本県の大半の河川は、那珂川、鬼怒川・小貝川及び渡良瀬川の三大水系に分けられ、その流域は、県土のほぼ３分の１ずつに等分されます。
　これらの河川の水質は、流域の産業活動や土地利用の形態などにより異なり、各水系の水質を特徴づけています。
　県内の公共用水域の水質汚濁の状況を監視するため、「水質汚濁防止法」に基づき「公共用水域及び地下水の水質測定計画」を作成し、12年度は県内59河川の128地点において水質調査を実施しました。
　人の健康の保護に関する項目（健康項目）については、渡良瀬川水系新川南町西地点（宇都宮市）でふっ素が環境基準を超過しましたが、他はすべての地点で環境基準を達成しています。
　生活環境の保全に関する項目（生活環境項目）について、河川の有機性汚濁の指標であるＢＯＤで環境基準の達成状況をみてみると、県全体の達成率は86％となり、前年度（72％) より向上しています。（図２−２−１）

　水系別のＢＯＤの環境基準達成率は、那珂川水系 100％、鬼怒川・小貝川水系90％、渡良瀬川水系76％となっており、前年度に比べてすべての水系で達成率が向上しています。
　類型別のＢＯＤの環境基準達成状況は、ＡＡ、Ａ、Ｂ、Ｃ類型では前年度より達成率が向上し、Ｄ、Ｅ類型では前年度と同じ達成率でした。（表２−２−２）

表２−２−２　類型別の環境基準達成状況（経年変化）　　　　　単位：％

（注）　１　達成率＝環境基準達成水域数／類型指定水域数×１００
　　　　２　各環境基準点（渡良瀬川上流水域は補助地点）において、ＢＯＤの環境基準適合率
　　　　　　75％以上を環境基準達成水域とした。

　生活環境項目別の環境基準適合状況は、ＢＯＤは前年度よりも高くなっていますが、他は前年度と同程度でした。
　生活環境項目について那珂川水系と鬼怒川・小貝川水系及び渡良瀬川水系を比較すると、那珂川水系は他水系と比較してＢＯＤの適合率が95.9％と高くなっていますが、大腸菌群数の適合率は15.9％と低くなっています。（表２−２−３）

表２−２−３　項目別環境基準適合状況（1２年度）

　過去５か年における、主要河川の県内末流地点における水質をＢＯＤの年平均値で表したものが図２−２−２です。
　12年度は前年度と比較して、渡良瀬川、鬼怒川、五行川で改善されています。

図２−２−２　主要河川県内末流地点の水質経年変化
　（BOD 年平均値)

(2) 各水系の概要                                                                                          

ア　那珂川水系の水質
　那珂川水系に属する河川の15水域における環境基準類型指定状況はＡＡ又はＡ類型で、他水系に比較し水質的に良好な河川が多くなっています。
環境基準達成状況をＢＯＤでみると、すべての水域で環境基準を達成しています。（表２−２−４）

表２−２−４　那珂川水系の環境基準達成状況（１１年度）

�T　環境基準を達成した水域

　那珂川本川の水質流程変化をＢＯＤを指標としてみると、全域ともほぼ良好な水質を維持しています。（図２−２−３）

　那珂川本川の水質流程変化をＢＯＤを指標としてみると、全域ともほぼ良好な水質を維持していることがわかります。（図２−２−３）

図２−２−３　那珂川の水質流程変化（ＢＯＤ75％値）（１１年度）

イ　鬼怒川・小貝川水系の水質
　鬼怒川・小貝川水系に属する河川の20水域における環境基準類型指定状況は、上流域のＡＡ類型から下流域のＣ類型までの４類型です。
　環境基準達成状況をＢＯＤでみると、環境基準達成水域がＡ類型、Ｃ類型で１水域増加し、達成率は90％と向上しました。（表２−２−５）

表２−２−５　鬼怒川・小貝川水系の環境基準達成状況（１２年度）

�T　環境基準を達成した水域

�U　環境基準を達成しない水域

鬼怒川本川の水質流程変化をＢＯＤを指標としてみると、大道泉橋地点（二宮町）までは約1.4mg/?で推移していますが、川島橋地点（茨城県下館市）以降は上昇しています。（図２−２−４）

図２−２−４　鬼怒川の水質流程変化（ＢＯＤ75％値）（１２年度）

ウ　渡良瀬川水系の水質
　健康項目について、新川南町西（宇都宮市）でふっ素が環境基準を超過しましたが、これは事業場排水の影響と考えられ、環境基準0.8mg/?に対し、平均値が0.85mg/?でした。
渡良瀬川水系に属する河川の29水域における環境基準類型指定状況は、上流域のＡＡ類型から下流域のＥ類型までの６類型にわたっています。
環境基準達成状況をＢＯＤでみると、Ｂ類型で２水域、Ａ類型・Ｃ類型で１水域増加し、達成率は76％と向上しました。（表２−２−６）

表２−２−６　渡良瀬川水系の環境基準達成状況（１２年度）

�T　環境基準を達成した水域

�U　環境基準を達成しない水域

　渡良瀬川本川の水質流程変化をＢＯＤでみると、上流域では比較的良好な水質を示していますが、中橋（佐野市）以降は上昇している。（図２−２−５）

図２−２−５　渡良瀬川の水質流程変化（ＢＯＤ75％値）

(3) ダイオキシン類の水質調査                                                                            

　河川中におけるダイオキシン類の状況を把握するため、河川50地点、河川の底質5地点において調査を実施しました。
　その結果は、調査した50地点全ての地点で水質環境基準1pg-TEQ/?以下でした。
　なお、底質について環境基準の設定はありませんが、全国の測定結果と比較して高い値はありませんでした。

(4) 環境ホルモンの水質調査                                                                               

　内分泌攪乱化学物質（いわゆる環境ホルモン）の存在状況を把握するため、11年度に引き続き24項目について、主要河川5地点において調査を実施しました。
　その結果、12年度は3項目が検出されましたが、全国の調査結果の範囲内でした。
　なお、現在のところ、いずれの物質も環境基準等は設定されていません。

(5) 水生生物による水質調査                                                                              

　水生生物による水質調査は、各水質階級別の指標となる生物の生息数等を調査し、水質の判定をするものです。
　この方法は、環境を構成する様々な要素を長期的かつ総合的に把握することができ、理化学試験による水質の評価と併せて河川の状況を知る有効な手段です。
　生物学的水質階級は「きれいな水（貧腐水性）」、「少し汚れた水（β中腐水性）」、「汚い水（α中腐水性）」、「大変汚い水（強腐水性）」の４階級になっています。
　栃木県では昭和59年度から那珂川水系、鬼怒川・小貝川水系、渡良瀬川水系の３水系について年度ごとに順次調査を行っており、12年度は鬼怒川・小貝川水系18地点について調査を行いました。
　前回の調査（９年度）と比較すると、「きれいな水（貧腐水性）」の割合が増加しました。（表２−２−７）
　水系別の評価は、那珂川水系が最もきれいな水の割合が高く、次いで鬼怒川・小貝川水系、渡良瀬川水系の順になっており、理化学的な水質評価であるＢＯＤの評価と同じ傾向になっています。

表２−２−７　各水系における水質階級評価状況

（注）１　ｍ／ｎ＝（各評価数）／（地点数）　　　２　調査は、基本的に5月と11月に実施した。

(1) 概　　況                                                                                                   

　近年、全国的な傾向として、湖沼流域における社会活動の増大等により、窒素、りん等の栄養塩類の湖沼への流入が増加し、植物プランクトン等が大量に繁殖することによる水質の悪化や魚類のへい死、上水道における異臭味の発生等の障害が生じる富栄養化現象が進行しています。
　本県では、湯の湖の富栄養化問題に対応するため、底泥のしゅんせつ、下水道の整備、湯元下水処理場の改善等の対策を講じています。
　湖沼の水質については、湖沼の環境基準項目に加えて、富栄養化の原因となる窒素、りんの基準も設けられており、中禅寺湖はAA類型・�T類型（全りんのみ）に、湯の湖はA類型・�V類型にそれぞれ環境基準が指定されています。
　また、13年3月に深山ダム貯水池（AA類型・�T類型（全りんのみ))、川治ダム貯水池（AA類型・�U類型）が新たに類型指定を受けました。

(2) 各湖沼の水質                                                                                            

ア　中禅寺湖の水質
　ＣＯＤ（75％値）は1.9�r／ｌ（基準値1�r／l）、全りんは0.009�r／l（基準値0.005�r／l）で、ともに環境基準を達成していません。
　中禅寺湖は、植物プランクトンの増殖などによる水道水の異臭味障害が発生する等、富栄養化の進行が懸念されています。（図２−２−６）

イ　湯の湖の水質
　ＣＯＤ（75％値）は2.9�r／l（基準値3�r／l）で、環境基準を達成していますが、全窒素は0.42�r／?（基準値0.4�r／l）で、環境基準を達成していません。
　また、全りんについては0.021�r／?（基準値0.03�r／l）で、環境基準を達成しています。
　なお、湯の湖の富栄養化に大きく関与している湖底に堆積している汚泥のしゅんせつ工事を、4年度から8年度に、実施しています。（図２−２−７）

図２−２−７　湯の湖の水質

ウ　人工湖の水質
　人工湖の水質状況を把握するため、「公共用水域の水質測定計画」に基づき、4貯水池につ
いて調査を実施しています。
　水質については、いずれも前年度と比較して横ばいの状況です。（図２−２−８）

図２−２−８　人工湖の水質

４　地下水水質の現況

(1) 県内の地下水汚染の状況                                                                              

　トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等による地下水汚染については、昭和60年度から13年3月までに86地区の汚染が確認されていますが、そのうち36地区の汚染が終息し、現在、50地区の監視を続けています。

(2) 地下水汚染対策                                                                                         

　有害物質による地下水汚染の未然防止を図るため、元年に「水質汚濁防止法」が改正され、有害物質を含む汚水の地下浸透の禁止と地下水の水質監視に関する規定が設けられました。
　さらに9年3月には従来の「地下水の水質評価基準」に代わり、「地下水の水質汚濁に係る環境基準」が定められ告示されています。
　県では、地下水の水質汚濁の状況を監視するため、水質汚濁防止法の規定に基づき、毎年度「地下水の水質測定計画」を作成し、実態把握のための概況調査及び汚染地区の監視のための定期モニタリング調査を実施しています。

(3) 12年度の状況                                                                                            

ア　概況調査結果
　県内136地点で概況調査を実施したところ、８地点で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が環境基準を超過しましたが、それ以外の調査地点では環境基準を超過した項目はありませんでした。

イ　定期モニタリング調査結果
　地下水汚染が確認されている50地区において、汚染状況の監視のための定期モニタリング調査を実施しました。その結果、汚染の拡大は見られず、19地区では環境基準以下となりました。

ウ　新たな汚染の確認
　宇都宮市の1地区で総水銀による汚染、大平町の１地区及び藤岡町の１地区でトリクロロエチレン等の有機塩素系化合物による汚染を新たに確認しました。
　このため「栃木県地下水汚染対策要領」に基づき、汚染井戸周辺地区調査及び発生源調査を実施し、汚染範囲の確定、飲用水対策及び発生源対策等を行うとともに、継続的に監視するためモニタリング調査を実施しました。

　地下水におけるダイオキシン類の状況を把握するため、地下水61地点において調査を実施しました。その結果は、調査した61地点全ての地点で水質環境基準１pg-TEQ/L以下でした。