フォトとちぎ2013冬号
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鈴木そば製粉所検索地域でいただいた栄誉賞 農林水産祭(農林水産省など主催)が昨年11月に開かれ、益子町の鈴木幸一さん・茂子さん夫妻が内閣総理大臣賞を受賞しました。鈴木さん夫妻は現在、そば栽培を中心に大麦、水稲など、大規模で収穫性の高い農業経営を実践しています。地域では「新そばまつり」実行委員長として活性化にも貢献。「とちぎ元気大賞」など数々の表彰を受けている鈴木さんですが、今回の受賞は「家族や地域の応援があってのもの。これは地域でいただいた賞と思っています」と言っていました。養豚から耕種部門への転換 鈴木幸一さんは、県立真岡農業高等学校(現在の真岡北稜高校)を卒業後、養豚を始めました。生産も順調に伸び、母豚107頭の一貫経営をしていました。 仕事が軌道に乗り始めた頃、腰を痛めてしまい、養豚の作業を続けることができなくなりました。39歳、まさに働き盛りの時。悩んだ末、畜産をやめて耕種部門での拡大を目指そうと決意しました。「そば栽培のきっかけは、東京でそば店を経営する姉夫婦でした。それまでは父が、わが娘のためにと、栃木産の地粉を届けていましが、その仕事を引き継いだ形ですね。風味豊かな栃木産地粉は、東京でも評判で、そば屋さん仲間に口コミでどんどん広がって、次第に売れるようになりました。それにあわせて少しずつ、そば畑の作付面積を拡大してきました」 “自分で作ったものを自分の値で売る”が、鈴木さんが目指す農業。そば生産はその第一歩。栽培から収穫、製粉、販売までの一貫作業による経営を始めました。「種蒔きから製粉まで、全ての作業に自ら携わっているので製品には自信があります。そば粉を持って東京のそば店を一軒一軒、営業に歩きまわりました」 今でも、月に3日は朝2時に起きて、東京のそば店に直接配達しています。直配するのは、評価が直に聞けるからです。 「そば屋さんも商売ですから、品物が気に入らなければ、はっきり言います。“こんなのだめだ”とか“前の粉はよかった”とか。店主に直に聞くのが一番なんです」早刈りと石臼挽きで高風味 注文が飛躍的に増えたのは10年前、製粉に“石臼挽き”を導入してからでした。「効率は“ロール挽き”よりもかなり落ちますが、風味は格段に上です。高級指向、グルメブームも追い風で、地粉による手打ちそばが旨いと、大人気でした」 もうひとつのこだわりは収穫のタイミング。まだ緑色が残るうちに刈り取ります。「もったいないと思いながらも、青いうちに刈り取って、そば愛好会の人たちに打ってもらい、試食しました。それが実に旨かったんです。そばは、お盆過ぎに種をまいて、霜が降りたら刈り取るといいますが、これは水稲でいうと“刈り遅れ”の状態。甘みも風味も抜けてしまいます。この間に台風でもくれば収穫は半減です。適期の見極めが重要ですね」商品として売れる農業を 06年には製粉・加工部門を法人化、10年には作付け面積を67㌶に拡大。コンバインを増やし、生産性を向上させました。「規模の拡大だけでは、農業の未来は切り開けません。良い物さえ作ってればればいいと言いますが、良い物でも情況によって、売れないこともあります。消費者のニーズを掴み、求められる商品を丹精込めて作ることが大切です。これからは、作るだけの農業ではなく、商品として売れる農業でなければなりません」

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