平成15年度 環境の状況及び施策に関する報告書

第3部 人と自然が共生する潤いのある地域づくり

第2章 都市環境の保全

第1節 都市環境の状況

 我が国においては、人口と産業の都市への集中が無秩序な市街化を形成し、様々な都市問題を引き起こしてきた。このような都市化の状況を考慮し、本県においては、都市の健全なる発展と秩序ある整備を図るため、都市計画制度を活用し、地域の実情にあった合理的な土地利用や都市施設の整備を推進し、良好な都市環境の形成に努めている。

 

都市計画の策定

(1) 合理的な土地利用の推進
 都市の健全な発展と秩序ある市街地の形成に資するため、農林業との調和を図りながら、市街化区域と市街化調整区域を分ける区域区分制度や用途地域などの地域地区制度を活用し、スプロールの防止、市街地における居住環境等の充実、都市機能の増進を図っている。
 14年度末現在で、県内49市町村のうち12市32町が都市計画区域を定め、7市16町が市街化区域及び市街化調整区域の区分を定めており、また12市31町において用途地域を定めている。

(2) 都市施設計画の策定推進
 良好な都市環境の形成や都市活動の確保に必要な都市計画道路、公園・緑地、下水道等の量的ストックと適正配置を目指す都市施設の計画策定を推進している。
 13年度末現在で、都市計画道路は延長にして約1,610km、公園・緑地は面積にして約4,052ha、下水道は12市29町にわたる処理面積約35,739haがそれぞれ都市計画で決定されている。

(3) 良好な市街地形成の誘導
 開発許可制度の適切な運用により、無秩序な宅地開発を防止し、良好な市街地の形成と都市環境の保全に努めている。
 良好な居住環境の保全を図るため、地区計画、緑地協定、建築協定制度の活用を推進している。

 

計画的な市街地整備

(1) 都市施設の整備推進
 円滑な都市活動の確保と居住環境の充実を図るため、幹線街路、生活街路等の整備を推進しており、13年度末現在、都市計画決定路線の約53%にあたる約839kmが改良済みとなっている。
 安全で快適な居住環境の確保、健康と安らぎの増進に寄与するため、都市公園の整備を推進している。
 居住環境の改善と公共用水域の水質保全を図るため、下水道の整備を進めている。

(2) 市街地開発事業の推進
 良好な都市環境を形成するには、都市施設と住宅・宅地の一体的整備を進め、良好な街並みを形成していくことが重要である。この観点から、その最も効率的な手法である土地区画整理事業等の面的整備を推進し、快適な都市環境の増進に努めている。
 本県の道路、公園などが整備された安全で住みやすい市街地面積の整備目標は、市街化区域及びそれに準じる区域の面積に対して、17年度までに25%と設定し、積極的に推進している。

 

魅力あるまちづくりの推進

 都市環境を形成している要素には、街路、公園等の公共的施設に限らず、街並みや景観、さらにはその都市が持つ自然、歴史、文化等様々なものがあると考えられる。これらは、長い年月に渡ってストックされてきた都市固有の資産であり、地域にふさわしい都市環境の創出・保全を図るためにこれらを十分に活用した魅力あるまちづくりを推進することとしている。その一環として、15年3月に「栃木県景観条例」を制定し、美しい景観づくりの各種施策を推進している。
 また、美観風致の維持及び公衆に対する危害を防止するため、屋外広告物の規制・誘導を行っている。

 

第2節 都市環境保全対策

 

都市公園の整備

 都市公園は、都市に緑とオープンスペースをもたらすことによって都市環境を良好なものとするとともに、児童、青少年の健全なレクリエーションの場や市民のコミュニケーションの場を提供するばかりでなく、大気汚染、騒音等都市公害を緩和し、災害時の避難場所として活用されるなど、多目的な機能を有する基幹的な生活基盤施設である。
 14年度は、県営都市公園としてみかも山公園、日光だいや川公園及び市町村都市公園として河内町総合運動公園等40市町で都市公園を整備しており、15年3月末現在、1,578か所2,327.66haの都市公園が整備されている。(表3−2−1)
 本県の都市計画区域内の1人当たり公園面積は、14年度末で12.0uとなっており、全国平均は、13年度末において、8.4uという状況である。
 15年度も、都市環境の改善や公害、災害発生の緩和、レクリエーション需要等の多様なニーズに対応する都市公園の整備を促進し、特に、県民の広域的利用に供するため、日光だいや川公園、日光田母沢御用邸記念公園整備及び既開設公園の適正な維持管理を推進する。

表3−2−1 都市公園整備状況        (15年3月31日現在)

 

都市緑化対策

 都市における緑は、大気の浄化、騒音等公害の緩和に寄与するとともに、住民に安らぎと憩いをもたらし、都市生活上欠くことのできない重要な役割を担っている。
 このため、都市緑化推進の重要性に鑑み、県(5か所)、宇都宮市及び足利市でそれぞれ「緑の相談所」を設置し、植栽樹種の設定、植栽方法、病虫害防除等に関する相談、各種緑化催し物の開催を行い都市緑化意識の高揚、植物知識の普及・啓発を図っている。(表3−2−2)
 都市緑化には、行政による各種事業の推進はもとより、県民挙げての協力により所期の目的が達成されることとなるため、総合的な施策の実施が望まれる。

表3−2−2 緑の相談所の利用状況(14年度)

 

街路等の整備

 都市の骨格を形成する幹線街路等の都市活動を支える道路網の整備を、15年度も積極的に推進する。特に、宇都宮水戸線(宇都宮市)、外環状線(宇都宮市)等の主要放射・環状線の交差点立体化及び栃木駅周辺連続立体交差の整備を推進する。また、道路空間の有効活用、都市景観の向上、都市防災機能の改善等を図るため、嘉多山中線(葛生町)等の電線共同溝整備事業を推進する。
 なお、街路樹の植栽は、都市美観構成上の一要素として重要なものであると同時に、県民に緑陰の提供、防じん、防風、防煙の効果、火災の延焼防止、都市生活者の疲れた神経の緩和作用及び植物の同化作用による空気の清浄化、涼化作用等の多様な役割を果たしている。
 13年度末における街路樹の整備状況は、都市内(市街化区域、用途地域内)における都市計画道路の約38%の区間で、マロニエや夏椿等の高木をはじめとした植栽が施されている。

 

風致地区

 風致地区は、都市計画法に定められている地域地区の一つで、都市計画区域内において、樹林地、水辺地等の比較的良好な自然的景観と一体となった史跡名勝などを含む区域の環境を保全し、良好な都市環境を維持することを目的として定める地区である。
 風致地区内では、自然環境等をできるだけ保全し、良好な環境を維持するため、「栃木県風致地区条例」に基づき、建築物の建築、土地形質の変更、木竹の伐採及び土砂の採取等、風致の維持に影響を与える一定の行為を制限している。
 14年度末現在、本県では、宇都宮市をはじめ5市1町において14か所、面積にして約1,623.6haが風致地区に指定されている。

 

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