第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第1章 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり

第5節 化学物質対策の推進

化学物質管理対策


 概況

○17年度のPRTR制度に基づく化学物質(354物質)の排出量は、14,943t(16年度は16,098t)であった。
○発生源別の内訳をみると、事業所(製造、販売、サービス業、農業等)からの排出割合が76%と最も多く、家庭から7%、自動車等からは17%であった。
○事業所から最も多く排出された物質は、トルエンであり、塗料やインクの溶剤、ガソリン、合成原料等に利用されている。
○家庭からは界面活性剤(洗剤の成分)、自動車からはトルエンが多い結果となった。
○17年度のPRTR制度に基づく化学物質の排出量と移動量の届出件数は804件(同753件)で あった。
○事業所から届出のあった大気への排出量8,287t(同9,343t)の上位3物質は、トルエン、キシレン(用途:塗料やインクの溶剤、ガソリン成分)、ジクロロメタン(金属の洗浄剤) であった。
○事業所から届出のあった河川など公共用水域への排出量86t(同108t)の上位3物質は、ふっ化水素及びその水溶性塩(金属・ガラスの表面処理剤)、ほう素及びその化合物(ガラスの添加剤、消毒剤)、亜鉛の水溶性化合物(乾電池、金属の表面処理剤)であった。
○大気環境、水環境中における化学物質の存在量を把握するため、調査を行った結果、環境省の全国調査による検出濃度範囲内であった。

(1) 背景

  事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的として、11年7月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法)が公布された。
  本法で定められたPRTR制度では、政令で定める354種類の化学物質(第一種指定化学物質)を取り扱い、かつ、政令で定める届出要件(業種、従業員数、取扱量)を満たす事業者は、1年間にどのような物質をどれだけ環境中へ排出したか、あるいは廃棄物としてどれだけ移動したかを県を経由し国へ報告することとなっている。
  国はそれを集計し、家庭や農地、自動車などから排出される化学物質の量を推計し、合わせて公表することとなっている。
  この制度により、事業者が、自らが排出している化学物質の量を把握することによって、化学物質排出量の削減への自主的な取組が促進されることが期待される。
  また、PRTRデータを利用して、県民、事業者、行政が、化学物質の排出の現状や対策の内容等について、話し合いながら協力して化学物質対策を進めていくことが期待されている。

(2) 環境中の現況

ア 大気環境

  大気環境中における化学物質の存在量を把握するため、有害大気汚染物質の優先取組物質(22物質)のうち、ダイオキシン類を除く19物質について、県内8地点で月1回24時間の採取により、年間を通じて調査を実施した。このうち、環境基準又は指針値が設定されていない8物質の年間平均値の濃度範囲を表2−1−43に示す。
  測定結果は、概ね環境省の全国調査結果による検出濃度範囲内であった。

表2−1−43 大気環境中における化学物質濃度範囲
物質名 年間平均値の濃度範囲 物質名 年間平均値の濃度範囲
アセトアルデヒド 2.4  〜 3.6 μg/m3 酸化エチレン 0.046 〜 0.14 μg/m3
ヒ素及びその化合物 0.60 〜 1.3  ng/m3 ベリリウム及びその化合物 0.0065〜 0.065 ng/m3
ベンゾ[a]ピレン 0.12   0.44 ng/m3 ホルムアルデヒド 2.6  〜 4.6 μg/m3
クロム及びその化合物 1.1  〜 4.4  ng/m3 マンガン及びその化合物 7.8  〜36   ng/m3

イ 水環境

 水環境中における化学物質の存在量を把握するため、残留性有機汚染物質(POPs)の中から7物質(群)を選定し、県内河川の3地点において調査を実施した。各物質毎の測定結果を表2−1−44に示す。
 なお、測定結果は、概ね環境省の全国調査結果による検出濃度範囲内であった。

  表2−1−44 県内河川における調査結果

(注) "tr"は、検出下限以上定量下限未満の濃度であることを示す。
    "ND"は、検出下限値未満の濃度であることを示す。

(3) リスクコミュニケーションの推進

 県民、事業者、行政による化学物質に関するリスクコミュニケーションを推進するため、本県では、事業者や県民の代表者、学識経験者、行政から構成する「化学物質に係るリスクコミュニケーションのあり方検討会」を設置し、リスクコミュニケーションの進め方などに関する報告書を16年12月に取りまとめた。
 18年度は、県民などを対象とした「PRTRデータ活用セミナー」を2回開催するとともに、事業者などを対象とした「化学物質使用事業者講習会」を開催した。

(4) PRTR制度による排出量の把握

ア 届出件数

 「化学物質排出把握管理促進法」に基づく17年度の第一種指定化学物質の排出量及び移動量の届出事業所数は、表2−1−45のとおりであり、本県は全国の約2.0%を占めている。

表2−1−45 届出事業所数
年度 栃木県 全国
15 791 41,079
16 753 40,341
17 804 40,823

イ 環境への排出量

  17年度の県内の届出排出量と推計排出量を合わせた総排出量は、14,943t(16年度は16,098t)である。届出排出量は全体の56%(同59%)を占め、それ以外から排出される推計排出量は44%(同41%)であった。(図2−1−36)
  届出排出量の内訳は、大気への排出99%(同99%)、公共用水域への排出1%(同1%)であった。
  発生源別の内訳をみると、事業所(製造、販売、サービス業、農業等)からの排出割合が76%(同77%)、家庭から7%(同7%)、自動車等から17%(同16%)であった。
  なお、これらの数値については、全ての事業者を対象としていないことや、推計により算出したものも含まれていることなどから、その精度に一定の限界があることに留意する必要がある。

図2−1−36 発生源別割合(届出・推計)(17年度)

(ア) 届出排出量

a 大気への排出量

  県内の事業所から届出のあった大気への排出量8,287t(16年度は9,343t)の上位5物質を図2−1−37に示す。排出量の多い物質の主な用途は次のとおりである。
    (a) トルエン:塗料やインキの溶剤、ガソリン成分、合成原料
    (b) キシレン:塗料の溶剤、ガソリン・灯油成分、合成原料
    (c) ジクロロメタン(別名 塩化メチレン):金属脱脂の洗浄剤

図2−1−37 大気への排出量(届出)(17年度)

b 公共用水域への排出量

  県内の事業所から届出のあった公共用水域への排出量86t(16年度は108t)の上位5物質を図2−1−38に示す。排出量の多い物質の主な用途は、次のとおりである。
    (a) ふっ化水素及びその水溶性塩 :金属・ガラスの表面処理剤
    (b) ほう素及びその化合物 :ガラス添加剤、消毒剤
    (c) 亜鉛の水溶性化合物 :乾電池、金属表面処理剤

図2−1−38 公共用水域への排出量(届出)(17年度)

c その他

 土壌への排出はなく(16年度もなし)、届出事業所における埋立もなかった。

(イ) 推計量

a 届出の必要のなかった事業所からの推計排出量

  届出要件(業種、従業員数、取扱量)を満たしていないために、届出をする必要のなかった事業所からの推計排出量2,931t(16年度は2,842t)の上位5物質を図2−1−39に示す。
排出量の多い物質の主な用途は、次のとおりである。
    (a) キシレン:塗料の溶剤、ガソリン・灯油成分、合成原料
    (b) トルエン:塗料やインキの溶剤、ガソリン成分、合成原料
    (c) トリクロロニトロメタン:農薬

図2−1−39 届出の必要のなかった事業所からの推計排出量(推計)(17年度)

b 家庭からの排出量 

  県内の家庭からの推計排出量1,073t(16年度は1,168t)の多い上位5物質を図2−1−40に示す。 排出のあった物質の主な用途は、次のとおりである。
    (a) 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 :界面活性剤(洗剤成分)
    (b) ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル :界面活性剤(洗剤成分)
    (c) p‐ジクロロベンゼン:衣類用防虫剤

図2−1−40 家庭からの排出量(推計)(17年度)

c 自動車等からの排出量

  県内の自動車等(自動車・二輪車・特殊自動車等)からの排ガスに含まれる推計排出量2,565t(16年度は2,638t)の多い上位5物質を図2−1−41に示す。

図2−1−41 自動車等からの排出量(推計)(17年度)