5章 ケーススタディ及び事例紹介

第1 ケーススタディ
 1.太陽光発電  (1)一般家庭
 戸建て住宅の建築時に、一般的な規模である3 kWの太陽電池を設置します。

対象とする新エネルギー等 太陽光発電
対象施設等の想定 一般戸建て住宅
導入システム 3kW 太陽電池(パネル面積約30m2
イニシャルコスト 266万円(うち補助金54万円)
投資回収の目安

 
約29年
※太陽光発電設備メーカーの価格設定によっては、10〜20年で投資コストを回収可能な例も見られる。
環境負荷削減効果
(エネルギー使用削減効果)
(二酸化炭素排出削減効果)

3,166 kWh/年
1,216 kg-CO2/年
経済効果(経費節減効果) 年間約73,000円(電気料金)
活用できる支援制度



 
<補助制度>
・住宅用太陽光発電導入基盤整備事業(新エネ財団)
<融資>
・環境共生住宅融資(住宅金融公庫)
・リフォームローン(住宅金融公庫)
導入に当たっての留意事項


 
・コスト面からは架台の設置費等を必要としない建材一体型が有利である。
・電力系統と連系する場合、系統連系用の保護装置を内蔵したインバータが必要になる。

1.導入システムの設定条件
 標準的な一戸建て新築時に導入するとし、システムの概要は以下のように設定します。
 ・太陽電池出力:3kW(太陽電池モジュール設置面積:約30m2
 ・建材一体型太陽電池モジュール
 ・連系形逆潮流(売電)ありシステム標準型

●太陽電池モジュールについて
 最小基本単位である太陽電池セル(10cm角、12.5cm角、15cm角)を数十枚、対候性パッケージに収納して、所定の電圧、出力を得られるようにしたものを太陽電池モジュールと呼んでいます。太陽電池モジュールには、据え置き型と建材一体型とがあります。
 据え置き型は、屋根に架台を設置し、その上に太陽電池モジュールを載せる方法で、新築住宅でも既存住宅でも設置が可能という利点があります。
 建材一体型は、強化ガラスや金属板などの建材と薄膜太陽光電池を接着し、一体化することにより屋根材としての使用が可能となります。屋根材の費用を削減できるとともに、外観を壊さないという利点があります。
 従来は、据え置き型が主流でしたが、近年建材一体型も普及してきました。

●逆潮流(売電)可能
 太陽光発電システムは、商用電力系統(電力会社の配電線)との接続の有無によって、独立形、系統連系形に分類されます。独立形は、発電した電力を直接、家庭内の電気機器などに供給するものであり、系統連系形は商用電力系統と連系するものです。
 系統連系形は、昼間の発電量に余剰がある場合には、電力会社の配電線を通じて、電力会社に売電できるようになっています。

 なお、電力系統と連系する場合には、商用電力系統の停電時や、太陽光発電システムの異常時に、システムと商用電力系統・負荷系統(家庭内での電灯・電力負荷)を切り離す系統連系用の保護装置をインバータに内蔵する必要があります。

※インバータ:直流の太陽電池の電気を交流に変換し、変換後電力の周波数等を制御するもの

2.効果の算定
(1)環境負荷削減効果

・年間発電量:3,166 [kWh/年]
・年間原油代替量:769L/年(ドラム缶3.8本分)
・温室効果ガス排出抑制効果:1,216 kg-C02/年

 この太陽光発電システムによる発電量を試算すると、年間3,166kWhとなり、家庭での平均電力消費量の約90%をまかなうことができることになります。
 この発電による温室効果ガス排出抑制効果は、年間1,216kg-CO2であり、また、この電力量をすべて石油火力発電でまかなうと仮定したときの原油の代替量は、年間769Lです。
 

算定方法
(年間発電量)=(出力)×(モジュール面日射量)×(総合設計係数)× 365(日/年)
(年間石油代替量)=(年間発電量)×(電力量・熱量換算係数)/(原油発熱量)
(温室効果ガス排出抑制効果)=(年間発電量)×(温室効果ガス排出原単位)
算定条件
項目 数値 備考
出力 3kW 家庭への導入において一般的な値
モジュール面日射量
 
4.13kWh/m2/day
 
宇都宮地方気象台における年間最適日射角の平均日射量
総合設計係数 0.7 NEDO「太陽光発電導入ガイドブック」より
電力量・熱量換算係数

 
2,250 kcal/kWh
(9,419 kJ/kWh)
 
1kWhの電力量を発電するのに要する原油の熱量(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より)
原油発熱量
 
9,250kcal/L
(38,720 kJ/L)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より
 
温室効果ガス排出原単位
 
0.384 kg-CO2/kWh
 
電力量1kWhを発電所で発電するときの温室ガス排出量(温暖化対策推進法より)

(2)経済性
 

・イニシャルコスト:266万円
・電気料金節約効果 :年間約7.3万円
・投資回収の目安 :29年

※ただし、太陽光発電設備メーカーの価格設定によっては10〜20年で投資コストを回収できる例も見られる。

@イニシャルコスト
 太陽光発電システムの価格は、新エネルギー財団の平成12年度住宅用太陽光発電導入基盤整備事業の価格データによると、1kW当たり88.8万円となっています。そこで、イニシャルコストを266万円と設定します。

■平成12年度住宅用太陽光発電導入基盤整備事業における太陽光発電システム価格
(平成12年8月1日〜平成12年9月5日)
 


 
システム価格
(単位:万円/kW)
平均設置価格 (1)〜(3) 88.8
 (1) 太陽電池価格 56.0
 (2) 付属機器等費用 20.9
 (3) 設置工事費用 11.9
最高設置価格 142.3
最低設置価格 60.3

価格分析データ件数1,526(単結晶:283件、多結晶;1,243件)
資料:新エネルギー財団資料

A経済効果
(電気料金節約効果)
 太陽光発電により発電した電気は、電力会社によって家庭向けの電気料金の単価と同額で買い取られます。売電単価は電気使用量によって段階的に異なる料金が適用されますが、ここでは23円として、設定します。
    3,166[kWh] × 23[円] = 72,818[円/年]
よって、年間約73,000円の電気料金が節約できる計算となります。

(投資回収の目安)
 イニシャルコストを年間の電気料金節約効果と比較し、何年間の節約総額で、イニシャルコスト相当額を充足できるかを算定します。設置に要するコストは@より266万円、年間の電気料金節約額が約73,000円であることから
     266[万円] ÷ 7.3[万円/年] = 36.4[年] (補助を活用しない場合)
補助金なしの時の投資回収の目安は約36年ということになります。
 なお、補助金(新エネルギー財団「住宅用太陽光発電導入基盤整備事業」)の使用を想定する場合、平成12年度下半期の実績を基にすると、補助金は1kW当たり18万円であることから、投資回収の目安となる年数は、
     {266[万円] − (18[万円/kW] × 3[kW] ) }÷ 7.3[万円/年] = 29.0[年](補助を活用した場合)
となり、補助を活用した場合は、29年となります。
 なお、建材一体型の太陽電池を新築時に屋根材として設置する場合、太陽電池を支える架台が不要となるとともに、瓦などの屋根材のかわりとなるため、これよりも少ない費用で、設置することが可能です。
 建材一体型のものにすることとは別に、メーカーによっては、より低い価格を設定しているところがあります。その結果、補助金を受けることを前提にするものの、短いところでは約10年で投資コストが回収できるケースも出てきています。
 また、太陽光発電は駆動部分が無く、メンテナンス費用も少なく済みます。

●支援制度について
  住宅への太陽光発電を導入する場合に利用可能な支援制度は以下のとおりです。

支援制度 対象者 内容 実施主体
住宅用太陽光発電導入基盤整備事業

 
個 人


 
補助:18万円/kW
(上限:72万円)
補助件数10,873件
(平成12年度下半期)
新エネルギー財団


 
環境共生住宅融資
(新築時)
個 人
 
300万円割増融資
 
住宅金融公庫
 
リフォームローン
(改築時)
個 人
 
工事費の8割を限度に100〜530万を融資 住宅金融公庫
 
 ※ 2002年度までの実施が予定されています。

3.課題
 住宅の新築・改築時に建材一体型の太陽電池モジュールを導入することで、設置における工事費や架台の費用の削減が可能になります。建物の新築・改築時における導入が費用の点からは有利です。
 太陽光発電システム価格の低減を促すため、新エネルギー財団は住宅用太陽光発電導入基盤整備事業の実施を2002年までとしています。メーカーによる一層の価格低減努力が期待されます。


 

 
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