栃木県水環境保全計画

第2章 栃木県の水環境の現況

 

水の文化と歴史

(1)水に関わる伝統行事

 県内各地に、水に関わりを持つ神社や祭りなどが多くある。地域に根ざした文化として、まちづくりや水環境保全意識の高揚のため、保存、継承していくことが重要である。

(2)足尾銅山/渡良瀬遊水地

 足尾銅山では、1600年代から銅の採掘が行われていたが、明治期に入り山火事や生産量増大に伴う森林の乱伐、煙害により、周辺の森林が裸地化した。既に銅山は休廃止鉱山となっているが、今なお坑廃水処理が続けられ、足尾地区の荒廃した森林の復旧作業が進められている。
 渡良瀬遊水地の設置により水没した赤麻沼付近にある谷中村(現在の藤岡町)は、周辺の地域より一段と低くなっており、たびたび大規模な洪水に見舞われていた。また、足尾銅山から流れてくる鉱毒による被害が大きな社会問題となっていたことから、利根川、渡良瀬川、巴波川の合流地点を遊水地化する計画が立てられ、谷中村の約380世帯、2,500人が移転の対象となった。一部の人は移転に強く反対し土地収用法が適用されるなど、人々の犠牲と協力によって遊水地化が進められた。流域の人々の生命と財産を幾多の洪水の危険から守ってきた一方で、その歩みは地域にとっての重い歴史として、語り伝えられている。

(3)水に関わる産業

 伝統産業としては、手漉き和紙や染め物などが水との関連が深い。本県では烏山和紙や益子町の草木染などが挙げられる。
 水と関わりの深い製造業としては、豆腐や醤油、ビール製造などが挙げられる。また、日本酒の酒蔵は県下の各地に分布し、40箇所余りで操業している。

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