地域に吹く強風を発電に利用し、町おこしや売電を行っている事例を紹介します。
対象団体 |
山形県立川町 |
対象とする新エネルギー等 |
風力エネルギー |
導入施設の種類・規模・運用開始年
|
風車
・定格出力100kW×3基(1993年〜)
・定格出力400kW×2基(1996年〜)
・定格出力600kW×4基(1999年〜)
合計9基 |
イニシャルコスト
|
100kW×3:1.8億円
400kW×2:2.5億円
600kW×4:7.0億円 |
環境負荷削減効果
|
年間発電量657万kWh(化石燃料削減量:石油約160万L)
二酸化炭素排出削減効果約2,500t-CO2
また、発電時に大気汚染物質の排出がない。 |
活用できる支援制度
(参考)
|
<補助制度>
・風力開発フィールドテスト事業(風況精査、設置・運転)(NEDO)
・地域エネルギー導入促進事業(NEDO)
<融資>
・地域エネルギー開発利用(発電事業)普及促進利子補給制度(新エネルギー財団)
<優遇税制>
・エネルギー需給構造改革投資促進税制(国税)
・ローカルエネルギー税制(地方税) |
1.システムの導入事例(山形県立川町)
(1)導入の背景
立川町では強風を地球にやさしいエネルギーとして活用し、「環境問題への小さな行動とPRを図ること」、「風を多面的に捕らえ風にこだわった地域づくりを図ること」、「町おこしのためにこころに風を起こすこと」の3点を基本コンセプトに、風車村計画を総合的に進めています。
1992年には、シンボル風車周辺において、風を見つめ風を理解するスペース「ウインドファーム立川」の整備や風力発電からの電気を利用した子供バッテリーカー広場の整備を実施するなど、観光と教育的要素を兼ね備えた「風車村」の総合的な整備を進めています。
また、1995年には二酸化炭素の排出削減などの地球温暖化問題に対応するため、町全体の年間消費電力量約2200万kWhを風力発電を中心とした新エネルギーでまかなうことを目指した「立川町新エネルギー導入計画」を策定しました。■風力発電施設位置図

@ 風車村シンボル風車 出力100kW×3
A デンマーク風車 出力400kW×2
B デンマーク風車 出力600kW×4
(2)導入システムの概要
現在、立川町には3種類9基の風車があります。一つが1993年5月から運転されている定格出力100kWのシンボル風車3基、もう一つが1996年から運転されている定格出力400kW2基、最後は1999年5月から運転されている4基の定格出力600kWの風車です。
■立川町の風力発電施設(2000年1月時点)
機 種 |
台数 |
出力 |
年間発電 総出力 |
町全体の電力利用に占める割合 |
石油代替効果
(200Lドラム缶) |
@風車村シンボル風車
KWI56-100 |
3基 |
100kw×3 |
17万kwh
(1基6万kwh) |
1% |
190本 |
Aデンマーク風車
NEG MICON400/100 |
2基 |
400kw×2 |
120万kwh
(1基60万kwh) |
5.4% |
1,460本 |
Bデンマーク風車
NEG MICON600/150 |
4基 |
600kw×4 |
520万kwh
(1基130万kwh) |
23.6% |
6,350本 |
合 計 |
9基 |
3,500kw |
657万kwh |
30% |
8,000本 |
■風力発電機の仕様
仕様項目 |
単位 |
|
|
|
@風車村シンボル風車 |
Aデンマーク風車 |
Bデンマーク風車 |
事業実施者 |
|
立川町 |
たちかわ風力発電研究所 |
メーカー |
|
アメリカ
KWI社 |
デンマーク
NEG-MICON社 |
定格出力 |
kW |
100 |
400 |
600 |
型式 |
|
ダウンウインド |
アップウインド |
プレード枚数 |
枚 |
3 |
3 |
3 |
プレード材質 |
|
ガラス繊維強化プラスチック |
ロータ直径 |
m |
18 |
31 |
48 |
ロータ芯高さ |
m |
24 |
36 |
46 |
ロータ回転速度 |
|
72 |
36/24 |
21/14 |
出力制御 |
|
可変ピッチ |
固定ピッチ |
風向制御 |
|
フリーヨウ |
強制ヨウ |
カットイン風速 |
m/s |
5 |
4 |
3 |
定格風速 |
m/s |
13 |
15 |
13 |
カットアウト風速 |
m/s |
20 |
25 |
20 |
耐風速 |
m/s |
56 |
60 |
60 |
ロータ重量 |
t |
1 |
6 |
17 |
ナセル重量 |
t |
4 |
12 |
23 |
発電機形式 |
|
三相交流誘導発電機 |
発電機 |
局数 |
4 |
4/6 |
発電機電圧 |
V |
480 |
690 |
電力会社との連携電圧 |
kV |
一般配電線
6.6 |
特高送電線
33 |
売電単価及び契約年数 |
円 |
15.5 |
11.5 |
年 |
1 |
17 |
総事業費 |
億円 |
1.8 |
2.5 |
7.0 |
※ 定格風速・・・・・風力発電機の定格出力が得られる風速
カットイン風速・・風力発電機が発電を開始する風速
カットアウト風速・危険防止のため、ロータの回転を止める必要がある風速
(3)運転状況
@風の性質
立川町の風の特徴は「清川だし」が春から秋にかけて吹くために、年間を通じて平均した風向、風速を有していることが大きな特徴です。
■年平均風速
|
地上高15m
(m/s) |
98年1月 |
5.0 |
2月 |
5.8 |
3月 |
5.2 |
4月 |
4.7 |
5月 |
4.8 |
6月 |
6.5 |
7月 |
5.3 |
8月 |
3.4 |
9月 |
4.6 |
10月 |
5.4 |
11月 |
4.5 |
12月 |
5.1 |
平均 |
5.0 |
|
■年間風向別出現率
 |
■年間風速別出現率

A発電の状況(2000年1月現在)
シンボル風車(100kW×3基)は、年間発電量が約17万kWh、稼働率16%、利用率が6.5%となっています。風車が立っている地域は、小高い丘になっており、周辺の地形や樹木の影響を受け風の乱れが強く、また風車の構造上の問題もあり、低い稼働率となっています。
400kW風車2基は、1996年1月から運転されており、年間発電量は当初予測の120万kWh(2基)、稼働率55%、利用率17%を達成しており、ほぼ順調に運転されています。
600kW風車4基が1999年5月から運転されていますが、年間の発電量は1台当たり130万kWhと見込んでいます。
現在この9基で、年間657万kWhの発電が可能となっています。これは、町内で消費される電力の約30%に当たり、化石燃料削減量に換算すると、年間で石油約160万L(ドラム缶8000本)に相当しま
す。 ■風力発電機運転実績の推移
|
|
平成
5年度 |
6年度 |
7年度 |
8年度 |
9年度 |
10年度 |
平均 |
平均風速
(m/s) |
100kW |
5.2 |
4.5 |
4.7 |
4.7 |
4.6 |
4.9 |
4.8 |
400kW |
|
|
|
5.8 |
5.5 |
5.9 |
5.7 |
発電量
(kWh) |
100kW
|
240,674 |
154,687 |
137,204 |
144,923
|
180,923
|
161.227
|
169,940
|
400kW
|
|
|
|
1,133,167
|
1,130,819
|
1,294,521
|
1,186,169 |
発電時間
(hr) |
100kW |
5,886 |
4,194 |
3,415 |
3,519 |
4,383 |
3,854 |
4,209 |
400kW |
|
|
|
8,994 |
9,502 |
10,195 |
9,564 |
設備利用率
(%) |
100kW |
9.2 |
5.9 |
5.2 |
5.5 |
6.9 |
6.1 |
6.5 |
400kW |
|
|
|
16.2 |
16.1 |
18.5 |
16.9 |
設備稼働率
(%) |
100kW |
22.4 |
15.9 |
13.0 |
13.4 |
16.7 |
14.7 |
16.0 |
400kW |
|
|
|
51.3 |
54.3 |
58.2 |
54.6 |
平均出力
(kW) |
100kW |
40.9 |
37.0 |
40.2 |
41.2 |
41.3 |
41.8 |
40.4 |
400kW |
|
|
|
125.9 |
119.0 |
127.0 |
124.0 |
B建設コスト・発電コスト
建設コストは、近年導入した400kW級、600kW級では約30万円/kWとなっています。また、発電コストは、600kW風車では設備投資額の1/2補助金を差し引いた後で10円/kWhとなっており、業務用電力の平均の料金単価14円/kWhに比べて低くなっています。

※但し、600kW風車は設備投資額の1/2補助金
を差し引いた後で計算した発電コストです。

■参考
○「ウィンドファーム立川」(立川町ホームページ)
(http://www.town.tachikawa.yamagata.jp/windome/)
・事例紹介中の図表出典は上の資料によります。 |