どんな都市ができるの
那須新都市の構成要素イメージ
   これまでに示した都市構造の概念を基に、那須新都市(エコフィールド)に展開する首都機能の配置、特に生活環境系(整備区)のフィールドワークのイメージを提案する。

(1)生活環境系の機能構成と機能配置
  1. 国政都市(区)
     那須の雄大で多様な自然に包まれ、国民を中心に立法・行政・司法の中枢の関係者が開放的で透明性のある国政を運営

    主な機能構成
    • 立法機能、行政機能、司法機能
    • 国政支援機能、市民参画機能、迎賓機能、新都市運営・サポート機能

    機能配置の考え方
    • 首都機能の中枢を担い第1段階から整備される区であり、東京との連携・自然景観特性・土地所有形態等から新都市の中央部(那須高原ゾーン)を基本に配置
    • 歴史文化風土特性や空港との近接性等から新都市北東部(那珂川清流ゾーン)への代替案

  2. 国際交流・文化学術研究区
     那須の平地林や水辺の爽やかで清涼感あふれる環境の中で、国政を支援しつつ地球的視野に立った多様な国際政治・国際交流活動等を展開

    主な機能構成
    • 立外交機能、国際交流機能、地球市民交流機能、文化学術研究機能

    機能配置の考え方
    • 首都機能の中枢との近接性、自然景観特性等から新都市の中央部や北部(那須高原ゾーン)に配置
    • 歴史文化風土特性や国際交流等の実績から新都市東部(那珂川清流ゾーン)に配置

  3. 地域文化交流区
     那須ならではの個性ある地域文化・風土、潤いあふれる保養環境などとふれあい那須のホスピタリティ(もてなし)が満喫できる交流を展開

    主な機能構成
    • 農村文化交流機能、歴史文化交流機能、高原リゾート機能、温泉保養機能

    機能配置の考え方
    • 地域特性に応じ、那須新都市全体に配置

  4. 生活拠点都市(区)
     那須の持つ既存の都市機能集積とそれらのポテンシャルを十分生かしながら、さらに既存市街地のリノベーションを図りながら、既存市街地の地域住民と新住民が共に楽しさと快適性に満ちた暮らしができる、業務・サービス、居住環境を展開

    主な機能構成
    • 高次な都市サービス機能、ターミナル機能、居住機能

    機能配置の考え方
    • 既存の都市集積や地域特性を生かし、那須新都市全体に配置

(2)那須新都市の都市構造・機能配置イメージ図
     3の中で示した新都市の構造、上記・で示した機能配置の考え方を基に、那須地域中央部に国政都市を置いた場合の都市構造・機能配置イメージを以下に示す。また、バリエーションとして那須地域北東部に国政都市を置いた場合のイメージ図も併せて示す。
     なお、イメージ図の整備区や新交通ルート等の位置・規模等については、今後の移転計画の段階で検討されるべきものである。ここでは、新都市のイメージの理解や議論を深めていく素材として提案するが、場所・規模を特定するものではない。

(3)那須新都市の都市構成要素イメージ図
    これまでに示してきた那須新都市のデザイン展開の基本的な考え方を基に、都市構造の要素や、その中での生活場面について具体的なイメージを提案する。

    bP 国政都市区
    • 新幹線駅のターミナルの上空から那須新都市を臨む。新都市を抱く那須には、澄んだ空気と明るい陽光の下で、心地よく風が吹き、伏流水を豊富に含んだ平地林の大地が広がり遠くに自然と生命の畏敬を感じさせる那須岳と日光国立公園や八溝の山々が連なる。
    • 中央に国民広場、奥に国会議事堂、左手に行政棟、右手に最高裁判所棟、右手奥に迎賓館を配置。
    • 国民広場手前の新都市のゲートとなる位置に市民参画・都市運営機能を有するターミナル、鉄道と高速道路の相互乗り入れが可能。
    • ターミナル周辺には、那須のイメージさせる牧歌的風景や田園風景が展開。
    • 中央の国民広場は、国民誰もが自由に集える水と緑豊かな開放的な空間。
    • 国会議事堂は、中央に会議場のドーム、左右にウィング状に衆参両院を配置。奥には国会図書館や政策研究所などの支援施設群を配置。
    • 内閣(首相官邸)及び中央省庁は、周辺との景観に配慮し中低層ながら壇上に配置しコンパクトで圧迫感のない建築空間を形成。付近に、防災ヘリポートや情報センター、危機管理施設からなる防災拠点を配置。
    • 最高裁判所は、終審裁判所にふさわしい公正さと威厳をシンプルにデザイン。
    • 迎賓館は、開かれた広場や庭園を備えた日本らしいもてなしの場。


    bQ 国際交流・文化学術研究区
    • 国政都市区に隣接し那須高原方向を臨む。
    • 水路又は、小河川と交錯しながらシンボルロードが延び、シンボルロード沿いには国際色豊かなバザールや商業施設などが立ち並び、賑わいと地球市民交流の場が展開。
      シンボルロードからやや奥まった所に各国大使館が立地。また、環境に優しい馬車の復活や電気バスなどの公共交通機関が導入されている。
    • シンボルロード中央には、様々なイベントや交流が行われる広場が設置され、奥にはコンベンション施設、右側には、文化学術研究施設が立地。各施設間は、LRT等の公共交通機関で快適で機動力のある交通体系を実現。


    bR 那須アグリフィールド
    • 手前の高原地帯のすそ野に広がる牧畜系の一帯から、那須野ヶ原に広がる水田地帯、さらには遠くに八溝の穏やかな山々を臨む。
    • 田園の所々に平地林が広がり、山沿いでは里山の風景が残る。
    • 手前には、牧畜生産・流通施設や那須野ヶ原開拓時代の明治の元勲の館を活用した記念館などが設置。
    • やや奥には、農業生産・流通加工の拠点や、地域性を生かした「道と川の駅」的な施設が立地。


    bS(上)生活拠点都市区のスポット
    • 交通ターミナル付近の商業地の1シーン。
    • 国際的な人々と雰囲気で賑わうモール。
    • 奥の角を新路面電車(LRT)が横切っていく。
    • 街角の至る所に高度情報化が日常化している風景が見える。商店の看板代わりの大型スクリーン、モバイルコンピューティングをしながら休憩・談笑している人達、自動センサーを備えた車椅子で快適に移動する障害者・・・。


    bS(下)生活拠点都市区のスポット
    • 新都市の居住環境の1シーン。
    • 共有のスペースを有効に使い、ゆとりある住宅、広場、路地を実現。
    • 街角では、母親たちが散歩や買い物の道すがら世間話に興じ、子どもたちは広場で思い切り遊んでいる。
    • 通り沿いには戸建て住宅、路地を入った奥の方に集合住宅が立地。
    • 各住宅は、全面太陽光発電パネルを組み込んだ屋根で、家電のほとんどの消費をまかなっている。


    bT(上)地域文化交流区(歴史文化交流)のスポット
    • 歴史街道の拠点の1シーン。
    • 旧東山道や奥州街道の町並みや河岸が復元される。
    • 街道沿いには、古いものの復元と同時にそれらを生かしたニュー観光業、文化交流・体験の施設、次世代コンビニが建ち、国際色豊かに人々が集いふれあう。
    • かつての水運の復活を思わせる河岸の整備や馬車の活用など、多様な交通手段が用いられている。
    • 通りの小さな堀には、清流が蘇る。


    bT(下)地域文化交流区(農村文化交流)のスポット
    • 農業や農村生活の体験・交流の1シーン。
    • 名産のイチゴやリンゴ狩り体験、清流での鮎釣り、キャンプなど多様な余暇活動のニーズに応える。グリーンツーリズムの拠点施設も立地。
    • 遠く上空には多彩な自然を象徴するオオタカが舞う。


    bU(上)地域文化交流区(高原リゾート)のスポット
    • 那須高原での自然とのふれあい体験の1シーン。
    • 自然とのふれあい体験、アウトドアスポーツ、温泉など高原特有の総合保養、リゾートの場を提供。
    • 手前では、家族が虫取りや散歩を楽しんでいる。
    • 奥には温泉付きのコテージが立地。


    bU(下)地域文化交流区(温泉保養)のスポット
    • 秋の温泉保養による文化交流の場の1シーン。
    • 季節的に使われる迎賓館とそれに附属する露天風呂、そしてその周辺。
    • 様々な世代や家族やグループ、そして個人といったビジターに合わせた癒しの場を提供。
    • 右上には山荘、奥には散策用の吊り橋。

くらしのイメージ
   那須新都市の中で人々はどのように暮らしが実現できるか、象徴的なライフスタイルのいくつかのイメージ(・行政府で働くAさん、・新都市で酪農を営むBさん、・既成市街地で商店を営むCさん)を提案する。

(1)例えば、行政府で働くAさんは・・・
  • 四季感あふれる豊かな自然の中で、環境にやさしい交通機関を利用して、20分程度の快適な通勤をしている。渋滞はなく人と人との適度な距離感がある。
  • 国政都市の中心には、「国民の広場」があり、その周辺に国会議事堂や内閣府・中央省庁、最高裁判所がある。各省庁の庁舎は、平地林の中に3〜4階建ての複数の建物がゆったりと配置され、各建物は明るい、風通しのよい、動く連絡通路で結ばれている。少し離れたところへは、電気のデマンドバスや馬車が走っており快適な移動ができる。
  • 昼食時には、屋外のカフェテリアで軽い食事をとったり、国政都市駅周辺のショッピングモールで全国の味を楽しんだりする。電気自動車で5分も行けば国際交流プラザで世界各国の料理を楽しむこともできる。
  • 21世紀に入り急速に進んだ行政の情報化、例えばマルチメディア通信やペーパーレス化により、業務効率は著しく改善されて残業はほとんどない。首都機能移転と同時に規制緩和や地方分権が進んだことも影響しているかも知れない。国政都市駅近くにも夜の賑わいがあるが、仕事帰りの一杯はめっきり減ったような気がする。家族は喜んでいるが複雑な気持ちでもある。また、今でも東京との連絡が必要な場面は多くあるが、テレビ会議や電子メールでかなりの部分は用が足りている。直接会いたい場合は、東京へも容易に行くことができる。
  • Aさんは、最近まで東京の自宅マンションから新幹線通勤をしていた。1時間程度の通勤時間だったのでそれほど苦ではなかったが、子どもを自然豊かな環境の中で育てたいと考えていたこともあり、また、最近は個性とゆとりある教育環境が重視され学歴社会が崩れだしたこともあり、思い切って那須新都市に一戸建て住宅を建てた。
  • Aさんの住宅は、歴史街道沿いにある。山間地域だと思っていたが、ゆるやかな丘陵地帯にあり、近所には、規模こそ大きくないが、ネットワーク社会に対応できるような恵まれた情報環境のある学校や広域的な総合医療福祉施設、洒落た商店街もある。通勤や買物は、パークアンドライドのシステムが充実していることもあり、ハイブリッドカーのマイカーで駅まで行く。また、近くにはLRTが走っており、子どもやお年寄りも便利さを享受している。
  • 自宅裏には、地区共有のオープンスペースがあり、今は、手入れされた雑木林に囲まれた芝生の広場や市民農園として利用され、休日には子どもと一緒に畑の手入れをしたり、近所の人達や知人の家族たちとガーデンパーティを楽しんだりしている。最近は、Aさんの一番の楽しみとなっている。
(2)例えば、新都市で酪農を営むBさんは・・・
  • Bさんは、以前は酪農の他に水田1haを耕作し複合経営をしていたが、酪農経営一本にしぼることを決意し、国政都市の土地利用計画をつくる地域住民の話し合いのときに、国政都市建設に農地を提供することになった稲作農家のDさんに、水田は譲ることにした。
  • 今までの土地利用計画は、行政が行う遠いものと思っていたが、今回は、地域の人たちが積極的に計画づくりに参加し、国政都市に含まれることになった住宅の生活拠点都市への移転や、離農したい人から農業意欲の強い人への農地の集約もスムーズに行われ、首都機能移転により、日本がいい方向に変わってきたことを実感している。
  • Bさんは、当初から農地を手放すつもりはなかった。開発の話を持ちかける人が来た時期もあり、周辺が開発され、農業が維持できなくなるのではないかと心配したこともあった。最終的には、「計画なければ開発なし」という新しい土地制度が有効に機能し、乱開発は起きず、現在も周辺の農地は守られている。
  • 生活拠点都市の新しい住宅街の近くであったことから、臭いへの苦情で酪農経営ができなくなるのではないかと心配であったが、経営拡大する際に、新技術による家畜糞尿処理施設や脱臭装置の整備を行うことができ、一切苦情はきていない。
  • また、首都機能移転により引っ越してきた人たちとうまくやっていけるか不安だった。はじめは、なかなか打ち解けなかったが、月に一度乳しぼり体験をしてもらったり、国会議事堂前の花壇の手入れなどの市民ボランティア活動などの交流を通じて、農業への理解も得られたと感じている。今では那須塩原駅前の居酒屋で、酒を酌み交わす仲間もできた。
(3)例えば、既存市街地で商店を営むCさんは・・・
  • Cさんは、国会が移転する前から市街地に住む小さな商店の経営者である。
  • Cさんにとって、国会が来る前から規制緩和や経済・金融のグローバル化が進む中で、、経営戦略に大きな転換を迫られていたが、国会の移転によりさらに加速されたイメージが強い。
  • いずれにしても厳しい選択が必要であったわけだが、移転を契機に地元商工会の危機感も大きくなるなかで、商店を中心に街中の活性化を図っていこうとする動きが本格的になり、仲間との結束が高まってきたことはすばらしいことだと思う。
  • 国会が来る前から、バイパス周辺の郊外への市街地の拡大により閉める商店が続出し、かつての賑わいのストリートは寂れ、街中の空洞化が切実なものとなっていた。このため、5地区の自治会、商工会・行政・交通機関・金融等の有志関係者、有識者から成る活性化実行組織を結成し熱心な議論が行われた。
  • こういう中から、思い切った様々なアイディアが生まれ、明確な役割分担の基でできるものから実施に移していった。
  • 増える高齢者、減少する子どもや若者の視点から、快適で便利、にぎわい、個性などに徹底的にこだわった。空きビルや空き家を修復・再編して、商店街や住む人を集め、にぎわいと趣の住空間、商空間、広場を復活させ、または造りだした。空き地を生み出しながら、教育機関や医療福祉施設、アミューズメント施設も思い切って呼び込んだ。
  • 高齢者の労働力提供などボランティア的な協力で、市街地へは郊外の駐車場や駅から公共の電気タクシーシステム等も導入され、市街地内の移動も快適にできる。話好きの運転手が多いためか乗っていてややうるさくも感じるが、どちらかというと楽しい。レンタサイクルやレンタミニカーも便利に使える。
  • 今、街には多世代の住む人がもどってきたばかりでなく、職住近接、多彩な職業、商店街のにぎわいが往時の良さも残しながら、歩いてショッピングする楽しみの復活や新しい魅力を加えて蘇ってきたような気がする。
  • 商売の方も、ネットワーク社会と言われる中で、大型店舗との競合はあるものの、小売店ならではのサービス分野を考え、お客さんのニーズに的確に応えるため仲間・近くの生産者たちとの商いのネットワークが作られ、また、人がもどってきたこともあってまずまず順調になってきている。


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