5章 ケーススタディ及び事例紹介

第2 事例紹介
 4.バイオマスエネルギー (1)畜産バイオマス
  家畜のふん尿を利用し、発電・熱利用を行っている事例を紹介します。
施設名称 八木バイオエコロジーセンター(京都府八木町)
対象とする新エネルギー等 畜産バイオマスエネルギー
導入施設の種類 畜産バイオマス発電及び熱利用
イニシャルコスト 施設全体
10億9200万円(うち、補助金6億5100万円)
うち、メタン化施設
5億6800万円(うち、補助金3億200万円)
堆肥化施設
5億2400万円(うち、補助金3億4900万円)
施設規模 消化槽:2,100m(滞留時間約33日)
投入資源:乳牛ふん尿650頭分
    :豚ふん尿1,500頭分
    :おから5t/日
     わら、おがくず 等
生成エネルギー 以下いずれも最大量
<電力>
発電量    :約3,200 kWh/日
<消化ガス>
消化ガス発生量:約2,000 m/日
(消化ガス熱量:5,500 kcal/m
※副生成物としての脱水ケーキとふん尿を混合・攪拌して堆肥としている
環境負荷削減効果 ・温室効果への影響が大きいメタンを燃料として利用。化石燃料の代替効果とともに、メタンとしての放出も抑制できる。
・水質汚濁、害虫の発生を抑制できる。

 家畜から出るふん尿は、温室効果ガスであるメタンを排出するとともに、雨によって河川に流れ込んだり、ハエなどの害虫を発生させる要因となります。平成11年の11月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行され、家畜ふん尿の利用促進が一層図られることとなりました。そのとき、堆肥として利用していくだけでなく、メタン発酵させることで、発生するガスをエネルギーとして利用することができます。

1.システムの 導入事例(八木町バイオエコロジーセンター)
(1) 導入の背景
 八木町では水稲と畜産のウエイトが高く、畜産環境対策に悩まされてきました。その状況を改善するため、メタン化施設と堆肥化施設を併設する施設が建設されました。
 農林水産省の国庫補助金等を受け総事業費10億9200万円(うち、メタン化施設5億6800万円、堆肥化施設5億2400万円)、平成10年3月完成、7月から稼働しています。運営は八木町、JA八木、南丹酪農JAの三者が出資した(財)八木町農業公社が行っています。

(2)導入システムの概要
 施設は「メタン化施設」と「堆肥化施設」に大別されます。

メタン化施設 ふん尿を混合した原水を消化槽(容量2100m3)に入れ、33日間対流させ消化ガス(メタンガス60%、二酸化炭素40%)を発生させます。この消化ガスがガスエンジンに送られ、ガスエンジンで発電が行われます。発電時の余剰熱は管理室の暖房・給湯及び消化槽の温度調整に使用されます。発電した電力は、現在は所内で利用しています。消化後の汚泥は、脱水機により固形状の脱水ケーキと排水に分離し、脱水ケーキは堆肥化施設に送られます。排水は、ろ過等の処理を行い河川へ放流しています。
(投入資源) (計画)
乳牛ふん尿:32.5t/日  (650頭分相当)
豚ふん尿 : 8.1t/日 (1,500頭分相当)
おから  : 5t/日
わら、おがくず  等
(生成エネルギー) (最大量)
消化ガス:約2,000 m3/日
電力  :約3,200 kWh/日
堆肥化施設
 
メタン化施設で作られた脱水ケーキとふん尿を攪拌し発酵させ堆肥を作ります。

(3)運転状況
  平成11年度における実績です。
@消化ガス量
 計画では2,000m3/日でしたが、1,000〜1,600m3/日で推移しています。この量で発電を行っています。
A発電量
 平成11年度は、逆潮流(売電)なしの契約であり、所内での電力需要を賄うための発電量に抑えたため、発電量は約1,000kWh/日にとどまりました。余剰ガスは燃焼装置で焼却しています。
 なお、平成13年春から系統連系して売電を行う予定です。関西電力への売電価格は夏以外の時期は3.5円/kWh、夜間は3円/kWh、夏のピーク時は4円/kWhです。

B堆肥製造
 施設の本格稼働が遅れたため、計画された量の生産には至っていません。しかし、堆肥の質については、窒素分が市販の牛ふん由来の堆肥の4倍である4%含まれており、またその窒素についても植物の栄養分としてすぐに利用される無機態窒素が半分あるため、この堆肥を使う農家は、追肥として入れる化学肥料の減量化を図ることができます。

Cランニングコスト
 メタン化施設に限ってみると、平成11年度のランニングコストは約4400万円でした。この大半は薬品費(脱水時の凝集剤)及びメンテナンス費でした。コストの削減に向け、脱水後の排水を液肥として利用することが検討されています。また、平成13年春から関西電力への余剰電力の売電が開始される予定となっています。

■参考
 ○八木町資料

畜産バイオマスの利用について

●畜産バイオマスの利用方法
 畜産バイオマスは、家畜のふん尿をメタン発酵させ、発生した消化ガスを燃料として利用する方法が一般的です。

●支援制度
 畜産バイオマス利用施設の導入に当たっては、以下の支援制度が活用可能です。

支援制度 対象者 内容 実施主体
資源リサイクル畜産環境整備事業 指定法人・市町村等 補助率1/2以内 農林水産省
資源循環型畜産確立対策事業
(エネルギー利用型)
市町村・農協・営農集団 補助率1/2以内 農林水産省
農業近代化資金
(未利用資源活用施設資金)

農業者・農協等

融資 農林水産省
 また、平成11年11月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行され、畜産業の施設整備に対して金融上の支援措置が講じられています。
・設備などの取得額について16%の特別償却が可能
・施設取得後5年間は固定資産税に係る課税標準を1/2に軽減
・農林漁業金融公庫による低利融資

 
畜産バイオマス導入の課題と方向性

(1)導入の課題
 畜産バイオマス利用については、エネルギー利用の側面だけでなく、水質等の環境への影響を回避できるという側面や、消化ガス発生後の消化液についても、肥料化することにより利用可能であるという利点があります。加えて、畜産廃棄物の適正処理を定めた、畜産排せつ物に関する法律も施行され、今後さらに畜産バイオマスの利用が進んでいくと考えられます。
 しかしながら、バイオマス利用施設の設置に当たっては、現段階では導入コストが非常に高いことが普及の障害となっています。今後、技術開発の進展により導入コストの低減が期待されます。
(2)導入の方向性
 畜産バイオマス利用の形態は、この八木町の事例のようにある程度以上の規模を有するメタン化施設により消化ガスを発生させ、その消化ガスによりコージェネレーションを行うというように進んでいくと考えられます。
 その他次のような利用形態が注目されています。

●消化ガスの燃料電池の燃料としての利用
 メタン発酵により得られる消化ガスは燃料電池の燃料として利用可能です。現在、家畜ふん尿をメタン発酵させ、燃料電池で発電するプラントが計画されています。また、家畜ふん尿を利用した事例ではないものの、ビール工場において、食品廃棄物をメタン発酵させ、燃料電池の燃料として使用している例もあります。

 
戻る 表紙へ 次へ