トップ > 環境 > 環境保全・温暖化対策 > 環境保全 > とちぎの環境 > 計画・報告書等(環境資料アーカイブ) > 環境の状況及び施策に関する報告書(環境白書)  > 平成12年度環境の状況及び施策に関する報告書(要約)

水環境保全対策

 

1 工場等に対する規制と指導

 河川及び湖沼等の公共用水域の水質保全を図るため、公共用水域の水質監視と並行して「水質汚濁防止法」及び「栃木県公害防止条例」に基づく立入検査を実施しています。
また、「工場・事業場排水等自主管理要領」に基づき、工場・事業場に対し、排出水の水質測定及び県への報告を求め、排水処理施設等の適切な維持管理を図るよう指導しています。

(1) 規制基準等                                                                                  

 本県では、「水質汚濁防止法」に基づく一律基準に加えて、同法第3条第3項の規定に基づき、有害物質(六価クロム)及び生活環境項目(BOD、SS等)について、条例でより厳しい上乗せ排水基準(*)を定めています。
 また「栃木県公害防止条例」では、15種類の汚水に係る特定施設を定め、排水基準を設定しています。
(*) 生活環境項目のうち、BOD等については、一日あたりの平均的な水量が30m3(畜房は15m3)以上の特定事業場において適用している。

 

 

 

(2) 水質関係特定事業場数                                                                    

  「水質汚濁防止法」に基づく特定事業場数は、8,129事業場であり、これを業種等の区分別にみると、畜産農業が最も多く2,275事業場(25.6%)であり、次に旅館業1,707事業場(21.0%)、自動式車両洗浄施設919事業場となっています。 (図2−2−9)
 また、「栃木県公害防止条例」に基づく特定工場数は、420工場です。

(3) 立入検査・排水監視状況                                                                   

 平成11年度は、延べ637工場等(県分500工場等、宇都宮市分137工場等)について立入検査を実施しました。
 立入検査した工場等のうち、延べ500工場等について排出水の分析を実施しました。このうち 443件(88.6%)が排出基準に適合しており、排水基準不適合の57件(11.4%)については改善警告等の行政指導等を行いました。(表2−2−8、表2−2−9)

表2−2−8 排水基準適合状況


   年     度  

   7  

   8  

   9  

   10  

  11  

採水延事業場数(延べ) 

  510

  524

  500

  482

  500 

検査  結果

 適合数 

  456

  473

  430

  432

  443 

 不適合数 

   54

   51

   70

   50

   57 

排水基準適合率(%)
 

   89.4
 

   90.3
 

   86.0
 

   89.6
 

   88.6
 

表2−2−9 排水基準不適合及び地下浸透禁止違反に対する行政処分等状況

年度処分数
総 数
排水基準不適合地下浸透禁止
改 善
警告等
改善命令等告発勧 告改善命令告 発
改善命令 排出水の排水の一時停止

 7

54

54

0

0

0

0

0

0

 8

51

51

0

0

0

0

0

0

 9

70

70

0

0

0

0

0

0

10

50

50

0

0

0

0

0

0

11
 

57
 

57
 

0
 

0
 

0
 

0
 

0
 

0
 

 

(4) 業種別排出水の監視状況                                                                   

@ 電気めっきを行う工場
 電気めっき工場は、有害物質であるシアンや六価クロムなどを使用し、過去において魚類へい死や有害物質の地下浸透の事故が多発していることから、毎年、重点的に監視指導を行っています。
 平成11年度の排水基準適合率は、84.3%でした。(表2−2−10)  
今後も、老朽化した排水処理施設の更新や工場内の安全対策など一層の改善を指導する必要があります。

表2−2−10 電気めっき工場における排水基準適合状況


  年度  

   7  

   8  

   9  

  10  

  11  

採水事業場数(延べ) 

   88

   78

   77

   81

   70 

検査
  
結果

 適合数

   82

   75

   72

   78

   59 

 不適合数

   6

   3

   5

   3

   11  

排水基準適合率(%)
 

   93.2
 

   96.2
 

   93.5
 

   96.3
 

   84.3
 

 

A 表面処理作業を行う工場
 表面処理工場は、酸やアルカリを使用するほか、一部の工場においては有害物質も使用することから、めっき工場に準じ監視指導を行っています。
 平成11年度の排水基準適合率は、88.9%でした。(表2−2−11)
 今後も、めっき工場に準じ、老朽化した排水処理施設の更新や工場内の安全対策など一層の改善を指導する必要があります。

表2−2−11 表面処理工場における排水基準適合状況


  年度  

   7  

   8  

   9  

  10  

  11  

採水事業場数(延べ) 

   76

  104

  112

  113

  126 

検査
  
結果

 適合数

   66

   91

   92

  104

  112

 不適合数

   10

   13

   20

   9  

   14

排水基準適合率(%)
 

   86.8
 

   87.5
 

   82.1
 

   92.0
 

   88.9
 

 

B 染色繊維工場
 両毛地区には県内の染色繊維工場のうち80%以上が立地し、重要な地場産業を形成していますが、この業種はBOD、SS等の有機性汚濁のほか、色や温排水等の問題があります。
 11年度の排水基準適合率は、72.7%であった。(表2−2−12)
 今後も、新しい処理技術の情報収集・研究等を進め、老朽化した排水処理施設の更新を指導し、水の再利用等により排出水量を削減するとともに、色や温排水等の問題について改善を指導する必要があります。

表2−2−12 染色繊維工場における排水基準適合状況


  年度  

   7  

   8  

   9  

  10  

  11  

採水事業場数(延べ) 

   10  

   9  

   15

   4  

   12 

検査
  
結果

 適合数

   8

   5  

   10

   2 

   16 

 不適合数

   2

   4

   5

   2  

   6 

排水基準適合率(%)
 

  80.0
 

  55.6
 

  66.7
 

   50.0
 

   72.7
 

 

C 食料品工場
 
食料品工場からの排出水は、染色繊維工場などのものと比較し、排水処理は容易ですが、有機性汚濁物質や塩分の負荷が高く、また水質の変動も大きい等の問題があります。
 平成11年度の排水基準適合率は、85.4%でした。(表2−2−13)
 今後も排水処理施設の維持管理について指導する必要があります。

表2−2−13 食料品工場における排水基準適合状況


  年度  

   7  

   8  

   9  

  10  

  11  

採水事業場数(延べ) 

   87

   70  

   57

   50

   48  

検査
  
結果

 適合数

   75

   60

   49

   43

   41 

 不適合数

   12

   10

   8

   7

   7  

排水基準適合率(%)
 

  86.2
 

  85.7
 

  86.0
 

   86.0
 

   85.4
 

 

(5) ゴルフ場農薬による水質汚濁防止                                                         

 ゴルフ場における農薬の使用については、従来から安全基準に沿った適正使用と危害防止に十分配慮した病害虫防除や除草を行うよう指導しています。
 県は、農薬の安全かつ適正な管理及び使用の一層の確保を図るため、「栃木県ゴルフ場農薬安全使用指導要綱」に基づき、事業者が農薬を使用するにあたり、環境等への影響について十分配慮するとともに、排出水の水質を自主管理するよう指導しています。
 また、「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指針について」においてゴルフ場で使用される35種類の農薬について排出水中の指針値が設定されたことを受け、県独自の排出水等の水質調査を実施しています。
 平成11年度は10カ所のゴルフ場について調査を実施しましたが、指針値を超過したゴルフ場はありませんでした。

(6) ダイオキシン類調査及び環境ホルモン調査                                              

 12年1月施行の「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づく水質の常時監視について、12年度は、公共用水域50地点、湖沼2地点、地下水61地点及び主要河川の底質5地点の汚染の実態を把握し、今後の対策に資する。(第6章 化学物質対策の推進、第1節 ダイオキシン類対策において再掲)
 環境ホルモンは、内分泌かく乱作用を有すると疑われているが、かく乱の強弱やメカニズムについては、未だ解明されていない状況にあり、12年度は汚染の実態把握をするため主要河川の5地点で調査を実施することとしています。

 

2 鉱山排水対策

(1) 足尾銅山対策                                                                                
 公害防止協定
 古河鉱業梶i平成元年に古河機械金属鰍ノ社名変更)と群馬県太田市毛里田地区住民との「渡良瀬川沿岸における鉱毒による農作物被害に係る損害賠償調停事件」は、公害等調整委員会により、昭和49年5月に調停が成立しました。
 その調停事項の中で、将来における公害の発生を予防するため、古河鉱業鰍ニ、群馬県及び太田市は、公害防止協定の締結に努めるものと規定されました。
 古河鉱業椛ォ尾事業所が、本県に立地していることから、本県も当事者に加わるようにとの要請を群馬県から受け、昭和51年7月30日に栃木県及び群馬県と古河鉱業鰍ニの間に公害防止協定が締結されました。
 昭和62年4月に設立された足尾精錬鰍ノ、古河鉱業鰍ェ業務の一部を移行したため、公害防止協定を補完するための新協定を、昭和62年4月30日付けで、前記の3者に足尾精錬鰍加え別途締結しました。
 群馬県、太田市及び桐生市と古河鉱業鰍ニの間においても、同様の公害防止協定が締結されています。
 古河機械金属鰍ヘ、既に公害防止事業が完了した13カ所の堆積場(選鉱の過程で出た石くず等の鉱業廃棄物の施設)について、栃木県、群馬県から公害を発生する恐れがあると申し入れがあったときは、協議の上、適切な対策を実施することになっています。
 13カ所の堆積場のうち有越沢堆積場の一部は、平成15年3月31日まで対策状況を監視することになっています。(10年3月2日付け確認書の締結)
 水質監視                                    
 足尾銅山からの排出水については、「公共用水域の水質の保全に関する法律」により、昭和44年11月から、かんがい期(5月11日から9月30日までの143日間)においては銅1.5r/?の基準が適用されてきました。
 これは、渡良瀬川の取水地点である群馬県高津戸橋において、銅のかんがい期平均濃度を 0.06r/?にすることを目標としたものでした。
 昭和48年6月からは、「水質汚濁防止法」に基づく「上乗せ排水基準」により銅1.3r/?、公害防止協定後においては0.91r/?(協定値)が適用になっています。
 本県では、足尾銅山下流域の沢入発電所取水堰地点、群馬県では高津戸橋において、河川水質の常時監視を実施しています。
 かんがい期における銅の経年変化をみると、協定値0.91r/?以下の低い濃度で推移してい
ます。
 協定書協定細目に規定する物質別許容限度は、水質汚濁防止法の排水基準の0.7掛けでしたが、平成9年2月から鉛とひ素の排水基準が厳しくなったため、この2物質について、暫定的に同法の排水基準と同値とし、平成14年3月31日を目途に継続審議となっています。(平成9年3月24日付け協定細目書の一部を変更する協定細目の締結)

図2−2−10 渡良瀬川のかんがい期平均値経年変化(銅)

図2−2−11 渡良瀬川上流平面図(鉱山地域)

(2) 坑廃水処理補助金                                                                        

 休廃止鉱山の坑道等の使用済施設から流出する坑廃水を処理するための鉱害防止事業が足尾鉱山(足尾町)及び小百鉱山(今市市)の2鉱山において実施されています。
 事業者は、足尾鉱山については古河機械金属梶A小百鉱山については(財)資源環境センターです。                                      
 なお、小百鉱山については、平成10年度に同和鉱業鰍ゥら(財)資源環境センターへ業務が移管されたものです。
 坑廃水処理経費のうち自己汚染分を除く自然汚染分及び他者汚染分については、原因者不存在分として「休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金交付要綱」に基づき、昭和56年度以降、上記2事業者に対して国と県が補助金を交付しています。

 

3 生活排水対策


(1) 県の対応                                                                                     

 生活雑排水に起因する河川等公共用水域の水質汚濁、農作物の被害、飲料水としての地下水の汚染などの問題に対処するため、県は根本的な解決につながる下水道整備を推進する一方、下水道によらない地域へのコミュニティ・プラント、農業集落排水施設の整備並びに合併処理浄化槽の普及等について市町村を指導しています。
 また、合併処理浄化槽の普及のために、その設置者に補助金を交付している市町村への県費補助制度を昭和63年度に創設しました。

(2) 市町村の対応                                                                                 

 家庭雑排水対策については、個々の市町村が必要に応じ家庭等に対して合併処理浄化槽や雑排水処理施設等を設置する際に補助金を交付するなどの施策を講じています。

 

4 清流復活事業

 近年、中小の都市河川の水質汚濁が進んでいるため、その水質の浄化のためには、工場・事業場排水対策、生活排水対策、河川直接浄化、下水道整備等の総合的な対策を講ずる必要があります。
 そのため、昭和63年度からは水質汚濁の著しい河川を対象に、河川の汚濁特性に応じた浄化対策事業を総合的かつ計画的に推進するため、「清流復活事業」を実施しています。
 
○ 御用川清流復活事業
 県及び宇都宮市は、平成5年2月に策定した「御用川清流復活総合計画」に基づき、各種の浄化対策事業を実施しています。
 なお、御用川及び田川の水質を定期的に調査するとともに、水辺教室の開催や各種印刷物の作成などの啓発事業等を実施するため、平成3年5月に設立された「御用川清流復活協議会」は、様々な水質浄化事業の実施により御用川の水質がほぼ目標を達成したことから、平成12年3月に解散しました。

 

5 湖沼水質保全事業


(1) 湖沼保全対策                                                                                

 「水質汚濁防止法」に基づき、「窒素、りんに係る排水基準」の適用対象湖沼として指定された主要湖沼の水質保全を図るため、昭和61年5月に「栃木県湖沼水質管理計画」を策定し水質保全対策を実施してきました。
 その計画期間満了後は、「栃木県湖沼水質保全基本指針」(平成4年4月)を策定し、この指針に基づき平成4年4月に作成した「中禅寺湖・湯の湖水質保全計画」により、各種水質保全対策事業を実施してきました。
 現在は、その計画終了後に策定された「奥日光清流清湖保全計画」(平成9年度末)において、平成14年度の水質目標を表2−2−14のとおり定め、目標達成のため各種水質保全対策を進めています。

表2−2−14 中禅寺湖・湯の湖の水質目標    (単位:mg/?)


   項目

名称


COD
     


全窒素
     


全りん
     


透明度(m)
     

中禅寺湖

1.6


0.005

8.1

湯の湖
 

1.6
 

0.31
 

0.012
 

3.6
 

 

(2) 奥日光清流清湖保全事業                                                                 

 県及び日光市は、湯の湖、湯川、中禅寺湖の水質保全対策を総合的かつ計画的に推進することを目的として、7年度に「奥日光清流清湖保全協議会」を設立しました。
 平成11年度は、前年度に引続き、湖上学習会、機関誌「奥日光清流清湖だより」の発行、湯の湖の水草除去などの事業を行いました。


湖上学習会

 

6 地下水汚染対策


 地域の全体的な地下水質の状況を把握するため、毎年度「地下水の水質測定計画」に基づく概況調査を実施しています。
 その結果が、環境基準値を超過した場合には、「栃木県地下水汚染対策要領」に基づき、井戸所有者へ飲用指導を行うともに、汚染発生源調査及び汚染井戸周辺地区調査を行い、発生源への指導(地下水浄化対策を含む。)、汚染範囲の確定と周辺住民への周知等を行っています。
 過去に地下水汚染が確認された地区については、継続して発生源への指導を行うとともに、汚染拡大を監視するため定期モニタリング調査を行っています。
 なお、定期モニタリング調査の結果が2年間続けて環境基準以下となった場合には、地下水汚染地区再調査を実施し、すべてにおいて環境基準以下であることを確認して定期モニタリング調査を終了することとしています。

 

7 異常水質対策


 異常水質の早期対応を図るため、「栃木県異常水質対策要領」に基づき、環境保全に必要な連絡調整及び各種対策調査を実施しています。
 平成11年度の異常水質発生件数は36件で、このうち特定事業場に起因するものは5件でした。最近の傾向としては、油類流出による異常水質が多い状況にあります。(表2−2−15)
 今後とも事業場等における安全管理の徹底や地域住民の水質保全に対する意識の高揚を図っていきます。

表2−2−15 異常水質発生状況(11年度)



状況
 


発生件数
 

発生源

特定事業場

その他

油類流出

26

5

21

魚類浮上

6

0

6

河川汚濁

4

0

4

その他

0

0

0

   計
 

36
 

5
 

31
 

 

8 広域水質保全対策

(1) 関東地方知事会環境対策推進本部水環境部会
関東近県10都県の環境部局で構成し、水環境対策に共同して取り組むことを目的としています。平成11年度は、情報交換、研修会、報告書の作成、啓発用資材の作成を行いました。
(2)  関東地方水質汚濁対策連絡協議会
 建設省、関東地方7都県3政令市の環境、河川、下水道部局及び水資源開発公団で構成し、毎年、当面する水質保全に係る問題や異常水質発生時の各機関の対応等について協議しています。
 平成11年度は、埼玉県川口市の荒川河川敷において「採水分析訓練及び油流出防止対策訓練等」を実施するとともに、啓発用のパンフレットを作成しました。
(3) 全国湖沼環境保全対策推進協議会
 湖沼の水質保全は、河川とは異なり閉鎖性で水が滞留するという性質から対策が難しい部分があるため、協議会を通じて各都道府県の情報交換を行い、協調を図りながら対策の推進を図っています。
(4) 清流ルネッサンス21渡良瀬川上流部支川地域協議会
 建設省、栃木県及び足利市で構成し、水質汚濁の著しい矢場川、蓮台寺川及び袋川の水質浄化及び流量の確保を図るため、各種施策の調査、検討を行っています。
(5) 那珂川水系水環境保全協議会
 那珂川水系の水質保全を推進するため、流域内の16市町村を構成員とする協議会が設立されています。県は同協議会が実施する啓発活動や水質調査等の事業に協力・参加しています。
(6) 霞ヶ浦関連水域の水質保全

 茨城県の霞ヶ浦の流域は、茨城県、千葉県及び栃木県(益子町の一部3ku)にまたがっています。
 霞ヶ浦の水質保全を図るため、湖沼水質保全特別措置法に基づき、3県が「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」を策定し、各種の水質浄化対策を実施してきました。
 しかし、水質目標の達成には至らなかったため、「湖沼水質保全計画」を策定し、引き続き霞ヶ浦の水質浄化対策を推進しています。


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