トップ > 環境 > 環境保全・温暖化対策 > 環境保全 > とちぎの環境 > 計画・報告書等(環境資料アーカイブ) > 環境の状況及び施策に関する報告書(環境白書)  > 平成13年度環境の状況及び施策に関する報告書(要約)

化学物質対策

 

1 ダイオキシン類対策


(1)背景
 ダイオキシン類は、工業的に製造される物質ではなく、物の製造や燃焼に伴って自然に生成してしまう物質で、非常にわずかではありますが環境中に広く存在しています。
 ベトナム戦争における枯れ葉作戦や化学工場の爆発事故等に伴う高濃度のダイオキシン類の暴露によりヒトの健康に影響が生じた事例は、世界的に知られています。
 日本においても、廃棄物の焼却等によって発生するダイオキシン類による環境汚染が全国的に問題となり、その対策として「大気汚染防止法」の改正による排出抑制を図り、11年7月には「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定され、排出規制が強化されました。
 また、同法において、ヒトが生涯にわたって摂取し続けても許容される1日当たり体重1s当たりの摂取量(TDI)が4pg-TEQ/kg/日に定められたほか、環境基準が大気0.6pg-TEQ/m3以下、水質1pg-TEQ/?以下、土壌1,000pg-TEQ/g以下と定められました。

(2)取り組みの状況
 
県では、9年12月、「小規模焼却炉に係るダイオキシン類削減のための指導方針」を策定し、小規模焼却炉の使用について指導してきました。
 また、10年2月にはダイオキシン類対策を全庁的に調整し、総合的に推進するための庁内組織として「栃木県ダイオキシン対策連絡会議」を設置しました。(12年4月には内分泌攪乱化学物質を対象に含め、「栃木県ダイオキシン類等対策連絡会議」に改組しています。)
 さらに、11年1月には、「栃木県におけるダイオキシン類対策についての当面の取組方針」を策定し、発生源対策の推進として市町村等のごみ処理施設その他の廃棄物焼却施設対策の推進、ごみ減量化・リサイクルの推進、モニタリング調査等の推進、情報の収集・提供などの各種対策を講じています。

(3)常時監視
 ダイオキシン類対策特別措置法第26条に基づき、大気、水質及び土壌の汚染の状況について、常時監視を行っています。
 12年度は、大気10地点、水質(公共用水域(河川・湖沼)・地下水)113地点、河川底質5地点及び土壌(一般環境・工場事業場周辺)98地点でダイオキシン類の測定を行いました。

 ア 環境基準の達成状況
   ・ 大気及び水質については、全ての調査地点で環境基準を達成しています。
   ・ 底質については、環境基準が設定されていません。
   ・ 土壌については、97地点で環境基準を達成していますが、1地点で環境基準を超えて
    います。

 イ ダイオキシン類汚染の状況
  (ア) 大 気
   各調査地点の年平均値は、0.096〜0.36pg-TEQ/m3になっています。
  (イ) 水 質
   河川及び湖沼水中の濃度は0.11〜0.91pg-TEQ/?、地下水中の濃度は
   0.11〜0.32pg-TEQ/?になっています。
  (ウ) 底 質
   河川底質のダイオキシン類濃度は、0.85〜9.9pg-TEQ/gになっています。
   底質については環境基準の設定はありませんが、環境省が実施した
   「平成11年度公共用水域等のダイオキシン類調査結果について」で報告されている
   底質の測定結果(0.066〜230pg-TEQ/g)と比較して高い値はありませんでした。
  (エ) 土 壌
   各調査地点の濃度は、0.026〜1,200pg-TEQ/gになっています。
   環境基準を超えた地点については、検出されたダイオキシン類のパターンから
   ペンタクロロフェノール(PCP)に由来するスポット的な汚染と推定されました。

調査対象 区分 測定
地点数

測定結果

環境基準
最低値 最高値 平均値 中央値
大気    10   0.096   0.36   0.24  0.29 0.6pg-TEQ/m3
水質 河川
湖沼
地下水
50
 2
 61
  0.11
  0.11
  0.11
  0.91
  0.11
  0.32
  0.32
  0.11
  0.13
  0.28
  0.11
  0.11
1pg-TEQ/l
底質 河川   5   0.85   9.9   4.8   3.3 基準なし
土壌     98   0.026 1,200   40   8 1,000pg-TEQ/g

(4)工場・事業場の規制と指導
 ダイオキシン類による環境の汚染を防止するため、常時監視と並行して「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づく工場・事業場への立入検査を実施しています。

ア 特定施設の届出状況
 「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づく特定施設の届出状況は、表2−6−2に示すとおりです。

表2−6−2  ダイオキシン類対策特別措置法に規定される施設数(12年度末)

   @ 大気基準適用施設

種類・施設規模

施  設  数
県 分 宇都宮市分

製鋼用電気炉

1

1

2

アルミニウム合金製造施設

67

0

67
廃棄物焼却炉
4t/h以上

14

5

19

2t/h以上4t/h未満

34

6

40

2t/h未満

379

35

414

施 設 合 計

495

47

542

工場・事業場数

351

33

384

   A 水質基準適用施設

施設の種類 施  設  数
県 分 宇都宮市分
アルミニウム又はその合金の製造の用に供する焙焼炉等の廃ガス洗浄施設と湿式集じん施設
6
 

0
 

6
 
廃棄物焼却炉の廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設及び当該廃棄物焼却炉の灰の貯留施設
24
 

16
 

40
 
下水道終末処理施設
2

0

2
上記第1号から第5号までに掲げる施設を設置する工場及び事業場から排出される水の処理施設(前号に掲げるものを除く。)
0

1

1

施 設 合 計

32

17

49

工場・事業場数

20

7

27

イ 工場・事業場に対する立入検査状況
 12年度は、延べ146工場・事業場(県分138工場等、宇都宮市分8工場等)について立入検査を行いました。(表2−6−3)
 その結果、立入検査時の指導事項の主な内訳は、届出の不備23件(44.2%)、その他12件(23.0%)、排出基準・管理基準の遵守8件(15.4%)でした。(表2−6−4)
 行政分析については、宇都宮市が7施設について実施し、いずれも基準に適合していました。(表2−6−5)
 なお、県では12年度に県保健環境センターに測定施設を設置し、ダイオキシン類の検査体制を整備しました。
 13年度からは工場・事業場の行政分析を計画的に行い、排出削減指導や監視体制の充実強化を図っていくこととしています。

表2−6−3 立入検査実施数

区        分

12年度

大気関係の特定施設を設置する工場・事業場 142
水質関係の特定施設を設置する工場・事業場 4

合        計

146

(注)1 大気関係の立入検査実施数は、県分135件、宇都宮市分7件
   2 水質関係の立入検査実施数は、県分 3件、宇都宮市分1件

     表2−6−4 立入検査指導内容(12年度)

指 導 事 項 工場・事業場数(件)
 県  宇都宮市 合 計
指導した工場・事業所数(延べ) 52 52


 

 

 

 

排出基準・管理基準の遵守
自主分析の実施
申請届出 23 23
施設等の点検・管理
処理施設等の設置・改善
管理組織体制
記録の整備
その他 12 12

    表2−6−5 行政分析結果(12年度)

区  分 施設数(件)
宇都宮市 合 計
実施数
不適合数

ウ 事業者の自主測定結果
 「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づき、特定施設の設置者は毎年1回以上自主分析を行い報告をすることが義務づけられています。
 排出基準が12年1月に適用されてから12年度末までの事業者の自主測定結果報告状況は、大気基準適用対象676施設に対し327施設、水質基準適用対象17事業場に対し14事業場の報告があり、すべて基準に適合していました。(表2−6−6)
 測定を行っていない事業者に対しては、速やかに測定を行うよう指導しています。

表2−6−6 ダイオキシン類測定結果の報告状況

@ 大気基準適用施設

種類・施設規模 対象
施設数
測定済施設数 未測定施設数
報告
施設
基準
適合
基準
不適
未報告 測定中 廃止 休止 新設 未測定
製鋼用電気炉 2
(1)
2
(1)
2
(1)
0
 

 

 

 

 

 

 
アルミニウム合金
製造施設
67
 
37
 
37
 
0
 
10
 
15
 
1
 
4
 

 

 
廃棄物
焼却炉
4t/h以上 19
(5)
12
(2)
12
(2)
0
 
1
 
4
(3)

 
1
 

 
1
 
2t/h以上
4t/h未満
41
(6)
35
(5)
35
(5)
0
 

 

 
1
 
4
 
1
(1)

 
2t/h未満 547
(35)
241
(28)
241
(28)
0
 
22
 
20
(1)
124
 
54
(2)
14
(2)
72
(2)

施設合計

676
(47)
327
(36)
327
(36)
0
33
39
(4)
126
63
(2)
15
(3)
73
(2)

(注) ( )は、宇都宮市分の内数

A 水質基準適用施設

種    類 対象事業場数 測定済事業場数 未測定事業場数
報告
施設
基準
適合
基準
不適
未報告 測定中 廃止
 
休止
 
新設
 
未測
アルミニウム又はその合金の製造の用に供する焙焼炉等の廃ガス洗浄施設と湿式集じん施設 2 2 2 0            
廃棄物焼却炉の廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設及び当該廃棄物焼却炉の灰の貯留施設 12
(1)
10
(1)
10
(1)
0 1 1        
下水道終末処理施設 2 1 1 0         1  
上記第1号から第5号までに掲げる施設を設置する工場及び事業場から排出される水の処理施設(前号に掲げるものを除く。) 1
(1)
1
(1)
1
(1)
0            
事 業 場 合 計 17
(2)
14
(2)
14
(2)
0
1
1


1

   (注) ( )は、宇都宮市分の内数

 

2 環境ホルモン対策


(1)背景
 内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)については、野生生物の生殖異常などの報告がなされていますが、その環境中における挙動や健康影響・生態影響については、科学的に未解明な部分が多い状況です。
 しかし、環境ホルモンは、ヒトや野生生物の内分泌作用を攪乱し、生殖機能障害、悪性腫瘍等を引き起こす可能性のある物質であって、生物の生存の基本的条件に関わるものであり、世代を超えた深刻な問題を引き起こすおそれがあることから、これに対する環境保全対策が重要となっています。
 環境省では、9年3月に「外因性内分泌攪乱化学物質問題に関する研究班」を設置し、既存の知見の収集整理及び今後の課題についての検討を行い、同年7月に中間報告書をとりまとめました。
 そして、10年5月「外因性内分泌攪乱化学物質問題への環境庁の対応方針について」(いわゆ
る環境ホルモン戦略計画SPEED'98)を策定し、内分泌攪乱作用が疑われる約70種の化学物質について、基本的な考え方並びに実態調査、試験研究及び情報提供の推進等の具体的な対応方針を示し、さらに12年11月には、新しい知見等を追加・修正した「環境ホルモン戦略計画SPEED'982000年11月版」を公表しました。

(2)取組の状況
 環境ホルモンについては、科学的に未解明な部分が多いことから、ダイオキシン対策連絡会議において、情報収集及び情報交換等により情報の共有化を図ってきました。
 12年度は、11年度に引き続き水質の環境ホルモンの調査を5地点で実施しましたが、その結果は表2−6−7のとおりで、検出状況は全国の調査結果の範囲内でした。 

表2−6−7  環境ホルモン実態調査結果(12年度)    (単位:μg/l)


        地  点

 物質名

那珂川 鬼怒川  渡良瀬川
箒 川武茂川江川思 川三杉川
箒川橋 梁 橋末流乙女大橋末流

臭化ビフェニル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

二臭化ビフェニル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

三臭化ビフェニル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

四臭化ビフェニル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

トリブチルスズ

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

トリフェニルスズ

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

4-t-ブチルフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

0.01

4-n-ペンチルフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

4-n-ヘキシルフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

4-n-ヘプチルフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

ノニルフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

0.2

4-t-オクチルフェノール

N.D.

N.D.

0.03

N.D.

0.03

4-n-オクチルフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

ベンゾ(a)ピレン

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

ベンゾフェノン

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

4-ニトロトルエン

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

オクタクロロスチレン

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

ペンタクロロフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

ビスフェノールA

N.D.

N.D.

0.01

0.04

0.02

2,4-ジクロロフェノール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジ-2-エチルヘキシル

N.D.

N.D.

1.7

N.D.

N.D.

フタル酸ブチルベンジル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジ-n-ブチル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジシクロヘキシル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジエチル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジペンチル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジヘキシル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

フタル酸ジプロピル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

スチレンの2量体

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

スチレンの3量体

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

n-ブチルベンゼン  

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

スチレンモノマー

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

17-β-エストラジオール

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

     (注) N.D.は検出下限値未満 

 

3 化学物質の排出移動登録制度


(1)背 景
 化学物質は、その用途及び種類が多岐にわたり、工業用に生産されているだけで、現在、約5万種にも及ぶと言われていますが、直接的に生産されるこれらの化学物質とは別に、廃棄物の焼却や燃料の燃焼等により非意図的に生成される物質もあります。
こうした多種多様な化学物質のなかには、一般環境中に長期にわたり残留し、かつ、有害性の高い物質もあり、微量であってもヒトの健康に有害な影響を及ぼすおそれがある物質があることも指摘されています。
 このため、一般環境中において化学物質の状況を把握し、必要に応じて適切な対策を講じることが極めて重要となっています
 多種多様な未規制の化学物質を効率的に管理するためには、事業者自らが積極的に取り組むことが不可欠であり、欧米では、化学物質の排出や移動の量について事業者自ら公表し、適正に管理することにより環境への負荷を低減する制度が既に採用されています。

(2)制度の導入状況
 我が国においても、化学物質による環境への影響を未然に防止するため、特定の化学物質についての排出や移動の量を把握し、化学物質の性状や取扱いに関する事業者の情報を公表することにより、事業者による化学物質の自主的な管理を適正に推進することを目的とした「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(いわゆるPRTR法)が11年7月に制定され、13年1月1日から法律で定める化学物質に関する情報を提供するMSDS制度が施行されています。
 さらに、13年4月のPRTR制度のスタートに向けて、広報媒体等により関係者に対する周知を図るとともに、法律の説明会を13年3月に2回開催しました。(参加者約460名)
 13年度もPRTR法の円滑な実施に向け、関係者に対する普及啓発に努めていくこととしています。


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