○栃木県水源地域保全条例

令和4年3月23日

栃木県条例第3号

栃木県水源地域保全条例をここに公布する。

栃木県水源地域保全条例

関東平野を潤す栃木県の豊かな水は、森林から生まれ、河川水や地下水となり、多様な自然環境を形成し、また、様々な産業の発展の基礎となり、多彩な文化を生み、私たちの生活に豊かさや潤いをもたらしてきた。

森林は、木材や林産物を生産する経済活動の場となっているほか、水源のかん養、県土の保全、地球温暖化の防止といった公益的機能の発揮を通じて、私たちの暮らしに様々な恩恵をもたらしている。

森林の有する水資源の貯留、洪水の緩和、水質の浄化といった水源の涵養の機能は、栃木県の大地を潤す農業用水やきれいな飲料水を育み、また、全国でも屈指のものづくり県としての製造業を支えてきた。

このような、水のふるさとといえる栃木県の森林は、地域のつながりの中で守られ、たゆみない努力を重ねて創り上げられてきたものである。

しかしながら、近年、我が国においては、利用目的が明らかでない森林の買収が相次ぎ、荒廃森林の増加や水資源の枯渇が懸念されている。

ここに、私たちは、県民共有の財産である水源地域の森林を健全な姿で次の世代に引き継いでいくため、水源地域の森林の重要性を共有し、適切に保全していくことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、水源地域の保全に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、水源地域の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、水源地域の保全に関する施策を総合的に推進し、もって森林の有する水源の涵養の機能の維持及び増進に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「水源地域」とは、第11条第1項の規定により指定された地域をいう。

2 この条例において「土地所有者等」とは、土地について所有権又は使用及び収益を目的とする権利であって規則で定めるもの(以下「所有権等」という。)を有する者をいう。

(基本理念)

第3条 水源地域の保全は、森林の有する公益的機能の重要性に鑑み、社会全体で森林の保全が図られるよう推進されなければならない。

2 水源地域の保全は、県民をはじめ流域で生活する全ての人が水を通じて森林の恩恵を享受していることに鑑み、森林の有する水源の涵養の機能の維持及び増進が図られるよう推進されなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、森林の現状の把握に努めるとともに、水源地域の保全に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、水源地域の保全に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、県民、事業者及び水源地域内の森林の土地所有者等と連携するよう努めるものとする。

(県民の責務)

第5条 県民は、基本理念にのっとり、水源地域の保全に関する理解を深めるとともに、県及び市町村が実施する水源地域の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、水源地域の保全について十分配慮するとともに、県及び市町村が実施する水源地域の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(水源地域内の森林の土地所有者等の責務)

第7条 水源地域内の森林の土地所有者等は、基本理念にのっとり、水源地域内の森林が水源の涵養の機能をはじめとする公益的機能を有することを認識するとともに、県及び市町村が実施する水源地域の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市町村との連携等)

第8条 県は、市町村と連携して水源地域の保全に関する施策を効果的に実施するとともに、市町村が実施する地域の実情に応じた水源地域の保全に関する施策について、技術的な助言、情報の提供その他の必要な協力を行うものとする。

(国との連携等)

第9条 県は、水源地域の保全に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、国と連携するよう努めるとともに、水源地域の保全を図るため必要があると認めるときは、国に対し、必要な措置をとることを求めることができる。

(啓発活動)

第10条 県は、県民、事業者及び水源地域内の森林の土地所有者等が水源地域の保全の重要性について理解を深めることができるよう、必要な啓発活動を行うものとする。

(水源地域の指定)

第11条 知事は、水源の涵養の機能の維持及び増進を図るため適正に利用し、又は保全する必要があると認められる森林の存する区域を、水源地域として指定することができる。

2 知事は、水源地域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村の長の意見を聴かなければならない。

3 知事は、水源地域を指定しようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、その旨を公告し、その案を当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければならない。

4 前項の規定による公告があったときは、当該区域内の森林の土地所有者等及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、規則で定めるところにより、縦覧に供された案について、知事に意見書を提出することができる。

5 知事は、水源地域を指定する場合には、その旨及びその区域を告示するとともに、関係市町村の長に通知しなければならない。

6 水源地域の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。

7 第2項から前項までの規定は、水源地域の指定の解除及びその区域の変更について準用する。

(相談及び情報提供等)

第12条 知事は、水源地域内の森林の適正な利用及び保全について水源地域内の森林の土地所有者等からの相談に応ずるとともに、水源地域の保全を図るため必要な情報の提供、指導及び助言を行うものとする。

(所有権等の移転等の事前届出)

第13条 水源地域内の森林のうち森林法(昭和26年法律第249号)第5条第1項の規定によりたてられた地域森林計画の対象となっている同項に規定する民有林の土地所有者等(以下「水源地域内土地所有者等」という。)は、当該民有林の土地の所有権等を移転又は設定する契約(規則で定めるものに限る。以下「土地売買等契約」という。)を締結しようとするときは、当該土地売買等契約を締結しようとする日の30日前までに、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。

(1) 土地売買等契約の当事者の氏名及び住所(法人にあっては、名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)

(2) 土地売買等契約を締結しようとする年月日

(3) 土地売買等契約に係る土地の所在及び面積

(4) 土地売買等契約に係る土地の所有権等の種別及び内容

(5) 土地売買等契約に係る土地の所有権等の移転又は設定後における土地の利用目的

(6) 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項

2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。

(1) 当事者の一方又は双方が国、地方公共団体その他規則で定める法人であるとき。

(2) 土地の利用目的が、水源地域の保全に支障を及ぼすおそれがなく、かつ、公益性を有するものであって規則で定めるものであるとき。

(3) 非常災害に際し必要な応急措置を講ずるために行われるとき。

3 水源地域内土地所有者等は、第1項の規定による届出をした後、土地売買等契約を締結する日までの間において、同項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、速やかに、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

(市町村長への通知等)

第14条 知事は、前条第1項又は第3項の規定による届出があったときは、速やかに、その内容を関係市町村の長に通知するものとする。

2 知事は、必要があると認めるときは、前条第1項又は第3項の規定による届出に係る土地の利用に関し、関係市町村の長に意見を求めることができる。

(立入調査等)

第15条 知事は、この条例の施行に必要な限度において、水源地域内土地所有者等に対し報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に水源地域内の土地に立ち入り、当該土地の利用が水源地域の保全に及ぼす影響を調査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者にこれを提示しなければならない。

3 第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(助言)

第16条 知事は、第13条第1項又は第3項の規定による届出があったときは、当該届出をした水源地域内土地所有者等に対し、水源地域の保全を図るため必要な事項について助言を行うことができる。

2 第13条第1項又は第3項の規定による届出をした水源地域内土地所有者等は、前項の助言を受けたときは、当該届出に係る土地売買等契約により所有権等の移転又は設定を受けようとする者に対し、当該助言の内容を伝達するものとする。

3 知事は、必要があると認めるときは、第13条第1項又は第3項の規定による届出に係る土地売買等契約により所有権等の移転又は設定を受けようとする者に対し、直接に、第1項の事項について助言を行うことができる。

(勧告)

第17条 知事は、水源地域の保全を図るため必要があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する者に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

(1) 第13条第1項又は第3項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者

(2) 第15条第1項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

(3) 第15条第1項の規定による調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

(公表)

第18条 知事は、前条の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、当該勧告の内容その他規則で定める事項を公表することができる。

2 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告を受けた者に対し、公表の理由を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。

(市町村の条例との関係)

第19条 市町村が定める水源地域の保全に関する条例の規定の内容が、この条例の趣旨に即したものとして知事が認めるときは、当該市町村の区域を指定し、この条例の規定の全部又は一部を適用しない。

(過料)

第20条 次の各号のいずれかに該当する者は、5万円以下の過料に処する。

(1) 第13条第1項又は第3項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者

(2) 第15条第1項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

(3) 第15条第1項の規定による調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

(規則への委任)

第21条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

1 この条例は、令和4年4月1日から施行する。ただし、第13条から第20条までの規定は、令和5年4月1日から施行する。

2 第13条の規定は、令和5年5月1日以後に土地売買等契約を締結しようとする水源地域内土地所有者等について適用する。

栃木県水源地域保全条例

令和4年3月23日 条例第3号

(令和5年4月1日施行)