私たちは、これまで、自然から多くの資源を採取し、それを利用し、不用となった様々なものを自然の中へ排出することにより、社会経済活動を行ってきました。
しかし、今日の大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会がもたらす環境への負荷の増大は、自然の持つ再生能力や浄化能力を超え、都市・生活型の公害や地球環境問題の発生を招いています。
県は、生産、流通、消費、廃棄など、社会経済活動の様々な段階を通じて、汚染物質や廃棄物の発生を抑制し、資源の循環的な利用を進めるとともに、廃棄物の適正利用を図ることなどにより、自然の物質循環に与える影響をできるだけ抑えた「環境への負荷の少ない循環型の社会づくり」を目指します。
1. 大気環境の保全
大気環境の状況
1 大気の環境基準
人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準として、二酸化硫黄、二酸化窒素、一酸化炭素、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及びダイオキシン類の10物質について環境基準が定められています。
2 大気汚染の現況
17年度は、光化学オキシダント以外の物質については、すべての測定局で環境基準が達成されています。
光化学オキシダントは全国的にも環境基準の達成率は低い状況にあり、本県においても達成されている測定局はありません。光化学スモッグについては、17年度の注意報発令日数は14日で、県南部では、述べ16人が目がチカチカした、のどが痛かった、息苦しかったなどの症状を訴える健康被害がありました。
○二酸化硫黄 燃料中の硫黄の燃焼で発生し、ぜんそくの原因になります。 |
○光化学オキシダント 大気中の窒素酸化物や炭化水素が、紫外線による化学反応 を起こして発生するもので、光化学スモッグの原因になります。 |
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○二酸化窒素 物が燃焼する際に、空気中及び燃料中の窒素から発生し、肺気腫などの原因になります。 |
○浮遊粒子状物質 大気中に長時間浮遊し、気道や肺に害を与えます。 |
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○ベンゼン
化学工業製品の合成原料などとして使われているほか、ガソリンにも含まれており、発がん性を有することが認められています。 |
○ダイオキシン類
物の燃焼の過程などで生成する物質であり、環境中に広く存在していますが、量は非常にわずかです。 |
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光化学スモッグ注意報発令日数の推移 | 光化学スモッグの仕組み |
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2 大気環境保全対策
1 自動車排出ガス対策の推進
大気の汚染を防止するため、自動車排出ガスの監視を実施するとともに、「アイドリングストップ運動」の普及のための県民への啓発活動や関係業界・大規模駐車場設置者への呼びかけを行い、ディーゼル自動車対策としてDPF等の粒子状物質減少装置装着に係る経費を環境保全資金の融資対象とするなど、自動車排出ガスの排出抑制を進めています。
また、県では奥日光で電気バスやハイブリッドバスを運行するほか、公用車に天然ガス自動車やハイブリッド自動車を計画的に導入しており、17年度には、ハイブリッド自動車9台を導入しました。
さらに、公共交通機関の利用促進のため、毎月1日と15日をバス・鉄道利用デーと定めて呼びかけを行っているほか、宇都宮地域における新交通システムの導入にあたっての課題の検討や公共交通の利用促進等に関する検討を行っています。
2 広域大気汚染対策の推進
二酸化硫黄、窒素酸化物、一酸化炭素、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、炭化水素について、県内36カ所の測定局において大気環境情報システムによる常時監視を行っています。
また、光化学スモッグによる被害を未然に防止するため、光化学スモッグ予報を関係市町村、報道機関、協力工場等に通報するほか、緊急時には注意報などを発令し、県民への周知や工場に対するばい煙排出削減の要請を行っています。
3 有害大気汚染物質対策の推進
有害大気汚染物質については、工業団地周辺など県内7地点でモニタリング調査を行っています。
4 工場・事業場対策の推進
工場などから排出される有害物質(塩素、塩化水素、ふっ素、ふっ化水素及びふっ化けい素)については、「大気汚染防止法」による全国一律の基準に加えて、県の条例でより厳しい基準を定め、規制を行っています。
また、工場などに対して立入検査を実施するほか、ばい煙等の自主測定や結果の報告を求めることなどにより、施設の適切な維持管理が図られるよう指導しています。
さらに、吹付けアスベストを使用した建物等の解体に当たり、立入検査などにより、適切な飛散防止措置等が図られるよう指導しています。