○観光立県とちぎの実現に向けたおもてなしの推進等に関する条例
平成29年3月27日
栃木県条例第3号
観光立県とちぎの実現に向けたおもてなしの推進等に関する条例をここに公布する。
観光立県とちぎの実現に向けたおもてなしの推進等に関する条例
私たちのふるさと栃木県は、我が国を代表する国立公園である日光国立公園やラムサール条約湿地である渡良瀬遊水地などの四季折々の美しさを見せる豊かな自然、世界文化遺産である日光の社寺、我が国最古の総合大学である史跡足利学校、ユネスコ無形文化遺産である結城紬、烏山の山あげ行事や鹿沼今宮神社祭の屋台行事、益子焼をはじめとする伝統工芸品などの数々の歴史的遺産や文化的遺産、豊かな水が育む多様な食、関東一の源泉数を誇る温泉など、本物と言える様々な観光資源に恵まれている。
こうした郷土の魅力を守り、育て、又は創り出しながら、先人たちはこれまで多くの観光旅行者を魅了してきた。
このような栃木県ならではの魅力に支えられる観光は、人と人との触れ合いや交流を生み出し、地域社会に活気や成長、そして豊かさをもたらすものである。
急速に進行する少子高齢化や人口減少、経済のグローバル化による国際競争の激化など時代の大きな変化の中で、豊かで活力ある栃木県として今後も発展していくためには、栃木県ならではの魅力で国内外の多くの人を惹き付け、県内各地に呼び込み、また訪れたい観光地として選ばれる観光立県とちぎの実現を図る必要がある。
そのためには、誠実、勤勉、親切と言われる県民をはじめ、地域社会を構成する全ての主体が、おもてなし日本一の栃木県を目指し、郷土への誇りや愛着を持って、旅行者への感謝の念や思いやりの気持ちをおもてなしとして形に表していくことが重要である。
ここに、私たちは、観光立県とちぎの実現に向けた取組を県を挙げて推進することを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、観光立県の実現に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策の基本となる事項を定めることにより、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本県経済の持続的な発展及び活力ある地域社会の形成に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「おもてなし」とは、旅行者に対する快適な旅行の確保に資する挨拶、案内その他のもてなしをいう。
2 この条例において「観光事業者」とは、次に掲げる者(観光関係団体を除く。)をいう。
(1) 宿泊業、観光施設事業、交通事業又は旅行業を行う者
(2) 前号に掲げるもののほか、主として観光旅行者を対象として飲食店業、物品販売業その他の事業を行う者
3 この条例において「観光関係団体」とは、前項各号に掲げる者を構成員に含む団体であって、観光の振興に関する取組を行うものをいう。
4 この条例において「県民等」とは、県民及び事業者(観光事業者及び観光関係団体(以下「観光事業者等」という。)を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 観光立県は、観光が本県経済を持続的に発展させ、及び活力ある地域社会を形成する上で重要であるとの認識の下に、その実現が図られなければならない。
2 観光立県は、県、市町村及び観光事業者等はもとより、全ての県民等が積極的な役割を果たすことにより、その実現が図られなければならない。
3 観光立県は、おもてなしの実践その他の観光の振興に関する取組においてそれぞれの旅行者の特性、その居住地域における風俗慣習及び生活様式等を理解し、郷土を誇り愛する心を持って、旅行者に対する感謝の念及び思いやりの気持ちを表すことを基本として、その実現が図られなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。
(県と市町村との協力)
第5条 県及び市町村は、県が実施する観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策及び市町村が実施する観光の振興に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。
(観光事業者等の役割)
第6条 観光事業者等は、基本理念にのっとり、おもてなしの向上、国内外における競争力の強化等による観光の振興に主体的に取り組むよう努めるものとする。
2 観光関係団体は、基本理念にのっとり、構成員が行う観光の振興に関する取組を支援するよう努めるものとする。
3 観光関係団体は、基本理念にのっとり、構成員相互間の連携を促進するとともに、自らも、多様な主体と積極的に連携を図るよう努めるものとする。
4 観光事業者等は、県が実施する観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策及び市町村が実施する観光の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(県民等の役割)
第7条 県民等は、基本理念にのっとり、観光の意義についての理解を深め、おもてなしを実践するよう努めるものとする。
2 県民等は、基本理念にのっとり、本県の自然、歴史、文化、食、温泉等の魅力(以下「本県の魅力」という。)に対する理解を深めるとともに、それを積極的に発信するよう努めるものとする。
3 県民等は、県が実施する観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策及び市町村が実施する観光の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第8条 県は、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(基本計画)
第9条 知事は、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立県の実現に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 観光立県の実現に関する基本的方向
(2) 観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策に関する事項
(3) 前2号に掲げるもののほか、観光立県の実現に関し必要な事項
3 知事は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、市町村、観光事業者等、県民等及び観光の振興に関して学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。
4 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
(おもてなしの推進)
第10条 県は、県民等によるおもてなしの実践を推進するため、観光におけるおもてなしの重要性の理解の増進等に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、観光事業者等によるおもてなしの向上を推進するため、おもてなしに関する研修の機会の充実等に必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、県民等によるおもてなしの実践及び観光事業者等によるおもてなしの向上に当たっては、県民等及び観光事業者等がその居住し、又は所在する地域のみならず県内の他の地域の魅力を認識し、又は再確認し、その理解を深めることが重要であることを踏まえ、本県の魅力に関する学習の機会の充実等に必要な施策を講ずるものとする。
(魅力の創出)
第11条 県は、観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成を図るため、観光資源の保護、育成及び開発に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、新たな観光旅行の分野の開拓を図るため、多様な観光旅行の形態の普及等に必要な施策を講ずるものとする。
(観光宣伝活動の実施等)
第12条 県は、観光旅行者の来訪の促進を図るため、本県の魅力を生かした観光宣伝活動の重点的かつ効果的な実施、県内における交通、宿泊その他の観光旅行に関する情報の提供等に必要な施策を講ずるものとする。
(観光旅行の促進のための環境の整備)
第13条 県は、観光旅行者の利便の増進を図るため、高齢者、障害者、外国人その他特に配慮を要する観光旅行者が円滑に利用できる宿泊施設その他の旅行に関連する施設及び公共施設の整備、これらの利便性の向上等に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、観光旅行者の移動の円滑化を図るため、公共交通機関の利便性の向上、観光の基盤となる交通施設の整備等に必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、観光旅行の安全の確保を図るため、県内における事故、災害等の発生の状況に関する情報の提供、観光旅行における事故の発生の防止等に必要な施策を講ずるものとする。
(外国人観光旅行者の来訪の促進)
第14条 前2条に定めるもののほか、県は、外国人観光旅行者の来訪の促進を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
(人材の育成)
第15条 県は、観光の振興を担う人材の育成を図るため、観光の振興に関する取組に携わる者及び観光の振興に意欲を有する者の観光に関する知識及び能力の向上等に必要な施策を講ずるものとする。
(多様な主体の連携の促進)
第16条 県は、観光立県の実現に向けた多様な主体の連携の促進を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
(調査の実施等)
第17条 県は、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策の策定及び実施に資するため、観光に関する調査の実施、統計の整備等に必要な施策を講ずるものとする。
(国等との連携)
第18条 県は、観光立県の実現に向けたおもてなしの推進等の施策の実施に関し、国、他の都道府県、教育機関等との連携に努めるものとする。
附則
1 この条例は、平成29年4月1日から施行する。