どんな都市ができるの
那須新首都時代をえがく

〔デザイン展開〕
 1章に示した、那須新都市の基本目標、基本的方向を達成するためのグランドデザイン、具体的なイメージを展開し、提案していく。

那須新都市の役割と機能
  1. 新都市の役割
     「持続・共生・創造」のテーマパーク都市
     那須新都市の基本的課題と方向から、@持続可能性、A環境共生、B新たな価値観や社会経済システムの創造、を新都市づくりにおける3つの主要テーマとする。
     那須新都市は、那須の広大で品格ある自然・歴史風土を舞台に、次世代の夢を大きく展望しながら、地球市民の(人類の)知恵や技術を結集し、柔軟かつ的確に3つのテーマに取り組み、時代の要請や21世紀の世界や我が国の重要課題に応えていく、「持続・共生・創造」のテーマパーク都市を目指す。
    • 持続(Sustainable)
       ・「平和」、危機管理、安全・安心、人と国土、地球市民
    • 共生(Symbiotic)
       ・「環境」、地球環境、人と自然、人と人、都市と農村、自立と連携
    • 創造(Creative)
       ・「文化」、新しい政治行政・社会経済システム、新しい価値観・ライフスタイル
    3つの役割

  2. 新都市の機能
    新都市の役割を担っていくために都市に備えるべき機能は以下のとおり。
    1. 新しい政治行政機能
      • 立法機能、行政機能、司法機能、国政支援機能(情報、連絡調整 等)
      • 市民参画機能、迎賓機能
    2. 本格的な国際政治機能
      • 外交機能、国際交流機能、国際情報拠点機能
      • 地球市民交流機能
    3. 日本の進路を象徴する機能
      • 学術文化研究機能
      • 農村文化交流機能、歴史文化交流機能、高原リゾート機能、温泉保養機能
    4. 新都市にふさわしい都市運営機能
      • 新都市運営・サポート機能、高次な都市サービス機能、ターミナル機能、居住機能
人口・土地利用の構造
   那須新都市は、国会等移転審議会で想定されている新規開発規模を確保することは可能であるが、更に東京圏との適度な位置関係、中核市宇都宮市や既存小都市の都市集積を生かしたコンパクトな都市づくりを提案する。(都市づくりの多様な選択肢の提供)
  〔参考〕審議会における新規開発の場合の都市規模
  • 第1段階 10万人、1800ha
  • 最終段階 56万人、8500ha
那須新都市の都市構造
   新都市の都市構造について、「@圏域構造(主に面的な土地利用、自然環境保全等の基本概念・イメージ)」、「A交通・情報通信(主に線や軸上の骨格)」、「B都市運営システム(@Aで描かれた都市構造を動かすソフト的な対応を含めた仕掛けやシステムなど)」の3つの視点を大きな枠組みとして、その中で、国土、県土、新都市の構造レベルへと段階的に地域を絞り込みながら、デザインを展開していく。

(1)圏域構造
  1. 国土・北東地域の構造
     連携発展型の小さな国際・政治都市である那須新都市を中心として、東京圏の一極集中によって蓄積されてきた経済や文化・多様な人材など我が国共有の貴重な資産も最大限に生かしながら、物も心も豊かな多様性に富む美しい国づくり、地球時代の国土の持続的発展を目指す。
     特に、政経分離を図ることによって国政全般の改革を進め、東京一極集中を是正し、一極一軸型国土から多軸型国土構造(分散ネットワーク型構造)へ転換していく。

    多軸型国土の形成
    • 新しい国土軸(北東、日本海、太平洋新国土軸)の形成
    • 太平洋ベルト地帯(西日本国土軸)の再生
    • 国土軸相互の補完・連携のための地域連携軸の形成
    • 広域国際交流圏の形成

    連携発展型の新しい都市圏・北東地域の形成
    • 東京圏のリノベーション(再生再構築)と那須新都市との「首都」連携軸の形成
    • 北東地域ニューフロンティア交流圏の形成
    • 首都圏外郭地域(北関東+山梨+静岡)の地域連携軸の形成

    多自然居住地域、自然を保全活用するフィールドの創造
    • 国立公園等自然(日光国立公園等)、河川流域(利根川、那珂川等)の保全
    • 関東平野の外郭に位置するグリーンベルトの形成


  2. 県土の構造
     新・全総等で我が国が目指す21世紀の豊かでゆとりある国土づくり(多軸型国土、連携と交流など)の方向性を十分に踏まえた、本県の世界や全国に開かれた「北関東クロスコリドール構想」(とちぎ新時代創造計画の基本戦略)を発展させたかたちで、県土の特性とポテンシャルを生かしながら、新都市をしっかりと受け止めていくことを基本とする。
     したがって、県土づくりに当たっては、首都機能移転や新都市実現のインパクトを大いに生かし、心豊かな県民生活の実現と多彩で個性豊かな県土づくりを促進していく。(とちぎ新時代創造計画における5つのテーマゾーンによる地域づくりの促進と県土の持続的発展)

    ※ 説明文中、ゴシック部分は首都機能移転に伴う新たな展開方向

    那須高原ゾーン(のびやかな創意に弾む地域)
     首都機能の中心を担う本地域は、自然と調和した拠点整備による個性的な都市機能の創出や様々な余暇レクリェーション機能充実の 促進とともに、新都市の関連業務や産業、居住機能の一翼を担いながら地域の魅力を一層創出していく。

    那珂川緑と清流ゾーン(おだやかな未来に拓く地域)
     首都機能の一部を担う本地域は、農林業や特色ある地場産業の高度化、豊かな自然を生かしたゆとりある定住機能や観光・レクリェーション機能充実の 促進とともに、地域の特性を生かした魅力ある居住環境を創出していく。

    日光コスモゾーン(さわやかな希望に萌える地域)
     新都市に隣接する本地域は、余暇の増大や価値観の多様化に対応した国際的な観光・リゾート地域、ふるさと交流地域として熟成 促進とともに、国際的な観光・リゾート地域としての特性を生かした国際交流や余暇活動を展開していく。

    宇都宮テクノポリスゾーン(あざやかな活気に躍る地域)
     首都機能の一部を担う本地域は、各都市の連携強化により、高度情報・学術研究・人材育成・業務中枢機能などのより高次な都市機能の集積 促進とともに、東京と新都市の間の連携軸上に位置し、新都市建設段階・運営段階において、業務・情報・居住など様々な機能を総合的に支援し担っていく。

    県南ハイベルトゾーン(しなやかな自由に映える地域)
     東京と新都市の中間に位置する本地域は、交通機能のネットワーク強化により各都市間の連携を一層強めながら、それぞれの特性や機能を生かした個性豊かな都市群の形成 促進とともに、東京と新都市の間のタテの連携軸と、北関東自動車道沿線のヨコの連携軸が交差する位置にあり、物流や業務・情報・居住など様々な機能を担っていく。


  3. 那須新都市の構造
     環境との共生を積極的に図っていくため、那須新都市全域を、「那須環境共生系(エコフィールド)」と位置づけ、その中で、人と自然の関わり方から「自然環境系(ネイチャーフィールド)」、「農牧・平地林環境系(アグリフィールド)」、「生活環境系(ライフフィールド)」の3つのフィールドに分けて、それぞれのフィールドにふさわしい土地利用や社会経済活動等(フィールドワーク)を展開していく。

    自然環境系(ネイチャーフィールド)
     自然環境保全や活力ある林業・観光サービス産業や山村生活が展開されるとともにリゾートやグリーンツーリズムなど市民のニーズに対応

    農牧・平地林環境系(アグリフィールド)
     魅力ある地域の農業生産やゆとりある農山村生活が展開されるとともに、アグリツーリズム等の市民の新たなニーズや新たな環境管理機能に対応

    生活環境系(ライフフィールド)
     人の都市活動・生活の主舞台として環境共生型の都市づくりを展開、首都機能と地域との関わり方から4系統の(整備)区を設定、地域特性に応じた適正配置
    • 国政都市区
    • 国際交流・文化学術研究区
    • 地域文化交流区
    • 生活拠点都市区(既存市街地のリノベーションを含む)

(2)交通・情報通信の構造
  1. 世界・全国へのネットワーク「21世紀フロンティア・コリドールネットワーク 」の強化

    グリッド型陸路・空路・海路の交通・物流の多重ネットワークの機能強化
    • センターコリドール、コーシャンコリドール、スカイコリドール等の基幹軸の強化拡充
      (新幹線新駅・新IC設置等結節点の機能充実、在来線の機能拡充を含む)
    • シームレス新幹線網等、運行形態も考慮したネットワークの総合的な再編・再構築

    全国各地の地域情報通信拠点の形成、通信ネットワークの充実

    防災・危機管理のための交通通信のセイフティネットワーク・システム形成、リダンダンシー確保

  2. 新都市内のネットワークの形成

    世界・全国に開かれたゲートウェイの形成
    • 複合ターミナル の構築(高速道路や新幹線、在来線等の相互乗り入れが可能)
    • シンボルロードの整備(LRT 、電気自動車、馬車・馬、舟、自転車 等)

    新都市内の快適交通ネットワークの形成
    • 高速道路、新幹線等基幹系ネットワークへのアクセス強化、多重性の確保
    • 新都市内各拠点間のネットワーク強化拡充 (新幹線新駅・新IC設置等結節点の機能充実、在来線の機能拡充を含む)
    • 新しい交通ネットワークの構築(新都市内の大環状線、格子状の幹線網)

    那須に親しみ楽しむ歩行者・自転車系ネットワークの形成
    • 那須疏水ビューコリドール等、那須野ヶ原の自然・歴史を巡る回遊路
    • 奥州街道・東山道、奥の細道等の歴史文化を訪ねる回遊路

    新しい交通技術・交通システムの導入
    • 交通需要管理システム(TDM)の構築
    • 高度な情報技術を活用した情報提供・交通規制等による交通需要を総合的に制御管理、フレックスタイム等ワークスタイル等を含めたソフト対応
    • 新しい技術・交通機関の導入(LRT 、デマンドバス、電気自動車、ハイブリッドカー等)
    • 人にやさしいシステム導入(バリアフリーの都市施設、交通機関等)

  3. 世界・全国に開かれた電子国政システムの構築

    公正で透明な政治・効率的な行政を強力に支援し推進
    • 国土防災・危機管理・環境管理等の総合監視・評価システムの構築
    • 情報公開等アカウンタビリティ対応システムの構築
    • 社会経済の変化に対応できる時のアセスメントシステムの構築
    • 効率的な行政のための総合的な業務運営管理統合システム(ERP)の本格導入
    • テレワーク等新たなワークスタイルの実践

(3)都市運営システム
 世界や全国に開かれた「持続・共生・創造」のテーマパーク都市の運営にふさわしい、新たな都市運営の仕掛けや仕組み(システム)を構築していく。
  1. 広域連携システムの構築
    • 東京圏と新都市との連携
    • 新しい首都圏、北東地域内の連携
    • 首都圏外郭地域、FIT地域内の連携

  2. 那須新都市型ゼロエミッション、ミティゲーションシステムの導入 
    • 資源循環型、総量制御型の都市建設・維持運営
    • 持続可能な長寿都市運営システム(100年建築+フレキシブル構造等)の構築

  3. 市民参画、官民協働の地域計画・運営システムの構築
    • 長期展望の基に、時代の要請に、柔軟に対応できる計画・整備・事業手法
    • 行政枠を越えた官民協働(パートナーシップ)の計画づくり・地域づくりの制度・手法
      • 民〜市民・住民、企業、事業者、NPO・NGO 等
    • 適正な個別審査・協議(ネゴシエーション)による適正開発の誘導の仕組み
〔解説〕
  • ゼロエミッション(zero emission)
     国際連合大学(本部は東京)が、「ゼロ・エミッション」構想として平成6年から提唱しているもの。
     これは、産業界における生産活動の結果、水圏、大気圏や地上圏等に最終的に廃棄される不用物や廃熱(エミッション)を、他の生産活動の原材料やエネルギーとして利用し、産業全体の製造工程を再編成することによって、循環型産業システムを構築しようとする試みである。我が国でも、鹿児島県(屋久島)や環境事業団、民間企業などでゼロ・エミッションの考え方を具体化するモデル的事業が始められている。

  • ミティゲーション(mitigation)
     欧米で、1980年頃から環境保全の考え方として広まった言葉で、道路や橋、護岸の建設等が野性動物や生態系に及ぼす影響をなるべく抑えるようにすること。環境アセスメントは、こういう開発をするとこんな影響が出ると警告する意味合いが強いが、ミティゲーションでは、こういう開発を行う場合、こんな工法で影響をなくそうと、一歩踏み込んだ考えの下で、環境影響の緩和、軽減、回避、最小化と代償など総合的な保全・復元を行う点が特徴となっている。
     新・全総の中では、国土開発に係る事業の実施に際して自然環境の保全を図るため、環境影響評価の実施等を通じて、保全すべき場所の改変を避け、あるいは、これを最小限にするなどの対策を講じることを位置づけている。




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