○栃木県カスタマーハラスメント防止条例
令和8年3月25日
栃木県条例第5号
栃木県カスタマーハラスメント防止条例をここに公布する。
栃木県カスタマーハラスメント防止条例
今日、顧客等による不当な要求等の行き過ぎた言動、いわゆるカスタマーハラスメントは、就業者の人格や尊厳を害し心身に重大な影響を及ぼすとともに、事業者にとっては人手不足が深刻化する中で離職者の増加を引き起こし事業の継続を困難にするなど、社会的な問題となっている。
また、カスタマーハラスメントは、事業者及び就業者と顧客、取引の相手方、施設の利用者等多様な者との間で発生し得るものであり、誰もが当事者となる可能性がある。
カスタマーハラスメントのこうした現状と性質を踏まえ、誰もが安心して働き続けることのできる就業環境、事業者と顧客等との良好な関係に基づく事業の安定的な継続及び県民の快適で豊かな生活を実現するためには、当事者となり得る者全てがカスタマーハラスメントに対する関心を深め、これを正しく理解するとともに、カスタマーハラスメントの防止に向けた取組を一体となって進める必要がある。
ここに、私たちは、性別、年齢、国籍、業務の内容、業務上の地位等を問わず、全ての人に対するカスタマーハラスメントが許されないことを宣言するとともに、カスタマーハラスメントのない社会の実現に向けた取組を県を挙げて推進することを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、カスタマーハラスメントの防止に関し、基本理念を定め、並びに県、顧客等、就業者及び事業者の責務を明らかにするとともに、カスタマーハラスメントの防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、就業者の安全及び健康の確保並びに事業者の安定的な事業の継続を図り、もって持続可能な地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 事業者 事業(営利を目的としないものを含む。以下同じ。)を行う法人その他の団体(国及び地方公共団体を含む。)又は個人をいう。
(2) 就業者 事業者の行う事業に係る業務に従事する者をいう。
(3) 顧客等 顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の事業者の行う事業に関係を有する者(前2号に掲げるものを除く。)をいう。
(4) カスタマーハラスメント 顧客等の言動であって、就業者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであり、かつ、当該就業者の就業環境を害するものをいう。
(基本理念)
第3条 カスタマーハラスメントは、就業者の人格又は尊厳を害する等就業環境を害する行為であるとともに、事業者の事業の継続及び人材の確保に悪影響を及ぼす行為であり、許されないものであるとの認識の下に、社会全体でその防止が図られなければならない。
2 カスタマーハラスメントの防止は、顧客等と就業者とが対等の立場において相互に尊重することが重要であるとの認識の下に行われなければならない。
3 カスタマーハラスメントの防止は、顧客等の正当な権利が侵害されることのないよう配慮して行われなければならない。
(カスタマーハラスメントの禁止)
第4条 何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない。
(県の責務)
第5条 県は、第3条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、国、市町村及び関係団体との連携を図るものとする。
(顧客等の責務)
第6条 顧客等は、基本理念にのっとり、カスタマーハラスメントに起因する問題に対する関心と理解を深めるよう努めなければならない。
2 顧客等は、自らの就業者に対する言動が、当該就業者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うよう努めなければならない。
3 顧客等は、県が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(就業者の責務)
第7条 就業者は、基本理念にのっとり、カスタマーハラスメントに起因する問題に対する関心と理解を深めるとともに、顧客等に対し適切な対応をするよう努めなければならない。
2 就業者は、その業務に関して事業者が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する措置に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第8条 事業者は、基本理念にのっとり、カスタマーハラスメントに起因する問題に対する関心と理解を深めるとともに、県が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する施策に協力するよう努めなければならない。
2 事業者は、カスタマーハラスメントにより就業者の就業環境が害されることのないよう、当該就業者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3 事業者は、就業者に対してカスタマーハラスメントが行われたと認める場合には、速やかに当該就業者の安全を確保するとともに、当該カスタマーハラスメントを行った顧客等に対し、その中止の申入れその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 事業者は、その事業に関して就業者が顧客等としてカスタマーハラスメントを行うことのないよう、カスタマーハラスメントに起因する問題に対する就業者の関心と理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
5 事業者は、他の事業者からカスタマーハラスメントの防止に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるよう努めなければならない。
(基本指針)
第9条 知事は、カスタマーハラスメントの防止のために必要な取組等に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。
2 知事は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
3 前項の規定は、基本指針の変更について準用する。
(県の施策)
第10条 県は、カスタマーハラスメントの防止に関し、次に掲げる施策その他必要な施策を講ずるものとする。
(1) カスタマーハラスメントの防止に関する情報の収集及び提供
(2) カスタマーハラスメントを防止するための啓発及び教育
(3) カスタマーハラスメントの防止に関する相談への対応及び助言
(財政上の措置)
第11条 県は、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
1 この条例は、令和8年4月1日から施行する。
2 知事は、この条例の施行の状況、カスタマーハラスメントの防止に関する法令等の整備の状況、県内におけるカスタマーハラスメントによる被害の実態等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。