○栃木県環境基本条例

平成8年3月28日

栃木県条例第2号

栃木県環境基本条例をここに公布する。

栃木県環境基本条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 環境の保全に関する基本的施策

第1節 環境の保全に関する施策の策定等に係る指針(第9条)

第2節 環境基本計画(第10条)

第3節 環境の保全に関する施策(第11条―第22条)

第4節 環境の保全に関する施策の推進等(第23条―第26条)

附則

私たちは、これまで、ふるさと栃木県の豊かで安全な環境の下で、活力のある地域づくりを積極的に進めるとともに、公害の防止や自然環境の保全に努めてきた。

この結果、私たちの生活や産業活動は、より豊かで活発なものとなり、県土の環境は、全般的に良好な状態に保たれてきた。

しかしながら、近年の大量生産・大量消費・大量廃棄を基調とする社会経済活動に伴う環境への負荷の増大により、都市・生活型の公害や廃棄物の量の増大などの問題が生じるとともに、自然環境も変ぼうしつつある。さらに、地球の温暖化やオゾン層の破壊などの問題は、私たちの生存基盤である地球の環境を脅かすまでに至っている。

これらの問題を解決するためには、私たちが、これまでの社会経済活動の在り方を見直し、自らの行動を環境への負荷の少ないものに変えていくことが不可欠となっている。

もとより、私たちは、良好な環境の下で、健康で文化的な生活を営む権利を有するとともに、その環境を保全する責務を有している。また、私たちは、ふるさとの均衡のとれた発展を実現しつつ、健全で恵み豊かな環境を将来の世代に引き継いでいく使命を負っている。

いま、私たちは、人と自然とが共生し、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会を構築するという新しい価値観に立って、日常生活や事業活動のすべてにおいて、環境の保全に資する行動を実践していかなければならない。

ここに、ふるさと栃木県の健全で恵み豊かな環境を保全し、創造し、将来の世代に引き継いでいくため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに県、市町村、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「環境の保全」とは、安全で快適な生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)、良好な自然環境その他の健全で恵み豊かな環境を保持し、及び保護するとともに適切に環境の向上を図ることをいう。

2 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

3 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全は、県民が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともにその環境が将来の世代に継承されるように、適切に行われなければならない。

2 環境の保全は、人と自然とが共生し、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として行われなければならない。

3 環境の保全は、すべての者が参加し、適正な役割分担の下に自主的かつ積極的に取り組むことによって行われなければならない。

4 地球環境の保全は、すべての日常生活及び事業活動において推進されなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、市町村が実施する環境の保全に関する施策について支援するように努めるものとする。

(市町村の責務)

第5条 市町村は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、その市町村の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 市町村は、県が実施する環境の保全に関する施策に協力するほか、前項の施策の策定及び実施に当たっては、他の市町村と連携を図るように努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。

2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。

3 前2項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。

4 前3項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、県又は市町村が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

(県民の責務)

第7条 県民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、県民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、県又は市町村が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

(年次報告等)

第8条 知事は、毎年、県議会に、環境の状況及び県が環境の保全に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2 知事は、毎年、前項の報告に係る環境の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを県議会に提出しなければならない。

第2章 環境の保全に関する基本的施策

第1節 環境の保全に関する施策の策定等に係る指針

第9条 この章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。

(1) 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。

(3) 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。

第2節 環境基本計画

第10条 知事は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全に関する目標

(2) 環境の保全に関する施策の方向

(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全に関する重要事項

3 知事は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、栃木県環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 知事は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

第3節 環境の保全に関する施策

(環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定等に当たっての配慮)

第11条 県は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、その影響が低減されるように、環境の保全について配慮しなければならない。

(環境影響評価の推進)

第12条 県は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(環境の保全上の支障を防止するための規制の措置)

第13条 県は、公害を防止するため、公害の原因となる行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。

2 県は、自然環境の保全を図るため、自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。

3 前2項に定めるもののほか、県は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。

(環境の保全上の支障を防止するための誘導の措置)

第14条 県は、環境の保全上の支障を防止するため、事業者又は県民が自らの行為に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることとなるように、必要な誘導の措置を講ずるものとする。

(環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進)

第15条 県は、緩衝地帯その他の環境の保全上の支障を防止するための公共的施設の整備及び汚泥のしゅんせつ、絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖その他の環境の保全上の支障を防止するための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(資源の循環的利用等の推進)

第16条 県は、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び県民による資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、環境への負荷の低減を図るため、県の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たっては、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量に努めるものとする。

(環境管理の促進)

第17条 県は、事業者がその事業活動に係る環境への負荷の低減を図るために自主的に行う環境管理を促進するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。

(環境の保全に関する教育、学習等)

第18条 県は、環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに環境の保全に関する広報活動の充実により事業者及び県民が環境の保全についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。

(県民等の自発的な活動の促進)

第19条 県は、県民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「県民等」という。)が自発的に行う緑化活動、資源の循環的な利用に資する活動その他の環境の保全に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(情報の提供)

第20条 県は、第18条の環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに前条の県民等が自発的に行う環境の保全に関する活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況その他の環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。

(調査及び研究の実施等)

第21条 県は、環境の保全に関する施策を適正に実施するため、公害の防止、自然環境の保全その他の環境の保全に関する事項について、情報の収集に努めるとともに、科学的な調査及び研究の実施並びに技術の開発及びその成果の普及に努めるものとする。

(監視等の体制の整備)

第22条 県は、環境の状況を的確に把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定、検査等の体制の整備に努めるものとする。

第4節 環境の保全に関する施策の推進等

(環境の保全に関する施策の調整及び推進)

第23条 県は、環境の保全に関する施策の総合的な調整及び効果的な推進を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

(県民等の意見の反映)

第24条 県は、県民等の意見を環境の保全に関する施策に反映させるため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。

2 前項に定めるもののほか、県は、環境の保全に関する施策のうち重要なものの策定に当たっては、栃木県環境審議会からの意見の聴取その他の必要な措置を講ずるものとする。

(国及び他の地方公共団体との協力)

第25条 県は、広域的な取組が必要とされる環境の保全に関する施策について、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。

(地球環境の保全の推進等)

第26条 県は、地球の温暖化の防止、オゾン層の保護その他の地球環境の保全に資する施策を積極的に推進するものとする。

2 県は、環境の保全に関する技術の移転、研修の実施、情報の提供等について、国際協力の推進に努めるものとする。

1 この条例は、平成8年4月1日から施行する。

2 栃木県公害防止条例(昭和47年栃木県条例第8号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

栃木県環境基本条例

平成8年3月28日 条例第2号

(平成8年3月28日施行)

体系情報
第4編 環境森林/第2章 環境管理
沿革情報
平成8年3月28日 条例第2号