5章 ケーススタディ及び事例紹介

第1 ケーススタディ
 2.太陽熱利用 (2)業務系
 福祉施設など特に給湯需要の多い施設に給湯の用途に使用する太陽熱を導入します。
対象とする新エネルギー等 太陽熱利用
対象施設等の想定 福祉施設等
導入システム 太陽熱温水器 (集熱面積 200m2
イニシャルコスト 約2400万円 (12万円/u-集熱面積と仮定)
投資回収の目安
 
約36年(灯油ボイラーを代替したの場合)
算定条件:年間集熱量を10,400万kcalとして算定
環境負荷削減効果
(エネルギー使用削減効果)
(二酸化炭素排出削減効果)
(窒素酸化物排出削減効果)
(灯油ボイラーを代替した場合)
14,600 L-灯油/年
37,000 kg-CO2/年
24,800 g/年
経済効果(経費節減効果) 年間67万円(燃料費(灯油の場合))
活用できる支援制度






 
<補助制度>
・住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(NEDO)
<融資>
・福祉・医療貸付(社会福祉・医療事業団)
<優遇税制>
・エネルギー需給構造改革投資促進税制(国税)
・ローカルエネルギー税制(地方税)
導入に当たっての留意事項




 
・福祉施設等、熱需要の多い施設においては太陽光発電よりも変換効率の高い太陽熱利用が有効である。
・近年では、太陽の熱エネルギーを利用して空調を行うパッシブソーラーシステムの導入が行われている。

1.導入システムの設定条件
・太陽熱温水器(集熱板面積:200 u)

 熱需要の多い福祉施設に、集熱面積200uの太陽熱温水器を導入します。
 熱需要の多い福祉施設への導入を想定し、太陽熱を冷暖房等に利用するソーラーシステムではなく、太陽熱温水器を導入します。
 なお、太陽熱利用については、太陽熱とヒートポンプを組み合わせたアクティブソーラーシステムの他、太陽光を建物に取り入れ、吸収・蓄熱し、快適な居住空間を創設するパッシブソーラーシステムも開発・導入されています。

2.効果の算定
(1)環境負荷削減効果

・年間集熱量:10,400万kcal
・年間燃料使用削減量:14,600 L(ドラム缶73本分)(灯油ボイラーを代替する場合)
・温室効果ガス排出抑制効果:37,000 kg-C02/年(灯油ボイラーを代替する場合)
・窒素酸化物排出抑制量:24,800 g/年(灯油ボイラーを代替する場合)

 この太陽熱温水器による集熱量を試算すると約10,400万kcal/年となります。太陽熱温水器による環境負荷削減効果は、代替するエネルギーが何であるかによって変わってきますが、灯油ボイラーを代替するとした場合、年間約14,600Lの灯油使用を削減することが可能となり、温室効果ガス排出抑制効果は約37,000kg-CO2/年となります。また、約25kgの窒素酸化物の排出抑制の効果があります。
 

導入設備:
太陽熱温水器(集熱面積:200u、集熱量10,400万kcal/年、設置費2400万円)
比較エネルギー
 
節約量
 
温室効果ガス排出抑制量
(kg-CO2/年)
窒素酸化物排出抑制量(g-NOx/年)
灯油 14,600L 37,000 24,800
A重油 14,000L 37,800 29,400
  

算定方法
(集熱量)=(集熱面積)×(集熱面日射量)× 365(日/年) × (システム効率)
(節約量)=(集熱量)÷(ボイラー効率)÷(発熱量)
(温室効果ガス排出抑制量)=(節約量) × (温室効果ガス排出原単位)
(窒素酸化物排出抑制量)=(節約量) × (窒素酸化物排出原単位)
算定条件
項目 数値 備考
集熱面積 200 m2  
集熱面日射量
 
3,552 kcal/m2/day
(4.13 kWh/m2/day)
宇都宮地方気象台における年間最適日射角の平均日射量
システム効率 0.4 ソーラーシステム振興協会資料より
ボイラー効率 0.8 一般的な値を設定
温室効果ガス排出原単位
 
2.53 kg-CO2/L (灯油)
2.70 kg-CO2/L(A重油)
温暖化対策推進法に基づく値
 
窒素酸化物排出原単位
 
1.70 g/L (灯油)
2.10 g/L(A重油)
環境庁「環境活動評価プログラム」より
発熱量


 
      8,900kcal/L(灯油)
     9,300kcal/L(A重油)
総合エネルギー統計


 

(2)経済性
 

・イニシャルコスト:2400万円
・燃料費節約効果 :約67万円(灯油ボイラーを代替する場合)
・投資回収年数  :約36年(灯油ボイラーを代替する場合)

 県内の既設の事例を元に集熱面積1u当たりの太陽熱温水器設置コストを12[万円/u-集熱板]と仮定すると、集熱面積200uでは、2400万円と算定されます。灯油ボイラーを代替した場合、年間の燃料費節約効果は約67万円、投資回収の目安は、約36年になります。

 

算定方法
(燃料節約効果)=(節約量)×(燃料単価)
算定条件
項目 数値 備考
燃料単価(灯油)
 
46円/L
 
(ソーラーシステム振興協会資料から算定)

●支援制度について
 太陽熱温水器の導入に当たって、適用可能な支援制度は以下のとおりです。なお、ソーラーシステムについてはこの他にも補助金等があります。

支援制度 対象者 内容 実施主体
住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業



 
個 人





 
住宅・建築物に関する高効率エネルギーシステムを公募し、その結果選ばれたものを事業者・消費者(建築主又は所有者)が導入する場合、その費用の一部を補助 NEDO





 
福祉・医療貸付

 
社会福祉法人、財団、社団法人等 基準事業費の75%以内で金利年2.0%
 
社会福祉・医療事業団
 
エネルギー需給構造改革投資促進税制
(国税)
 
青色申告書を提出する個人又は法人
 
集熱面積が75u以上の太陽熱利用システム取得価額の7%相当額を税額控除又は初年度30%相当の特別償却


 
ローカルエネルギー税制(地方税)

 
事業を営む個人又は法人

 
集熱面積が25u以上の太陽熱利用システムに課せられる固定資産税の標準を1/6軽減


 

3.課題 等


 大規模な太陽熱温水器は、大量生産ではないことや、重量があることから、設置コストが割高となっています。しかし、環境保全の効果は高く、今後は導入の効果を普及し、導入を促進していく必要があります。
  

 
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