第4部 地球環境の保全に貢献する社会づくり


第1章 地球環境保全対策の推進

第2節 本県における地球環境保全対策

 

京都会議以前の県の取組

 地球環境問題は、地域や住民の日常生活や通常の事業活動を含めた社会経済活動に深く根ざしたものであり、その解決のためには地方自治体も重要な役割を担っている。
 こうした考え方に立ち、県では、2年(1990年)には全庁的組織として「栃木県地球環境保全連絡会議」を設置し、早くから地球環境問題への対応を検討している。同年11月には地球環境保全に係る取組方針を策定し、以来、市町村など関係機関と連携し、以下のような各種対策を推進してきた。

 (1)普及啓発の推進

  • クリーンアップフェアの開催

  • 子供向け環境副読本・消費者啓発資料の作成、配布

  • 中小企業金融対策(地球環境の保全に資する設備の導入促進)

  • 環境保全型農業の普及促進

 (2) 地球環境に配慮した地域づくりの推進

  • 省資源・省エネルギー対策

  • 省資源・リサイクル技術の開発促進

  • ごみ減量化・再生利用の推進

  • 工場、学校等施設の緑化

  • 自動車排出ガス抑制対策

  • バス、鉄道の利用促進

  • 日光小田代原における低公害車の運行

  • 電気自動車の運行

  • 県有施設における特定フロンの排出抑制

  • 市町村が実施するフロン回収・破壊への助成

 (3)環境の実態調査、研究の推進

地球温暖化対策

(1) 地球温暖化対策地域推進計画の推進

 県では、12年(2000年)3月、本県の地球温暖化対策を計画的、総合的に推進するため、「栃木県地球温暖化対策地域推進計画」を策定した。
 この計画では、県内の温室効果ガスの排出実態と排出特性を踏まえ、本県の温室効果ガスの削減目標を掲げるとともに、その目標を達成するための県の施策と、県民、事業者及び行政の各主体が地球温暖化防止に向けた取組を実践する際の行動指針を具体的に示した。
 削減目標は、「22年度(2010年度)における本県の温室効果ガスの排出量を、2年度(1990年度)に比べ6%削減する」こととした。削減目標を達成するには、22年度の排出量を約1,500万tに抑制する必要がある。
 15年度は、地球温暖化対策推進法の改正趣旨を踏まえ、次のとおり実施した。

 ア 地球温暖化防止活動推進員の委嘱

 地球温暖化対策の取組を推進するため、「地球温暖化対策推進法」第23条の規定に基づき、 栃木県地球温暖化防止活動推進員46名を委嘱し、県内各地域で、地球温暖化の現状や対策の重要性についての普及啓発を実施した。

 イ 地球温暖化防止活動推進センターの指定

 「地球温暖化対策推進法」第24条の規定に基づき、15年7月15日、財団法人栃木県環境技術協会を栃木県地球温暖化防止活動推進センターに指定した。
 センターの自主事業との連携を図りながら、地球温暖化防止に向けた県民への普及啓発事業を委託により実施した。

 (ア)とちの環県民会議記念講演会の開催

 環境にやさしいライフスタイルへの転換を促すことを目的とし、地球温暖化対策等の環境保全の実践活動を紹介する講演会を開催した。

 月 日:15年11月22日(土)
 会 場:とちぎ健康の森(宇都宮市)
 主 催:栃木県、栃木県地球温暖化防止活動推進センター、
      とちの環県民会議
 講 演:「富士山が変われば日本も変わる」
 講 師:アルピニスト 野口 健氏
 参加者:261名

 (イ)エコテックとちの環の開催

 企業や団体によるリサイクル製品や省エネ機器など環境への負荷の少ない製品や技術の展示、活動の紹介及び講演会等を通して地球温暖化対策や循環型社会の構築を啓発する環境イベントを開催した。

 期 間:16年2月14日(土)〜15日(日)
 会 場:栃木県産業技術センター(宇都宮市)
 主 催:栃木県、栃木県地球温暖化防止活動推進センター、
      とちの環県民会議
 出展企業・団体数:27団体 
 講演1:「クルマはめざす 燃料電池などの新エネルギー車の
      近未来」
 講師 (株)本田技研技術研究所栃木研究所 三田義訓 氏
 講演2:「江戸時代のリサイクル再現
      リサイクルの天才!塩原多助の着眼」
 講師 講談師 田辺鶴英 氏 
 参加者:349名

 (ウ)啓発資材の作成配布

 ○ エコキーパーの連絡帳(25,000部作成)
  主な配布先  全小学1年生、環境関連団体、市町村等

 ○ 環境家計簿(10,000部作成)
  主な配布先 環境関連団体、消費者関連団体、市町村等

 ○ 紙芝居「ちきゅうがおねつだ!」(1,000部作成)
  主な配布先 保育園、幼稚園、図書館、環境関連団体、市町村等
 

ウ とちの環県民会議の設立

 県民、民間団体、事業者、行政の各主体が相互に連携・協力するパートナーシップを確立し、県民総ぐるみで環境保全に取り組む組織 「とちの環県民会議」が15年11月22日に設立された。
 とちの環県民会議は、「地球温暖化対策推進法」第26条の規定に基づく地球温暖化対策地域協議会を兼ねており、地域の特性に応じた地球温暖化対策の検討を行い、実践活動を推進していくことになった。

エ 普及啓発事業

(ア)地球温暖化防止を啓発するための創作紙芝居コンクール

 地球温暖化問題の普及啓発を図ることを目的として、省エネルギーの必要性や普及の方策等をテーマとした創作紙芝居コンクールを開催した。

 募集期間:15年4月23日〜7月10日
 応募総数:82点
 最優秀賞:「ちきゅうがおねつだ!」
        (作 角田 純子さん 群馬県桐生市)

 (イ)地球温暖化防止啓発演劇「ちきゅうがおねつだ!」公演

 創作紙芝居コンクール最優秀作品を脚本とした演劇を制作し、次世代を担う子どもたちを対象に県内3か所で公演を行った。

   演劇公演者:原作/角田純子
           脚色・演出/みうらもとお
           出演/財団法人日本教育演劇道場 らくりん座

公演月日 会場 参加者数
16年 2月21日(土) 栃木県総合文化センター小ホール 234人
2月28日(土) 那須野が原ハーモニーホール小ホール 305人
3月30日(土) 小山市立文化センター小ホール 123人
 

合計

662人

 (ウ)地球温暖化防止啓発番組「ちきゅうがおねつだ!」

 創作紙芝居コンクール最優秀作品を原作とした演劇の制作公演を行う一連の過程を収録したテレビ番組を制作放映し、広く県民に、地球温暖化問題を提起し、その防止に向けた取組を促した。

   啓発媒体:とちぎテレビ
   放映日時:16年3月16日(火)20:30〜21:00
          16年3月18日(木)20:00〜20:30

 (エ)地球温暖化防止キャンペーン

 地球温暖化について県民意識を高め、環境に配慮したライフスタイルへの転換を図るため、12月の地球温暖化防止月間に、新聞、ラジオ等のマスコミを活用して啓発を行った。

 (オ)省エネキャンペーン

 冷房を始めとしてエネルギー消費が増大する夏季において、省エネルギーの必要性に対する理解と意識の向上を図るためキャンペーンを実施した。特に、15年度は、電力の需給状況が厳しかったことから、より一層の県民の意識の定着と実践を促すため、東京電力株式会社栃木支店及び栃木県地球温暖化防止活動推進センターとの共催により実施した。

   期 間:15年8月2日(土)〜3日(日)
   場 所:FKD福田屋ショッピングプラザ宇都宮店
   参加者:約5,000人

(2) 栃木県庁環境保全率先実行計画の推進

 県は、県の事業者・消費者としての立場から自らの活動による環境への負荷を低減するため、9年度に「県の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組のための行動指針」を策定し、全庁的な取組を行ってきた。
 一方、国においては、10年10月に「地球温暖化対策推進法」を制定し、国、地方公共団体、事業者及び国民の自主的、積極的な温暖化対策を推進することとした。
 本県においてもこれを受け、これまでの取組をさらに強力に推進するため、12年3月に「栃木県庁環境保全率先実行計画」を策定した。
 この計画は、県自らが行う経済活動の中で生じる環境への負荷を低減するため、温室効果ガスの排出抑制などについて率先して行動することとしており、県のすべての組織が行う事務・事業(病院、企業局、県立学校、警察を含む。)を対象としている。
 計画期間は、12年度から16年度までの5年間とし、計画の推進に当たっては、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の考え方であるPDCAサイクルを導入し、継続的に環境負荷の低減を図っていくこととしている。
 15年度は、計画の4年目として「電気使用量を抑制する」を全庁重点取組事項として温室効果ガス排出削減の取組を行った。(取組結果については、第7部第2章に記載)

表4−1 計画に掲げる数値目標

項目 目標及び目標値
電気使用量 庁舎等における単位面積当たりの電気使用量を7%削減する。
水道使用量 庁舎等における単位面積当たりの水道水使用量を5%削減する。
庁舎燃料使用量 庁舎等における単位面積当たりの燃料の使用量を5%削減する。
用紙使用量 コピー用紙・印刷機用紙の総使用枚数を10%削減する。
印刷物を含めた用紙の古紙利用率を90%以上とする。
グリーン調達の推進 常用物品に占める環境配慮型製品の購入率を70%以上(金額ベース)とする。
公用車燃料使用量 公用車燃料の総使用量を10%削減する。
廃棄物 庁舎等からのごみの排出量を20%削減する。
建設副産物 建設廃棄物の利用率を94%、建設発生土利用率を90%とする。(目標年度 17年度)

また、これらの取組を行うことにより、温室効果ガスを次のとおり削減することとしている。

県の活動による温室効果ガスの総排出量を6%削減する。
  温室効果ガス総排出量(二酸化炭素換算)
  10年度 59,883トン → 16年度 56,300 トン(約3,600トンの削減)

(3) 栃木県グリーン調達推進方針の推進

 環境物品等の調達の推進を図るため、15年7月に「平成15年度栃木県グリーン調達推進方針」を策定し、15分類184項目について判断基準及び調達目標を定め、取組を実行した。

新エネルギーの導入促進

(1) 太陽光発電の率先導入

 県としてCO2の排出抑制に取り組むとともに、太陽光発電システムの普及啓発を図るため、学校や県民利用施設に大規模太陽光発電システムを整備した。

 県立野沢養護学校 200kw(年間原油代替量で51,000lの環境負荷を低減)
 県立矢板高等学校 30kw(年間原油代替量で 7,700lの環境負荷を低減)
 鹿沼警察署 20kw(年間原油代替量で 5,100lの環境負荷を低減)

(2) クリーンエネルギー自動車の率先導入

 県としてCO2の排出抑制や大気環境の保全に取り組むとともに、クリーンエネルギー自動車の普及啓発を図るため、公用車にハイブリッド自動車を10台導入した。
 これにより、県のクリーンエネルギー自動車保有台数は46台となった。

(3) 新エネルギーに関する普及啓発の実施

 県民や事業者の新エネルギーに対する理解を促進するため、県が導入した太陽光発電施設やクリーンエネルギー自動車などを活用して積極的に普及啓発を行った。
 16年度は、県が導入した太陽光発電施設・クリーンエネルギー自動車及び風力発電施設を活用し、積極的に新エネルギーの普及啓発を行う。

表4−2 新エネルギーの種類(栃木県地域新エネルギービジョン)

オゾン層保護対策

(1) フロン回収破壊法

 13年6月に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」が制定され、業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)及びカーエアコン(第二種特定製品)に含まれる冷媒用フロン類の廃棄時の回収・破壊について規定された。
 同法では、オゾン層破壊物質、地球温暖化物質であるCFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の他、地球温暖化物質であるHFC(ハイドロフルオロカーボン)が対象物質となっている。

表4−3 オゾン層破壊係数・地球温暖化係数
 

 ア 第一種フロン類回収

 第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)からのフロン類を回収する「第一種フロン類回収業者」の登録が13年12月から開始された。15年度末現在の登録事業者数は601事業者であった。
 第一種フロン類回収業者から報告があった15年度のフロン類の回収量等は、以下のとおりであった。

表4−4 第一種特定製品に係るフロン類回収量

項目 エアコンディショナー 冷蔵機器・冷凍機器

フロン類の充填量
が50s以上の第一
種特定製品

合計
台数 回収量 台数 回収量 台数 回収量 台数 回収量 破壊量
CFC 69台 921kg 3,336台 1,053kg 8台 5,729kg 3,413台 7,703kg 7,274kg
HCFC 2,479 14,777 8,552 4,698 25 1,890 11,056 21,365 13,142
HFC 99 292 355 223 1 529 455 1,044 960
2,647 15,990 12,243 5,974 34 8,148 14,924 30,112 21,376

 イ 第二種フロン類回収

 使用済自動車を引取り、残存フロンを確認する「第二種特定製品引取業者」及びカーエアコンからのフロン類を回収する「第二種フロン類回収業者」の登録が14年4月から開始された。
 15年度末現在の登録事業所数は、第二種特定製品引取業が1,487事業所、第二種フロン類回収業が682事業所であった。
 第二種フロン類回収業者から報告があった14年度のフロン類の回収量等は以下のとおりである。
 なお、第二種特定製品引取業者、第二種フロン類回収業者については、17年1月1日から「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」に移行される。

表4−5 第二種特定製品に係るフロン類回収量(14年度)

項目 台数 回収量 破壊量 再利用量
CFC(R12) 26,781台 7,133kg 2,766kg 2,928kg
HCFC(R134a) 5,676 2,266 1,214 374
32,457 9,399 3,980 3,302

(注)1 回収量に対する破壊量と再利用量の差分については、年度末の保管量である。
   2 第二種特定製品に係るフロン類回収量については、報告期限の都合により、最新の集計
    結果は14年度である。
   3 フロン回収破壊法の第二種特定製品については、14年10月1日から施行されたため、
    14年10月から15年3月までの実績である。

(2) 家電製品からのフロンの回収

 12年度までは、市町村等における廃冷蔵庫等からのフロンの回収を促進してきたが、13年度からは「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」により特定家庭用機器に含まれるフロン類については製造業者が回収することとなっている。

(3) 栃木県フロン回収推進協議会の運営

 9年1月に関係業界、消費者、行政で組織する「栃木県フロン回収推進協議会」を設立し、フロン回収システム等に関する情報の交換及び普及啓発活動を目的として運営している。

(4) 栃木県庁環境保全率先実行計画におけるフロン回収の促進

 「栃木県庁環境保全率先実行計画」において、CFCを使用した空調設備、カーエアコンの更新、廃棄時の適切な回収・処理の指示について規定しており、県として率先して行動することとしている。

 

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