジタル技術を活用したサービスや基盤等を新たに創出し、発展させていく専門的な人材も十分とはいえない。  こうした課題に的確に対応し、本県におけるデジタル社会の形成を力強く進めていくためには、デジタル社会形成基本法の趣旨を踏まえ、デジタル技術の活用に関する県民の理解と関心を深めるとともに、子どもから大人まで、誰もが安全で快適にデジタル技術を利用できる環境の整備及びデジタル技術に係る専門的な人材の育成等が必要である。 ここに、私たちは、全ての県民がデジタル技術の活用によりもたらされる恩恵を享受し、便利で快適に暮らし続けることができる地域社会の実現に向け、県を挙げて取り組むことを決意し、この条例を制定する。   (目的) 第1条 この条例は、デジタル社会の形成に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、デジタル社会の形成に関する施策の基本となる事項を定めることにより、デジタル社会の形成に関する施策を総合的に推進し、もって県民生活の向上及び活力ある地域社会の実現に寄与することを目的とする。   (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) デジタル社会 デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)第2条に規定するデジタル社会をいう。 (2) デジタル技術 インターネットその他の高度情報通信ネットワーク及び従来の処理量に比して大量の情報の処理を可能とする先端的な技術をはじめとする情報通信技術をいう。 (3) デジタル人材 デジタル技術の活用に関する専門的な知識及び技術を有する人材をいう。   (基本理念) 第3条 デジタル社会の形成は、次に掲げる事項を基本として推進されなければならない。 (1) 安全で快適にデジタル技術を利用できること。 (2) デジタル人材が育ち、及び活躍できること。 (3) デジタル技術の活用により、便利なサービスが提供され、及び情報を効果的かつ効率的に活用するための仕組みが構築されること。 (4) 全ての県民が、デジタル技術の活用によりもたらされる恩恵を享受できること。   (県の責務) 第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、デジタル社会の形成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 2 県は、事業者及び県民によるデジタル社会の形成に関する取組を促進するため、必要な支援を行うものとする。   (県と市町村との協力) 第5条 県及び市町村は、それぞれが実施するデジタル社会の形成に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。 (事業者の役割) 第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動においてデジタル社会の形成に関する取組を自主的かつ積極的に行うよう努めるとともに、県及び市町村が実施するデジタル社会の形成に関する施策に協力するよう努めるものとする。 (県民の役割) 第7条 県民は、基本理念にのっとり、デジタル技術の活用に関する理解と関心を深めるとともに、県及び市町村が実施するデジタル社会の形成に関する施策に協力するよう努めるものとする。 (基本計画) 第8条 知事は、デジタル社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、デジタル社会の形成に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。 2 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 3 前項の規定は、基本計画の変更について準用する。 (便利に暮らすことのできる地域社会の実現) 第9条 県は、デジタル技術の活用により便利に暮らすことのできる地域社会を実現するため、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。 (1) デジタル技術の活用による地域の課題の解決のための施策 (2) デジタル技術の活用による行政手続の利便性の向上のための施策 (3) デジタル技術の活用による効果的かつ効率的な情報の提供のための施策 (4) デジタル技術の活用に関する理解と関心を深めるための施策 (安全で快適なデジタル技術の利用) 第10条 県は、県民が安全で快適にデジタル技術を利用できるよう、必要な施策を講ずるものとする。 (デジタル人材の育成等) 第11条 県は、デジタル人材の育成及びデジタル人材が活躍できる環境の整備に必要な施策を講ずるものとする。 (情報システムの連携等) 第12条 県は、デジタル技術を用いた情報の活用を図るため、各種データの収集及び分析、様々な分野における情報システムの連携その他必要な施策を講ずるものとする。 (デジタル技術の利用のための能力等における格差の是正) 第13条 県は、全ての県民がデジタル技術の活用によりもたらされる恩恵を享受できるよう、様々な要因に基づくデジタル技術の利用のための能力又は利用の機会における格差の是正を図るために必要な施策を講ずるものとする。 (財政上の措置) 第14条 県は、デジタル社会の形成に関する施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 附則 1 この条例は、令和6年4月1日から施行する。 2 この条例の施行の際現に定められているデジタル社会の形成に関する県の基本的な計画であって、デジタル社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、第8条第1項の規定により定められた基本計画とみなす。