5章 ケーススタディ及び事例紹介

第1 ケーススタディ
 1.太陽光発電  (2)業務系
 オフィスビルや事務所に20 kWの太陽電池を設置します。
対象とする新エネルギー等 太陽光発電
対象施設等の想定 オフィスビル・事務所
導入システム 20kW 太陽電池(パネル面積約200m2
イニシャルコスト 約2200万円(うちNEDO負担1100万円)
投資回収の目安

 
約32年
※「産業用太陽光発電フィールドテスト事業」(NEDOとの共同研究事業)の実施を前提
環境負荷削減効果
(エネルギー使用削減効果)
(二酸化炭素排出削減効果)

21,100 kWh/年
8,100 kg-CO2/年
経済効果(経費節減効果) 年間 34.2万円(電気料金)
活用できる支援制度





 
<補助制度>
・産業用太陽光発電フィールドテスト事業(NEDO
・新エネルギー事業者支援事業(NEDO
・地域新エネルギー等導入促進事業(NEDO
<税制>
・エネルギー需給構造改革投資促進税制(国税)
・ローカルエネルギー税制(地方税)
導入に当たっての留意事項

 
・システムのコストが高いことが導入の妨げになっている。メーカーによる価格低減が望まれる。
・太陽光発電は非常用電源としての活用も考えられる。

1.導入システムの設定条件
 ・太陽電池出力:20kW(太陽電池モジュール設置面積:約200m2
 ・商用電力と系統連系、逆潮流(売電)あり

 オフィスビル又は事務所に、20 kWの太陽光発電システムを導入します。商用電力と系統連系し、逆潮流あり(売電可能)を前提とします。

2.効果の算定
(1)環境負荷削減効果

・年間発電量:21,100 [kWh/年]
・年間原油代替量:5,130L/年(ドラム缶25.6本分)
・温室効果ガス排出抑制効果:8,100 kg-C02/年

 この太陽光発電システムによる発電量を試算すると、年間21,100kWhとなります。また、温室効果ガス排出抑制効果は、年間8,100kg-CO2となり、この電力量をすべて石油火力発電でまかなうと仮定したときの、原油の代替量は、年間5,130Lとなります。
 

算定方法
(年間発電量)=(出力)×(モジュール面日射量)×(総合設計係数)× 365(日/年)
(年間石油代替量)=(年間発電量)×(換算係数)
(温室効果ガス排出抑制効果)=(年間発電量)×(温室効果ガス排出原単位)
算定条件
項目 数値 備考
出力 20kW  
モジュール面日射量
 
4.13kWh/m2/day
 
宇都宮地方気象台における年間最適日射角の平均日射量
総合設計係数 0.7 NEDO「太陽光発電導入ガイドブック」より
電力量・熱量換算係数

 
2,250 kcal/kWh
(9,419 kJ/kWh)
 
1kWhの電力量を発電するのに要する原油の熱量(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より)
原油発熱量
 
9,250kcal/L
(38,720 kJ/L)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より
 
温室効果ガス排出原単位
 
0.384 kg-CO2/kWh
 
電力量1kWhを発電所で発電するときの温室ガス排出量(温暖化対策推進法より)

(2)経済性
 

・イニシャルコスト:約2,200万円(うちNEDO負担1,100万円)
・電気料金節約効果:年間34.2万円
・投資回収の目安 :32年

※「産業用太陽光発電フィールドテスト事業」「地域新エネルギー導入促進事業」の実施を前提

@イニシャルコスト
 20 kW の太陽光発電施設のイニシャルコストは、2,200万円とします。

太陽光発電設備の設置費用(業務用)

  費用
本体      493.9千円/kW
架台      109.4千円/kW
インバータ      180.4千円/kW
工事費      274.1千円/kW
その他      43.0千円/kW
合 計 1,100.8千円/kW

「公共施設等太陽光フィールドテスト事業における
収集データ評価解析 平成10年度」(NEDO)

A経済効果
(電気料金節約効果)
   太陽光発電による発電した電気は、電力会社によって業務用電力の電気料金単価と同額の単価で買い取られます。ここでは、売電単価を16.2円として設定します。
21,100[kWh] × 16.2[円] = 34.2[万円/年]

(投資回収の目安)
 イニシャルコストを年間の電気料金節約効果と比較し、何年間の節約総額でイニシャルコスト相当額を充足できるかを算定します。設置に要するコストは@より2,200万円、年間の電気料金節約額が約34.2万円であることから、
2,200[万円] ÷ 34.2[万円/年] = 64.3 [年](補助なしの場合)
 なお、支援制度には、下表のようなものがあります。なお、産業等用太陽光発電フィールドテスト事業(NEDOとの共同研究事業)、地域新エネルギー導入促進事業(対象:地方公共団体)等を活用すれば、事業者の実質負担は1/2となり、投資回収の目安となる年数は半分となります。この場合では、実質負担は1,100万円、投資回収の目安となる年数は約32.2年となります。

●支援制度について
  オフィスビルや事務所に太陽光発電を導入する際に利用可能な支援制度は次のとおりです。

支援制度 対象者 内容 実施主体
産業等用太陽光発電フィールドテスト事業(共同研究) 工場、事務所ビル等の産業施設
 
補助率1/2以内
出力10kW以上
 
NEDO

 
新エネルギー事業者支援事業 民間企業
 
補助率1/3以内
出力100kW以上
NEDO
 
地域新エネルギー等導入促進事業 地方公共団体
 
補助率1/2以内
出力100kW以上
NEDO
 
エネルギー需給構造改革投資促進税制(国税)
 
青色申告を提出する個人又は法人
 
7%相当額の税額控除、又は取得価額の30%相当の特別償却

 
ローカルエネルギー税制(地方税) 事業を営む個人又は法人 課税標準額を5/6に減額(3年間)
 

●メンテナンスとコストについて
 太陽光発電システムは、無人自動運転を行うことを前提として設計製作されているために、基本的に日常の保守点検は不要であり、法的な規定もありません。
 定期点検については、本ケースで示したような高圧連系の場合、保安規定の届け出と電気主任技術者の不選任承認を受けることで、専任の電気主任技術者を置く必要がなくなり、電気保安協会への保安に関する業務の委託契約を行うことで代えられます。
 そのため、設置コストは高価ですが、動力機関、ボイラに比べて、メンテナンスは容易であり、費用も安価です。(電気保安協会への点検の委託のみを考えた場合、年間費用の目安は1システム当たり1万円弱)

3.課題
 以前に比べてかなり低下してきたものの、依然として高い導入コストが課題となっています。しかしながら、メンテナンス費がほとんどかからないことに加え、余剰電力を電力会社に売却できるなどのメリットもあります。現状では、設置することにより利益を得ることは困難ですが、環境負荷の低減や普及啓発効果などが期待できます。
 加えて、メーカーのより一層の価格低減の努力が期待されます。


  

 
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