平成14年12月18日
於 栃木県公館大会議室
第3回 とちぎ将来構想懇談会 会議録
(午後1時30分 開会)
○司会 第3回とちぎ将来構想懇談会を開催いたします。
開会に当たりまして、栃木県知事福田昭夫からご挨拶を申し上げます。
○知事 第3回とちぎ将来構想懇談会の開会に当たりまして一言ご挨拶を申し上げます。
委員の皆様方には、日ごろから、県勢の発展のために何かとご支援、ご協力をいただき、また、本日は年末の何かとお忙しい中、ご出席を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げます。
また、本懇談会では、昨年の12月以来、3回にわたる懇談会や、ワーキンググループとの意見交換会にもご出席いただき、多くのご意見やご提言をいただき、まことにありがとうございました。今回が最終の懇談会となりますが、本日も忌憚のないご意見をいただけますようお願い申し上げます。
前回のご挨拶でも申し上げましたが、少子高齢化、環境問題、グローバル化やIT化の進展、地方分権の進展など、私たちを取り巻く社会は大きな転換期にあり、さらにその変化のスピードを増しているところであります。
私は、このような中で、県民の皆様とともに大地にしっかりと足を踏みしめ、力を合わせて明るい未来を切り拓いていくためには、何よりも確固とした理念が必要であると確信いたしまして、自立と自助、そして互助による幸福の追求であります「分度推譲」の理念に基づく“とちぎ”づくり、「分度推譲立県」を、今年1月に新たに打ち出したところであります。
この1年間、さまざまな場所で、この「分度推譲」について県民の皆様と意見交換をしてきたところでありますが、多くの方々のご理解を賜り、確かな手応えを感じることができました。
また、この「とちぎ将来構想」につきましても、皆様のおかげをもちまして、去る7月の第2回懇談会でお示しいたしました総論部分の第1次素案と、本日お手元にお示ししております各論部分の第2次素案をあわせ、全体にわたる素案として作成することができました。
この中でも、「分度推譲」に基づく“とちぎ”づくりを理念といたしまして、「3つの行動指針」のもとに、活力と美しさに満ちた郷土に向けて、県民の皆様とともに努力していこうと考えているところであります。
この策定作業を通じまして、私は、“とちぎ”の将来を拓いていくすべての基本は、やはり「人づくり」であるということを実感をいたしております。
これからの本県を支える産業づくり、環境問題、そして高齢社会における福祉の問題などさまざまな難問があるわけですが、そのすべてを担う「人」をつくる、あるいはそれによって私たち自身のライフスタイルそのものを見直していかなければならないということを強く感じたところであります。
この素案でも、「人づくり」、そしてその集合体としての「社会づくり」といったことをイメージした表現が随所に出てまいります。やはり、一人ひとりがみずからを磨き自立していくこと、また、豊かな公共心を持って、それぞれ協力・補完し合いながら、相互の信頼や共生、共助の関係を積み重ねていくこと、そして、さらに大きな夢にチャレンジする気概を持つことが、さまざまな課題の解決のためには重要であると考えております。
そして行政の役割は、このような一人ひとりの取り組みに対する最適な環境を整え、支援していくことにあると考えております。
このため、本県の進む方向を検討したこの将来構想でも、「人づくり」をできる限り重視し、また、「人」を大切にする社会のシステムをつくっていこうということを心掛けたつもりであります。
また、もう一つ、策定に当たって念頭に置いてまいりました観点は、これから予想される時代の大きな変化に的確に対応していこうということであります。このため、さまざまな時代の変化をできる限り見通し、これからの郷土づくりや社会づくりに有効な取り組みの方向を、これまでの政策にとらわれず、政策の目的や背景などの原点に立ち戻って検討してまいったところであります。
また、これからの社会づくりは、県という一つの地域や一つの構成主体のみでなし得るものではなく、県民の皆様、そして国民一人ひとりが21世紀の課題を共有し合いながら取り組んでいかなければならないと考えております。
こうしたことから、県民の皆さんと課題を共有し合い、県民の皆さんと一緒になって国や国民に対しても積極的に提言すべく、「とちぎから創る21世紀の日本」という気概を持ちながら、書き込んでいるところであります。
この構想につきましては、本日のご議論や、パブリック・コメントでの県民の皆様からのご意見などを踏まえまして、前回お示しした第1次素案と今回の第2次素案にさらに磨きをかけ、来年の3月には成案として決定してまいりたいと考えております。
委員の皆様におかれましては、ただいま申し上げました趣旨をお汲み取りいただき、将来の栃木県のあるべき姿、そして、具体的な取り組みの方向などについて、積極的なご意見、ご提言をいただきますようお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。
○会長 年末のお忙しいところ、ご出席いただき、大変ありがとうございます。
「とちぎ将来構想第2次素案」その他幾つかの資料が提出されておりますので、まず提出資料についてご説明いただきまして、その後、意見交換とします。
それでは、県の方から説明をよろしくお願いします。
○(事務局から資料について説明)
○会長 今回の資料は、前回の懇談会で「第1次素案」として示された「時代の潮流」「とちぎの可能性と課題」及び「とちぎの将来像」を踏まえまして、「とちぎ将来構想」の各論的な部分として「第2部 県政の取り組み方向」をまとめたということです。対象分野が極めて広いということもあり、論点を絞ることも困難ですので、皆様それぞれの専門分野から見た将来の栃木県への期待、日ごろ考えているアイデア、また、「第2次素案」に記載されている、県全体で目指すべき方向性や取り組みの方向などを踏まえてお考えになった点などを中心に、フリートーキングという形でご議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○委員 まず、今回、全体を読ませていただいて、私はこれは非常にいいなと思ったのです。この委員となりまして、いろいろな案を読ませていただく機会が増えたのですが、あちらこちら読んでいて、一番期待感があったり、場合によっては感動するぐらいのものがあったかなと、非常にうれしかったわけです。
その中でも、特に、学ぶところに楽しさを入れてみたり、森林を守る中に生物の多様性という視点が入ってきっちりと書き込まれているとか、そういう点があちらこちらに見受けられたので、非常にうれしかったなと思いました。
私はどちらかというと環境の方が中心なものですから、その視点からいきますと、それぞれの項目の中に環境のことがきっちり入っているのです。私自身は、環境というのは離れてある環境ではなくて、それぞれの分野の中でやっていくのが環境の本当の取り組みだと思っているので、そういう点でも非常にいいなと。しかも、NPOであるとかボランティア、地縁組織の見直しなども含めて、県民全体でやっていこうということが随所に入っている点は特によかったと思っています。
気になったところは、素案本体の1ページの一番最初に「教育」が入っていますが、最初は、非常に感動する出だしなのですが、中を読んでいくと、書いてはあるのですが、上から青少年を教育するような印象を受けてしまうので、ここはやはり、「背中を見て」ということがよく言われますが、大人みずからの行動の影響が非常に大きいのかなと。そういう意味では、上から見下ろしているのではなくて、大人みずからが変わっていくという点をもう少し入れるといいと思いました。
続けて、4ページに「福祉教育の推進」が入っています。これは教育の中でも特に重要だということで非常にいいのですが、環境教育は後ろの方には当然テーマとして入っているのですが、環境教育は非常に重要なことだし、恐らくまちづくりのベースになることだと思うので、それも1項目、この教育の分野にも立てていただいた方がはっきり姿勢が出ると思いました。
表現の問題として、素案本体の方と概要版の方で、素案の方は、項目を読んでいくと、それぞれのところに環境が入っていることがわかります。ところが概要版になってしまいますと、それを読んだだけでは環境以外の項目でも環境のことに配慮しているのが見えてこないので、表現を工夫していただけるとありがたいと思いました。
もう一つは、これを支えていく上での職員の問題になると思いますが、各部・課によりましてとらえ方にかなりばらつきがあります。私は違う面でも幾つかお付き合いさせていただいているところがあります。この間、「循環型社会推進指針」を見せていただいたのですが、こちらはNPOやNGO等の市民活動部分が非常に弱くなっています。
そちらの懇談会でもその辺は発言させていただいたのですが、栃木県全体で大事なものが部とか課によって余りにも温度差があると、非常にわからないし、先ほどの循環型指針の方も10年〜15年先を展望しているわけなので、その辺は、県庁全体として必要なことはわかって、温度差が余りない進め方ができるものがつくれないかなと。
これまではわりと縦割りが多かったと思うので、簡単には変わらないのかなと思いますが、10年、15年というスパンでやるのでしたら、そういうものをまとめて進められるとよろしいのではないかと思いました。
最後に、この中に文化施設の問題がありまして、ネットワークとあります。建物や施設は非常にいいものがあるのですが、物理的なアクセスが弱くて、そこに行く手段が非常に大変だというものが幾つもあります。将来の中でそういうネットワークというか、ソフトの面だけではなくてハード面もできたらいいなと思います。
○会長 貴重なご指摘をありがとうございました。たくさんおありと思いますが、またワーキングの時に細かくご意見をいただければと思います。特に最初のご指摘は、「分度推譲」の自立、自助の、「育てる」というだけではなくて「育つ」「育ち合う」というその辺のことを言っておられると思うので、大切なご指摘だと承りました。
○委員 概要7ページ目のところで、12個のマトリックスにまとめて、大変わかりやすくテーマを示していただたそのご苦労に対しまして、まず、感謝を申し上げます。
戦略テーマについて、具体的なところで、希望的なことを申し述べます。
1つ目は、8ページの「生きる・まなぶ」のところですが、実際に大学で教えておりますと、皆さんご承知のように、大学生の学力崩壊ということが言われております。最近の調査ですと、小学生・中学生の学力が確かに低下しているということが出ておりますので、学力低下をどうやって克服していくのかというところを、学校教育のレベルと先生を支援するようなシステムで、何か具体化していただけたらありがたいと思います。
それから、11ページにの「明日を拓く産業・行政」ということですが、現実に地場の産業が今、弱体化しておりまして、そういう点で市等を含む自治体の税収等が下がっております。何らかの形で雇用を生み出すことと、税収その他を考えた上で地域産業の活性化は非常に大切な問題だと思うのですが、この点について、もうちょっと具体的に支援していくようなシステム・・・インキュベータを考えておられるという話は聞いておりますが、そういう形で、産官学でやれるようなことをすぐさま始めていくことが必要であると思っております。
それから、12ページの「雇用の流動化」のところで、大学におりますと、現実に、学生が就職できないという状況に非常に悩んでいるのですが、今のところ若い人、中高年のリストラ、高齢者の方の再就職という3世代のところで就職が非常に激しくなっています。それに対して、新しい仕事能力をどこかでつけていくような場を、積極的に自治体等が先頭に立って設けていただきたいと思います。再就職ができる、失業者を出さないということは、日本にとって非常に大切な問題ではないかと思いますので、その点をぜひ、具体策のところでお考えいただきたいと思います。
それから、17ページの「防災力の高い地域づくり」とか「安心して暮らせる地域づくり」、これは非常に大切なことです。日本は水と安全はただだと言われていたのですが、水も安全もただではなくなって、犯罪が激増しております。そのときに、これまでの警察官数では物理的に対応できなくなっているのではないかと思います。これだけの犯罪が起きているときに、それに対応する警察力が非常に手薄になりつつあり、検挙率等が下がっているのではないかと思っています。命をかけて安全を守ってくださる方の場合には、同じ公務員でも、差別的な報酬体系を設けてもよろしいのではないかと思います。今、いろいろな形で公務員を減らせと言っておりますが、安全や消防士さん、救急の方たちは、むしろ手厚くしていく方策をお考えいただけるとありがたいと思います。
○会長 ありがとうございました。大変切実な課題ばかりお出しいただきました。こちらというよりも、むしろ総合計画の方で具体的策をというご指摘かもしれません。
○事務局 最初に、概要版に環境が入っていないというご指摘がありましたが、概要版につきましては、今回限りで今日のためのものということで、あとは本体の方でやっていきたいと思っております。
また、県庁の中でも温度差があるということですが、庁議や部局調整会議等、いろいろな場で温度差解消に向けて今後とも頑張っていきたいと思っております。
それから、雇用に関するご指摘はごもっともで、本体の方でも触れておりますが、今後、より精度を高める中で書き込みをしていきたいと思います。
警察官も人口10万人当たり下から数えて10番目ぐらいと少ないということですので、その辺も頑張っていきたいと考えております。
○委員 幾つか感じたところを述べさせていただきます。
最初に、本文の1−2の10ページに、「すべての人をやさしく見守る社会づくり」ということで、いろいろな観点から新しい方向性が打ち出されております。同時に、38〜39ページあたりには、栃木県としての県政の推進とか行政における県民参加の体制づくりとか、いろいろな新規軸が打ち出されております。そういった中で「分度推譲立県」は栃木県の特徴が相当出ているということで、非常に感銘を受けております。
現在は「自己責任時代の到来」ということが言われておりおり、何から何まで行政がすべて面倒を見るということはなかなか不可能になってきているという状況もございますので、自立、自助と同時に、自己責任時代の到来に伴う対応、例えば責任感の強い社会の形成とか、もっともっと県民や我々一人ひとりが責任を持って、地域社会の形成に邁進しなければならないという意識を、どこかで出していただけるとありがたいと思います。
24ページ以降の、栃木県の競争力をどう確保するのか、これは我々経済学者が直面している最重要課題でございます。特に本県経済の強力な体制をどうとるかということで、もう少し国際的な面や国内の競争力の確保という栃木県における競争優位性を再認識して、もっともっとPRしていいと思います。そういう栃木県が持っているポテンシャリティを、本文の方では前面に出して、もう少し県民一人ひとりが自信を持って地域経済活性化に邁進できるようなシステムをつくる。
それと同時に、25ページの農業問題では、安全・安心の確保、特に食と水の安全・安心の確保への対応が少し弱いという気がします。栃木県では、新認証制度としてリンク・ティという認証制度を導入しております。食品衛生法や農薬取締法、改正JAS法等々いろいろと国の方でも行われていますが、栃木県はさらに踏み込んだ対応をしておりますので、そこをもっと強く打ち出していいと思います。
35ページでは「雇用の流動化」だけではなく、新たな雇用の確保を前面に打ち出さないと、今の雇用状況を見てみますと、フリーターがここにきて急に増えておりますし、高校生の就職難も深刻です。大学生も然りです。「職業能力の向上」ということを書くなら、これをどう雇用につなげていくのかということが、当然必要と思います。
38〜39ページの「新たな『公』による地域コミュニティ等の再生」は非常にいいと思います。こういった中で県も変わり、そしてまた自治体も変わるんだというところの変わり方を、整理して打ち出していただきたいと思います。
次に、66ページの「驚きと感動のとちぎづくり」、先ほどもお話がありましたように、これはすばらしい言葉だと思います。ですから「とちぎの魅力の発信」をもっと充実していただければと思います。
76ページの「とちぎの自立と交流を支える交通基盤整備」、情報基盤もここに入っているのですが、国際・国内競争力の強化ももう少し強く言っていただいて、77ページの「人と環境にやさしい交通体系づくり」では、知事さんも言われましたように、少子高齢化社会に対応した交通システムの確立、例えばコミュニティバス等。ここには交通弱者と書いてありますが、私は「移動制約者」という言葉の方が今の時代にかなっているのではないかと思います。次のページのバス利用促進と関連がありますが、お年寄りが元気で外に出られるようなコミュニティ社会をつくっていくのが、死ぬまで元気というお年寄りの社会のあるべき姿ではないか。
79ページの情報についての「目指す方向」ですが、ユビキタスネットワークやリラテラシー、デバイス等英語表記ばかりで、ここにおられる皆さんはよくわかると思いますが、県民の方々がこれを見てもなかなかご理解いただけないのではないか。
また、栃木県は情報発信が少ないということを常々言われておりますし、いろいろな指標を見てもそうですので、ここを今回の目玉にする。ここではインターネットという言葉がほとんど出てこないのですが、インターネットをもっと活用する。それもビジネスだけではなくて、行政から社会、家庭、安全というところでも使えるのではないかと思っております。
○委員 3点ほどお伺いしたいのですが、1つは概要版の11ページ、2−1−4「新時代の効率的な行政システムづくり」のところで、行政の政策立案能力の向上とあります。この「とちぎ将来構想」をこれから実現化していく上で、どうしても財政の問題は避けられないと思います。その点では、概要版でも「地方税中心の歳入体系の構築を」と書いてあります。この「地方税中心の」というのをどういう形で進めていくのかお伺いしたいと思います。
というのは、将来構想の中で、国のやる仕事がだんだん地方に委譲されていくと思いますが、ここに盛られていることを優先順位をつけながらやっていくにしても、今、財政ということが非常に言われているわけで、その点をどうお考えになっているのか。
2点目は、今も出たのですが、この中でも高齢者対策ということが文言として盛られています。ただ、60歳代、70歳代の方は私が見る限りでも元気な方が多い。60歳台、70歳代が80歳代を介護するような形もあり得るんじゃないか。とすると、この文章の中では「高齢者」と一括りになっているけれども、例えば会社をリタイアした後、60歳代、70歳代への再教育ということをもう少し取り上げてもいいんと思います。
3点目です。素案の中にも、体験学習を増やして子どもたちの職業観を確立し、学習意欲を高めようと掲げられている一方で、これは両方とも包含しなければいけないことなんですが、基礎基本を充実させようとあります。文章を読むとすべてそのとおりなんだけれども、現在新聞紙上を騒がせている学力の低下と総合学習が基礎基本をないがしろにしているとは私は思いませんけれども、学校教育の限られた中で行うわけで、文章を読んでいると全部いいとこ取りをしているかなという感じがいたしました。
○事務局 財政問題に関しましては、国の方でも現在、小泉内閣で三位一体での解決ということで、税と交付税と補助金を引っくるめて、どういうふうに地方に税源を移譲するかという検討がなされております。そういう中で、知事にお願いして、全国地方知事会や関東地方知事会等の場面場面で、地方の主張を通していきたいと思います。
事務サイドでも、税源の確保につきましては積極的に努力していきたいと思います。
相手が国ですからなかなか一朝一夕にはいかないのですが、ねばり強くやっていく必要があるのではないか。そうでないと真の意味の地方分権社会が到来しないという意味で、委員のおっしゃるとおりだと思いますので、一層の努力をしていきたいと思います。
○委員 先ほど来皆様方からお話が出ていますように、全般としては大変すばらしいものができつつあると感心して、お礼を申し上げたいと思います。
個々のところではなくて全般的な話をさせていただきたいと思います。これを誰がどう読むかということにかかわってくるかと思いますが、読み方によって、県が出してくれて、県がやってくれると思われたのではいけないと思います。県がやるべきこと、市町村がやるべきこと、個々の企業や団体がやるべきこと、個人がやるべきこと、あるいは地方税をどうしていくかということは、栃木県だけこうするよというわけにはなかなかまいりませんから、国に依頼することを含めて国が対応してほしいことを、もう少しメリハリをつけてお書きいただくと、読み手としては読みやすいという気がしました。
要所要所を見ていきますと、こう考えている。確かにそうだけれども、これを本当に県ができるのだろうか。県は方向性を示すから、例えば学校教育の中でも、政治に対する再教育を大学あるいは大学院を使ってという話が記載されておりますが、それはあくまでも今の宇都宮大学あるいは私立大学に依頼する形であって、県が主導してやるのはなかなか難しいかと思います。その辺をどういう書き分け方をするのか、もう少し工夫していただければ、読み手としては読みやすくなるのではないかという気がしました。
○会長 この辺は、構想の位置づけですね。行政のオリエンテーションであるということは間違いないですが、いかがでしょうか。
○事務局 将来構想として10年ないし15年先の話ということで、その辺はある意味ではぼかした書き方になっているのですが、委員が言われたように、書けるものもあるのではないかと思っております。書けるものについてははっきり書いていきたいと思っております。また、その時その時で変わっていくものもあると思います。それは政策マネジメントで毎年やっているものもございますし、5か年の計画もございますので、次の計画の中で明らかにしていくといった手段を講じていきたいと思います。
書けるものは極力この中で書く努力をいたしますし、書けないものについてはマネジメントでやるとか、次の計画に生かすとか、何らかの形で生かしていきたいと思います。
○委員 全体的には非常によくできていると思います。私は少子高齢化のワーキングをやりましたが、私が意見を述べたところはほとんど取り入れていただきました。特に少子高齢化の中で、先ほど介護の話がありましたが、老老介護というより、みんなで介護をするという話になってくると、結局、3世代という問題が出てくると思います。
では3世代にするためにはどうするか。先ほど農業の問題も出てきましたけれども、雇用の問題もありますが、定年がなくずっと働けるには、自分のところで製造業をやるのが一番なわけです。そうすると3世代がたくさん増えてくるわけです。そうすると失業もなくなる。どうも「雇用」というと、皆さん、どこかの会社に就職して働くのを雇用だと思っているのかもしれませんけれども、そうではないんだということで、考え方を切りかえないといけないと思います。そういうことで、雇用の話では、ある程度自分のところで働くという産業を育てるべきだと思います。
それから、先ほどの、治安が悪いという話では、最初の段階で教育の問題が出てくるわけです。教育が悪いからだんだんそういうふうになってくるわけですから、教育を最初からやらなければいけない。そうすれば治安もよくなる。治安が悪いから警察官を増やせというのは本末転倒な話であって、教育をきちんとしてモラルをよくやれば、そういう問題もなくなってくるということを強調していただければと思います。
それから、住民参加の問題です。知事さんから、「分度推譲」の中で自立、自助とか互助という話がありました。これは自分たちで互いにやるという話ですから、県民みんなが参加するとなると、住民と行政を含めた地域社会の評議会みたいな組織を各郡市等どこの自治体でもつくるべきだと思います。
もう一つ、中心街の活性化という話が出てきます。中心街の活性化とは何か、人が集まればいいのかという話になってきます。本当は、各市街地等の持っている機能があります。例えば宇都宮市だったら行政が中心だ、それなら行政が中心のまちづくりをやればいいんじゃないか。とすれば、わざわざ住民や市民が皆、集まらなくてもいいんじゃないか。商業地域があってもいいんじゃないか。そうすれば、市街活性化をどうするかということがおのずと出てくると思うんですね。人が集まる、商業があればいいということだけが市街地の活性化ではないと私は思います。そういうふうな構想をこの中に取り入れてもらえればと思います。
○会長 後の方のご議論で、例えば宇都宮市は行政がやればいいから、住民参加でなくてもいいということですか。
○委員 そうではなく、宇都宮市には県庁がございますので、行政としての機能を持ったまちづくりをすればいいんじゃないかということです。
○委員 総論的なことを2つ述べさせていただきたいと思います。
初めに私の考える「分度推譲」です。
仮に、縦軸に自由・自立という基準をとるならば、一番下の方にいるのが旧ソ連。一方、一番上の方にいるのがアメリカだと思います。では日本はどの辺かといえば、旧ソ連のちょっと上あたり。極めて社会主義的な自由経済体制できたわけです。
そのポジションを、地方分権や規制緩和によって、もう少し上げようというのが分度です。しかし、マーケットは万全ではないし、時に、暴力的でありますので、「一定のルールが必要でしょう。また、セーフティーネットもほどこしましょう。時にはNPOやボランティアの力を借りましょう」というのが推譲です。
似たようなことは、元世界銀行副総裁であったスティグリッツ氏をはじめ、多くの方々が述べています。私としては、ヨーロッパモデルを栃木風にアレンジしたものをイメージしています。そうであるならば、グローバルな時代にローカルから、二宮尊徳の哲学を発信しようという試みは、大変すばらしいことだと思っています。
ところで、地方経済においては、公共事業がセーフティーネットの役割を演じてきたという側面があるわけです。しかし、私は、これからの時代は、社会保障をセーフティーネットの中心にそえるべきだと思います。
次に、栃木らしさとは何かという点についてです。
栃木県の特徴を一言で言うと、調和がとれているということだと思います。したがいまして、農林業、ハイテク産業、製造業、商店、金融、社会保障、教育、NPOやボランティアといったさまざまな分野を発展・洗練していくことによって、おのずと栃木県の将来像というのが見えてくると思います。
しかし、それは行政の力だけではなく、県民の皆様の理解と協力が不可欠だと思います。行政と住民が共通の目的意識を持って一致団結すれば、自治体組織は意外なほどの強さを発揮すると思います。いろいろ困難があろうと思いますが、今後10〜15年の間にそれができれば、「活力と美しさに満ちた“とちぎ”」(私はこれを勝手にシンフォニーライフスタイルと呼んでおりますが)を世界に向けて発信することは夢ではないと思います。
そういう意味において、「とちぎ将来構想」は最初の一歩だったかもしれませんが大きな一歩となることを期待しております。
○委員 「2次素案」の28ページの林業では、「多様な森林整備の推進」というところで生態系的な部分が書き込まれています。27ページの農業では、一番最初の方には豊かな自然とか循環型云々という部分があるのですが、林業の方に生態系保全というものが入っているので、農業の方にもぜひとも入れていただきたいということが1点です。
後半の交通の方ですが、歩道の整備であるとか新交通システム、自転車、バスの整備ということが個々に書いてありますが、やはり一体となったネットワークづくりが重要になってくると思いますので、それを念頭に置いた文章にする。要は、自宅を出てからは歩いていくでしょうから、車道と歩道が必ずセットでなければいけないということではなくて、例えば路地裏みたいな歩道だけの整備をしていくというものも考えていかなければいけないのかなと思います。交通のあり方について、少し具体的に、それぞれをネットワークする方法や手段みたいなものについてもご検討いただければと思います。
○委員 前回は幾つかご意見を申し上げたのですが、申し上げたところは全部網羅されておりました。
私も「分度推譲」を最初にお話ししたいと思います。この件に関しては、非常にわかりにくい、県民の理解がなかなかとりにくいということを前回申し上げましたが、今回の概要版の2ページでは大変よくまとまっており、ここで基本理念に「分度推譲」を設け、行動指針ということで「みがく」「つなぐ」「おこす」と、県民にわかりやすい言葉で出ているので、私はこれを県民に投げていけば、わかりやすくていいと思いました。
その下に12項目あるのですが、栃木県全体の県民の動きはさまざまで、経済界、男女間、医療の部分とかいろいろな部分がありますので、これくらいの項目があってもいいと判断しました。
次に、概要版の12ページですが、これから15年先を見越しての「とちぎ将来構想」なのですが、これから先、経済がどうなっていくのだろうかという思いがあります。高校卒業、大学卒業の新規学卒者というところだけは安心して職場がある、これをいつの時代も確保しなければいけないと思います。母親の気持ちを含めて、この辺は、県の創業支援も含めまして重点的に取り組んでいくべきところと思います。
私は昨日、厚生労働省に陳情に行ってまいりましたが、栃木県の完全失業率0.65というのに対しまして大臣の方からは、「全国よりもまだいいんだね」という言葉をいただき、「ああそうなのか」と思いました。そのときに「栃木は早くから工業団地の誘致を心掛けたからそのくらいで保っているのかな」ということを一言言っておられました。そんなことも含めまして、これから15年先ということでは、やはり高校生、大学生の新規学卒者の就職の門戸は確実につくってあげられる方向の取り組みをぜひお願いしたいと思います。
それから、14ページの中心市街地ですが、県都そして日本で言えば首都、そういうところが発展しているということはうれしいことだと思うのです。宇都宮も、これは市町村の問題ととらえる場面もあるかもしれませんが、栃木県の県都宇都宮だと思いますので、これから先は少々の税金は使っても、県都宇都宮の振興は考えていくべきではないかと思います。
1回目にもお話ししましたが、真岡や鹿沼、茂木の方が宇都宮に来ても、現段階では元気をもらうどころではなくて、「真岡の方がいいわ」という思いで帰るという宇都宮のまちづくりの現状がございます。県都宇都宮を含めまして、中心市街地というのは、県民に夢を与えるところではないかと思うわけです。新交通システムとか、これからいろいろと検討されることがあると思いますが、そんなところはぜひ考えていった方がいいということを、要望として感じております。
次に、15ページの男女共同参画社会づくりに関しましては、「パパ・クオーター制」まで入れていただきまして非常にうれしく思っております。本当に閉塞し切った経済状態、栃木県の現況を思いますと、これは全国そうですが、女性の社会参画が非常に活性化につながってくると思います。いろいろな方といろいろなところでお会いしますが、マスコミの中でも行政の中でも、頑張っている一人の女性がいるだけで非常に明るいし、元気が出て、「これから頑張るぞ」という思いになります。この辺の社会づくりはぜひしっかりと取り組んでいただきまして、一般質問もいたしましたけれども、女性副知事の誕生もぜひお願いしたいと思っております。
最後は、16ページの「驚きと感動のとちぎづくり」についてです。先般「とちぎ将来構想」のパネルディスカッションを拝見しましたが、その中で、栃木県のすばらしさをビジネスにつなげていったらどうかという話がありました。他県と比べて田舎っぽいとか遅れているというのではなくて、栃木県は自然にあふれていて、人情味がある人たちで、なかなか前に出ない人たちでと、いろいろと個性はあるのですが、その辺のところをセールスポイントとしてこれから10年、15年先にはどんどん栃木を売り込んで、「驚きと感動のとちぎづくり」に頭を絞っていけたらと思っております。
○会長 2点目の12ページの新しい雇用の話は、箱としては2ページの2−1か2−3になるのかもしれません。その辺はご検討いただければと思います。
○委員 これを受け取りまして、自分の専門的なところ、興味のあるところを中心に読ませていただきました。これが10年、15年先のビジョンとして、県民、私たちに示されたということの意味が、とても深いと感じております。
先ほど事務局から、グラフ化は後でというお話がございましたが、構想の段階から図にすることで考えもリードされる側面があると思いますので、一目瞭然、これという特徴的なものを図にしてご説明いただけるとありがたいと思います。
その意味では、先ほどのマトリックスが大変気に入っておりまして、きょうここに出席するに際しまして、実は、私の周囲の何人かの者に見てもらいました。「結局何なの?」ということを聞かれまして、そのときに私は答えに窮しました。見せましたのはこのマトリックスのところなんです。県民の方々もこれを全部読んでくださるとは到底思えません。やはりここぞとアピールするところがないとぼけてしまう気がしますので、このマトリックスの発展版、図示といったあたりを期待したいと思います。
次に、内容について3点ほど申し上げます。
8ページの「健康を守り支える医療」のところで、確かにこれは、理想としてとてもすばらしい構想だと思います。ただ、現実に目を向けてみますと、これだけ医療事故が騒がれていても、つい昨今も、異型輸血でO型とB型を間違って輸血したという報道がありました。今回はシステムを守らなかったためという注釈が報道されてはおりましたが、まだまだ質が問われていると感じています。量から質の時代にシフトしてきていると言われてはおりますが、まだまだそこが十分保証されていないということを考えたときに、ではどうしたらいいかということを考えてみました。
その一つの提案として「110番」があります。例えば「医療110番」「看護110番」ということで、実際にユーザーが使ってみてこうだったというところを忌憚なく受けとめてもらえるようなシステムがあれば、何かあったときにユーザーが訴えやすいのではないかと感じています。もちろん現場で、そのときその場で訴えることができれば問題は深くはならないと思うのですが、どうしても患者さんの立場で考えると、医療は「上から下」というカラーがまだまだあると思います。そういう利害関係なく、公平に聞いてくれるシステムの構築をお願いできたらと考えています。それが1点です。
それから、13ページのところでDVのことが出てまいりましたが、この延長線上には、離婚とか、それによる子どもの遺棄、したがって養護施設への入所、その後の育児という問題があると思います。やはり青少年の自立支援に関して、もっともっと力を入れていただきたいと常日ごろ考えています。
こういう子どもたちは、健常な家庭に育った子どもたちとは違って、基本的な信頼関係の構築自体ができない状況なのです。ですから大人が信じられないし、価値とか真実とか美とか、全然その辺の人間性のベースのところができていない場合が多いので、それを公のところで面倒を見なかったら、個人の情熱とかやる気と努力だけでは限界があると感じています。もちろん、NPOで支援いただくのも一つなのですが、行政サイドとして児童家庭局等のバックアップも、ぜひ現場を見て、聞いて肌で感じていただきたいということを切実に感じています。青少年への自立支援をお願いしたい。心身ともに居場所がない子どもたちの居場所をつくってほしいということです。
57ページの男女共同参画社会のところですが、私のパートナーも公務員ですが、男社会また階級社会におりまして、子どものPTAやいろいろなことになると、どうも逃げ腰です。これはうちだけではないと思います。やはり公務員の方から一歩、垂範をといっては古いかもしれませんが、男社会の方から発信していただけないと、一職員の立場ではとても太刀打ちできないものがあります。ぜひそこのところは、公務員から模範を示していただけたらと感じています。
最後にお願いですが、これだけすばらしいビジョンを、現実のものとして私たちが実現していくためには、もう少し中位とか下位に目標を落とすなり、私が地域で、私が職場で何ができるかという発想におろしていかなければ、何も事は変わらないと感じています。したがって、PRの段階で、中・高校生等の子どもバージョンのものと、例えば点字等、障害者のある方にもおわかりいただけるようなバージョンですとか、高齢者の方も無理なく読めるような量・文字サイズにするとか、いろんな人が取り組むことができるようなバージョンでのPRもお考えいただければ広まっていくのではないか。広まっていかないと、美辞麗句で終わってしまうという懸念があります。
いずれにしましても、これだけのものをまとめるには相当な努力と力が要ったことと思います。感謝申し上げます。
○事務局 今、中身は非常に結構だけれども、非常に難しいという話がございました。今後、よりわかりやすい概要版をつくって対応していきたいと思います。また、点字版もつくる予定です。
○委員 感想と疑問を述べさせていただきたいと思います。
まず本文41ページ、2−3−1の「とちぎからのチャレンジ精神育成」というところなんですが、私も常々、若い人たちのリーダー性を育てていってほしいと思っていたところなので、この辺を入れていただけたことや、働くことに関するチャレンジ精神とか、いろいろな面を入れていただけたことは非常にいいことだなと思いました。
この中に、起業家精神を子どものころから醸成していくという言葉が書いてあるのですが、重荷にならないような、そういうチャレンジ精神を生かしていけるような計画になればいいと思っています。
また、今までの懇談会の中で栃木県の県民性についていろいろと発言がありました。
アンケートや皆さんの意見の中からは、「勤勉で真面目である。反面おとなしい面がある」ということがありましたので、これを県の計画に入れること自体、チャレンジなんじゃないかと思っております。チャレンジを県もするんだよ、皆さん県民でやっていくんだよという意識を、もう少し強く書いてみたらいいのではないかと思いました。
それから、疑問に思っているところは、2−2−2に「女性や高齢者、障害者の能力を生かす雇用・就業システムづくり」という表題があります。女性と高齢者、障害者は多くの問題を雇用に関して持っているという面は同じだと思うのですが、項目の中で一緒にしてしまうのはどうかと思います。問題点があるということは、弱いものであるというイメージもあると思うのですが、雇用者の中で女性は40%ぐらいを占めており、全世界でも45%の方々が働いているということですので、「女性と」とか、女性を分類して考えていったらいいのではと思いました。
高齢者もやはり、65歳までの再雇用が問題になっていますし、障害者としても、限界のある労働能力の中で共同して働いていくということなので、この辺はもうちょっと分類して書いていただけたらと思いました。
○事務局 今後、検討していきたいと思います。
○委員 この構想ができた後について述べさせていただきます。
まず、広い分野にわたり、さまざまな切り口から行動指針または取り組みが整理されておりまして、このすべてが本当に全部実行できたら、すばらしい栃木県が実現すると思います。しかし重要なことは、その後の指針に基づく実際の行動でして、指針のすべてを行うには、非常に長い時間と多くの労力を要すると思います。そこで、できるところから早く着手していく、または、これらの中でも県民の要望が非常に高いものを重点プロジェクトとして特出しをしながら、優先的に行動に移していくことが、早い時点でできればと思います。それがきっかけとなって、初動としての一つの行動が次の行動に連鎖的につながることを期待したいと考えています。
私たち大人が高齢化社会、自然の保全といった、今あるさまざまな課題をどうクリアして、次の代につないでいくかということも大切ですが、次の主役になっていく子どもたちの環境づくりにかかわる行動指針が最優先されるといいなと考えています。というのも、「三つ子の魂百までも」といいますが、心の形成は早ければ早いほどいいと思います。したがいまして、良質な育児環境、教育環境が早くできれば、それだけ、その子どもたちがつくっていく将来の栃木も、短い時間で実現できるのではないかと考えます。
また将来の栃木県をつくり出すためということで、その考えの根底に、自立、自助、互助というものがあると思いますが、それを実現していくためには、県民一人ひとりの自覚なしには実現できないと思います。自覚を促すためには、行動指針や行動指針に基づいてこれから計画されていく行動計画を、一般の県民や企業にいかに理解してもらうかということになると思います。今までも、懇談会や先日の講演会を、インターネットやテレビを通じて一般に情報提供していますが、一つの目標に対して私たち県民がどうしたらいいのか、何をやったらいいのかをわかりやすく伝えていくためには、フェース・ツー・フェースの対話が一番大切だと考えます。したがいまして、県民全員に対して行政の方が対応していくのは難しいかもしれませんが、市町村の協力を得ながら、できる限り双方向での意見交換といいますか、情報提供と話し合いができたら、より確実にこの構想が動いていくのではと考えます。
○会長 ご発言の中で「重点プロジェクト」というお話がありました。これは私の方でも県の方に伺いたいところですが、県の総合計画ではそれを設定していますが、これは10年から15年ぐらいの見通しでやっているので「重点プロジェクト」という設定の仕方は難しいのではないかと思いますが、その辺はいかがですか。
○事務局 この中で、どれをどう重点にしていくかは、なかなか難しい問題はあろうかと思いますが、その中でも、喫緊にやらなければならない課題は喫緊に取り入れていくことになろうかと思います。それと、重要度ですね。例えば人づくりとか雇用という問題は、重要度や喫緊度からして早く取り入れていく問題ではないかと思います。それは政策マネジメントとか予算編成、あるいは次の計画の中で、素早く取り入れて対応していくということになってくるのではないかと思っています。
最後に、県民によくわからせてくれ、フェース・ツー・フェースが必要ではないかということを言われましたけれども、これにつきましても、知事から、何らかの方法で県民との対話をやる機会をつくったらどうかという宿題が出ております。例えば20人ぐらいのグループが集まって話を聞きたいという場合に県の職員が出ていくとか、何らかの方法を今、模索中でございます。極力努力していきたいと思っております。
○委員 この素案は量も中身も非常に膨大で、理解するのに本当に時間がかかる、別の言い方をすればよく勉強して書かれていますが、10年先の構想を考えているという中身を読み終わったときに、今までのグローバルスタンダードという言葉ではどうも違ってきているのではないか。むしろジャパニーズスタンダードというか栃木スタンダードがこの中に網羅されている。知事が言われている「分度推譲」とか自立、自助という言葉も、グローバル化の中には多分出てこない話ですし、残念ながらというか、これをまとめる職員の方の今までの教育が、グローバル化というかアメリカを焦点に合わせた学習をされているのだなと。そのために、グローバル化のための横文字ではなくて、アメリカの経営学の言葉を鵜呑みにしてここへ載せてきている。
私もカタカナ文字は余り得意ではないのですが、意味が全然通じない内容、辞書を引いても出ていないものがあります。この間も、私も農業関係者でありながら「トレーサビリティ」という言葉がわからず、辞書を引いても出ていない。カタカナにしてしまうために通じないわけです。もし必要があれば、読む都合上、英文のまま書いていただいた方が、こちらでも勉強しやすいと感じた次第です。
もし、今までの旧パラダイム・・・グローバルスタンダードから、ジャパニーズスタンダードもしくは栃木スタンダードに概念を本気で10年後に実行しようとすれば、相当教育システムから大幅に変えていかなければならないと思います。考え方の根本が違いますから、アメリカを焦点に合わせた物の考え方では、共生という社会システムの発想は育たないのです。
それから、今の経済の閉塞状態、デフレ社会からどうして脱出できないか。なぜマクドナルドやユニクロの売上がどんどん落ちていくのか。これは、全世界的に物は飽和状態だからです。飽和から脱出するために、ある意味では極端な経済政策をとらなければいけない状態が起こっていると思うんですね。
物だけではなくて、今、マネーゲームに代表されるように、お金の過剰も含めて、マネー・サプライも半端ではなくなっている状態で、これも一部の人は、いつか破綻するぞと脅かしているところがありまして……。
こういう非常に過剰供給な中で、日本で唯一とんでもない数字になっているのが、実は食糧自給率です。先ほど自立、自助ということがありました。大人の国であればそれは当たり前なのですが、日本は食糧の自立をしていない国です。歴史の中でも、今の日本のように穀物ベースで20%を割ってしまう食糧自給は、多分、世界の歴史の中でも、自給率が20%を割ってしまった国は恐らくなかったのではないかと思います。
この辺は、実は敏感な人は多分感じていまして、今日も農業問題や環境問題が話題になっていますが、本能的に感じ取っているんだと思います。栃木県は特に水田や農業地帯が多い、いつまでも安心していられるという感じですが、農家の現場では、後継者もいないので俺の代でやめるという人たちがたくさんいます。それに反して、逆にIターンで農業に入りたいという人、しかし現状の法律ではほぼ不可能に近い、これらのことが新規参入者にとって問題になっています。
それから、安全・安心という問題がこの文章の中にもたくさん出ていますけれども、今回、新聞が大騒ぎしているダイホルタン等の無登録農薬の問題のことは、これは私は、消費者の方によく理解してほしいと思うんですが、劇毒物と食品を一緒に議論しているのです。別な言い方をすれば、槍とアイスクリームを先が尖っているから両方とも危ないよといっているような話を、今、新聞等で騒いでいるような気がします。逆の見方をすれば、それほど農業というのはその分野の議論をしていないということになると思うんです。
分権とか、地方の特徴とか、スロフード、スローライフという言葉が一人歩きしていますが、本当の意味の地産地消を実践しようとすると、今の農薬取締法上では使う農薬がない。例えば昔からある野菜をつくろうと思っても、それに対する登録がないのです。それらを大至急解決する必要があると思います。
これからの21世紀型産業の中には、過剰な部分と過少な部分があり、過少な部分は農業と観光だと思っています。栃木県には観光客が5,000万人来ますが、素案の中にあまり入っていないのは非常に残念であります。栃木県は自然に恵まれていて、農業と観光資源が十分ありますので、とちぎ将来構想にこれらの新しい農業と観光を一体化させた共生というコンセプトをメインにしていただきたいと思っております。
○委員 この素案の中で、18ページの「地球に風をおこす人材づくり」では、教育の方向についていろいろ書いてありまして、チャレンジ精神、起業家精神、個性や独創性、高度な専門性ということがあります。私どもは、実際に今、栃木県で酒造メーカーとしてお酒をつくっておりますが、オーソドックスな製品がだんだん売れなくなりまして、断えず目新しいもの、変わったお酒、珍しいものということで、ビールでも何でも新製品を出し続けなければいけないような時代になってきました。物があふれていて、大抵のものには皆さん珍しさを感じない。
そうしたときに、普通に会社に来て与えられた仕事をして帰っていくだけの人材では通用しなくなってきたと感じます。新しいアイデアを出せるひらめきのある人を、教育の中で育てていく必要があると思います。ですからこれからの人は本当に大変だと思いますが、そういう能力をつけないと、世界的にも勝っていけない日本になってしまうのではないかと思います。
また、基礎学力の低下ということが問題にされておりますけれども、今までの教育ではつけられなかった能力が必要とされているのではないか。実際に「ゆとりの教育」が始まりまして、4月からうちでも子どもが2日家にいますけれども、「どうして勉強するの?なんで勉強するの?」と言われて、親が勉強の必要性を語ることが難しくなってきてしまったという感じがします。もっと自分たちの現場に引き込んで、必要とするもの、彼らが「これはおもしろい」と興味をそそられて学びたいと思うようなものを見つけさせることができたらと、子どもと向かい合っていつも思いますが、なかなか難しい。これから社会的な教育でそれをやっていくことができたら、本当にすばらしいと思います。たくさん物をつくるというのは、いろいろな外国の物で足りますから、これから知的社会になっていくということで、それを重要視していただきたいと思います。
○委員 全般的なことで1点お話しさせていただきたいと思います。
この構想については、先ほどのご意見と、私はちょうど逆の感想を持っておりまして、グローバル化に対応するのは基本的に国の仕事、この構想は県として何ができるかを明確に出していくべきではないかと考えております。その意味で、県としてのスタンスを明確にしているということで、非常によくできたシナリオだろうと思っています。
何を評価しているかといいますと、この構想の基本を個々の県民一人ひとりに置いていて、その県民が、一人では何もできませんから、自分を磨いて隣の住民と手をつないで、そしてそのネットワーキングによって地域社会を変えて、市町村を変えて、県を変えて、国を変えて、そして世界を変えていこうと。そこまでは県の役割ではありませんけれども、そういう形である程度大きな方向性を示しているという意味で、非常に評価していいと私は考えております。
ただ、この構想を読ませていただいて、これをずっと実施すると、1点疑問だなと思ったのは、これからの10年、20年先の社会は、今まで我々が当たり前だと思っていた、環境であるとか、コミュニティであるとか、安全であるとか、あるいは地域の教育といったものが実は非常に重要な問題になって、それの対応に追われているという部分と、それから、先ほど委員が言われたような、経済のグローバル化に伴って地域社会が大きく変わっていくという部分と、2つの方向が出てくるわけです。
私の考えとしては、グローバル化は国に対応してもらう。グローバル化の戦いに勝てる人には積極的に頑張ってもらう。しかしその残った部分については、市町村なり県で対応していこうということで、グローバル化に伴って、ローカルな地域の部分が非常に重要になってくるのかなと考えております。
ところが、ローカルの部分、地域の部分が非常に重要であると考えますと、身近な行政サービスは身近な自治体である市町村の仕事だと私は理解しておりますが、今、市町村では市町村合併が推進されています。そして、市町村が行政能力を向上させて財政基盤を強化するような、比較的今より大きな自治体ができていく。そうすると、確かに財政基盤が強化されて行政能力は向上するわけですが、身近な住民の声をきちんと吸い上げてそれに対応できるようなコミュニティというか、住民に密着した行政サービスの部分で、住民の意思を把握する力が弱まってくることが一つ想像できるわけです。そうしますと市町村の役割と県の役割が非常にオーバーラップする印象を持つのですが、そのあたりは、市町村がある意味で財政基盤を確保して行政能力を向上させて、かなり個々の市が大きくなっていく動きと県との対応をどう考えるのか。県のスタンスをどういうふうに考えるのか。特に今後10年から15年ということを考えるのであれば、それを考えていく必要があるのではないかと、その辺少し疑問に思いました。
○事務局 基本的には、合併を進めて市町村に地方自治の権限を持ってもらいましょうというのが、この構想の中身でございまして、その先には道州制があるということです。この点については31ページで触れております。そのときには国の体制も大きく変わっていかなければならない。国がやるべきものは、国防等非常に限定されたものになり、あとは地方自治体が道州制になっていって、その下が市町村単位のものになっていくと考えております。
委員が心配なさっているコミュニティの問題は、今後の書きぶりの変更にもつながるかと思いますが、NPOやNGO、町内会組織等に期待するものが大になってくるのではないかと感じております。その辺は今後のワーキンググループの中でも議論をして、どう書き込んでいくか研究したいと思います。
○委員 このテーマの中で、先ほど話がありましたように、構成の図式は非常にわかりやすいです。この文章を読んでいくと、例えば「“絆”をつなぐ」には、安心ややさしさ、思いやりという言葉がふんだんに使われて、非常にやさしい気持ちが伝わってくるのですが、素案を全部読んでいくと、非常に難しい言葉や行政用語が多くて、どなたが読んだときにやさしく伝わってくるのかなということを疑問に思いました。
つい最近の「下野登壇」などにも、高齢者の方から「横文字ばかりではなく、やさしい日本語を使ってほしい」ということが出ていましたが、知事さんが「分度推譲」とおっしゃるように、すてきな日本語はたくさんあるので、そういうものを網羅してわかりやすい文章にしていただけると、もっと引き込まれる、読みごたえのあるものになっていくのではないかと思います。図式化とそれを一体化して、もうちょっと引き込まれるものにしていくと、私たちの気持ちの中にも「風」がおきるのではないかと思います。
また、個々がみずからを磨きながら、コミュニティと一緒になって行政を動かすということも一つあるかもしれませんが、市町村のアンケートを見たときに、7ページの一番下に「県より積極的なリーダーシップを期待する分野もある」という一文があります。この素案等を含めまして、県は市町村行政との絡みの中で、今後どういうかかわり方を持ちながら、各市町村への風を起こしていただけるのかもお伺いしたいと思います。
○事務局 これは一概には言えない問題で、県がリーダーシップをとらなければならない問題もありますし、市町村が先に考えていかなければならない問題もあると思います。例えば土地利用の問題などは、つい最近までは県がリーダーシップをとって土地利用を決めてくださいという風潮だったのですが、最近は、市町村みずから、どういう計画をつくってどういう土地利用をするかをまず決めてください、それについて県が応援していきますという形に変わってきております。したがいまして、行政の中身によって、県がリーダーシップをとるもの、市町村が主体になるもの等々あろうと思いますので、それは、各部で個々に議論しながら、個別に対応していきたいと思っております。
○委員 私は関心があって市町村合併の効果についてシミュレーションをしています。大きな都市の合併では余り効果は出ないのですが、小さなところが合併しますと、財政が悪い中で、住民一人当たりの借金が確実に減っていくということが出てきます。ですからそれは一つの効果として考えられるんじゃないか。ただそのときに、それぞれがやっていた細やかなことを大きくしていったときに、隅々まで目が届くかというある種のデメリットが同時に出てくると思いますので、行政の効率化ということと、住民に効果的なサービスができるかというところのバランスをどういうふうにとっていくかは、非常に大きな課題ではないかと思っております。県でもいろいろな合併が進められておりますが、住民サービスの低下が起きないような合併を探っていくときに、県がある意味で指導的な立場である種のアドバイスをしていくとうまくいくのではないかと思います。
○委員 「夢ときめく交流社会」ということが出てきますが、夢というのは正夢ではないわけですから、表現をちょっと変えたらいいんじゃないかと思います。言葉の問題なのですが、夢はあくまでも夢であって現実にならないということです。どうでしょうか。
○会長 素案の2ページ、コマの4−3に「みんなを育む環境づくり」とあります。これも具体的には循環型社会の形成について言っているので、ちょっと曖昧ですね。もう少しシャープなタイトルのつけ方でよろしいのじゃないかという感じがしますので、考慮していただけるとありがたいと思います。
○委員 文章の中で、「地方公共団体」という言葉と「地方自治体」という言葉の両方が使われているのですが、特に意味を持って使っているのかどうか教えていただきたいと思います。
○会長 統一してくださいということですね。
○会長 多分ご意見はまだたくさんおありではないかと思いますが、またワーキングの会合もありますので、ぜひその場で丁寧なご議論をお願いしたいと思います。委員の皆様方に、貴重なご意見、アイデアをたくさんいただきまして大変ありがとうございました。
今回提出されました「第2次素案」の内容や意見交換にもありましたように、県政を取り巻く環境は大きく変化しております。このような中で策定されます「とちぎ将来構想」につきましては、今まで皆様から出されました意見を踏まえて、さまざまな検討をして策定されるものと思います。
それでは最後に、本日の懇談会の皆様方の発言等につきまして、知事さんの方からご感想などがございましたらよろしくお願いいたします。
○知事 御礼のご挨拶を申し上げたいと思います。
実はこの「とちぎ将来構想」をつくるに当たりまして、私も、県庁の若い職員と何回か勉強会をやらせていただきましたが、そんな中で私が、このとちぎの将来構想を貫くものとして、若い職員にお願いいたしましたのが、大きく3点ございます。
1つは、あらゆる分野の「教育・人づくり」をしっかりと入れてほしい。
2つ目は、「自然や環境との共生」、これもぜひ、入れてほしい。
3点目は、先ほどから出ておりましたが、「雇用の場づくり」でございます。教育や医療や福祉、これも実は、県民に対するサービスを向上させると同時に、雇用の場になる。したがって、教育や医療や福祉も含めたあらゆる産業の活性化と雇用の場づくり。この3点を、「とちぎ将来構想」を貫くものとしてぜひ考えてほしい、そんなお願いをしてまいりました。
特に、一人も失業者をなくすというのは、これは難しい話でございますけれども、できるだけ失業者を少なくしたいという思いを込めた「とちぎ将来構想」になっているわけでございます。
そういった意味で、本日、委員の方々からさまざまな具体的なご意見をいただきましたけれども、委員の皆様からいただきましたご意見につきまして、さらに検討を加えさせていただきまして、来年度までにはまとめ上げていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
また、余分なことでございますけれども、男女共同参画社会づくりを実現するためには、男性の協力が必要だという話がございました。まさにそのとおりでございますが、実は私は、幸い市役所の職員だったものですからそれができたんですね。子どもを病院に連れていったり、予防注射に連れていったり、あるいはPTAに出たりということができたのですが、私が知事になりまして県庁の皆さんの仕事ぶりを見ておりますと、なかなか忙しくてできそうもないところがあります。ぜひ、県庁の職員もそういうことをやってほしいと言っているんですが……。
実は、大変忙しかった人なのですが、NHKの職員で最後は重役になった鈴木健二さんというアナウンサーがいました。この鈴木健二さんは、「PTA活動にはぜひ父親が参加すべきだ」と言って、自分でも実践されている方であります。特に子どもが中学生になったら、男の子の場合は父親が行くべきだということを言われて実践されております。そういったことを県庁の職員も心掛けるようになればうれしいなと私は思っているところでございます。
定例のお礼のご挨拶に戻りたいと思いますけれども、委員の皆様方には、およそ1年間にわたり懇談会にご出席をいただきまして、貴重なご意見やご提案をいただくなど、多大なご協力をいただきましてまことにありがとうございました。特に、策定作業に当たる若手職員との意見交換など新たな試みにもご協力を賜りまして、貴重なご意見を多数ちょうだいいたしましたことに、ここに改めまして御礼を申し上げます。
正式の懇談会としてお集まりいただくのは、本日が最後ということになりますけれども、来月の中旬から下旬にかけまして、いま一度、ワーキンググループとの意見交換をお願いしておりますので、最後までご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
本日いただきましたご意見や、来月の意見交換会のご意見などを踏まえ、3月には構想を決定いたしまして、この構想を踏まえ、「活力と美しさに満ちた郷土“とちぎ”」の実現に向けて県政経営に努めてまいりたいと考えております。特に、この構想がまとまりましたら、15年度にはこの構想が実現できるような県庁の組織体制の見直しをして、実現に向けて努力をしていきたい、このように思っているところでございます。今後とも、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いを申し上げまして、御礼のご挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。
○会長 それでは私の方からも一言ご挨拶を申し上げます。
委員の皆様におかれましては、長時間にわたり、いろいろなご意見をいただきまして大変ありがとうございました。県当局におかれても、知事さんはじめ幹部の方々が長時間にわたりまして私どもの意見をお聞き取りいただきましてありがとうございます。
それでは、これをもちまして、第3回とちぎ将来構想懇談会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
(午後3時35分 閉会)