平成15年度 環境の状況及び施策に関する報告書

第4部 地球環境の保全に貢献する社会づくり

第1章 地球環境保全対策の推進

第1節 地球環境問題

 

地球環境問題とは

 私たちを取り巻く地球の環境は、一方では人間の活動に対し原材料を提供し、また一方では人間の活動から出る不用物や汚染物質を受け入れて同化する役割を果たしてきた。ところが、人間の活動が急激なスピードで拡大した結果、環境から多くの物質が資源として利用され、他方では、容易に分解されない汚染物質が環境へ捨てられるなど、地球の環境にも大きな影響が現れて、地球環境問題として認識されるに至った。
 地球環境問題には様々なものがあるが、典型的なものとしては次の9つがある。
 @地球の温暖化  Aオゾン層の破壊 B酸性雨
 C森林(特に熱帯林)の減少 D野生生物の種(生物多様性)の減少
 E砂漠化 F海洋汚染 G有害廃棄物の越境移動
 H開発途上国における環境問題

 

国際的な取組

 地球環境問題は60年代から本格的な議論が始まっていたが、4年(1992年)に世界の首脳レベルが集まり「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」が開催され、「持続可能な発展」を実現するための21世紀に向けた具体的な行動計画として「アジェンダ21」を採択して、以後の地球環境問題への取組の出発点となった。また、この年には、地球温暖化を防止するための「気候変動枠組条約」と生物多様性を保全するための「生物多様性条約」が採択され、すでに採択されていたオゾン層保護のための「ウィーン条約」等と併せて地球環境問題に対処するための主要な国際的枠組が整備された。
 9年(1997年)12月に、京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」において、先進国の温室効果ガスの削減目標を定めた「京都議定書」が採択され、13年(2001年)11月のモロッコのマラケシュでのCOP7 では、その運用細則が決定(マラケシュ合意)された。これを受け、我が国でも、14年6月に「京都議定書」の締結を閣議決定し、国連に受諾書を寄託した。

 

我が国の取組

 我が国でも、地球サミット以降、地球環境保全の取組が活発になってきた。5年(1993年)には、それまでの国内の公害対策を目的とした「公害対策基本法」に変わって、地球環境保全も含め、より総合的に環境対策を行うための「環境基本法」が制定された。
 10年(1998年)10月には、「地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」が制定され、その中で、地球温暖化対策のための国、地方公共団体、事業者及び国民のそれぞれの責務が明確化された。この法律において、国と地方公共団体は、自らの事務・事業について温室効果ガスの発生抑制のための実行計画を策定し、公表することとされている。
 オゾン層保護については、昭和63年(1988年)5月に制定された「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」により生産規制が行われてきたが、13年(2001年)6月には、業務用冷凍空調機器及びカーエアコン中に含まれる冷媒用フロン類の廃棄時の回収・破壊を規定した「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」が制定された。
 この法律では、フロン類の大気への放出が禁止されており、フロン類の回収・破壊は、都道府県等に登録されたフロン類回収業者等及び国の許可を受けた破壊業者により、適正に実施されることとなった。

 

第2節 本県における地球環境保全対策

 

京都会議以前の県の取組

 地球環境問題は、地域や住民の日常生活や通常の事業活動を含めた社会経済活動に深く根ざしたものであり、その解決のためには地方自治体も重要な役割を担っている。
 こうした考え方に立ち、県では、2年(1990年)には全庁的組織として「栃木県地球環境保全連絡会議」を設置し、早くから地球環境問題への対応を検討している。同年11月には地球環境保全に係る取組方針を策定し、以来、市町村など関係機関と連携し、以下のような各種対策を推進してきた。
 ア 普及啓発の推進

  • クリーンアップフェアの開催

  • 子供向け環境副読本・消費者啓発資料の作成、配布

  • 中小企業金融対策(地球環境の保全に資する設備の導入促進)

  • 環境保全型農業の普及促進

 イ 地球環境に配慮した地域づくりの推進

  • 省資源・省エネルギー対策

  • 省資源・リサイクル技術の開発促進

  • ごみ減量化・再生利用の推進

  • 工場、学校等施設の緑化

  • 自動車排出ガス抑制対策

  • バス、鉄道の利用促進

  • 日光小田代原における低公害車の運行

  • 電気自動車の運行

  • 県有施設における特定フロンの排出抑制

  • 市町村が実施するフロン回収・破壊への助成

 ウ 環境の実態調査、研究の推進

  • 酸性雨、フロン等の調査

 

地球温暖化対策

(1) 地球温暖化対策地域推進計画の推進
 県では、12年(2000年)3月、本県の地球温暖化対策を計画的、総合的に推進するため、「栃木県地球温暖化対策地域推進計画」を策定した。
 この計画では、県内の温室効果ガスの排出実態と排出特性を踏まえ、本県の温室効果ガスの削減目標を掲げるとともに、その目標を達成するための県の施策と、県民、事業者及び行政の各主体が地球温暖化防止に向けた取組を実践する際の行動指針を具体的に示した。
削減目標は、「22年度(2010年度)における本県の温室効果ガスの排出量を、2年度(1990年度)に比べ6%削減する」こととした。削減目標を達成するには、22年度の排出量を約1,500万tに抑制する必要がある。
 14年度には、従前からの各種対策に加え、地球温暖化防止キャンペーンとして、次のとおり実施した。
 ア 地球温暖化防止ラジオキャンペーンの実施
 地球温暖化について県民意識を高め、環境に配慮したライフスタイルへの転換を図るため、特に20歳代を中心とする青年層向けに20秒間のFMラジオスポットCMを、地球温暖化防止月間である12月に30日間にわたり合計120回放送した。

 イ 「エコキーパーのれんらくちょう」の作成
 地球温暖化問題に係る普及啓発を図るため、小学校低学年を対象とした連絡帳22,500冊を作成し、配布した。

(2) 栃木県庁環境保全率先実行計画の推進
 県は、県の事業者・消費者としての立場から自らの活動による環境への負荷を低減するため、9年度に「県の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組のための行動指針」を策定し、全庁的な取組を行ってきた。
 一方、国においては、10年10月に「地球温暖化対策推進法」を制定し、国、地方公共団体、事業者及び国民の自主的、積極的な温暖化対策を推進することとした。
 本県においてもこれを受け、これまでの取組をさらに強力に推進するため、12年3月に「栃木県庁環境保全率先実行計画」を策定した。
 この計画は、県自らが行う経済活動の中で生じる環境への負荷を低減するため、温室効果ガスの排出抑制などについて率先して行動することとしており、県のすべての組織が行う事務・事業(病院、企業局、県立学校、警察を含む。)を対象としている。
 計画期間は、12年度から16年度までの5年間とし、計画の推進に当たっては、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の考え方であるPDCAサイクルを導入し、環境の継続的な改善を行うこととしている。
 14年度は、計画の3年目として「電気使用量を抑制する」「グリーン調達に努める」を全庁重点取組事項として温室効果ガス削減の取組を行った。(取組結果については、第7部第2章に記載)

表4−1 計画に掲げる数値目標

項目 目標及び目標値
電気使用量 庁舎等における単位面積当たりの電気使用量を7%削減する。
水道使用量 庁舎等における単位面積当たりの水道水使用量を5%削減する。
庁舎燃料使用量 庁舎等における単位面積当たりの燃料の使用量を5%削減する。
用紙使用量 コピー用紙・印刷機用紙の総使用枚数を10%削減する。
印刷物を含めた用紙の古紙利用率を90%以上とする。
グリーン調達の推進 常用物品に占める環境配慮型製品の購入率を70%以上(金額ベース)とする。
公用車燃料使用量 公用車燃料の総使用量を10%削減する。
廃棄物 庁舎等からのごみの排出量を20%削減する。
建設副産物 建設廃棄物の利用率を94%、建設発生土利用率を90%とする。(目標年度 17年度)

また、これらの取組を行うことにより、温室効果ガスを次のとおり削減することとしている。

県の活動による温室効果ガスの総排出量を6%削減する。
  温室効果ガス総排出量(二酸化炭素換算)
  10年度 59,883トン → 16年度 56,300 トン(約3,600トンの削減)

(3) 栃木県グリーン調達推進方針の推進
 環境物品等の調達の推進を図るため、14年6月に「平成14年度栃木県グリーン調達推進方針」を策定し、13分類160項目について判断基準及び調達目標を定め、取組を実行した。

(4) エコライフ推進事業の実施
 二酸化炭素の削減など地球温暖化に関する問題について考え、地球環境にやさしいライフスタイルを推進するための事業を実施した。
 ア 夏の省エネルギーキャンペーン
 冷房をはじめとしてエネルギー消費が増大する夏季において、県民の省エネルギーの意識の定着と実践を促すことを目的として、関東経済産業局、(財)省エネルギーセンターとの共催によりキャンペーンを行った。

 イ 省資源・省エネルギー交流研修会(エコライフフォーラム)
 省資源・省エネルギーや地球温暖化防止等の環境問題について、エコライフネットワーク「とちぎ」と栃木県コミュニティ協会、(財)あしたの日本を創る協会との共催により、一般 県民を対象として講演やエコライフ啓発展等を通し啓発を行った。

 ウ 環境家計簿の作成
 地球温暖化防止のためのエコライフスタイルを定着させるために「ぶんべつくんとエコキーパーの環境家計簿省エネチャレンジノート」を10,000部作成し、県民に配布した。

新エネルギーの導入促進

(1) 太陽光発電の率先導入
 県としてCO2の排出抑制に取り組むとともに、太陽光発電システムの普及啓発を図るため、 学校や県民利用施設に大規模太陽光発電システムを整備した。

 宇都宮中央女子高等学校 30kw(年間原油代替量で7,700lの環境負荷を低減)
 真岡工業高等学校 10kw(年間原油代替量で2,550lの環境負荷を低減)
 栃木県産業技術センター 30kw(年間原油代替量で7,700lの環境負荷を低減)

(2) クリーンエネルギー自動車の率先導入
 県としてCO2の排出抑制や大気環境の保全に取り組むとともに、クリーンエネルギー自動車の普及啓発を図るため、公用車にハイブリッド自動車を16台導入した。
 これにより、県のクリーンエネルギー自動車保有台数は36台となった。

(3) 新エネルギーに関する普及啓発の実施
 県民や事業者の新エネルギーに対する理解を促進するため、県が導入した太陽光発電施設やクリーンエネルギー自動車などを活用して積極的に普及啓発を行った。
 15年度は、県が導入した太陽光発電施設やクリーンエネルギー自動車、さらに、子ども総合科学館に導入した風力発電施設(40kw)も活用し、積極的に新エネルギーの普及啓発を行う。

表4−2 新エネルギーの種類(栃木県地域新エネルギービジョン)

 

オゾン層保護対策

(1) フロン回収破壊法
 13年6月に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」が制定され、業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)及びカーエアコン(第二種特定製品)に含まれる冷媒用フロン類の廃棄時の回収・破壊について規定された。
 同法では、オゾン層破壊物質、地球温暖化物質であるCFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の他、地球温暖化物質であるHFC(ハイドロフルオロカーボン)が対象物質となっている。

表4−3 オゾン層破壊係数・地球温暖化係数

 ア 第一種フロン類回収
 第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)からのフロン類を回収する「第一種フロン類回収業者」の登録が13年12月から開始された。14年度末現在の登録事業者数は567事業者であった。
 第一種フロン類回収業者から報告があった14年度のフロン類の回収量等は、以下のとおりであった。

表4−4 第一種特定製品に係るフロン類回収量

 イ 第二種フロン類回収
 使用済自動車を引取り、残存フロンを確認する「第二種特定製品引取業者」及びカーエアコンからのフロン類を回収する「第二種フロン類回収業者」の登録が14年4月から開始された。
 14年度末現在の登録事業所数は、第二種特定製品引取業が1,376事業所、第二種フロン類回収業が642事業所であった。
 なお、第二種特定製品引取業者、第二種フロン類回収業者については、16年度中に「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」に移行される。

(2) 家電製品からのフロンの回収
 12年度までは、市町村等における廃冷蔵庫等からのフロンの回収を促進してきたが、13年度からは「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」により特定家庭用機器に含まれるフロン類については製造業者が回収することとなっている。

(3) 栃木県フロン回収推進協議会の運営
 9年1月に関係業界、消費者、行政で組織する「栃木県フロン回収推進協議会」を設立し、フロン回収システム等に関する情報の交換及び普及啓発活動を目的として運営している。

(4) 栃木県庁環境保全率先実行計画におけるフロン回収の促進
 「栃木県庁環境保全率先実行計画」において、CFCを使用した空調設備、カーエアコンの更新、廃棄時の適切な回収・処理の指示について規定しており、県として率先して行動することとしている。

 

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