5章 ケーススタディ及び事例紹介

第2 事例紹介
 4.バイオマスエネルギー (2)木質(森林)バイオマス
  製材時の木くず等によって、発電・熱利用を行っている事例を紹介します。


施設名称 銘建工業(木材加工業) エコ発電所
対象とする新エネルギー等 森林バイオマスエネルギー
導入施設の種類 森林バイオマス発電及び熱利用
イニシャルコスト 約10億円(周辺施設整備含む)
施設規模



 
発電出力:1,950kW
木くず焚きボイラ:蒸気量 :20t/h
         蒸気圧力:16 kg/cm2
         蒸気温度:270℃
燃料:ブレナーダスト、バーク等
環境負荷削減効果


 
単に焼却していた木くずによる発電であり、発電分について温室効果ガス排出量の抑制となる。なお、熱については木材の乾燥に利用される。
 
経済効果(経費削減効果) 自家発電による電力購入コスト削減量:4500万円/年
課題


 
・売電価格が太陽光など他の自然エネルギーに比べて低く設定されているため、資本回収が困難。
・現在、輸入木材の加工後廃材を使用。国産材は伐採搬出コストが高い。

 木質バイオマスは、植物が光合成の結果生体中に取り込んだ炭素を利用し、森林の持続的な利用が行われる限り二酸化炭素の追加的な放出が行われないエネルギーであることから、地球温暖化対策の有効な手段です。

1.システムの 導入事例(銘建工業 エコ発電所)
(1) 導入の背景
 銘建工業は、岡山県真庭郡勝山町に位置し、1970年代から集成材の加工を始めました。製造工程から出る廃材を燃料に1984年、蒸発量10t/hのボイラーを設置し、同時にタービンと発電機を組み合わせて発電を行ってきました。
 その後、工場で必要な電力の供給に見合う量の木くずがあったことから、1998年新たに「エコ発電所」を完成させました。

(2)導入システムの概要
 この発電所は、製材工程で生じる廃材をできるだけ電力に変換し、自社で消費する電力をまかなうことを目的に建設されました。
 ブレナーダスト(鋸くず)、バーク(樹皮)などの木くずを燃料として用い、木くず焚きボイラーにより蒸気を発生させ木材の乾燥などに使用するとともに、蒸気タービンによって発電を行っています。

木くず焚きボイラー 蒸発量 :20t/h
70%を発電用、20%を乾燥工程等に使用
蒸気タービン 発電能力:1,950kW
施設投資 10億円(周辺整備含む)

(3)運転状況
@設備の稼働率と売電価格

 年間の稼働日数は約255日で、毎日約10時間稼働しています。工場の稼働状況に完全に連動し、夜間・休日の運転は見合わせています。
 発電能力が1,950kWあるため、発電能力をフルに利用したほうが効率的ですが、電力会社の電力買取提示価格が3.8円/kWh(昼間のみ)というものであったため、売電はしていません。
 現在は、自家消費が可能な1,200〜1,300kWに発電量を抑えている状況です。

A熱需要
 現在は蒸気発生量のうち、70%が発電、20%が木材乾燥工程等に用いられ、10%が大気中に放出されています。工場から排出される燃料(木くず等)の量が工場の熱需要を上回っており、エネルギーに余剰が発生しているため大気中に放出しています。

B託送制度
 自社工場が3工場に分かれており、発電所のある工場以外の2工場に対し、電力会社に6,000Vでの託送を依頼したところ、22,000〜60,000V以下の電圧では困難であるとのことで断念した経過があります。(託送システム:電力会社の送電線を使って、需要者に電力を送るシステム。大きな工場では1998年から開始されています。)

C投資効率
 周辺整備も含めてこの施設投資は約10億円です。現在、自家発電によって年間約4,500万円の電力購入コストが削減されています。
 
■参考
○全国地球温暖化防止活動推進センター民間団体活動支援事業「自然エネルギーの活用に関する活動」報告書((財)日本環境協会)
 

木質バイオマスの利用について

●木質バイオマスの利用方法

利用方法 内容
直接燃焼 木くずを直接燃焼し、ボイラーにより熱利用を図るもの。ボイラーによる熱利用は国内に多数見られる。
このボイラーにタービンをつけ発電し、熱電供給を行うものが国内に十数例見られる。
ペレット化 樹皮や廃材を粉砕したものや、製材のおがくずを原料とした成型燃料である。
直径7mm、長さ15mm程度の円柱状になっている。
ガス化 木くずに熱を加え、熱分解により一酸化炭素と水素を含有するガスを生成するもの。
  ガス化施設+ガスタービン 木質ガスをガスタービンで燃焼させ発電するもの。一般的には、発電のほかに廃熱を利用した熱供給も行うもので、海外においては商用ベースでの利用が進んでいる。
木質ガスはタール分が含まれ、内燃機関に入れるとタールが濃縮して詰まってしまうが、大規模であれば様々なガス浄化が可能となり問題はなくなる。そのため、海外で実用化されている木質ガス発電の規模は100MW規模と非常に大きい。
ガス化施設+燃料電池 木質ガスに含まれる水素を用いて、燃料電池により発電を行うもの。
ガス化→メタノール化
 
上記木質ガスからメタノールを生成するもの。メタノールに液化することで、可搬性が増す。メタノールは燃料電池にも使用できる。また、メタノール自動車の燃料としても使用できる。
その他 その他には、熱水中で圧力をかけて煮て、加水分解でエタノールを生成する方法がある。(ブラジルでは古くから、これと同じ方法を用いてサトウキビの絞りかすから生成するエタノール燃料が一般的に用いられている。)


 
●支援制度
 木質バイオマス利用施設の導入に当たっては、以下の支援制度が活用可能です。
 
支援制度 対象者 内容 実施主体
林業構造改善事業 森林組合・林業者等の組織する組合 廃材をエネルギー源として利用する乾燥施設等への補助
(補助率:1/2, 4/10, 2/3)
林野庁
木材流通合理化特別対策事業 木材関連事業体等 廃材をエネルギー源として利用する乾燥施設等への補助
(補助率:1/3)
林野庁
木材産業体質強化促進事業 木材関連事業体等 木くず焚きボイラやそのエネルギーを利用する乾燥施設への補助及び利子助成
(補助率:1/2)
(利子助成率:3%,4%)
林野庁
((財)日本木材情報センター)
林業改善資金
(技術導入資金)
林業従事者 ペレット等成形燃料製造機械・施設への補助 林野庁

木質バイオマス導入の方向性
●小規模分散型施設の設置
 林業振興の観点と合わせて、除間伐材、製材時の木くずをバイオマス資源として利用します。除間伐材は材木としての利用価値が低く、また、林業労働力の不足等により除間伐が行われないところも見られることから、利用においては、木材供給地に小規模分散的にバイオマスを利用する施設を設置することが有効です。これにより、除間伐が促進され山林の保全にもつながります。

■参考
○全国地球温暖化防止活動推進センター民間団体活動支援事業「自然エネルギーの活用に関する活動」報告書((財)日本環境協会)



 
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