
(1) 環境基準等
土壌の汚染に係る環境基準は「環境基本法」により、土壌が有する「水質を浄化し地下水をかん養する機能」及び「食料を生産する機能」の観点から、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準としてダイオキシン類等28項目が定められている。
また、15年2月施行の「土壌汚染対策法」により、人の健康を保護するため、土壌汚染において汚染の除去等の措置が必要とされる基準としてカドミウム等25項目が定められた。
農用地の土壌汚染については、農用地の土壌環境を保全する観点から、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」によりカドミウム、銅及びひ素の特定有害物質について基準が定められているほか、農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止の観点から、農用地表層土壌を対象にした亜鉛を指標とする管理基準が定められている。
(2) 土壌環境の現況
@ 農用地以外
県内農用地を除く土壌環境の状況を把握するため、5市町(20地点)において「土壌環境保全実態調査」を実施した。
その結果、調査項目(カドミウム、鉛、六価クロム、ひ素、総水銀(アルキル水銀)、セレン)はすべて基準値以内であり、土壌汚染はみられなかった。(表2−3−1)
表2−3−1 土壌環境保全実態調査結果(14年度)(単位:mg/l)
地目 |
点数 |
区分 |
カドミウム |
鉛 |
六価クロム |
ひ素 |
総水銀 |
アルキル水銀 |
セレン |
住宅地 |
10 |
最高 |
<0.001 |
0.002 |
<0.01 |
0.004 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
最低 |
<0.001 |
<0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
平均 |
<0.001 |
<0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
商業地 |
5 |
最高 |
<0.001 |
0.001 |
<0.01 |
0.003 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
最低 |
<0.001 |
<0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
平均 |
<0.001 |
<0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
林地又は
雑種地 |
5 |
最高 |
<0.001 |
0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
最低 |
<0.001 |
<0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
平均 |
<0.001 |
<0.001 |
<0.01 |
<0.001 |
<0.0005 |
N.D. |
<0.001 |
環境基準 |
0.01 |
0.01 |
0.05 |
0.01 |
0.0005 |
検出されないこと |
0.01 |
(注)<:未満 N.D.:検出下限値未満
A 農用地
県内農用地の土壌環境の状況を把握するため、昭和54年度から県内を4ブロックに分け、「土壌環境基礎調査」を実施している。
その結果では、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」で定められている特定有害物質(カドミウム、銅及びひ素)は基準値以内であり、土壌汚染はみられなかった。(表2−3−2)
表2−3−2 土壌環境基礎調査結果(6年〜10年)
(単位:r/乾土s)
地目 |
点数 |
区分 |
カドミウム |
銅 |
ひ素 |
亜鉛 |
鉛 |
水田 |
54 |
最高 |
1.3 |
23.0 |
1.7 |
26.9 |
4.3 |
最低 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
1.7 |
0.7 |
平均 |
0.32 |
5.9 |
0.6 |
11.7 |
1.7 |
普通畑 |
30 |
最高 |
0.6 |
102.9 |
1.0 |
109.7 |
1.8 |
最低 |
0.1 |
0.0 |
0.0 |
3.1 |
0.0 |
平均 |
0.25 |
13.6 |
0.2 |
18.4 |
0.8 |
樹園地 |
1 |
最高 |
0.2 |
45.8 |
2.1 |
30.9 |
18.5 |
最低 |
0.0 |
0.2 |
0.1 |
4.5 |
0.6 |
平均 |
0.13 |
12.5 |
1.0 |
20.1 |
4.2 |
牧草地 |
7 |
最高 |
0.3 |
1.4 |
1.6 |
17.0 |
1.6 |
最低 |
0.1 |
0.1 |
0.1 |
5.7 |
1.0 |
平均 |
0.17 |
0.7 |
0.6 |
9.1 |
1.3 |
法律で定める指定基準 |
玄米中
1mg/kg未満 |
土壌中
125mg/kg未満 |
土壌中
15mg/kg未満 |
|
|
(1) 地盤沈下の経緯
関東平野における地盤沈下は、かつて、関東南部地域において著しい状況にあった。近年、南部地域は沈静化したものの、関東北部地域において、地盤沈下が進行している状況にある。
本県においては、昭和50年に国が精密水準測量を実施した結果、野木町及び小山市の一部の水準点が最大で十数p(昭和42年9月から50年1月までの7年4か月間)沈下していることが初めて確認された。
県では昭和51年度から精密水準測量を、昭和53年度から地盤沈下計による観測を開始している。
その後、測量対象地域を拡大するとともに、地下水位と地盤変動を観測するための地盤沈下観測所の拡充に努めており、14年度においては、精密水準測量を県央以南平地部18市町に設置してある水準点208点、路線延長475kmについて、地盤沈下観測を県央以南平野部11市町に設置してある17観測所においてそれぞれ実施した。
(2) 地盤沈下の現況
県南地域の平地部は、沖積層や洪積層が厚く、地下水を過剰に揚水すると地盤沈下が起こりやすい地質となっている。
14年度の状況は、野木町、藤岡町、小山市などで前年度同様沈下は継続しているものの、沈下量及び沈下面積とも小さかった。(表2−3−3、表2−3−4、表2−3−5)
なお、14年度の観測域での最大年間沈下地点は野木町中谷の1.58cmであった。
年間の状況を見ると、県南地域の多くの観測井では地下水位は夏季に低下し、秋季から冬季にかけて回復する傾向にある。また、地盤は一般的に夏季の水位低下に伴い収縮するが、水位が回復しても、完全には回復しない傾向がみられる。
沈下量及び年間2p以上沈下している地域の面積等を経年的に見ると、降水量との関連がみられ、渇水であった年(2年、4年、6年、8年)には、沈下量及び沈下面積ともに大きくなっている。(図2−3−1)
表2−3−3 県南地域代表市町※1の最大年間沈下地点とその沈下量
(14.1.1〜15.1.1) (単位:p)
市町名 |
水準点所在地 |
沈下量 |
小山市 |
小山市雨ケ谷地内 (NTT雨ケ谷分局) |
0.99 |
野木町 |
野木町中谷504−3 (南赤塚小学校) |
1.58 |
藤岡町 |
藤岡町下宮639 (八坂神社) |
1.29 |
足利市 |
足利市小曽根町517 (筑波小学校) |
0.41 |
佐野市 |
佐野市船津川町地内 (椿田稲荷) |
0.58 |
表2−3−4 県南地域代表市町※1の最大累積沈下地点とその沈下量 (昭52.1.1〜15.1.1) (単位:p)
市町名 |
水準点所在地 |
沈下量 |
小山市 |
小山市乙女934 (荒井建業向側) |
51.09 |
野木町 |
野木町潤島800−1 (野木中学校) |
73.66 |
藤岡町 |
藤岡町下宮639 (八坂神社) |
62.44 |
足利市 |
足利市県町1371 (県町公民館) |
29.42 |
佐野市 |
佐野市船津川町※2 (椿田稲荷) |
14.48 |
(注)※1 |
県南地域代表市町は、関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱(3年、閣議決定)に定める県内の対象地域(13市町)のうち、市町別累積沈下量についての上位5市町を示した。 |
※2 |
佐野市内で11年度まで最大累積沈下量(14.81cm)を記録していた高山町131の水準点は、周辺工事により設置し直したため、船津川町のデータを示した。 |
表2−3−5 地盤沈下した地域の面積の推移 (単位:ku)
年 |
52 |
53 |
54 |
55 |
56 |
57 |
58 |
59 |
60 |
61 |
62 |
63 |
元 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
2p以上
沈下地域 |
1 |
53 |
1 |
17 |
1 |
− |
4 |
93 |
9 |
7 |
29 |
13 |
6 |
55 |
35 |
100 |
1 |
76 |
1 |
50 |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
4p以上
沈下地域 |
− |
1 |
− |
− |
− |
− |
− |
18 |
− |
− |
1 |
− |
− |
10 |
− |
16 |
− |
24 |
− |
18 |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
図2−3−1 県南地域代表市町※1の最大累積沈下水準点の経年変化

図2−3−2 栃木県地盤変動等量線図

(1) 土壌汚染対策
15年2月施行の「土壌汚染対策法」に基づき、特定有害物質による土壌汚染の対策を推進する。
15年度は、特定事業場における特定有害物質の使用等の実態把握と自主的な対策を促すため、土壌汚染対策実態調査を行うこととしている。
(2) 農用地土壌保全対策
汚泥を原料とする肥料については、「肥料取締法」により国への登録が必要となっている。しかし、水質汚濁、大気汚染及び農用地への投入資材等により、土壌は汚染される可能性があるため、今後とも「モニタリング調査」等を実施し、県内土壌の実態を正確に把握していく。
(3) 土砂等適正処理事業
11年4月施行の「土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」に基づき、県内における土砂等の埋立ての適正処理を推進する。
(1) 経 過
昭和62年3月、栃木県公害対策審議会から「地盤沈下の基本的施策について」答申が出された。
これを受けて、2年12月に県南県央地域の16市町を対象とした「栃木県地下水採取の届出に関する指導要領」を策定した。
5年7月には「栃木県地下水揚水施設に係る指導等に関する要綱」を策定し、対象地域を県内全域に広げるとともに一定規模以上の施設について事前協議制を導入した。その後、同要綱は8年7月に一部改正の上、現在に至っている。
一方、国は地盤沈下防止の総合的な対策を講じるため、3年に県南部地域(13市町)を含む関東平野北部を対象にした「関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱」を策定した。
同要綱においては、本県の対象地域は、以下のように区分されている。
保全地域 |
地下水採取に係る目標量を設定し、その達成のための措置を講じる地域 |
小山市の一部、野木町、藤岡町 |
観測地域 |
観測及び調査等に関する措置を講ずる地域 |
足利市、佐野市、小山市の一部、真岡市、上三川町、南河内町、二宮町、石橋町、国分寺町、大平町、岩舟町 |
地盤沈下対策は多岐にわたることから、9年度に庁内関係各課室から構成する「地盤沈下対策検討会」を設置し、地下水利用者への地下水保全意識の啓発、観測体制の充実など連携を図りながら地盤沈下対策の推進に努めている。
(2) 対策の現状
ア 本県における対策
地盤沈下が懸念される小山市・野木町・藤岡町において、迅速な対策を図るため、地下水位及び地盤沈下の状況をテレメータシステムによりリアルタイムで観測している。14年度に小山市の小山若木観測所をテレメータ化し、5観測所(小山大谷、野木1、藤岡遊水池、野木原、小山若木)において観測した地下水位が対策水位(点検水位・節水水位)を超えた場合、「小山市・野木町・藤岡町地盤沈下防止連絡協議会(11年3月設立)」の地下水利用者に対し、点検要請・節水要請を行っている。(図2−3−3)
14年度は節水等の要請は行わなかった。
県民の生活水準の向上や産業の進展に大きく貢献している貴重な水資源である地下水を、将来にわたり有効かつ適切に保全、利用するため、「栃木県地下水揚水施設に係る指導等に関する要綱」に基づき、県内全域を3地域に分割し、揚水機の規模に応じて届出を提出させ、地下水の採取量、揚水機の規模など、適正な施設となるよう指導している。
特に、同要綱のA地域においては、大規模地下水採取者に対して、事前協議制度により、節水や代替水源への転換等の指導を行っている。
図2−3−3 地盤沈下の情報提供のフロー(概要)

イ 国における対策
関東経済産業局は「栃木県佐野・岩舟・大平地域工業用水使用合理化指導事業」を実施し、県及び対象市町と連携し、水使用の合理化を推進・指導することにより、工業用地下水の使用量の削減を図っている。
国土交通省は、関東平野北部の地盤沈下防止対策を推進するため、国及び関係各県等で構成する「関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱推進協議会」を設置しており、同要綱の見直しに向け検討している。
環境省は、学識経験者・本県を含む関係行政機関から構成する「関東平野北部地盤沈下防止等対策検討会」を設置し、同要綱の見直しに向けて提言を行うため、地域指定の変更や渇水時の体制等について検討を行った。
|