(1) 自然環境の現況
本県は、県北部に日光、高原、那須火山群からなる山岳地帯が形成され、湖沼、渓谷、瀑布や高層湿原等が原生林と調和した自然景観を形成しています。
また、地形、地質、気象など立地条件の特異性によって、南方系、北方系植物が混在して分布し、氷河時代からの動植物が数多く生息し、特異種や貴重なもの、珍しい生態を示すもの等変化に富んだ自然相を呈しています。
一方、中央部及び南部の平地帯は、経済活動の場として時代とともに変化してきましたが、人間と自然との長いかかわり合いの中で存続している平地林等は、防音、防火、憩いの場等生活環境上計り知れない効用をもつ身近な自然として重要な意義を持っています。
なお、この地帯は、奈良時代からの東国文化の中心地であり、古墳や遺跡等の歴史的、文化的な遺産が数多く存在しています。
(2) 森林の現況
本県の森林は、県土の約55%を占め、木材等の林産物の生産機能と水資源かん養、県土の保全、観光資源としての優れた自然環境の提供など、県民生活と深い関わりを持ち、多面的な公益的役割を果たしています。
都市及びその周辺では、宅地化等の進展に伴い平地林等の貴重な緑が減少する傾向にあり、今後、より一層の緑化推進が必要な状況にあります。
(3) 自然公園の現況
本県の自然公園の面積は、約13万haであり県土の面積の約21%を占めています。
県北西部の山岳地帯を中心とした地域は、我が国の代表的な自然公園である日光国立公園によって占められ、また、県内各地には、地域の特性を持つ八つの県立自然公園があって、それぞれ変化に富んだ自然景観を有しています。(図3−1−1)
これらの自然公園には、県の内外から自然を求めて多くの人々が訪れています。
図3−1−1 自然公園の現況 (単位:ha)
公園名 | 特別保
護地区 | 特 別
地 域 | 普 通
地 域 | 計 |
国立公園
日 光 |
1,015 |
47,746 |
54,718 |
103,479 |
小 計 |
1,015 |
47,746 |
54,718 |
103,479 |
県 立
自然公園
益 子
太平山
唐沢山
前日光
足 利
宇都宮
那珂川
八 溝 | |
581
297
433
1,756
440
977
1,131 |
1,555
782
910
9,226
880
1,880
2,025
5,787 |
2,136
1,079
1,343
10,982
1,320
1,880
3,002
6,918 |
小 計 |
|
5,615 |
23,045 |
28,660 |
合 計
|
1,015
|
53,361
|
77,763
|
132,139
|
(注)日光国立公園の面積は本県分のみを計上した。
|
(1) 自然環境の保全対策
|
|
ア |
自然環境保護事業
自然環境保全及び自然保護意識の高揚のための普及啓発、調査等を実施しています。
|
イ |
自然環境保全地域等の指定
「自然環境保全法」及び「自然環境の保全及び緑化に関する条例」に基づき、優れた自然環境を持つ地域を自然環境保全地域に、また、市街地周辺地及び歴史的・文化的遺産と一体となった緑地を緑地環境保全地域に指定することとしています。
12年度までに国指定の自然環境保全地域1か所を含め41か所5,355haの指定を行っています。(表3−1−1)
|
表3−1−1 自然環境保全地域等指定状況 (13年4月1日現在)
県自然環境
保全地域 | 緑地環境保全地域 | 国指定の
自然環境保全地域 | 計 |
箇所数 |
面 積 |
箇所数 |
面 積 |
箇所数 | 面 積 |
箇所数 |
面 積 |
26
|
4,672ha
|
14
|
138ha
|
1
|
545ha
|
41
|
5,355ha
|
|
|
ウ |
自然(緑地)環境保全地域の整備
自然(緑地)環境保全地域に指定されている地域の案内標識等を整備して、優れた自然環境の保全に努めています。
大田原市の親園自然環境保全地域には、国の天然記念物及び国内希少野生動植物種に指定されているミヤコタナゴの保護地があり、その保護管理を実施しています。
|
エ |
生息地等保護区の指定
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき、大田原市羽田地区のミヤコタナゴ生息地(60.6ha)が6年12月に全国で初めて生息地等保護区に指定されました。
当地域では、ミヤコタナゴ生息環境の維持管理及び保護増殖事業が実施されています。
|
オ |
自然環境基礎調査
自然環境保全法第5条に基づく自然環境保全基礎調査を実施するとともに、本県の自然環境把握のために実施した基礎調査の取りまとめを行っています。
|
カ |
平地林の保全
平地林は、緑豊かなふるさと栃木を代表する景観であり、大気の浄化、防音、防風等の公益的効用と生活に潤いを与える身近な緑の供給地としても重要な役割を果たしています。
今年度は、県内の平地林現況調査、普及啓発用小冊子作成やイベントの開催、トライアングルエコー事業(住民参加による保全活動の促進)などによる保全活動の一層の促進を図ることとしています。
|
キ |
自然とのふれあいの推進
豊かな自然とのふれあいを通して、自然のしくみや大切さを理解するために自然観察会や野鳥観察会を開催するほか、自然とのふれあいを推進させるための自然体験プログラムの普及や、人材の育成等を実施しています。
|
ク |
とちぎふるさと街道整備事業
2年4月に「とちぎふるさと街道景観条例」を施行し、同年6月に条例に基づき、那須・塩原街道景観形成地区を指定しました。
ここでは、街道景観形成基準に基づく指導を行い、「みどり豊かな栃木県」のイメ−ジにふさわしい街道景観の形成を図っています。
また、景観保全のための土地等の購入制度により、効果的な施策の推進を図っています。
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(2) 自然公園の保護対策
自然公園(日光国立公園及び八つの県立自然公園)の優れた風景地を保護するため、各種行為の規制等を行うとともに、快適な利用を確保するための施設整備、利用者に対する適正利用の指導等を行います。
13年度の主な取組は、次のとおりです。
ア |
自然公園管理
公園計画に基づく特別地域などの地域指定により各種行為の規制を実施するとともに、利用者に対する適正利用の指導等を行います。
|
イ |
県立自然公園フレッシュアップ事業
益子県立自然公園の集団施設地区の再整備を行います。
|
ウ |
自然公園等施設整備事業
自然公園の快適な利用促進を図るため、歩道、園地等の整備を行います。
|
エ |
自然公園核心地域総合整備事業
日光国立公園奥日光地域において、優れた自然の保全や復元のための整備を一層強化するとともに、より快適な利用を確保するための施設を整備します。
|
オ |
国際観光地「日光」活性化対策事業
我が国を代表する国際観光地「日光」の活性化を図るため、日光市中宮祠地区において基盤整備等を行います。
|
カ |
奥日光環境保全対策事業
日光中宮祠地区の整備施設の管理運営及び奥日光地域における低公害バス運行に対し助成します。
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(3) 野生鳥獣の保護対策
野生鳥獣は、自然環境を構成する重要な要素の一つであり、自然環境を豊かにするものであると同時に、農林水産業の振興及び生活環境を快適にする上で、欠くことのできない役割を果たすものです。
したがって、鳥獣の生息状況、生態等を考慮して計画的、効果的な鳥獣保護の施策を進め、自然環境の保全を推進します。
県においては、9年度から13年度までの5年間を対象として策定された「第8次鳥獣保護事業計画」に基づき、鳥獣の保護繁殖のための鳥獣保護区等の設定、野生鳥獣による被害防止、狩猟の適正化を図る等総合的な鳥獣保護事業を実施しています。(表3−1−2)
13年度も、鳥獣保護及び狩猟の適正化を図るため、同計画に基づき、鳥獣保護区の設定、放鳥、普及啓発等を行う鳥獣保護事業、野生鳥獣被害対策、野生鳥獣の保護管理を実施します。
表3−1−2 鳥獣保護区等の設定状況
(13年3月31日現在)
(単位:ha)
区 分 | 箇所数 | 面 積 | 備 考 |
鳥獣保護区 |
113 |
78,100 |
うち特別保護地区 18箇所 6,407ha |
休猟区 |
9 |
9,738 | |
銃猟禁止区域 |
239 |
98,818 | |
計
|
361
|
186,656 | |
(4) 環境緑化対策
本県の緑地(農用地を含みます。)は県土の約80%を占め、全国的にも緑に恵まれた環境にありますが、その現状は、人口の集中化や都市化の進展に伴う緑の減少や緑資源の大部分を占める森林の手入れ不足等、緑を取り巻く環境は必ずしも楽観を許さない状況にあります。
一方、県民は豊かな緑のなかで心のゆとりや精神的豊かさを求める意識が高まり、県土緑化の推進が強く要請されています。
本県では、このことに応え、かつ、栃木県総合計画「とちぎ21世紀プラン」の5つの基本目標の1つである「快適で安全な暮らしを築く」の着実な実現を図るため、「自然環境の保全及び緑化に関する条例」に基づき策定した「第3次栃木県緑化基本計画」により、各種緑化施策を展開しています。
緑化の方向としては、地域の自然的特性を生かし、人と緑とが調和した、『山』『里』『街』の緑づくりを進め、
@ みどりを造り育てる
A みどりを守る
B みどりを学ぶ
ことを柱に、多様な緑化施策を総合的かつ計画的に実施し、県土の緑化推進を図っています。
(5) 林野保護対策
樹木の育成は、厳しい自然環境の中で長期間にわたって行われるため、各種の病虫害にかかる場合があり、しかも、ひとたび被害を受けると、その回復が非常に困難になります。
特に、松くい虫の被害は昭和55年度にピークとなり、その後被害対策の効果等により鎮静化に向かっていますが、依然として被害が発生しているため、地域が主体となり、地域の実情に応じたきめの細かい被害対策を通じて松の緑を守ることが重要な課題となっています。
本県の民有林の松林面積は約2万5千haあり、民有林総面積の約19%を占めています。
これらは、保安林に指定される等、公益的機能を高度に発揮し、木材資源の確保はもとより災害の防止や環境の保全等の上から、欠かすことができないものとなっています。
13年3月末現在の松くい虫被害状況は、被害発生市町村数46、被害松林面積約6千5百ha、被害材積約1万6千‰に及んでいます。
松くい虫の被害予防措置として、薬剤の航空散布や地上散布を計画的に実施するとともに、駆除措置として被害木を適期に伐倒駆除することにより被害の鎮静化に務め、併せて「松くい虫防除県民運動」を推進して、防除意識の高揚に努めています。
また、林野火災対策に関しては、初期消火機材の整備を図るとともに、山火事予防の啓発など予防活動を実施しています。 |