5章 ケーススタディ及び事例紹介

第2 事例紹介
 7.エネルギーの効率的利用の方策
<照明設備>
 オフィスビルにおける省エネルギーを進めるに当たっては、まず照明設備の見直しが必要です。ビルの場合、照明使用電力は全体消費量の約3割を占め、また照明設備の省エネルギー対策は大規模な工事を必要としないため、低コストで一定の効果をあげられます。

(オフィスビル電力使用量内訳の例)

(照明設備の省エネルギー対策)
光源変更による利用効率化 例
@白熱電球:発光管、インバータを一体構造とした電球型蛍光ランプへの変更。ほぼ同じ外形で、寿命が6倍、電気代及び発熱量が4分の1と大きな省エネルギー効果と経費削減効果を得られます。
A蛍光ランプ:省電力型ランプへの変更。明るさは一般型と同じで、10%程度の省エネルギーが可能となります。
B水銀ランプ:効率重視の高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプへの変更。体育館や講堂、工場などにおいては、水銀灯の安定器をそのまま使用でき、水銀灯に比べランプ効率が約30%向上します。

機器の一部の改修
@安定器の交換:器具内の安定器を銅鉄形からインバータに交換。省電力化を図ることができ、また、ちらつきがなくなるというメリットもあります。
A改修専用器具:Hfインバータ(Hf:High Frequency;高周波)と電源端子台を反射板に備えた、反射板器具ユニットが商品化されています。器具本体に取り付けるだけで改修でき、工事費の節減が図れます。

<空調設備>
(省エネルギー性の向上)
 オフィスビルにおいてエネルギー消費の約半分が空調に使用されています。空調システムに係る省エネルギー対策では、ダクト系や水配管関係における搬送動力の低減が最も効果が大きく、ファン・ポンプなどの搬送機器にインバーター制御や台数制御を導入し、負荷に合わせて搬送量を適正化することで、大きな省エネルギー効果を得ることができます。

ビル空調(搬送)改善の例


(電力の負荷平準化)
  オフィスビル等の空調設備は、夏季の昼間や冬季の夕方に一斉に稼動するため、電力需要のピークを押し上げています。このピーク時の電力需要を抑制するため蓄熱式空調システムは有効な手段です。蓄熱式空調システムの導入により、電力の負荷平準化が図られ、発電所等の電力設備の有効活用が可能となり、二酸化炭素などの環境負荷の低減にも効果があります。さらに、蓄熱式空調システムは、夜間における熱源機の定格運転が可能なため、省エネルギー面においても優れています。また、蓄熱槽の水は、非常用の生活用水や消火用水として利用できるコミュニティタンクとしての活用も可能です。

※蓄熱式空調システム:安価な夜間電力で熱源機を運転して、冷水(氷)または、温水を蓄熱槽に蓄え、昼間にこれを利用して冷暖房空調を行うシステムです。


農林水産省 草地試験場(西那須野町)に導入されている蓄熱式空調システム

<コンプレッサ>

空気圧縮機(コンプレッサ)の省エネ運転管理

●吐出圧力の低減
●空気漏れをなくす
●配管の圧力損失低減
●吸い込み抵抗の低減
●運転時間の見直し
●台数制御運転の活用

  空気圧縮機(コンプレッサ)が消費する電力は工場設備全体の25%と言われており、省エネルギー、コスト低減の上からその対策は重要な課題となっています。
  コンプレッサの省エネ対策としては、従来から実施されてきた運転管理面の対策の他、インバーター搭載型油冷式スクリュー圧縮機による対策が有効です。
 インバータ搭載型スクリュー圧縮機は、使用空気量の増減に応じて圧縮機の回転数を変化させて吸い込み空気量を調整するので、無駄な動力消費がなく理想に近い容量制御が可能になります。


<インバータ>
 インバータとは、交流または直流電源を、周波数を変調させた交流として出力するものです。
 一般的に活用されるのが、交流モーターの制御です。交流モーターの回転数を変えるためには、電圧を変える方法、周波数を変える方法などがあります。電圧を変化させる場合には、変換の差位を熱に変換する方法が一般的ですが、その分効率が落ちます。インバータを用いて周波数を変換する方法は、電圧を変化させる方法より効率的です。
 蛍光灯においてもインバータが用いられていますが、これは、蛍光灯の発光効率が周波数が高くなるにつれて上昇するという性質を利用しています。
 インバータを用いた運転制御は、空調用、搬送用、加工機械用などいろいろな分野で省エネ効果が得られます。実際の省エネ事例を紹介します。

省エネ効果例
用途 インバータ導入のポイント 省エネ率 その他の効果
工場ルーフファン(天井扇) 内外気温に無関係な定速運転を、センサと組み合わせ一定温度で制御 30% 騒音減少、快適性向上
クリーンルーム外気処理ファン 内圧保持のため外気処理空調機の風量を制御 40%  
集中クーラントポンプ 加工装置の運転状態に合わせてポンプのクーラント液流量を制御 40% 装置停止時の液圧上昇回避
昇降機に電源回生コンバータ 下降運転時の発電エネルギーを抵抗で熱消費していたものを電源に変換して省電力 47% 制動力向上
発熱減少
コンベア 過電流継ぎ手モータで50%速度運転からインバータ運転に変更 54% 速度安定性向上
エアコンカバー用射出成形機 冷却運転時の油圧ポンプの速度を60Hz→20Hzに低減 17% 作動油劣化軽減、騒音減少
板金打ち抜きプレス 待機中(クラッチ断時)フライホイールが軽負荷運転となるので、最適励磁制御で電圧を制御 26% クラッチ接続時の衝撃低減
                                           出典:「環境機器」2000年8月号


<電力貯蔵用電池>
  我が国の電力需要は年々着実に増加しており、特にオフィスビルの冷房空調需要の急増により、昼間と夜間との最大電力の格差は拡大していく傾向にあります。
  電力貯蔵用電池は、夜間の電力を充電・貯蔵し、昼間のピーク時などに発電(放電)するシステムのため、昼夜間の電力の格差を平準化することができます。
  さらに、電力貯蔵用電池は、出力の変動が激しい太陽光発電や風力発電などと組み合わせることによって、安定的に電力を供給することができるほか、非常用の電源としての活用も可能です。
  なお、電力貯蔵用電池は、割安な夜間電力を蓄え、昼間に使用するため、電気料金の大幅な削減が可能となります。

  

※電力負荷平準化による環境改善効果
  夜間の電力は、石油などの化石燃料による発電比率が低いため、二酸化炭素やNOx、SOxの排出原単位は昼間に比べて低くなっています。
  昼間の電力需要を夜間にシフトするなどの電力の負荷平準化を図ることにより、二酸化炭素などの環境負荷の排出抑制効果が一層高まります。

<ESCO>
 ESCO(Energy Service Company)事業とは、工場やオフィスビルなどに対し、省エネ対策の方法を提案し、必要な設備の施工、維持管理、メンテナンス、その後の省エネ効果の検証までを一貫して請負うもので、省エネにより削減したコストで設備投資や金利の返済、ESCOの経費など全てをまかないます。
 契約期間中、省エネによって削減されたコストは、ESCOと顧客で分配します。さらにESCOはあらかじめコスト削減効果を保証し、削減未達の場合は委託費用の一部で補填します。契約期間終了後の経費削減分は全て顧客の利益となるなど、資金面でのリスクも回避できます。

(自治体のESCO導入事例:東京都三鷹市)
 三鷹市では平成10年度、市庁舎に対してESCO事業を導入しました。改修内容として
   @高効率照明システムの導入
   A冷却塔のリニューアルと冷却塔ファンの温度制御運転の導入
   Bファン動力のリニューアルとインバータ制御運転の導入
   Cモニタリング&レポートサービスの導入
を行い、508,443 MJ/年(2,100千円/年)の節約効果(冷却ファンを除く)が得られるようになりました。


        

 
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