第2部 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり


第1章 大気環境の保全

第2節 大気環境保全対策

 

工場等に対する規制と指導

 大気環境の保全を図るため、「大気汚染防止法」及び「栃木県公害防止条例」に基づき工場・事業場への立入検査を実施している。
 また、「工場・事業場ばい煙等自主管理要領」に基づき、ばい煙量等の自主測定及び結果の報告を求めるなどにより、施設の適切な維持管理を図るよう指導している。

(1) 規制基準

 本県では、「大気汚染防止法」に基づく一律基準に加えて、同法第4条第1項の規定に基づき、有害物質ふっ素及び塩化水素)について条例でより厳しい上乗せ排出基準を定めている。
 また「栃木県公害防止条例」では、4種類のばい煙に係る特定施設を定め、排出基準を設定しているほか、3種類の粉じんに係る特定施設を定め、施設の管理基準を規定している。

(2) ばい煙関係施設及び粉じん関係施設の届出状況

 「大気汚染防止法」、「栃木県公害防止条例」に基づく、ばい煙及び粉じん関係施設の届出状況は、表2−1−4、表2−1−5のとおりとなっている。

表2−1−4 ばい煙関係施設等届出状況(16年3月31日現在)

1.大気汚染防止法
ばい煙発生施設 施 設 数 (件)
県分 宇都宮市分
ボイラー 3,027 648 3,675
溶解炉 243 16 259
金属加熱炉 223 34 257
焼成炉及び溶融炉 29 1 30
乾燥炉 169 26 195
廃棄物焼却炉 104 19 123
その他の産業炉 56 127 183
施設合計 3,851 871 4,722
届出工場・事業場数 1,588 298 1,886


2.栃木県公害防止条例

ばい煙に係る特定施設 施 設 数 (件)
県分 宇都宮市分

亜鉛又はアルミニウムの第二次精錬の用に供する溶解炉

35 1 36

金属製品の製造の用に供する表面処理施設及び酸洗施設

3 0 3
その他 0 0 0
施設合計 39 1 40
届出工場・事業場数 11 1 12

表2−1−5 粉じん関係施設等届出状況(16年3月31日現在)

1.大気汚染防止法(一般粉じん)
一般粉じん発生施設 施 設 数 (件)
県分 宇都宮市分
堆積場 207 14 221
コンベア 768 16 784
破砕機・摩砕機 308 9 317
ふるい 144 0 144
施設合計 1,427 39 1,466
届出工場・事業場数 224 12 236

2.大気汚染防止法(特定粉じん)
特定粉じん発生施設 施 設 数 (件)
県分 宇都宮市分
解綿用機械 2 0 2
混合機 8 0 8
切断機 4 0 4
研磨機 4 0 4
切削用機械 7 0 7
破砕機・摩砕機 2 0 2
プレス 5 13 18
穿孔機 1 0 1
施設合計 33 13 46
届出工場・事業場数 5 1 6

3.栃木県公害防止条例
粉じんに係る特定施設 施 設 数 (件)
県分 宇都宮市分

飼料又は有機肥料の用に供する粉砕施設及びふるい

16 0 16

窯業土石又は鉱物の用に供する施設

破砕機・摩砕機 99 8 107
ふるい 86 8 94
消化施設 23 0 23
包装施設 58 0 58
堆積場 68 6 74

活性炭又は炭素製品の用に供する施設

活性炭製造施設 22 0 22
練炭、豆炭製造施設 1 1 2
素灰製造施設 8 0 8
施設合計 381 23 404
届出工場・事業場数 101 13 114

(3) 工場・事業場に対する立入検査状況

 15年度は、延べ331工場等について立入調査を実施した。(表2−1−6)
 その結果、立入検査時の指導内容は、届出の不備37件(51.4%)、施設等の点検・管理15件(20.8%)であった。(表2−1−7)

表2−1−6 立入検査実施数

区分 年度
11 12 13 14 15
ばい煙関係の施設を設置する工場・事業場 289 266 270 318 320
粉じん関係の施設を設置する工場・事業場 7 7 12 14 11
合 計 296 273 282 332 331

(注) 1 15年度のばい煙関係の立入検査実施数は、県分276件、宇都宮市委任分44件
    2 15年度の粉じん関係の立入検査実施数は、県分 11件、宇都宮市委任分 0件

表2−1−7 立入検査指導内容

指導事項 施設数(件)
県実施分 宇都宮市実施分 合計
指導した工場・事業場数(延べ) 61 11 72(82)




排出基準・管理基準の遵守 2 0 2(5)
自主分析の実施 9 1 10(18)
申請届出 32 5 37(33)
施設等の点検・管理 13 2 15(5)
処理施設等の設置・改善 7 0 7(5)
管理組織体制 7 2 9(8)
記録の整備 3 1 4(1)
その他 4 0 4(7)

(注) 合計欄の( )内数値は、14年度実績値

(4) アスベスト対策

 元年12月「大気汚染防止法」の一部改正により、アスベストが「特定粉じん」として規制されたことに伴い、関係企業の監視・指導に努めている。
 また、9年4月に吹付け石綿が使用されている建物の解体等作業が「特定粉じん排出等作業」として規定されたことに伴い、この解体作業についても規制・指導を実施している。

(5) 葛生町における粉じん対策

 葛生町は、日本有数の石灰鉱山等の密集地域であり、特に沿道の粉じん量が多いため、降下ばいじん調査を実施するとともに、発生源対策を実施している。

交通公害対策

(1) 自動車排出ガス対策

  ア 自動車排出ガス対策

 自動車排出ガス対策は、国においてディーゼル車の排出ガス対策を中心に「大気汚染防止法」や「自動車NOx・PM法」により、逐次規制の強化が図られている。
 県では、自動車排出ガスによる影響を把握するため、10局(うち1局は宇都宮市設置)の自動車排出ガス測定局で、大気汚染の常時監視を行っている。
 なお、これまで自動車排出ガス測定局を14年度に1局増設したほか、窒素酸化物浮遊粒子状物質の測定を全自動車排出ガス測定局で行う等充実強化を図っている。
 また、「アイドリング・ストップ運動」(自動車の駐停車時における不必要なエンジン使用の中止)の普及を図るため、県民への普及啓発や運輸関係業界への呼び掛けを行っている。

  イ 低公害車の普及促進

 電気自動車、天然ガス自動車等の低公害車の導入は自動車走行に起因する大気汚染(NOX、黒煙等)や騒音の改善、二酸化炭素(CO2)削減等に対し、極めて有効である。県では、奥日光で電気バスやハイブリッドバスを運行するほか、公用車に天然ガス車やハイブリッド自動車を導入していくこととしており、15年度は、ハイブリッド自動車10台を導入した。

  ウ ディーゼル自動車粒子状物質減少装置装着の促進

 埼玉県、東京都、千葉県及び神奈川県の一都三県において、各都県の条例に基づき、15年10月から、一定の排出基準を満たさないディーゼル自動車の通行が禁止されている。県では、当該地域を通行する大型ディーゼル自動車にDPF等の粒子状物質減少装置を装着する際の費用の一部を補助することにより、粒子状物質減少装置の装着を促進し、大気環境の保全を図っている。

(2) 自動車騒音対策

 県では、「騒音規制法」第18条に基づき、主要な幹線道路280qについて自動車騒音の常時監 視を行っている。
 また、関係機関による「栃木県交通公害対策連絡会議」を設置し、道路交通騒音対策の推進を図っている。

(3) スパイクタイヤ装着に伴う道路粉じん対策

 「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」に基づき、3年5月に宇都宮市以北の17市町をスパイクタイヤ使用禁止地域として指定し、5年2月に日光市を追加指定している。(表2−1−8)

表2−1−8 スパイクタイヤ使用禁止地域

7市 宇都宮市、鹿沼市、日光市、今市市、大田原市、矢板市、黒磯市
11町 上河内町、河内町、芳賀町、藤原町、塩谷町、氏家町、高根沢町、
喜連川町、那須町、西那須野町、塩原町

 

広域大気汚染対策

(1) 光化学スモッグ

 光化学スモッグは、窒素酸化物炭化水素などが紫外線の作用を受けて生成する刺激性ガス(光化学オキシダント)によって発生するもので、目の刺激、のどの痛み、胸苦しさなどの健康被害を伴う。
 県では、被害を未然に防止するため、「栃木県光化学スモッグ対策要綱」を策定し、光化学スモッグ予報を、関係する市町村、行政機関、報道機関及び緊急時協力工場等に通報している。
 また、緊急時には、注意報等を発令し、市町村への通報、とちぎの青空ホームページ等による県民への情報提供、緊急時協力工場等に対するばい煙排出量の削減措置の要請を行い、被害の未然防止に努めている。
 光化学スモッグの発生予報業務は、大気環境情報システムにより収集した光化学オキシダント濃度等と気象に関する専門機関から提供される発生予測気象情報及び環境省の大気汚染物質広域監視システムから得られた関東地区の広域的な情報を把握し、総合的に解析することで正確かつ迅速な情報提供を行っている。

表2−1−9 光化学スモッグ発令対象地域

番号 対象地域 市町村数 市町村
県中央部 2市4町 宇都宮市、鹿沼市、河内町、粟野町、芳賀町、
高根沢町
県南部 2市11町 栃木市、小山市、上三川町、南河内町、西方町、壬生町、石橋町、国分寺町、野木町、大平町、
藤岡町、岩舟町、都賀町
県南西部 2市2町 足利市、佐野市、田沼町、葛生町
県南東部 1市2町 真岡市、二宮町、益子町
県北東部 3市5町 大田原市、矢板市、黒磯市、上河内町、塩谷町、氏家町、喜連川町、西那須野町
県北西部 2市1町 日光市、今市市、藤原町
県東部 7町1村 茂木町、市貝町、湯津上村、黒羽町、南那須町、烏山町、馬頭町、小川町

表2−1−10 光化学スモッグ緊急時の発令及び解除の基準

区  分 発 令 の 基 準 解 除 の 基 準
予報 気象条件及びオキシダント測定値等を検討し、下三欄に掲げるいずれかの一の状態が発生すると予測されるとき。 左に掲げる状態がなくなったと認められるとき又は日没になったとき。
注意報 一の測定地点において、オキシダント測定値が0.12ppm以上になり、かつ、この状態が気象条件からみて継続すると認められるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシダント測定値が0.12ppm未満になり、かつ、気象条件からみてその状態が悪化するおそれがなくなったと認められるとき又は日没になったとき。
警報 一の測定地点において、オキシダント測定値が0.24ppm以上になり、かつ、この状態が気象条件からみて継続すると認められるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシダント測定値が0.24ppm未満になり、かつ、気象条件からみてその状態が悪化するおそれがなくなったと認められるとき。
重大緊急報 一の測定地点において、オキシダント測定値が0.40ppm以上になり、かつ、この状態が気象条件からみて継続すると認められるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシダント測定値が0.40ppm未満になり、かつ、気象条件からみてその状態が悪化するおそれがなくなったと認められるとき。

(2) スターウォッチング・ネットワーク

 一人ひとりが身近な大気の状況を把握し、大気保全の重要性や自然観察についての興味と関心を深めることを目的として、昭和62年度から環境省の主催で実施している。
 15年度も、肉眼による「天の川」の観察、双眼鏡による夏期及び冬期の代表的な星座である「こと座」及び「すばる星団(プレアデス星団)」が、どの等級の星まで見えるかの観察等がなされ、本県では、3市3町13団体延べ294名が参加した。

 

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