第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第2章 人と自然が共生する潤いのある地域づくり

第2節 多様な自然環境の保全

1 自然環境の状況 

(1) 自然環境の現況

本県は、県北部に日光、高原、那須火山群からなる山岳地帯が形成され、湖沼、渓谷、瀑布や高層湿原等が原生林と調和した自然景観をなしている。また、地形、地質、気象など立地条件の特異性によって、南方系、北方系植物が混在して分布し、氷河期からの動植物が数多く生息するなど、特異種や貴重なもの、珍しい生態を示すもの等変化に富んだ自然の様相を呈している。

一方、中央部及び南部の平地帯は、経済活動の場として時代とともに変化してきたが、人間と自然との長いかかわり合いの中で存続している平地林等は、遮音、防火、憩いの場の提供等生活環境上計り知れない効用をもつ身近な自然として重要な意義を持っている。

(2) 自然公園の現況

本県の自然公園の面積は、約13万haであり県土の面積の約21%を占めている。県北西部の山岳地帯を中心とした地域は、我が国の代表的な自然公園である日光国立公園によって占められ、また、県内各地には、地域の特性を持つ8つの県立自然公園があって、それぞれ変化に富んだ自然景観を有している。(図2−2−4)

これらの自然公園には、県の内外から、自然を求めて多くの人々が訪れている。

図2−2−4 自然公園の現況(17年度末) (単位:ha)

  図2−2−4 自然公園の現況(17年度末)
公園名 特別保護地区 特 別 地 域 普 通 地 域
国立公園
日 光
1,015 47,699 54,765 103,479
小  計 1,015 47,699 54,765 103,479
県  立
自然公園
益 子
太平山
唐沢山
前日光
足 利
宇都宮
那珂川
八 溝
 

581
297
433
1,756
440

977
1,131


1,555
782
910
9,226
880
1,880
2,025
5,787


2,136
1,079
1,343
10,982
1,320
1,880
3,002
6,918
小  計   5,615 23,045 28,660
合  計 1,015 53,314 77,810 132,139

(注)日光国立公園の面積は本県分のみを計上した。

(3) 自然(緑地)環境保全地域等の指定状況

「自然環境保全法」及び「自然環境の保全及び緑化に関する条例」に基づき、優れた自然環境を持つ地域を自然環境保全地域に、また、市街地周辺地及び歴史的・文化的遺産と一体となった良好な緑地を緑地環境保全地域に指定している。17年度末現在、国指定の自然環境保全地域1か所を含め、41か所5,355haを指定している。(表2−2−1、図2−2−5)

表2−2−1 自然環境保全地域等指定状況(17年度末)
県自然環境保全地域 緑地環境保全地域 国指定の自然環境保全地域
箇所数 面 積 箇所数 面 積 箇所数 面 積 箇所数 面 積
26 4,672ha 14 138ha 1 545ha 41 5,355ha

 

図2−2−5 自然(緑地)環境保全地域の指定状況(17年度末)

図2−2−5 自然(緑地)環境保全地域の指定状況(17年度末) 図2−2−5 自然(緑地)環境保全地域の指定状況(17年度末)
(4) 都市公園の整備状況

都市公園は、都市に緑とオープンスペースをもたらすことによって都市環境を良好なものとするとともに、児童、青少年の健全なレクリエーションの場や市民のコミュニケーションの場を提供するばかりでなく、大気汚染、騒音等都市公害を緩和し、災害時の避難場所として活用されるなど、多目的な機能を有する基幹的な生活基盤施設である。

本県では、18年3月末において、1,708か所2,444.25haの都市公園が整備されており(表2−2−2)、都市計画区域内の1人当たり公園面積は12.6m²が確保され、全国平均※の8.9m²を大きく上回る整備水準となっている。

※全国平均は17年3月末の値

表2−2−2 都市公園整備状況(17年度末)
種     類 箇所数 面 積(ha) 種 類 箇所数 面 積(ha)
基 幹 公 園 住 区 基 幹 公 園 街区公園 1,357 198.93 特殊公園 14 86.85
近隣公園 108 178.37 広域公園 4 374.40
地区公園 59 302.92 緩衝緑地 12 35.77
小  計 1,524 680.22 都市緑地 80 77.47
都 市 基 幹 公 園 総合公園 24 325.70 広場公園 5 1.04
運動公園 36 861.21 緑   道 9 1.59
小  計 60 1,186.91 合   計 1,708 2,444.25

2 自然環境保全対策

(1) 優れた自然の保全
ア 奥日光地区の自然環境の保全

戦場ヶ原等の「奥日光の湿原」が本県で初めてラムサール条約湿地となったことを受け、ラムサール条約登録記念事業実行委員会へ参画し、貴重な湿原保護思想の醸成に努めた。

奥日光地区においては、貴重な自然環境を保全するため、低公害バスの運行、植生回復対策、移入植物の除去等に取り組んだ。

イ 自然(緑地)環境保全地域の保全

自然(緑地)環境保全地域に指定されている地域(図2−2−5)について、自然監視員による巡視、案内標識の整備、土地の形質変更の規制などにより保全に努めた。

(2) 平地林・農地の保全
ア 平地林等の保全

人里近くの丘陵部や低山地に広がる平地林と、田園のみどりは、農産物や特用林産物等の生産活動をとおして、創出・保全され、私たちの生活に潤いと安らぎを与え、身近な緑として親しまれている。

身近な平地林等の役割や管理の重要性について、広く県民の理解を深めることにより、より多くの県民が平地林等に関心を持ち、住民参加による積極的な保全活動が展開されるよう、普及啓発を進めた。

また、市町村が中心となり、平地林の所有者の理解と学校や地域住民の協力を得ながら、平地林を学習林や憩いの場等に整備し、継続的な利用を図るなど、身近な平地林の保全に努めた。

イ 豊かな地域資源の保全・継承

農業農村のもつ豊かな自然、伝統文化等の多面的な機能を再評価し、豊かな生態系や美しい農村景観・伝統的農業施設等の保全・復元等を行っている。

ウ 自然環境保全・再生支援事業

農業農村整備事業の実施等と併せ、住民主体による農村の自然環境保全・再生活動を実施する4地域を支援した。

(3) 都市地域の自然環境の保全
ア 都市公園の整備

17年度も、都市環境の改善や公害、災害発生の緩和、レクリエーション需要等の多様なニーズに対応する都市公園の整備を促進するとともに、既開設公園についての適正な維持管理を推進している。

イ 都市緑化対策

都市における緑は、大気の浄化、騒音等公害の緩和に寄与するとともに、住民に安らぎと憩いをもたらし、都市生活上欠くことのできない重要な役割を担っている。

このため、都市緑化推進の重要性に鑑み、県(5か所)、宇都宮市及び足利市でそれぞれ「緑の相談所」を設置し、植栽樹種の設定、植栽方法、病虫害防除等に関する相談、各種緑化催し物の開催を行い都市緑化意識の高揚、植物知識の普及・啓発を図っている。(表2−2−3)

都市緑化には、行政による各種事業の推進はもとより、県民挙げての協力により所期の目的が達成されることとなるため、総合的な施策の実施が望まれる。

表2−2−3 緑の相談所の利用状況
団体名 都市公園名 相  談 講習会 展 示 会
回数 利用者
栃木県 井頭公園 625件 31回 8,246人 41回
中央公園 594 55 2,678 36
那須野が原公園 256 27 814 45
みかも山公園 239 34 480 25
日光だいや川公園 444 49 1,413 35
宇都宮市 平出工業団地公園 1,666 45 1,789 3
足利市 有楽公園 867 29 2,923 2
合計 4,691 270 18,343 187
ウ 街路等の整備

都市の骨格を形成する幹線道路等の都市活動を支える道路網の整備を、18年度も積極的に推進する。特に都市計画道路宇都宮水戸線(宇都宮市)、小山栃木都賀線(栃木市)等の主要放射・環状道路の整備を推進する。

また、道路空間の有効活用、都市景観の向上、都市防災機能の改善等を図るため、小山結城線(小山市)等の電線類の地中化を推進する。

なお、街路樹の植栽は、都市美観構成上の一要素として重要なものであると同時に、県民に緑陰の提供、防じん、防風、防煙の効果、火災の延焼防止、都市生活者の疲れた神経の緩和作用及び植物の同化作用による空気の清浄化、涼化作用等の多様な役割を果たしている。

17年度末における街路樹の整備状況は、都市内(市街化区域、用途地域内)における都市計画道路の約39%の区間で、マロニエや夏椿等の高木をはじめとした植栽が施されている。

エ 開発行為による良好な宅地化の推進

開発許可制度の適切な運用により、無秩序な宅地開発等を防止し、良好な市街地形成と都市地域の自然環境の保全に努めている。

(4) ビオトープの保全・創造

農村地域は、農業生産及び生活の場であるとともに、その豊かな自然環境は多様な生物の生活の場でもある。そこで環境に恵まれた農村空間(エコビレッジ)を形成することを目的に、水生生物保全のための施設整備、昆虫・野鳥等のための植栽等の整備を実施している。

(5) 自然公園の適正な管理

自然公園については、指定の目的である自然の保護と利用の増進を図るための公園計画が定められ、これに基づいて、木竹の伐採、工作物の建築等の風致景観の現状を変更する行為を規制するとともに、歩道や休憩施設など利用のための施設整備を計画的に実施している。

また、公園利用者に対しては、自然公園指導員によるマナー指導や、ビジターセンターによる情報提供等が行われ、自然公園の適正な利用に寄与している。

その他に、奥日光の日光市道1002号線では、自動車の乗り入れ規制を行うとともに、代替交通手段として低公害バスを運行し、小田代原周辺の自然環境の保全を推進している。

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