
水質汚濁に係る環境基準は、「環境基本法」により人の健康の保護に関する基準と生活環境の保全に関する基準とが定められている。これは、公共用水域及び地下水の水質保全のための行政上の目標として、維持することが望ましい基準である。
(1)
人の健康の保護に関する環境基準は、すべての公共用水域及び地下水に一律に適用され、カドミウム等26項目(「健康項目」)について定められていたが、12年1月、「ダイオキシン類対策特別措置法」の施行により、ダイオキシン類についても環境基準が定められた。
(2)
生活環境の保全に関する環境基準は、上水道、農業用水等、各公共用水域の利水目的に応じて河川、湖沼の水域ごとに類型指定が行われている。本県においては、川俣ダム貯水池が15年3月に国の類型指定を受け、69水域となった。(表2−2−1)
(3)
この他に環境基準に準ずるものとして、公共用水域及び地下水を対象とした「要監視項目」22項目及び「公共用水域等における農薬の水質評価指針」27項目が定められている。
表2−2−1 環境基準類型指定状況
区分 |
河川・湖沼数 |
水域数 |
類型別水域数内訳 |
環境基準
地点数 |
AA |
A |
B |
C |
D |
E |
T |
U |
V |
河
川 |
那珂川水系 |
14 |
15 |
1 |
14 |
|
|
|
|
|
|
|
16 |
鬼怒川・小貝川水系 |
16 |
20 |
2 |
11 |
3 |
4 |
|
|
|
|
|
21 |
渡良瀬川水系 |
18 |
29 |
1 |
10 |
14 |
2 |
1 |
1 |
|
|
|
30 |
小計 |
48 |
64 |
4 |
35 |
17 |
6 |
1 |
1 |
|
|
|
67 |
湖沼 |
5 |
5 |
3 |
2 |
|
|
|
|
2 |
2 |
1 |
5 |
合計 |
53 |
69 |
7 |
37 |
17 |
6 |
1 |
1 |
2 |
2 |
1 |
72 |
(注)1 渡良瀬川上流水域について、当該水域数には計上しているが、同水域の環境基準地点(高津戸=群馬県大間々町所在)は地点数に含まれていない。
2 類型のうち、T〜Vについては窒素及びりんに係る類型を示す。
3 那珂川水系には、押川(久慈川水系)を含む。
4 渡良瀬川水系には、利根川に直接流入する西仁連川を含む。
(1) 概況
本県の大半の河川は、那珂川、鬼怒川・小貝川及び渡良瀬川の三大水系に分けられ、その流域は、県土のほぼ3分の1ずつに等分される。
これらの河川の水質は、流域の産業活動や土地利用の形態などにより異なり、各水系の水質を特徴づけている。
県内の公共用水域の水質汚濁の状況を監視するため、「水質汚濁防止法」に基づき「公共用水域の水質測定計画」を作成し、14年度は県内59河川の
128地点において水質調査を実施した。人の健康の保護に関する項目(健康項目)については、すべての地点で環境基準を達成していた。
生活環境の保全に関する項目(生活環境項目)について、河川の有機性汚濁の指標であるBODで環境基準の達成状況をみると、県全体の達成率は86%であり、前年度(77%)
より向上している。(図2−2−1)
図2−2−1 水系別のBOD環境基準達成率の経年変化

水系別のBODの環境基準達成率は、那珂川水系87%、鬼怒川・小貝川水系95%、渡良瀬川水系79%となっており、鬼怒川・小貝川水系、渡良瀬川水系では前年度より達成率が向上し、那珂川水系では前年度と同じ達成率であった。
類型別のBODの環境基準達成状況は、AA、A、B、C類型では前年度より達成率が向上し、D、E類型では前年度と同じ達成率であった。(表2−2−2)
表2−2−2 類型別の環境基準達成状況(経年変化) (単位:%)
類型名 |
水域数 |
8年度
達成率 |
9年度
達成率 |
10年度
達成率 |
11年度
達成率 |
12年度
達成率 |
13年度
達成率 |
14年度
達成率 |
AA |
4 |
100 |
100 |
100 |
75 |
100 |
50 |
75 |
A |
35 |
83 |
97 |
91 |
80 |
91 |
91 |
94 |
B |
17 |
24 |
71 |
59 |
59 |
71 |
59 |
76 |
C |
6 |
17 |
50 |
33 |
50 |
83 |
50 |
67 |
D |
1 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
E |
1 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
計 |
64 |
63 |
86 |
77 |
72 |
86 |
77 |
86 |
(注)1 達成率=環境基準達成水域数/類型指定水域数×100
2 各環境基準点(渡良瀬川上流水域は補助地点)において、BODの環境基準適合率75%以上を環 境基準達成水域とした。
生活環境項目別の環境基準適合状況は、BOD、SS、大腸菌群数は前年度よりも高くなっており、他は前年度と同程度であった。
生活環境項目について各水系を比較すると、那珂川水系は他水系と比較してBODの適合率が91.8%と高いが、大腸菌群数の適合率は9.1%と低い。(表2−2−3)
表2−2−3 項目別環境基準適合状況(14年度) (単位:%)
水系名 |
地点数 |
pH |
DO |
BOD |
SS |
大腸菌郡数 |
那珂川 |
32 |
97.1 |
99.8 |
91.8 |
99.3 |
9.1 |
鬼怒川・小貝川 |
44 |
98.4 |
99.7 |
90.4 |
99.2 |
34.5 |
渡良瀬川 |
43 |
98.2 |
98.2 |
85.3 |
97.1 |
39.3 |
計 |
119 |
98.0 |
99.2 |
88.9 |
98.4 |
29.7 |
前年度 |
119 |
97.2 |
99.0 |
81.7 |
94.8 |
17.2 |
(注)1 環境基準類型指定の全調査地点を対象とした。
2 適合率=環境基準適合検体数/調査実施検体数×100
過去5か年における、主要河川の県内末流地点における水質をBODの年平均値で表した。(図2−2−2)
14年度は前年度と比較して、全ての河川で改善されている。
図2−2−2 主要河川県内末流地点の水質経年変化
(BOD 年平均値)

(2) 各水系の概要
ア 那珂川水系の水質
那珂川水系に属する河川の15水域における環境基準類型指定状況はAA又はA類型で、他水系に比較し、水質的に良好な河川が多い。
環境基準達成状況をBODでみると、水域数、構成比ともに前年度と同様であった。(表2−2−4)
表2−2−4 那珂川水系の環境基準達成状況(14年度)
T 環境基準を達成した水域
類型 |
水域名 |
環境基準地点 |
適合率
(%) |
75%値
(mg/l) |
平均値
(mg/l) |
5年間平均値
(mg/l) |
A |
那珂川(2)
高雄股川
湯川
余笹川
黒川
松葉川
箒川
蛇尾川
荒川
江川
内川
逆川
押川 |
新那珂橋
野口
高雄股橋
湯川橋
川田橋
新田橋
末流
箒川橋
宇田川橋
向田 橋
末流
旭橋
末流
越地橋 |
100
100
100
100
92
92
92
100
100
100
75
92
100
92 |
0.9
0.8
0.9
1.1
1.2
0.9
1.2
1.2
1.4
1.3
2.0
1.3
1.5
1.0 |
0.8
0.8
0.8
0.9
1.1
1.0
1.1
1.1
1.0
0.9
1.9
1.3
1.1
0.9 |
1.0
0.9
1.0
1.4
1.4
1.2
1.6
1.3
1.2
1.4
2.0
1.6
1.6
1.0 |
計 |
水域数 |
13 (13) |
構成比 |
87% (87%) |
U 環境基準を達成しない水域
類型 |
水域名 |
環境基準地点 |
適合率
(%) |
75%値
(mg/l) |
平均値
(mg/l) |
5年間平均値
(mg/l) |
AA |
那珂川(1) |
恒明橋 |
58 |
1.1 |
0.9 |
1.1 |
A |
武茂川 |
更生橋 |
67 |
2.1 |
1.5 |
1.8 |
計 |
水域数 |
2 ( 2) |
構成比 |
13% (13%) |
(注)1 環境基準地点において、BODの環境基準適合率75%以上の水域を環境基準達成とした。
2 5年間平均とは、10年度〜14年度の75%値の平均値である。
3 計欄の( )は前年度を示す。
那珂川本川の水質流程変化をBODを指標としてみると、全域ともほぼ良好な水質を維持している。(図2−2−3)
図2−2−3 那珂川の水質流程変化(BOD75%値)(14年度)

イ 鬼怒川・小貝川水系の水質
鬼怒川・小貝川水系に属する河川の20水域における環境基準類型指定状況は、上流域のAA類型から下流域のC類型までの4類型である。
環境基準達成状況をBODでみると、19水域で環境基準を達成しており、達成率は95%であった。(表2−2−5)
表2−2−5 鬼怒川・小貝川水系の環境基準達成状況(14年度)
T 環境基準を達成した水域
類型 |
水域名 |
環境基準地点 |
適合率
(%) |
75%値
(mg/l) |
平均値
(mg/l) |
5年間平均値
(mg/l) |
AA |
鬼怒川(1)
男鹿川 |
川治第一発電所前
末流 |
100
100 |
0.6
0.5 |
0.6
0.5 |
0.7
0.6 |
A |
鬼怒川(2)
板穴川
湯 川
大谷川
西鬼怒川
江川下流
田川上流
赤堀川
野元川
小貝川
五行川 |
鬼怒川橋
川島橋
末流
末流
開進橋
西鬼怒川橋
末流
大曽橋
木和田島
末流
三谷橋
桂橋 |
100
100
100
100
100
92
100
83
83
92
100
92 |
1.2
1.2
1.0
1.2
1.0
1.1
1.4
1.9
1.7
1.5
1.3
1.6 |
1.0
1.1
0.8
1.0
0.7
1.0
1.1
1.5
1.2
1.3
1.2
1.2 |
1.4
1.5
1.1
1.3
1.1
1.1
1.8
2.0
1.4
1.4
2.1
1.8 |
B |
志渡渕川
田川下流
行屋川 |
筋違橋
梁橋
常盤橋 |
75
75
100 |
2.6
3.0
1.6 |
2.2
2.4
1.2 |
2.5
2.9
1.8 |
C |
江川上流
田川中流
釜川 |
高宮橋
明治橋
つくし橋 |
100
83
100 |
1.8
4.5
2.6 |
1.4
2.9
2.2 |
2.6
5.3
3.0 |
計 |
水域数 |
19 (16) |
構成比 |
95% (80%) |
U 環境基準を達成しない水域
類型 |
水域名 |
環境基準地点 |
適合率
(%) |
75%値
(mg/l) |
平均値
(mg/l) |
5年間平均値
(mg/l) |
C |
御用川 |
錦中央公園 |
67 |
6.8 |
5.1 |
7.7 |
計 |
水域数 |
1 ( 4) |
構成比 |
5% (20%) |
(注)1 環境基準地点において、BODの環境基準適合率75%以上の水域を環境基準達成とした。
2 5年間平均とは、10年度〜14年度の75%値の平均値である。
3 計欄の( )は前年度を示す。
鬼怒川本川の水質流程変化をBODを指標としてみると、ほぼ1.0mg/l 前後で推移している。(図2−2−4)
図2−2−4 鬼怒川の水質流程変化(BOD75%値)(14年度)

ウ 渡良瀬川水系の水質
渡良瀬川水系に属する河川の29水域における環境基準類型指定状況は、上流域のAA類型から下流域のE類型までの6類型にわたっている。
環境基準達成状況をBODでみると、23水域で達成し、達成率は79%と向上した。(表2−2−6)
表2−2−6 渡良瀬川水系の環境基準達成状況(14年度)
T 環境基準を達成した水域
類型 |
水域名 |
環境基準地点 |
適合率
(%) |
75%値
(mg/l) |
平均値
(mg/l) |
5年間平均値
(mg/l) |
AA |
大芦川 |
赤石橋 |
75 |
0.8 |
0.7 |
0.9 |
A |
渡良瀬川上流
神子内川
松田川上流
旗川上流
才川
秋山川上流
永野川上流
思川上流
黒川 |
沢入発電所渡良瀬川取水堰
末流
新松田川橋
高田橋
末流
小屋橋
堀米橋
星野橋
大岩橋
保橋
御成橋 |
92
92
100
92
92
100
92
100
100
92
92 |
1.3
1.3
1.1
1.3
1.4
0.6
1.4
1.2
1.1
1.2
1.5 |
1.1
1.0
1.0
1.2
1.1
0.7
1.1
0.9
0.9
0.9
1.0 |
1.2
1.2
1.3
1.5
1.6
0.9
2.0
1.2
1.3
1.1
1.5 |
B |
渡良瀬川(2)
渡良瀬川(3)
渡良瀬川(4)
袋川上流
出流川
三杉川
巴波川下流
永野川下流
思川下流
姿川 |
葉鹿橋
渡良瀬大橋
三国橋
助戸
末流
末流
巴波橋
落合橋
乙女大橋
宮前橋 |
100
92
75
83
92
75
83
100
100
92 |
1.2
1.8
3.0
2.9
2.7
2.9
2.8
2.2
1.5
2.4 |
1.1
1.7
2.4
2.2
2.2
2.2
2.1
1.5
1.3
1.8 |
1.7
2.2
2.4
3.5
3.8
4.4
2.2
2.3
2.1
2.3 |
C |
矢場川 |
矢場川水門 |
92 |
4.2 |
3.4 |
5.5 |
D |
秋山川下流 |
末流 |
100 |
3.3 |
2.9 |
4.1 |
E |
袋川下流 |
袋川水門 |
92 |
9.3 |
7.1 |
7.6 |
計 |
水域数 |
23 (20) |
構成比 |
79% (69%) |
U 環境基準を達成しない水域
類型 |
水域名 |
環境基準地点 |
適合率
(%) |
75%値
(mg/l) |
平均値
(mg/l) |
5年間平均値
(mg/l) |
A |
小俣川上流 |
新上野田橋 |
50 |
4.2 |
2.8 |
5.2 |
B |
小俣川下流
松田川下流
旗川下流
西仁連川 |
末流
末流
末流
武井橋 |
58
17
67
67 |
4.0
11
3.1
3.1 |
3.1
10
2.3
2.3 |
3.7
14
3.6
3.4 |
C |
巴波川上流 |
吾妻橋 |
0 |
7.0 |
6.9 |
6.9 |
計 |
水域数 |
6 ( 9) |
構成比 |
21% (31%) |
(注)1 環境基準地点において、BODの環境基準適合率75%以上の水域を環境基準達成とした。
2 5年間平均とは、10年度〜14年度の75%値の平均値である。
3 計欄の( )は前年度を示す。
渡良瀬川本川の水質流程変化をBODでみると、上流域では比較的良好な水質を示しているが、新開橋(藤岡町)以降は悪化している。
(図2−2−5)
図2−2−5 渡良瀬川の水質流程変化(BOD75%値)(14年度)

(3) 水生生物による水質調査
水生生物による水質調査は、各水質階級別の指標となる生物の生息数等を調査し、水質の判定をするものである。この方法は、環境を構成する様々な要素を長期的かつ総合的に把握でき、理化学試験による水質の評価と併せて河川の状況を知る有効な手段である。
生物学的水質階級は調査水域に生息する水生生物の種類、数等により「きれいな水(貧腐水性)」、「少し汚れた水(β中腐水性)」、「汚い水(α中腐水性)」、「大変汚い水(強腐水性)」の4階級に分けられる。
栃木県では昭和59年度から、那珂川水系、鬼怒川・小貝川水系、渡良瀬川水系の3水系について毎年度調査を行っている。14年度は、那珂川水系16地点について調査を行ったが、前回の調査(11年度)とほぼ同様の結果であった。(表2−2−7)
水系別の評価は、那珂川水系が最もきれいな水の割合が高く、次いで鬼怒川・小貝川水系、渡良瀬川水系の順になっており、理化学的な水質評価であるBODの評価と同様の傾向である。
表2−2−7 各水系における水質階級評価状況
水系 |
実施
年度 |
調査
地点 |
きれいな水 |
少し汚れた水 |
汚い水 |
大変汚い水 |
m/n |
% |
m/n |
% |
m/n |
% |
m/n |
% |
那珂川 |
59 |
38 |
36/38 |
94 |
1/38 |
3 |
1/38 |
3 |
0/38 |
0 |
62 |
16 |
16/16 |
100 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
2 |
16 |
11/16 |
69 |
5/16 |
31 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
5 |
16 |
15/16 |
94 |
1/16 |
6 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
8 |
16 |
16/16 |
100 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
11 |
37 |
35/37 |
95 |
2/37 |
5 |
0/37 |
0 |
0/37 |
0 |
14 |
16 |
15/16 |
94 |
1/16 |
6 |
0/16 |
0 |
0/16 |
0 |
鬼怒川・
小貝川 |
60 |
43 |
29/43 |
67 |
8/43 |
19 |
5/43 |
12 |
1/43 |
2 |
63 |
21 |
8/21 |
38 |
4/21 |
19 |
7/21 |
33 |
2/21 |
10 |
3 |
21 |
9/21 |
43 |
9/21 |
43 |
1/21 |
5 |
2/21 |
10 |
6 |
18 |
11/18 |
61 |
4/18 |
22 |
3/18 |
17 |
0/18 |
0 |
9 |
51 |
35/51 |
68 |
10/51 |
20 |
5/51 |
10 |
1/51 |
2 |
12 |
18 |
15/18 |
83 |
2/18 |
11 |
1/18 |
6 |
0/18 |
0 |
渡良瀬川 |
61 |
53 |
24/53 |
45 |
5/53 |
9 |
12/53 |
23 |
12/53 |
23 |
元 |
29 |
11/29 |
38 |
7/29 |
24 |
6/29 |
21 |
5/29 |
17 |
4 |
30 |
14/30 |
47 |
8/30 |
27 |
4/30 |
13 |
4/30 |
13 |
7 |
30 |
9/30 |
30 |
11/30 |
36 |
8/30 |
27 |
2/30 |
7 |
10 |
47 |
27/47 |
57 |
9/47 |
19 |
7/47 |
15 |
4/47 |
9 |
13 |
26 |
16/26 |
62 |
5/26 |
19 |
5/26 |
19 |
0/26 |
0 |
(注)1 m/n=(各評価数)/(地点数)
2 調査は、基本的に5月と11月に実施した。
(1) 概 況
近年、全国的な傾向として、湖沼流域における社会経済活動の増大等により、窒素、りん等の栄養塩類の湖沼への流入が増加し、植物プランクトン等が大量に繁殖することによる水質の悪化や魚類のへい死、上水道における異臭味の発生等の障害が生じる富栄養化現象が進行している。
湖沼の水質についての環境基準は、富栄養化の原因となる窒素、りんの基準についても設定されており、本県では、中禅寺湖はAA類型・T類型(全りんのみ)、湯の湖はA類型・V類型、深山ダム貯水池はAA類型・T類型(全りんのみ)、川治ダム貯水池はAA類型・U類型にそれぞれ環境基準が指定されている。
また、15年3月に川俣ダム貯水池(A類型・U類型(全りんのみ))が新たに類型指定を受けた。
(2) 各湖沼の水質
ア 中禅寺湖の水質
中禅寺湖は面積11.5ku、最大水深163m、湖水の滞留日数は約6年で標高1,269mに位置している天然堰止め湖であり、湖沼としては貧栄養湖に属している。
COD(75%値)は、2.2r/l(基準値1r/l)、全りんは0.009r/l(基準値0.005r/l)であり、両項目とも環境基準を達成していない。過去5年間を見るとほぼ横ばいで推移している。
中禅寺湖は、過去において、植物プランクトンの増殖などによる水道水の異臭味障害が発生したこともあり、富栄養化の進行が懸念されている。(図2−2−6)
図2−2−6 中禅寺湖の水質

イ 湯の湖の水質
湯の湖は面積0.35ku、最大水深14.5mで標高1,478mに位置している天然堰止め湖である。湖水の滞留日数は約30日で水深も浅く、富栄養化しやすい湖沼である。
COD(75%値)は、2.4r/l(基準値3r/l)全窒素は、0.35r/l(基準値0.4r/l)全りんについては、0.026r/l(基準値0.03r/l)であり、3項目とも環境基準を達成している。過去5年間で見ると、COD、全窒素は、ほぼ横ばいであるが、全りんについては、やや悪化傾向にある。(図2−2−7)。
なお、湯の湖の水質保全を図るため汚泥のしゅんせつ工事を、4年度から8年度に実施した他、湯元下水処理場の改善等の対策を講じている。14年度には13年度に引き続き、刈り取り船によるコカナダモの試験刈取りを行い、コカナダモ除去に伴う水質改善効果について調査研究を行った。
図2−2−7 湯の湖の水質

ウ 人工湖の水質
人工湖の水質状況を把握するため、「公共用水域の水質測定計画」に基づき、5貯水池について調査を実施している。
深山ダム貯水池では、COD(75%値)は1.1r/l(基準値1r/l)、全りんは0.021r/l(基準値0.005r/l、H18暫定目標値0.011r/l)であり、環境基準を達成していない。
川治ダム貯水池では、全りんは0.009r/l(基準値0.01r/l、H18暫定目標値0.021r/l)であり、環境基準を達成している。COD(75%値)は2.2r/l(基準値1r/l、H18暫定目標値2r/l)、全窒素は0.37r/?(基準値0.2r/l、H18暫定目標値0.32r/l)であり、環境基準を達成していない。
その他の人工湖の水質については、いずれも前年度と比較してほぼ横ばいの状況である。(図2−2−8)
図2−2−8 人工湖の水質

(1) 概況
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等による地下水汚染については、昭和60年度から15年3月までに110地区の汚染が確認されているが、そのうち41地区の汚染が終息し、現在、69地区の監視を続けている。
(2) 14年度の状況
県内の地下水の水質汚濁の状況を監視するため、「水質汚濁防止法」に基づき「地下水の水質測定計画」を作成し、実態把握のための概況調査及び汚染地区の監視のための定期モニタリング調査を実施した。
ア 概況調査結果
県内133地点で概況調査を実施したところ、9地点で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が環境基準を超過した。
イ 定期モニタリング調査結果
地下水汚染が確認されている59地区において、汚染状況の監視のための定期モニタリング調査を実施した。その結果、汚染の拡大は見られず、11地区では環境基準以下となっている。
ウ 新たな汚染の確認
宇都宮市で六価クロム、大平町でトリクロロエチレンの汚染を新たに確認した。
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