○とちぎ食の安全・安心・信頼性の確保に関する条例

平成18年6月23日

栃木県条例第39号

とちぎ食の安全・安心・信頼性の確保に関する条例をここに公布する。

とちぎ食の安全・安心・信頼性の確保に関する条例

私たちの社会は、科学技術の貢献などによって、日常生活の利便性や快適性が向上するなど、総じてくらしの豊かさを実感できるものとなっている。

しかし、食品の安全性や信頼性を損なう事態の発生などを背景として、県民の食に対する関心が一層高まってきており、生命と健康の源である食の安全・安心を確保することは、私たちすべての強い願いである。

私たちが住む栃木県は、首都圏の一翼を担う地勢の優位性を持ち、全国有数の豊かな農業生産を展開し、本県はもとより首都圏の食料基地として大きく貢献するとともに、食に関する産業が地域経済において重要な役割を果たしている。

こうした特色を持つ本県において、食品の生産から消費、さらには、廃棄、再生利用に至るすべての関係者及び県民が、食の安全・安心・信頼性の確保に関して、それぞれの立場でその責務と役割を果たすことは、極めて大きな意義を持つものである。

ここに、県民の総意として、生命と健康の源である食と農に対する理解を深めながら、食の安全・安心・信頼性を確保することを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、食と農に対する理解を基礎とした食の安全・安心・信頼性の確保(以下「食の安全・安心の確保」という。)に関して基本理念を定め、県及び事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに県の施策に関する基本事項を定めることにより、食品の生産・加工・流通・消費・廃棄・再生(以下「食品の生産・消費・再生等」という。)の各般にわたる施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民の健康の保護に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 食 食品、食文化、食習慣、食育等の総称をいう。

(2) 食と農 食品の生産を目的とした植物の栽培等又は家畜若しくは魚介類の飼養等に係る人の営み並びに食品の生産から消費に至る行程及びその結果生ずる食品循環資源(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116号)第2条第3項に規定する食品循環資源をいう。)等に係る一連の活動をいう。

(3) 食育 食に関する知識及び食品を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることをいう。

(4) 食品 全ての飲食物(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品及び医薬部外品を除く。)をいう。

(5) 事業者 肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある農林漁業の生産資材、食品(その原料又は材料として使用される農林水産物を含む。)若しくは添加物(食品衛生法(昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物をいう。)又は器具(同条第4項に規定する器具をいう。)若しくは容器包装(同条第5項に規定する容器包装をいう。)の生産、輸入又は販売その他の事業活動を行うものをいう。

(平26条例51・一部改正)

(基本理念)

第3条 食品の安全・安心・信頼性の確保(以下「食品の安全・安心の確保」という。)は、県民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に県及び事業者において必要な措置が講じられることにより、行われなければならない。

2 食品の安全・安心の確保は、本県の食文化や食習慣を踏まえた食と農に対する理解を促進させる活動及び食育の積極的な推進によって、県、事業者及び県民がそれぞれの責務若しくは役割を果たし、又は相互の信頼の下に取り組むことにより、行われなければならない。

3 食品の安全・安心の確保は、科学的知見に基づき、県が国及び市町村と連携協力を緊密にして適切な施策を講ずることにより、行われなければならない。

4 食品の安全・安心の確保は、県及び事業者における積極的な情報の公開並びに県民との意見の交換、公表等による情報の共有化を推進して共通認識の形成を図ることにより、行われなければならない。

5 食品の安全・安心の確保は、食品の生産の方法及び流通の過程において、循環型社会の視点に配慮しながら行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、食の安全・安心の確保のため、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食品の生産から消費に至る行程の各般に応じて総合的かつ計画的な施策を講ずる責務を有する。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、基本理念にのっとり、食品の安全・安心の確保に関して、第一義的責任を有することを認識して、その事業活動を行う責務を有する。

2 事業者は、消費者が食品の選択をするに際して重要である食品の表示を正確かつ適切な表示に努めることにより、県民の信頼を損なうことのないようにその事業活動を行う責務を有する。

3 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、食品の安全・安心の確保を常に念頭におき、事業活動の改善及び向上に努めなければならない。

4 事業者は、県が実施する食品の安全・安心の確保に関する施策に積極的に協力する責務を有する。

(県民の役割)

第6条 県民は、基本理念にのっとり、食品の安全・安心の確保に関する知識と理解を深めるとともに、県の行う施策若しくは事業の展開に参画し、意見を表明し、又は情報を提供することにより、積極的にその役割を果たすよう努めるものとする。

2 県民は、常に自らが、食品による危害の被害者又は加害者となり得ることを認識し、食品の生産・消費・再生等に関わるよう努めるものとする。

(環境への配慮)

第7条 県、事業者及び県民は、食品の安全・安心の確保に当たっては、食品の生産・消費・再生等において、社会環境の変化、化学物質の出現等による環境への負荷が増大されてきている現実を認識して、環境への負荷の軽減に努める等環境に及ぼす影響について配慮しなければならない。

(基本計画)

第8条 知事は、食の安全・安心の確保に関する施策を、総合的かつ計画的に推進するため、食の安全・安心の確保に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 食の安全・安心の確保に関する施策の大綱

(2) 前号に掲げるもののほか、食の安全・安心の確保に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、県民の意見を反映することができるよう適切な措置を講じなければならない。

4 知事は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、とちぎ食の安全・安心推進会議の意見を聴かなければならない。

5 知事は、基本計画を定めたときは、速やかに、これを公表するものとする。

6 前3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(生産及び供給体制の確立)

第9条 県は、事業者の安全で安心できる食品を生産し、及び供給するための体制の確立に関する必要な施策を実施するものとする。

(監視、指導及び検査の強化)

第10条 県は、食品の安全性、食品の表示の適正化等について、一貫した監視、指導及び検査に関する必要な施策を実施するものとする。

(情報の共有及び相互理解の促進)

第11条 県は、食品の安全・安心の確保に関し、情報の収集、分析及び公開に努めるとともに、関係者間の情報の共有及び県民と事業者との相互理解の促進に関する必要な施策を実施するものとする。

(体制の整備及び連携の強化)

第12条 県は、食品の安全性を確保するための試験研究体制の整備並びに食品の摂取による県民の健康に係る重大な被害の発生の未然防止及び当該被害の拡大を防止するための緊急の対処に係る体制の整備に関する必要な施策を実施するものとする。

2 県は、食の安全・安心の確保に関し、適切な施策を実施するため、国、他の都道府県、市町村等との密接な連携に努めなければならない。

(県民参加)

第13条 県は、食の安全・安心の確保に関し、県民が幅広く主体的に関わることができるよう、県民参加の促進に関する必要な施策を実施するものとする。

2 県は、食の安全・安心の確保に関し、広く県民の意見を求めるための必要な措置を講じて施策に反映するよう努めるものとする。

(人材の育成)

第14条 県は、食の安全・安心の確保に関する専門的な知識を有する人材の育成に努めなければならない。

(自主基準の設定及び公開)

第15条 事業者は、県民の安全で安心できる食品の選択に資するため、自らが提供する食品の安全性及び信頼性に関する基準の設定並びにその公開及び遵守に努めなければならない。

2 県は、前項の規定により事業者が行う基準の設定及び公開を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(食育等の推進)

第16条 県は、食育の普及啓発を推進するため、家庭、学校及び地域における食に関する教育及び取組の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、地産地消(地域で生産された農林水産物を当該地域で消費することをいう。)を推進するため、地域の食材の提供及び利用の促進、普及啓発、情報の発信その他の必要な措置を講ずるものとする。

(危害情報の申出)

第17条 県民は、人の健康に悪影響を及ぼすおそれがある食品に関する情報を入手した場合は、県に対して適切な対応をするよう申出をすることができるものとする。

2 県は、前項の申出があった場合において、当該申出に係る事実を確認するために必要な調査を行い、当該申出の内容に相当の理由があると認めるときは、必要な措置を講ずるものとする。

3 第1項の申出をしようとする者は、この条の制度を濫用してはならず、公益を図る目的でこれを利用する責任を負うものとする。

(議会への報告等)

第18条 知事は、毎年度、食の安全・安心の確保に関して講じた施策を県議会に報告するとともに、県民に公表するものとする。

(施策の提案)

第19条 次に掲げるものは、県に対し、食品の安全性の確保又は適正な食品表示の確保に係る県の施策について、制度の新設若しくは改廃又は制度運用の改善の措置を講ずるよう提案をすることができる。

(1) 県内に住所を有する者

(2) 県内に事務所又は事業所を有する法人その他の団体

2 前項の提案をしようとするものは、この条の制度を濫用してはならず、公益を図る目的でこれを利用する責任を負うものとする。

(とちぎ食の安全・安心推進会議)

第20条 この条例によりその権限に属することとされた事項を行わせるため、とちぎ食の安全・安心推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。

2 推進会議は、前項に規定するもののほか、食品の安全性の確保に関する重要事項を調査するとともに、県に建議することができる。

3 この条に定めるもののほか、推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(委任)

第21条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

1 この条例は、平成18年10月1日から施行する。

2 この条例施行の際現に策定されているとちぎ食品安全確保指針は、第8条第1項の基本計画とする。

(平成26年条例第51号)

(施行期日)

1 この条例は、平成26年11月25日から施行する。

とちぎ食の安全・安心・信頼性の確保に関する条例

平成18年6月23日 条例第39号

(平成26年11月25日施行)