第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第2章 人と自然が共生する潤いのある地域づくり

第7節 良好な景観の保全と創造

1 景観の状況

県内には、自然、都市、農村などの地域の生活風景と一体となった良好な景観が多数存在している。
 また、本県は古くから文化の栄えたところであり、古墳群、遺跡、社寺、古碑等や日光山に関連する社寺、杉並木等の歴史的、文化的遺産に恵まれている。
 街路や公共施設、市街地の整備などに合わせて、美しい街並みの形成が進められている一方、建物の高さや色調等の不統一、張り巡らされた電線や無秩序に氾濫している広告物等の景観上の問題も生じている。

2 良好な景観の保全と創造

(1)景観形成の総合的な推進

ア 景観法に基づく良好な景観の形成
 “とちぎ”の自然・都市・農山村等の地域特性を生かした良好な景観の保全と創造を図るため、「景観法」や「栃木県景観条例」に基づき、良好な景観の形成を推進している。
イ 景観計画の策定の促進
 景観法に基づいて景観行政団体となった市町に対して、景観アドバイザーの派遣、景観行政研究会による情報提供等を行うことにより、地域特性を生かした景観計画策定の促進を図っている。
 19年度は宇都宮市、日光市、小山市、那須町が景観計画を策定し、新たに足利市、高根沢町が景観行政団体となった。(表2−2−30)


表2−2−30 県内市町の景観法の施行状況(20年4月1日現在)
市町名 県の同意日 景観行政団体 景観計画策定日 景観計画の施行日
宇都宮市 H16.12.17
(中核市)
H19.9.28 H20.1.1
日光市 H16.12.17 H17.1.17 H20.4.1 H20.8.1
小山市 H17.8.17 H17.10.4 H19.10.25 H40.4.1
那須町 H17.11.17 H17.12.20 H20.3.6 H20.4.1
(一部施行)
足利市 H20.1.8 H20.3.1    
高根沢町 H20.2.26 H20.3.31    
那須塩原市 H20.2.22 H20.4.1    
(注)日光市景観計画は、20年3月策定、20年4月1日告示

(2)良好な都市景観の保全と創造

ア 全県フラワーパーク化事業
 花とのふれあいを通じて、花による彩りと潤いのあるふるさとづくりを推進している。
 平成19年度は、花のまちづくりコンクールを実施し、花による景観づくりや花の名所等の写真など195点(実践活動の部25点、フォトレポートの部170点)の応募があった。
イ 地域住民との協働による違反広告物の除却推進
住民参加型違反広告物除却団体の活動を推進して、良好な景観の維持保全を図っている。
ウ 街路等の整備
 都市の骨格を形成する幹線道路等の都市活動を支える道路網の整備を積極的に推進している。特に都市計画道路宇都宮水戸線(宇都宮市)、小山栃木都賀線(栃木市)等の主要放射・環状道路の整備を推進している。
 また、道路空間の有効活用、都市景観の向上、都市防災機能の改善等を図るため、小山結城線(小山市)等の電線類の地中化を推進している。
 なお、街路樹の植栽は、都市美観構成上の一要素として重要なものであると同時に、県民に緑陰の提供、防じん、防風、防煙の効果、火災の延焼防止、都市生活者の疲れた神経の緩和作用及び植物の同化作用による空気の清浄化、涼化作用等の多様な役割を果たしている。
 19年度末における街路樹の整備状況は、都市内(市街化区域、用途地域内)における都市計画道路の約39%の区間で、トチノキや夏椿等の高木をはじめとした植栽が施されている。
エ 地区計画等の活用
 建築物の用途や形態、道路、公園などをきめ細かく定め、都市に生活する人たちの身近な生活環境の保全・整備を図るため、市町村が策定する地区計画が、19年度は「下皆川・富田地区(大平町)」をはじめ6地区で策定された。
 19年度末現在地区計画策定状況  21市町 93箇所

(3)良好な自然・農村景観の保全と創造

ア とちぎふるさと街道整備事業
 2年4月に「とちぎふるさと街道景観条例」を施行し、同年6月に条例に基づき那須・塩原街道景観形成地区を指定し、12年12月に指定地区を拡張した。ここでは、工作物の設置や木竹の伐採等に対し街道景観形成基準に基づいた指導を行い、「みどり豊かな栃木県」のイメ−ジにふさわしい街道景観の形成を図っている。
 また、街道景観形成地区内の特に景観形成上必要がある土地については、栃木県自然景観保全基金等による買い取りを実施するとともに、取得した土地の下草刈等を行い、適正な管理に努めている。
 さらに、13年度に創設した「とちぎふるさと街道景観里親制度」により、13年度に2団体、14年度に1団体、19年度に3団体を街道景観形成地区において景観形成のための活動を行う団体(里親団体)として認定しており、これらの里親団体が行う活動に対し助成を行っている。
 こうした取組により、優れた街道景観の形成が図られるとともに、地域における景観保全意識の向上につながっている。(表2−2−31)

表2−2−31 とちぎふるさと街道景観里親団体一覧
団体名称 認定年月日 活動区域 活動内容
那須町立那須小学校児童会 H13.11.22 那須街道 苗木の手入れ、街道沿いの清掃等
那須町立高久小学校児童会 H13.11.27 那須街道 苗木の手入れ、街道沿いの清掃等
那須町田代自治公民館 H15.3.12 那須街道 街道沿線にある花壇の手入れ等
なすぼっくり会 H19.10.17 那須街道 下草刈り、清掃等
那須高原クロスロード振興会 H19.10.17 那須街道等 下草刈り、清掃等
那須Eーとも H19.12.12 那須街道 下草刈り、清掃等

イ 栃木県農村景観ビジョン
 19年度までに、地域住民等による豊かな自然環境創造の取組を34か所で行った。また、美しい農村景観等の保全・整備として、田園自然環境保全・再生支援事業等を実施した。

(4)歴史的・文化的景観の保全と創造

ア 歴史的景観の保全・復元の促進
 歴史的・文化的価値が高く、ふるさとのシンボルとして県民に親しまれている貴重な文化財を未来に引き継ぐため、市町村等が行う建造物保存修理事業や、樹勢回復事業等に対し支援している。
 19年度においては、野木町の国指定重要文化財「旧下野煉化製造会社煉瓦窯」や矢板市の国指定重要文化財「荒井家住宅」の保存修理事業等に対し助成した。
イ 日光杉並木街道の保護
 日光杉並木街道の恒久的保全のため、保護用地公有化事業を進めるとともに、樹勢回復事業等を推進している。19年度は、「日光杉並木樹勢回復事業第二期5ヶ年計画」の2年目にあたり、計画的に事業を実施した。
 また、並木内の通過交通による影響の軽減を図るため、通行車両の迂回路となるバイパス整備を推進しており、19年度は、国道121号板橋バイパス及び国道119号ミニバイパス(大沢〜水無区間)における用地買収及び工事を推進した。