平成15年度 環境の状況及び施策に関する報告書

第3部 人と自然が共生する潤いのある地域づくり

第1章 自然環境の保全

第1節 自然環境の状況

 

自然環境の現況

 本県は、県北部に日光、高原、那須火山群からなる山岳地帯が形成され、湖沼、渓谷、瀑布や高層湿原等が原生林と調和した自然景観をなしている。また、地形、地質、気象など立地条件の特異性によって、南方系、北方系植物が混在して分布し、氷河時代からの動植物が数多く生息し、特異種や貴重なもの、珍しい生態を示すもの等変化に富んだ自然相を呈している。
 一方、中央部及び南部の平地帯は、経済活動の場として時代とともに変化してきたが、人間と自然との長いかかわり合いの中で存続している平地林等は、防音、防火、憩いの場等生活環境上計り知れない効用をもつ身近な自然として重要な意義を持っている。なお、この地帯は、奈良時代からの東国文化の中心地であり、古墳や遺跡等の歴史的、文化的な遺産が数多く存在している。

 

森林の現況

 本県の森林は、県土の約55%を占め、木材等の林産物の生産機能と水資源かん養、県土の保全、観光資源としての優れた自然環境の提供など、県民生活と深い関わりを持ち、多面的な公益的役割を果たしている。
 都市及びその周辺では、宅地化等の進展に伴い平地林等の貴重な緑が減少する傾向にあり、今後、より一層の緑化推進が必要な状況にある。

 

自然公園の現況

 本県の自然公園の面積は、約13万haであり県土の面積の約21%を占めている。県北西部の山岳地帯を中心とした地域は、我が国の代表的な自然公園である日光国立公園によって占められ、また、県内各地には、地域の特性を持つ8つの県立自然公園があって、それぞれ変化に富んだ自然景観を有している。(図3−1−1)
 これらの自然公園には、県の内外から、自然を求めて多くの人々が訪れている。

図3−1−1 自然公園の現況

 

第2節 自然環境保全対策

 

自然環境の保全対策

(1) 自然環境保護事業
 自然環境保全及び自然保護意識の高揚のための普及啓発、調査等を実施した。
(2) 自然環境保全地域等の指定
 「自然環境保全法」及び「自然環境の保全及び緑化に関する条例」に基づき、優れた自然環境を持つ地域を自然環境保全地域に、また、市街地周辺地及び歴史的・文化的遺産と一体となった緑地を緑地環境保全地域に指定している。
 14年度までに国指定の自然環境保全地域1か所を含め、41か所5,355haの指定を行った。(表3−1−1)

表3−1−1 自然環境保全地域等指定状況 (15年4月1日現在)

(3) 自然(緑地)環境保全地域の整備
 自然(緑地)環境保全地域に指定されている地域(図3−1−2)の案内標識等を整備して、優れた自然環境の保全に努めた。
 大田原市の親園自然環境保全地域には、国の天然記念物及び国内希少野生動植物種に指定されているミヤコタナゴの保護地があり、その保護管理を実施した。

(4) 生息地等保護区の指定
 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律<関係用語:「絶滅危惧種」「絶滅種」「レッドデータブック」>」に基づき、大田原市羽田地区のミヤコタナゴ生息地(60.6ha)が6年12月に全国で初めて生息地等保護区に指定された。
 当地域では、ミヤコタナゴ生息環境の維持管理及び保護増殖事業が実施されている。

(5) 自然環境基礎調査
 自然環境保全法第5条に基づく自然環境保全基礎調査を実施するとともに、本県の自然環境把握のために実施した基礎調査の取りまとめを行った。

(6) 平地林の保全
 平地林は、緑豊かなふるさと栃木を代表する景観であり、大気の浄化、防音、防風等の公益的効用と生活に潤いを与える身近な緑の供給地としても重要な役割を果たしており、14年度末現在の面積は、約70千haとなっている。

(7) 保安林の指定
 保安林は、水源のかん養、災害の防止、自然環境の保全・形成及び保健休養の場の提供等重要な役割を果たしており、14年度末現在の指定面積は、約16万9千haとなっている。
 保安林の指定は、保安林整備計画に基づき計画的に推進しているが、14年度は、水源かん養保安林や土砂流出防備補保安林等として、約219haの保安林を指定した。
 また、公益的機能が低下した保安林に対しては、間伐等の保育作業を行うなど適正な管理に努めた。

(8) 足尾の森林整備
 銅山の煙害により植物が枯死し、裸地化した荒廃地の復旧を図るため、植栽やヘリコプターによる実播などの治山事業を行い、緑化を進めている。
また、ボランティアによる植林活動も行われている。

(9) 湿原の保全
 生物多様性の観点から重要な地域である湿原を保全するため、水文、気候等の調査及び湿原かん養水確保対策等の保全対策を行っている。

(10) 自然とのふれあいの推進
 豊かな自然とのふれあいを通して、自然のしくみや大切さを理解するために自然観察会や野鳥観察会を開催するほか、自然体験プログラムの普及や、人材の育成等を実施している。

(11) とちぎふるさと街道整備事業
 2年4月に「とちぎふるさと街道景観条例」を施行し、同年6月に条例に基づき那須・塩原街道 景観形成地区を指定し、12年12月に指定地区を拡張した。ここでは、街道景観形成基準に基づく 指導を行い、「みどり豊かな栃木県」のイメ−ジにふさわしい街道景観の形成を図っている。
 13年度には「とちぎふるさと街道景観里親制度」を創設し、3団体を里親として指定したが、 14年度は新たに1団体を指定した。
 また、景観保全のための土地等の購入制度により、効果的な施策の推進を図っている。

図3−1−2 自然(緑地)環境保全地域の指定状況(15年4月1日現在)

 

自然公園の保護対策

 自然公園(日光国立公園及び8つの県立自然公園)の優れた風景地を保護するため、各種行為の規制等を行うとともに、快適な利用を確保するための施設整備、利用者に対する適正利用の指導等を行っている。
 14年度の主な取組は次のとおり。
(1) 自然公園管理事業
 公園計画に基づく特別地域などの地域指定により各種行為の規制を実施するとともに、利用者に対する適正利用の指導等を行った。益子県立自然公園の公園計画の変更を行い、西明寺境内地及び高館山北斜面を第1種特別地域への指定変更を行った。

(2) 県立自然公園フレッシュアップ事業
 益子県立自然公園道祖土集団施設地区の再整備として、同地区の利用拠点となるトレイルセンター周辺園地の整備(造園工等)、施設整備及び森林整備を実施した。

(3) 自然公園等施設整備事業
 自然公園の快適な利用促進を図るため、歩道、園地等の整備を行った。
  整備箇所 八方ヶ原高原山線歩道外20か所
  整備内容 歩道補修、標識設置、木道・野外卓設置、防護柵、園地整備等

(4) 那須・塩原エコアップ事業
 日光国立公園那須・塩原地域において、「人と自然との豊かなふれあい」「人と自然との共生の確保」を図るため、優れた自然を保全するとともに、自然体験の場を整備した。
  整備箇所 那須高原歩道外4か所
  整備内容 歩道整備等

(5) 自然環境共生型施設整備事業
 国立公園等の優れた自然環境の保護と利用の促進のため、自然とふれあう施設の整備に当たり、自然景観や生態系に配慮した施設整備を推進した。
  整備箇所 千手ヶ浜園地外3か所
  整備内容 トイレ整備、園地整備、標識設置、駐車場整備等

(6) 国際観光地「日光」活性化対策事業
 我が国を代表する国際観光地「日光」の活性化を図るため、日光市中宮祠地区において基盤整備等を行った。
  整備箇所 大鳥居園地外2か所
  整備内容 道路改良、歩道整備、標識設置等

(7) 奥日光環境保全対策事業
 国際観光地「日光」活性化事業で整備した、日光中宮祠地区の県営駐車場、湖畔園地、イタリア大使館別荘記念公園等の管理運営を行った。

 

野生鳥獣の保護対策

 野生鳥獣は、自然環境を構成する重要な要素の1つであり、自然環境を豊かにするものであると同時に、農林水産業の振興及び生活環境を快適にする上で、欠くことのできない役割を果たすものである。したがって、鳥獣の生息状況、生態等を考慮して計画的、効果的な鳥獣保護の施策を進め、自然環境の保全を推進する。
 県においては、14年度から18年度までの5年間を対象として策定された「第9次鳥獣保護事業計画」に基づき、鳥獣の保護繁殖のための鳥獣保護区等の設定、野生鳥獣による被害防止、狩猟の適正化を図る等総合的な鳥獣保護事業を行ってきた。(表3−1−2)
 14年度は、鳥獣保護及び狩猟の適正化を図るため、同計画に基づき、鳥獣保護区の設定、放鳥、普及啓発等を行う鳥獣保護事業、野生鳥獣被害対策、野生鳥獣の保護管理を実施した。

表3−1−2 鳥獣保護区等の設定状況    (15年3月31日現在)

(単位:ha)

区分 箇所数 面積 備考
鳥獣保護区 112 83,861 うち特別保護地区 18か所 6,407ha
休猟区 6 6,312  
銃猟禁止区域 209 109,425  
327 199,598  
 

環境緑化対策

 本県の緑地(農用地を含む。)は、県土の約80%を占め、全国的にも緑に恵まれた環境にあるが、その現状は、人口の集中化や都市化の進展に伴う緑の減少、緑資源の大部分を占める森林の手入れ不足等、緑を取り巻く環境は、必ずしも楽観を許さない状況にある。
 一方、豊かな緑のなかで心のゆとりや精神的豊かさを求める県民の意識は高まっており、県土緑化の推進が強く要請されている。
 本県では、そうした要請にこたえるとともに、県総合計画「とちぎ21世紀プラン」の5つの基本目標の1つである「快適で安全な暮らしを築く」の着実な実現を図るため、「自然環境の保全及び緑化に関する条例」に基づき策定した「第3次栃木県緑化基本計画」により、各種緑化施策を展開している。
 施策の方向としては、地域の自然的特性を生かし、人と緑とが調和した、『山』『里』『街』の緑づくりを進め、
 (1) みどりを造り育てる
 (2) みどりを守る
 (3) みどりを学ぶ
 ことを柱に、多様な緑化施策を総合的かつ計画的に実施し、県土の緑化推進を図っている。

 

林野保護対策

 樹木の育成は、厳しい自然環境の中で長期間にわたって行われるため、各種の病虫害にかかる場合があり、しかも、ひとたび被害を受けると、その回復が非常に困難である。特に、松くい虫の被害は、昭和55年度にピークとなり、その後被害対策の効果等により減少してきているが、ここ数年夏期の高温小雨の影響で若干増加傾向にあり、依然として被害が発生しているため、地域が主体となり、地域の実情に応じた、きめの細かい被害対策を通じて松の緑を守ることが重要な課題となっている。
 本県の民有林の松林面積は約2万4千haあり、民有林総面積の約11%を占めている。これらは、保安林に指定される等、公益的機能を高度に発揮し、貴重な森林資源であるだけでなく、災害の防止や環境の保全等の上から、欠かすことができないものとなっている。
 15年3月末現在の松くい虫被害状況は、被害発生市町村数45、被害松林面積約6千9百ha、被害材積約1万8千m3に及んでいる。
 松くい虫の被害予防措置として、薬剤の航空散布や地上散布を計画的に実施するとともに駆除措置として被害木を適期に伐倒駆除することにより被害の防止に努め、併せて「松くい虫防除県民運動」を推進して、防除意識の高揚に努めている。
 また、林野火災対策に関しては、初期消火機材の整備を図るとともに、山火事予防の啓発など予防活動を実施している。

 

第3節 河川等水辺環境の整備

 

うるおいのある水辺空間整備事業

 河川に清流と生物を呼び戻し、広く住民に親しまれる憩いの場として河川の有効利用を図るため、せせらぎのある水辺、親水、豊かな川づくりを実施している。
 また、水質の保全や改善を図るための河川浄化事業については、12年度から矢場川(足利市)において実施している。(表3−1−3)
 水と緑の広場を確保し、緑地、多目的広場、運動場、防災空間として河川敷の有効利用を図るため、低水路の整正や高水敷の造成などを行う河道整備については、那珂川(黒磯市・那須町)、行屋川(真岡市)が10年度に、湯西川(栗山村)は12年度に完了、14年度は13年度から着手された秋山川(佐野市)において引き続き実施している。

表3−1−3 国庫補助統合一級河川整備事業(河川環境整備)

河川名 地区名 着工年度

全体計画概要

14年度事業概要

備考
矢場川 足利市 12 河道浚渫 浄化施設
事業費 651,000千円
浄化施設工事
事業費 210,000千円
継続
秋山川 佐野市 13 河道整備 低水護岸
事業費 450,000千円
環境護岸の整備
護岸 A=1,560u
事業費 60,000千円
継続
 

個性豊かなふるさとづくり事業

 地域住民や市町村、県等が一体となって、地域の活力や自然、歴史、文化等を生かした個性的で魅力的な地域づくりを支援するために、周辺の景観と調和した水辺空間づくりを五行川(氏家町)で実施した。

 

河川愛護運動

 昭和45年に、都市化の進展に伴う河川環境の悪化等により県河川愛護連合会が発足し、各市町村に河川愛護会が置かれた。これにより、地域住民や関係諸団体の協力によって、河川の清掃等の実践活動が活発に行われるようになり、河川美化の向上と河川愛護の啓発に大きな効果を上げている。
 14年度に実施した事業の概要は次のとおりである。
 栃木県河川愛護連合会の事業

 7月1日〜7月31日までの1か月を河川愛護月間とし、7月7日の「川の日」を中心として、各市町村河川愛護会が主体となって河川の清掃等を実施した。また、全国統一の同月間用のポスター及びチラシを各市町村等に配布し、河川愛護思想の普及を図った。
 河川愛護普及ポスターを募集し、優秀作品の表彰を行った。また、上位入選作品でカレンダーを作成し、各市町村等に配布した。
 河川愛護普及用パンフレットを配布した。
 河川愛護功労団体を表彰した。
 テレビで河川愛護CMを放映することにより、河川愛護思想の高揚を図った。
 

水辺のビオトープ事業

 水辺のビオトープ研究会において、ビオトープの保全に係る普及啓発を図るため、「水辺のビオトープ講演会」を開催した。

 

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