5章 ケーススタディ及び事例紹介

第2 事例紹介
 5.天然ガスコージェネレーション
  病院に天然ガスコージェネレーション設備を導入する事例を紹介します。
施設名称 栃木県済生会宇都宮病院
対象とする新エネルギー等 天然ガスコージェネレーション
導入施設の種類、規模 病院
延床面積:44,373m2
病床数 :644床
導入新エネルギー設備 ガスエンジンコージェネレーション(400kW×3)
環境負荷削減効果 ・1次エネルギー換算で6.16%の削減
・二酸化炭素11.66%(約4000t-CO2/年)の削減
その他の効果 ・コージェネレーションによる大規模な自家発電設備の導入により、雷による停電対策を講じることができている。

 コージェネレーションは、熱と電気を同時に供給するシステムであり、エネルギーを必要とする場所で発電と熱供給を行うため、送電などエネルギー輸送に伴うロスがないことに加え、発電に伴って発生する熱を有効に回収し使用することができます。
 また、天然ガスは、燃焼してもNOxやCO2の排出量が少なく、SOxの発生がありません。 
 これらを組み合わせた天然ガスコージェネレーションは、省エネルギー性とともに、環境保全の両面から注目されています。
 最近では、電力小売りの一部自由化(2000年3月)による大規模コージェネレーションによる電力事業参入や、中・小規模の建物への導入に向けての高効率化及び小型化の方向性が開けています。

1.システムの 導入事例(済生会宇都宮病院の事例)
(1) 導入の背景
 済生会宇都宮病院は、平成8年に病院の改築移転に伴い、
   ・省エネルギー性による光熱費の削減
   ・天然ガス使用による環境負荷の低減
   ・電源の二重化による供給信頼性の向上
等の利点を有する天然ガスコージェネレーションを導入しました。システムは、ガスエンジン発電機400kW×3台です。

(2)導入システムの概要

電気


 
ガスエンジンで発電した電力は電力会社と系統連系されている。また、ガスエンジンを導入することで、商用電力の停電時には、停電の許されない病院内の医療用電源や保安用負荷を分担させることになっている。



 
ガスエンジンの排熱によって回収した蒸気は、ガス蒸気ボイラーからの蒸気とともに主に冷暖房、洗濯、滅菌、加湿に利用される。一方、ジャケット冷却水から回収された温水は、暖房や給湯にも利用されている。
空調



 
蒸気吸収冷凍機を用いたセントラル空調とパッケージを用いた個別空調を組み合わせ、目的に応じたきめ細かい空調が可能となっている。この病院ではコジェネ・ガス蒸気ボイラー・GHP(ガスヒートポンプ:付属建物)など施設内のエネルギー源をトータルにとらえ、最も省エネ性、経済性を発揮できるシステムを導入している。
環境性

 
天然ガスはNOxやCO2の発生量が小さく、SOxは全く発生しない。また、コージェネレーションは総合効率の高い省エネルギーなシステムである。

(3)運転実績

(1)電力供給の状況 全電力の約50%をコジェネによる発電で賄っています。
(2)排熱利用状況 建物の全熱負荷における排熱利用状況は次のとおりです。
(3)コージェネレーション総合効率 50〜80%。特に排熱が十分に利用できる冬期には、非常に高い総合効率を発揮しています。
(4)省エネ性と環境保全性  省エネルギー性や環境保全性についても、計画通りの効果を上げています。
・1次エネルギー換算で6.16%の削減
・CO2排出量で11.66%の削減
  電力
(年間)
ガス
(年間)
1次エネルギー換算 CO2
排出量
  kWh Nm3 Gcal t-CO2
コジェネ導入 (現状) 4,797,171 2,308,478 36,250 30503
コジェネなし 9,830,299 1,489,237 38,629 34529
     
    省エネルギー性 ▲6.16%
    CO2排出量削減 ▲11.66%

■参考
○「ガスコージェネレーション導入事例集(病院編)」(日本工業出版梶j
 

天然ガスコージェネレーションの利用について
(1)種類別特性
 天然ガスコージェネレーションは、ガスエンジンやガスタービンを原動機としますが、ディーゼルエンジンを原動機とするコージェネレーションと比べ、稼働の際にSOxを発生せず、NOxやCO2の発生量も低いクリーンなシステムです。
 従来、ガスタービンは一般的に大規模発電に用いられ、小規模発電においてはガスエンジンが主流でした。しかし、最近では小容量のガスタービンであるマイクロガスタービンも開発されています。
区   分
 
ガスエンジン
 
ガスタービン
 
(参考)
ディーゼルエンジン
燃料 天然ガス 天然ガス 灯油、軽油、A重油
適用規模 10〜5000kW 500〜100000kW 15〜10000kW
発電効率 28〜40% 20〜35% 30〜42%
総合効率 65〜85% 70〜85% 40〜70%
特徴



 
排ガスがクリーン
熱回収が容易
メンテナンスが容易
騒音、振動が大きい
価格が高い
小型軽量でコンパクト
冷却水が不要
騒音、振動が小さい
発電効率が低い
 
発電効率が高い
燃料単価が安い
排ガス処理が必要
メンテナンスが掛かる
騒音、振動が大きい

新エネルギーデータ集をもとに作成

(2)経済性
 設置コストについては、ガスエンジンが15〜30万円/kW、ガスタービンが10〜20万円/kWとなっています。
 メンテナンス費については、発電電力量当たりガスエンジンが2〜4円/kWh、ガスタービンが1〜1.5円/kWhとなっています。


 
●支援制度
 天然ガスコージェネレーション導入に当たっては、以下の支援制度が活用可能です。
支援制度 対象者 内容 実施主体
新エネルギー事業者支援事業 事業者 債務保証
補助(補助率1/3)
NEDO
地域新エネルギー等導入促進事業 地方公共団体 補助率 1/2 NEDO
中小企業金融公庫の石油代替エネルギー資金 事業者 融資 中小企業金融公庫
エネルギー需給構造改革投資促進税制
(国税)
青色申告を提出する個人又は法人 優遇税制  

天然ガスコージェネレーション導入における課題と方向性

(1)導入の課題
 高いエネルギー効率という利点がありながら、経済性が導入の障害となっています。より一層の低コスト化・高効率化が望まれます。
 同時に中小規模の建物にも導入できるように、設備のコンパクト化を図る必要があります。
 また、本県においては天然ガスコージェネレーションを行うための都市ガス供給エリアが限られていることも課題としてあげられます。

(2)導入の方向性
■熱・電気を共に利用する産業用施設への導入
 熱と電気の両方を必要とする産業用施設では、別々に供給するよりも効率的であり、また、大規模利用によるスケールメリットもあることから、3〜4年で投資が回収できる例も見られます。

■熱・電気を共に利用する業務用施設への導入
 ホテル、病院など熱と電気を両方必要とする施設では、別々に熱と電気を作るよりも効率的であり、導入のメリットを有しています。さらなる普及のためには、中小規模の建物にも導入できるように設備の小型化が望まれています。
 また、ガスの場合、発電出力が10kW未満では、電気主任技術者が不要となる利点もあります。

 
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