○栃木県ケアラー支援条例

令和5年3月17日

栃木県条例第21号

栃木県ケアラー支援条例をここに公布する。

栃木県ケアラー支援条例

(目的)

第1条 この条例は、ケアラーへの支援(以下「ケアラー支援」という。)に関し、基本理念を定め、並びに県の責務並びに県民、事業者、関係機関及び支援団体の役割を明らかにするとともに、ケアラー支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが個人として尊重され、社会から孤立することなく、安心して生活することができる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) ケアラー 高齢、障害、疾病等の理由により援助を必要とする家族、身近な人その他の者に対し、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を提供する者をいう。

(2) ヤングケアラー ケアラーのうち18歳未満の者をいう。

(3) 関係機関 介護、障害者及び障害児の支援、医療、教育、児童の福祉等に関する業務を通じて日常的にケアラーに関わり、又は関わる可能性がある機関をいう。

(4) 支援団体 地域で活動する団体その他の団体であってケアラー支援を行うものをいう。

(5) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(幼稚園を除く。)、同法第124条に規定する専修学校及び同法第134条第1項に規定する各種学校をいう。

(基本理念)

第3条 ケアラー支援は、全てのケアラーが個人として尊重され、社会から孤立することなく安心して生活することができるよう行われなければならない。

2 ケアラー支援は、ケアラーの意思を尊重するとともに、ケアラーの年齢、置かれている状況等に応じて適切に行われなければならない。

3 ケアラー支援は、県、市町村、県民、事業者、関係機関、支援団体等の多様な主体が相互に連携を図りながら、ケアラーを社会全体で支えるよう行われなければならない。

4 ケアラー支援は、ケアラーによる介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を受けている者に対する支援と一体的に行われなければならない。

5 ヤングケアラーへの支援は、子どもの時期が各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培う時期であることに鑑み、子どもの権利及び利益が最大限に尊重されるよう行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ケアラー支援に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、ケアラー支援に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、市町村、県民、事業者、関係機関、支援団体等と相互に連携を図るものとする。

3 県は、ケアラー支援に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、福祉、教育、医療、雇用その他の関連分野における施策との有機的な連携が図られるよう必要な配慮をするものとする。

(市町村との連携)

第5条 県は、ケアラー支援を推進する上で市町村が果たす役割の重要性に鑑み、市町村と連携及び協力を図り、ケアラー支援に関する施策を確実かつ効果的に実施するよう努めるとともに、市町村において、当該地域の実情に応じたケアラー支援に関する施策が円滑に実施されるよう、ケアラーの状況の把握、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(県民の役割)

第6条 県民は、基本理念にのっとり、ケアラーの置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、ケアラーが社会から孤立することのないよう十分配慮するとともに、ケアラー支援に関する県及び市町村の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、基本理念にのっとり、ケアラーの置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、ケアラー支援に関する県及び市町村の施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、当該事業所において雇用する従業員がケアラーである可能性があることを認識するとともに、当該従業員がケアラーであると認められるときは、当該従業員の意向を踏まえつつ、勤務するに当たっての配慮、ケアラー支援に関する情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

(関係機関の役割)

第8条 関係機関は、基本理念にのっとり、ケアラーの置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、ケアラー支援に関する県及び市町村の施策に協力するよう努めるものとする。

2 関係機関は、その業務を通じて日常的にケアラーに関わる可能性があることを認識し、関わりのある者がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を踏まえつつ、その業務において当該ケアラーの健康状態、生活環境等について確認し、支援の必要性を把握するよう努めるものとする。

3 関係機関は、支援を必要とするケアラーに対し、情報の提供、他の関係機関への取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

(支援団体の役割)

第9条 支援団体は、基本理念にのっとり、適切かつ効果的にケアラー支援を行うとともに、ケアラー支援に関する県及び市町村の施策に協力するよう努めるものとする。

(基本計画)

第10条 知事は、ケアラー支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、ケアラー支援の推進に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めるものとする。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) ケアラー支援に関する基本的方向

(2) ケアラー支援に関する施策に関する事項

(3) 前2号に掲げるもののほか、ケアラー支援に関し必要な事項

3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、県民の意見を反映することができるよう適切な措置を講じなければならない。

4 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(普及啓発)

第11条 県は、ケアラーの置かれている状況、ケアラー支援の重要性等について県民、事業者、関係機関、支援団体等が理解と関心を深め、地域社会全体でケアラーを支える気運が醸成されるよう、ケアラー支援の必要性についての普及啓発その他の必要な措置を講ずるものとする。

(人材の育成及び確保)

第12条 県は、ケアラー支援の充実を図るため、相談、助言、日常生活の支援等のケアラー支援を担う人材を育成し、及び確保するための研修の実施その他の必要な措置を講ずるものとする。

(教育に関する業務を行う関係機関への助言等)

第13条 県は、市町村と連携及び協力を図り、学校その他の教育に関する業務を行う関係機関(以下「学校等」という。)が、ヤングケアラー及び学校に在学するケアラー(以下「ヤングケアラー等」という。)の意向を踏まえつつ、ヤングケアラー等に対する教育の機会の確保の状況について確認し、支援の必要性を把握できるよう、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、市町村と連携及び協力を図り、学校等が、支援を必要とするヤングケアラー等からの教育及び福祉に関する相談に応じるとともに、ヤングケアラー等に対する適切な支援機関への取次ぎその他の必要な支援が行えるよう、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(ケアラーの早期発見等)

第14条 県は、学校、職場、地域その他の様々な場において、支援を必要とするケアラーが早期に発見されるよう、市町村、関係機関及び支援団体の間のケアラー支援に関する情報の共有を促進するとともに、市町村、関係機関及び支援団体との緊密な連携の下、ケアラーが相談しやすい環境の整備に努めるものとする。

2 県は、ヤングケアラーへの支援に関し、ヤングケアラーが意見を表明する権利を行使することができ、かつ、その意見が適切に当該ヤングケアラーへの支援に反映される環境の整備に努めるものとする。

(事業者等が行う活動への支援)

第15条 県は、事業者、関係機関及び支援団体が行うケアラー支援に関する活動を支援するため、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(推進体制の整備)

第16条 県は、ケアラー支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、必要な体制の整備に努めるものとする。

(財政上の措置)

第17条 県は、ケアラー支援に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、令和5年4月1日から施行する。

栃木県ケアラー支援条例

令和5年3月17日 条例第21号

(令和5年4月1日施行)