○栃木県カーボンニュートラル実現条例
令和5年3月17日
栃木県条例第1号
栃木県カーボンニュートラル実現条例をここに公布する。
栃木県カーボンニュートラル実現条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 県のカーボンニュートラルの実現に関する施策(第8条―第14条)
第3章 事業者及び県民によるカーボンニュートラルの実現に関する取組
第1節 事業活動に係る取組(第15条―第18条)
第2節 日常生活に係る取組(第19条―第21条)
第3節 建築物に係る取組(第22条)
第4節 交通機関に係る取組(第23条・第24条)
第5節 エネルギーの使用に伴わない温室効果ガスの排出の量の削減に係る取組(第25条・第26条)
第6節 温室効果ガスの吸収の量の増加に係る取組(第27条・第28条)
附則
栃木県は、首都圏北部に位置する地理的優位性や産業活動の基盤となる土地、穏やかな気候に恵まれ、全国有数のものづくり県として発展してきた。また、県土の半分以上を占める豊かな森林は、木材を生産する経済活動の場となっているほか、地球温暖化の防止等の公益的機能の発揮を通じて、私たちの暮らしに様々な恩恵をもたらしている。
近年、世界各地において、気象災害の激甚化など、大気中の温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化に起因するとされる気候変動の影響が顕在化しており、本県においても、台風、豪雨等による水害や土砂災害が発生し、県民生活に深刻な被害が生じている。
これらの気候変動の影響を最小化するため、我が国を含む世界各国が、地球温暖化対策として、21世紀後半に人為的な発生源による温室効果ガスの排出量と、森林等による温室効果ガスの吸収量との間の均衡、いわゆるカーボンニュートラルの実現を目指して取組を進める中で、本県は、こうした流れを迅速かつ積極的に捉え、持続可能で活力ある本県の経済社会を構築し、将来にわたり県民の生命及び財産を守るため、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言した。
2050年までのカーボンニュートラルの実現のためには、ものづくり県として発展した本県の特性及び本県の豊かな地域資源を生かしながら、事業者、県民といったあらゆる主体の理解と共感を得、目標達成に向けた展望を共有し、県を挙げて取組を進めていくことが必要である。
ここに、私たちは、あらゆる主体が一体となって、環境の保全と経済社会の持続的な発展を図り、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて力強く取り組むことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、カーボンニュートラルの実現に関する施策等(カーボンニュートラルの実現に関する施策及び取組をいう。以下同じ。)に関し、基本理念を定め、並びに県、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、カーボンニュートラルの実現に関する施策等の基本となる事項を定めることにより、地球温暖化の防止及び持続可能で活力ある本県の経済社会の構築を図り、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(1) カーボンニュートラルの実現 人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会を実現することをいう。
(2) 温室効果ガス 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「法」という。)第2条第3項に規定する温室効果ガスをいう。
(3) 温室効果ガスの排出 法第2条第4項に規定する温室効果ガスの排出をいう。
(4) 再生可能エネルギー 次に掲げるエネルギー源を利用して得ることができるエネルギーをいう。
ア 太陽光
イ 風力
ウ 水力
エ 地熱
オ 太陽熱
キ バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)
(基本理念)
第3条 カーボンニュートラルの実現に関する施策等は、環境の保全と経済及び社会の発展を統合的に推進しつつ、2050年までのカーボンニュートラルの実現を旨として、県、事業者及び県民の密接な連携の下に行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、カーボンニュートラルの実現に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、事業者及び県民によるカーボンニュートラルの実現に関する取組を促進するため、必要な支援を行うものとする。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動においてカーボンニュートラルの実現に関する取組を自主的かつ積極的に行うよう努めるとともに、県及び市町村が実施するカーボンニュートラルの実現に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(県民の責務)
第6条 県民は、基本理念にのっとり、その日常生活においてカーボンニュートラルの実現に関する取組を自主的かつ積極的に行うよう努めるとともに、県及び市町村が実施するカーボンニュートラルの実現に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(県と市町村との協力)
第7条 県及び市町村は、それぞれが実施するカーボンニュートラルの実現に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。
第2章 県のカーボンニュートラルの実現に関する施策
(基本指針)
第8条 知事は、2050年までのカーボンニュートラルの実現のために必要な取組等に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。
2 知事は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
3 前項の規定は、基本指針の変更について準用する。
(県の施策)
第9条 県は、カーボンニュートラルの実現に関し、次に掲げる施策を実施するものとする。
(1) 省エネルギー(エネルギーの使用の合理化をいう。以下同じ。)の促進及び再生可能エネルギーの利用の促進に関する施策
(2) 再生可能エネルギー等の地域資源の活用により地域の課題の解決に貢献する取組の促進及びその成果の普及に関する施策
(3) カーボンニュートラルの実現に関する気運の醸成及び環境の整備に関する施策
(4) カーボンニュートラルの実現に資する技術及び製品の研究開発の促進に関する施策
(5) カーボンニュートラルの実現に資する産業の創出及び育成に関する施策
(6) 公共交通機関の利用の促進、電動車(自動車(道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第2項に規定する自動車及び同条第3項に規定する原動機付自転車をいう。以下同じ。)のうち、専ら電気を動力源とするものをいう。以下同じ。)を使用しやすい環境の整備その他の自動車の使用に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に関する施策
(7) 廃プラスチック類その他の廃棄物の発生の抑制、再使用及び再生利用その他資源の有効な利用の促進に関する施策
(8) 森林資源の循環的な利用(植林、育林、伐採、使用及び再植林を繰り返すことをいう。以下同じ。)、土壌への炭素の貯留その他の温室効果ガスの吸収の量の増加に関する施策
(県の率先実施)
第10条 県は、その事務及び事業に関し、次に掲げるカーボンニュートラルの実現に関する取組を率先して行うものとする。
(1) 県が設置し、又は管理する施設における省エネルギーに資する設備の導入及び再生可能エネルギーの利用に関する取組
(2) 県の事務及び事業における温室効果ガスの排出に係る情報の提供に関する取組
(3) 脱炭素型の働き方(情報通信技術を活用することにより人の移動に伴う温室効果ガスの排出の量を削減すること、冷房及び暖房の設備の使用に際し消費されるエネルギーの量が過剰とならないよう室温の調整を行うこと等により、業務において温室効果ガスの排出の量がより少なくなるよう行動することをいう。以下同じ。)の確立に関する取組
(4) 電動車の導入その他の自動車の使用に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に関する取組
(5) 廃プラスチック類その他の廃棄物の発生の抑制、再使用及び再生利用その他資源の有効な利用に関する取組
(6) 県が設置し、又は管理する施設における県産木材(県内で生産された木材をいう。以下同じ。)の利用に関する取組
(7) 前各号に掲げるもののほか、カーボンニュートラルの実現のために必要な取組
(教育及び学習の推進)
第11条 県は、市町村と連携し、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、カーボンニュートラルの実現に関する実践的な教育及び学習を推進するものとする。
(顕彰)
第12条 知事は、カーボンニュートラルの実現に関する特に優れた取組を行った者を顕彰することができる。
(推進体制の整備等)
第13条 県は、県、市町村、事業者及び県民が一体となってカーボンニュートラルの実現に関する施策の総合的な推進を図るため、必要な体制の整備に努めるものとする。
2 県は、カーボンニュートラルの実現に関する施策の実施に関し、国及び他の都道府県との連携に努めるものとする。
3 県は、カーボンニュートラルの実現に関する国内及び国外の先進的な取組、技術等に関する情報の収集、交換等に努めるものとする。
(財政上の措置)
第14条 県は、カーボンニュートラルの実現に関する施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第3章 事業者及び県民によるカーボンニュートラルの実現に関する取組
第1節 事業活動に係る取組
(温室効果ガスの排出の量の削減等)
第15条 事業者は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その事業活動に伴うエネルギーの使用の量及び温室効果ガスの排出の量の把握に努めるものとする。
2 製品の製造を行う事業者は、原材料又は部品の選定から廃棄に至るまでの一連の過程において、温室効果ガスの排出の量がより少ない方法により製造を行うよう努めるものとする。
3 製品の販売又は役務の提供を行う事業者は、温室効果ガスの排出の量がより少ない方法により販売又は提供を行うよう努めるものとする。
4 製品の製造若しくは販売又は役務の提供を行う事業者は、その製品の製造、販売若しくは利用又は役務の提供により発生する温室効果ガスの排出の量に関する情報の提供を行うよう努めるものとする。
(環境物品等の選択)
第16条 事業者は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合には、環境物品等(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)第2条第1項に規定する環境物品等をいう。以下同じ。)その他のカーボンニュートラルの実現に資する物品又は役務を選択するよう努めるものとする。
(脱炭素型の働き方の確立)
第17条 事業者は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、脱炭素型の働き方の確立に努めるものとする。
(技術及び製品の研究開発)
第18条 事業者は、省エネルギー及び再生可能エネルギーに関する技術及び製品の研究開発その他のカーボンニュートラルの実現に資する技術及び製品の研究開発に努めるものとする。
第2節 日常生活に係る取組
(エネルギーの使用の量の把握等)
第19条 県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その日常生活に伴うエネルギーの使用の量の把握及び省エネルギーに努めるものとする。
(環境物品等の選択)
第20条 県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合には、環境物品等その他のカーボンニュートラルの実現に資する物品又は役務を選択するよう努めるものとする。
(脱炭素型の生活様式の確立)
第21条 県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、脱炭素型の生活様式(温室効果ガスの排出の量の削減に資する取組として知事が定める取組を行うことにより、日常生活において温室効果ガスの排出の量がより少なくなるよう行動することをいう。)の確立に努めるものとする。
第3節 建築物に係る取組
(建築物に係る温室効果ガスの排出の量の削減)
第22条 建築物(建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に規定する建築物をいう。)の建築(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(平成27年法律第53号)第6条第1項に規定する建築をいう。)又は修繕等(同条第2項に規定する修繕等をいう。)をしようとする者は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、当該建築物に係る省エネルギー、エネルギー消費性能(同法第2条第1項第2号に規定するエネルギー消費性能をいう。)の向上、再生可能エネルギーの利用その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(令6条例18・一部改正)
第4節 交通機関に係る取組
(公共交通機関の利用等)
第23条 事業者及び県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その事業活動又は日常生活において、可能な限り、自動車の使用に代えて、公共交通機関の利用、自転車の使用又は徒歩による移動に努めるものとする。
(電動車等の選択)
第24条 自動車を購入し、又は使用しようとする事業者及び県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、電動車その他の温室効果ガスを排出しない、又は温室効果ガスの排出の量がより少ない自動車を優先的に選択するよう努めるものとする。
第5節 エネルギーの使用に伴わない温室効果ガスの排出の量の削減に係る取組
(廃棄物の発生の抑制等)
第25条 事業者及び県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その事業活動又は日常生活において、廃プラスチック類その他の廃棄物の発生の抑制、再使用及び再生利用その他資源の有効な利用に努めるものとする。
(代替フロンを使用していない製品等の選択)
第26条 事業者及び県民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、製品を購入しようとする場合には、代替フロン(法第2条第3項第4号に掲げる物質をいう。以下同じ。)を使用していない、又は代替フロンの使用の量がより少ない製品を選択するよう努めるものとする。
第6節 温室効果ガスの吸収の量の増加に係る取組
(県産木材の利用)
第27条 事業者及び県民は、森林資源の循環的な利用による温室効果ガスの吸収の量の増加を図るため、県産木材を積極的に利用するよう努めるものとする。
(緑化の推進)
第28条 事業者及び県民は、温室効果ガスの吸収の量の増加を図るため、その所有し、又は管理する土地又は施設について、その緑化の推進に努めるものとする。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和5年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の際現に定められているカーボンニュートラルの実現に関する基本的な指針であって、2050年までのカーボンニュートラルの実現のために必要な取組等に関するものは、第8条第1項の規定により定められた基本指針とみなす。
(栃木県生活環境の保全等に関する条例の一部改正)
3 栃木県生活環境の保全等に関する条例(平成16年栃木県条例第40号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
附則(令和6年条例第18号)
1 この条例は、令和6年4月1日から施行する。
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。