○栃木県がん対策推進条例

平成30年3月26日

栃木県条例第4号

栃木県がん対策推進条例をここに公布する。

栃木県がん対策推進条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第11条)

第2章 がん対策の推進に関する基本的施策(第12条―第20条)

第3章 栃木県がん対策推進協議会(第21条)

附則

誰もが生涯にわたって健やかに、そして、たとえがんに患しても安心して暮らすことのできる地域社会の実現は、全ての県民の願いである。

一方で、高齢化の進展等に伴い、がん患者が増加しており、がんは、生涯において日本人の2人に1人が罹患するといわれるなど、高齢者のみならず、子ども、働き盛りの者等を含め、県民誰もが罹患する可能性のある身近な疾病となっている。

近年の医療提供体制の整備、医療技術の進歩等により、がんに罹患した後の生存率は向上しているものの、それに伴い、がん患者の療養生活等の質の維持向上、社会生活との継続的かつ円滑な両立等を図ることが課題となっている。

こうした中、がん患者及びその家族をはじめとする全ての県民が安心して暮らすことのできる地域社会の実現を図るためには、がんの予防及び早期発見の推進、がんに係る医療の充実等の取組に加え、県民ががんに関する正しい知識並びにがん患者及びその家族に関する理解を深め、関係者の相互の密接な連携の下、全てのがん患者及びその家族を地域社会全体で支え合うための取組を進めていくことが求められている。

ここに、私たちは、県民1人1人ががんを知り、がんと共生する地域社会を構築することを目指し、県を挙げてがん対策の推進に取り組むことを決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、がん対策の推進に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、がん対策の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、がん対策の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民の健康の保持及び増進を図るとともに、がん患者(がん患者であった者を含む。以下同じ。)及びその家族(以下「がん患者等」という。)が安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 がん対策は、次に掲げる事項を基本理念として推進されなければならない。

(1) がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく良質かつ適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を切れ目なく受けることができるようにすること。

(2) がん患者の置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重してがんの治療方法等が選択されるよう、がん医療を提供する体制の整備がなされること。

(3) がんの特性、がん患者等の置かれている状況等に応じ、がん患者等が福祉的支援、教育的支援その他の必要な支援を受けることができるようにすること。

(4) がん患者等に関する県民の理解が深められ、がん患者等が円滑な社会生活を営むことのできる社会環境の整備が図られること。

(5) 県、市町村、医療機関、医療保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第7条第2項に規定する保険者及び同法第48条に規定する後期高齢者医療広域連合をいう。以下同じ。)、事業者、学校、患者団体(がん患者等の団体その他のがん患者等の支援に関する活動を行う民間の団体をいう。以下同じ。)等の相互の密接な連携の下に実施されること。

(6) がんの予防、罹患、診療、転帰等に関する個人情報(個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。)の保護について適正な配慮がなされるようにすること。

(県の責務)

第3条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、がん対策の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、がん対策の推進に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、保健、福祉、雇用、教育等の関連施策との有機的な連携を図るものとする。

(県と市町村との協力)

第4条 県及び市町村は、それぞれが実施するがん対策の推進に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。

(県民の責務)

第5条 県民は、基本理念にのっとり、がんに関する正しい知識(喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響、がんの原因となるおそれのある感染症等に関する正しい知識をいう。以下同じ。)を持ち、がんの予防に必要な注意を払い、必要に応じ、がん検診を受けるよう努めるほか、がん患者等に関する理解を深めるよう努めるものとする。

(医療機関の責務)

第6条 医療機関は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施するがん対策の推進に関する施策に協力し、がんの予防及び早期発見に寄与するよう努めるとともに、がん患者等の置かれている状況に応じ、他の医療機関との連携を図りつつ、良質かつ適切ながん医療の提供等を行うよう努めるものとする。

2 栃木県立がんセンターは、前項に規定するがん医療の提供等に関する医療機関の間における連携体制の強化、がん登録(がん登録等の推進に関する法律(平成25年法律第111号)第2条第2項に規定するがん登録をいう。以下同じ。)及びこれにより得られた情報に基づくがんに係る調査研究(がんの罹患、診療、転帰等の状況の把握及び分析その他のがんに係る調査研究をいう。以下同じ。)の推進等について中核的な役割を果たすよう努めるものとする。

(医療保険者の責務)

第7条 医療保険者は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施するがんの予防及び早期発見に関する普及啓発等の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第8条 事業者は、基本理念にのっとり、がんに関する正しい知識を持ち、がん患者等に関する理解を深めるよう努めるとともに、県及び市町村が実施するがん対策の推進に関する施策に協力し、がん患者等が働きやすい職場環境の整備に努めるものとする。

(保健、福祉、雇用、教育等に関する業務を行う関係機関等の責務)

第9条 保健、福祉、雇用、教育等に関する業務を行う関係機関及び民間の団体は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施するがん対策の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(がん対策推進計画の策定)

第10条 知事は、がん対策基本法(平成18年法律第98号)第12条第1項に規定するがん対策の推進に関する計画(以下「がん対策推進計画」という。)の策定に当たっては、この条例の趣旨を踏まえるとともに、あらかじめ、栃木県がん対策推進協議会の意見を聴かなければならない。

2 知事は、がん対策推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

3 前2項の規定は、がん対策推進計画の変更について準用する。

(財政上の措置)

第11条 県は、がん対策の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第2章 がん対策の推進に関する基本的施策

(がんの予防の推進)

第12条 県は、がんの予防の推進を図るため、市町村、医療機関、医療保険者、事業者等と連携し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。

(1) 喫煙、食生活、運動その他の生活習慣の改善を促進すること。

(2) 受動喫煙(人が他人の喫煙によりたばこから発生した煙(蒸気を含む。)にさらされることをいう。)の防止を促進すること。

(3) 肝炎その他のがんの原因となるおそれのある感染症の早期発見及び早期治療の推進を図ること。

(平31条例7・一部改正)

(がんの早期発見の推進)

第13条 県は、がんの早期発見の推進を図るため、市町村、医療機関、医療保険者、医療関係団体(医師その他の医療従事者が組織する団体をいう。以下同じ。)等と連携し、市町村及び職域において実施されるがん検診の受診率及び質の向上を促進することその他必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療の充実)

第14条 県は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくそのがんの状態に応じた良質かつ適切ながん医療を切れ目なく受けることができるよう、拠点病院(専門的ながん医療の提供等の拠点となる病院として厚生労働大臣が指定するもの及びこれと同等の機能を有する病院として知事が指定するものをいう。以下同じ。)、医療関係団体等と連携し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。

(1) 拠点病院における標準的な手術、放射線療法、化学療法等の提供体制の充実を促進すること。

(2) 拠点病院における科学的知見に基づく先端的ながん医療の提供体制の整備を促進すること。

(3) 地域の実情に応じた拠点病院と他の医療機関等との連携体制の強化を促進すること。

(4) がん医療に係る医療従事者の育成を図ること。

(緩和ケアの充実)

第15条 県は、がん患者等の置かれている状況に応じ、緩和ケア(がん等の患者及びその家族に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することにより当該がん等の患者の療養生活(これに係るその家族の生活を含む。)の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為をいう。以下同じ。)が、がんと診断された時から適切に提供されるよう、拠点病院、医療関係団体、市町村等と連携し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。

(1) がんと診断された時からの緩和ケアの提供に関する普及啓発を図ること。

(2) がん患者の心身の状態、療養する地域等に応じた緩和ケアの提供体制の充実を促進すること。

(3) 緩和ケアに携わる医療従事者等の育成を図ること。

(がん患者等に対する相談支援及び情報提供の充実)

第16条 県は、がん患者等からのがんに関する各種の相談に応じ、その必要とする正確な情報の提供及び助言が適切に行われるよう、拠点病院、患者団体等と連携し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。

(1) 拠点病院におけるがん患者等に対する相談支援及び科学的知見に基づく情報の提供を行う体制の充実を促進すること。

(2) 患者団体が行うがん患者等の支援、情報交換等の活動を支援すること。

(3) がん患者等に対する相談支援及び情報提供に携わる医療従事者等の育成を図ること。

(がん患者等における仕事と治療等との両立の促進)

第17条 県は、がん患者等の置かれている状況に応じ、その仕事と治療等との両立を促進するため、拠点病院、事業者、経済団体等と連携し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。

(1) がん患者等の就労に関する事業者の理解を促進すること。

(2) 事業者によるがん患者等が働きやすい職場環境の整備を促進すること。

(3) 拠点病院等におけるがん患者等の就労に関する支援体制の充実を促進すること。

(がん患者の年齢その他の特性に応じたがん医療及び支援の充実)

第18条 県は、がん患者の年齢その他の特性に応じたがん医療及び支援の充実を図るため、拠点病院、医療関係団体、患者団体等と連携し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。

(1) 小児がんその他の若年において発症するがん(以下「小児がん等」という。)の特性、高齢のがん患者の心身の状態等に応じたがん医療の充実を促進すること。

(2) 小児がん等の患者(患者であった者を含む。以下同じ。)又は高齢のがん患者の意向を尊重した治療方法の選択等に係る相談支援及び情報提供の充実を促進すること。

(3) 療養中の小児がん等の患者に関する教育環境の整備充実を図ること。

(がんに関する教育の推進)

第19条 県は、県民ががんに関する正しい知識及びがん患者等に関する理解を深めることができるよう、市町村、拠点病院、医療関係団体、患者団体等と連携し、学校教育及び社会教育におけるがんに関する教育の推進を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(がん登録等の推進)

第20条 県は、がんに係る調査研究を促進し、がん検診及びがん医療の質の向上、県民に対するがんについての情報提供の充実等の施策を科学的知見に基づき実施するため、医療機関、医療関係団体、患者団体等と連携し、がん登録及びこれにより得られた情報の活用等の推進を図るために必要な施策を講ずるものとする。

第3章 栃木県がん対策推進協議会

第21条 この条例の規定によりその権限に属させられた事務及びがん登録等の推進に関する法律の規定に基づき同法第18条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の権限に属させられた事務を処理し、並びに知事の諮問に応じ、がん対策の推進に関する事項を調査審議するため、栃木県がん対策推進協議会(以下「協議会」という。)を置く。

2 協議会は、前項に規定するもののほか、がん対策の推進に関し必要と認められる事項について、知事に意見を述べることができる。

3 協議会は、委員20人以内で組織する。

4 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。

(1) がん患者等を代表する者

(2) 拠点病院を代表する者

(3) 医療関係団体を代表する者

(4) 医療保険者を代表する者

(5) 事業者を代表する者

(6) 保健、福祉、雇用、教育等に関する業務を行う関係機関及び民間の団体を代表する者

(7) 個人情報の保護に関する学識経験のある者

(8) 前各号に掲げる者のほか、知事が適当と認める者

5 委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 委員は、再任されることができる。

7 前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

1 この条例は、平成30年4月1日から施行する。

2 栃木県がん登録等審議会条例(平成27年栃木県条例第49号)は、廃止する。

(平成31年条例第7号)

この条例は、公布の日から施行する。

栃木県がん対策推進条例

平成30年3月26日 条例第4号

(平成31年3月13日施行)