第1部 総説

第1章 環境行政の総合的な推進

第2節 栃木県の環境行政の枠組み

1 栃木県環境基本条例

(1)条例制定の経緯

ア 栃木県環境保全基本方針の策定
  • 本県では、かつて経済の高度成長期において、活力のある地域づくりを積極的に進めるとともに、「栃木県公害防止条例」や「自然環境の保全及び緑化に関する条例」などを基本として、公害の防止及び自然環境の保全に努めてきた。
  • この結果、生活や産業活動は、より豊かで活発なものとなり、本県の環境は、全般的に良好な状態を保ってきた。
  • しかしながら、本県においても、大量生産・大量消費・大量廃棄を基調とする社会経済活動に伴う環境への負荷の増大により、大気汚染や水質汚濁などの都市・生活型公害の発生や、廃棄物の量の増大、さらには都市化による平地林の減少などの環境問題が生じてきた。
  • このため、5年11月の「環境基本法」の制定を契機に、環境保全対策に総合的に取り組んでいくための足掛かりとして、「栃木県環境保全基本方針」を7年3月に策定した。
  • この基本方針は、「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な栃木県をつくりあげていくため、環境保全を進める上での基本的な考え方及び環境保全方策の展開の方向について明らかにした」ものであり、県、市町村、事業者及び県民のすべてが、環境への負荷の低減を図ることの重要性を認識し、それぞれの立場において環境保全に努め、行動を展開していくための指針となるものであった。
イ 栃木県環境基本条例の制定
  • この基本方針の策定過程において、議会や栃木県環境審議会などから、本県における環境に関する新たな法的枠組みを確立するため、条例化を求める意見が出された。
  • 県としても、今後の環境施策の推進をより強固なものとするため、環境基本条例の制定が必要と判断し、環境審議会への諮問・答申を経て、「栃木県環境基本条例」案を8年2月に議会に提出、翌月に議会の議決を受け、同年4月から施行された。
  • 環境基本条例の制定により、環境保全基本方針の趣旨は、同条例に継承されることとなった。


(2)環境基本条例の位置づけ

環境基本条例は、条例の形式としては一般の他の条例と同じであるが、基本条例としてその規律の対象とする環境政策分野の施策を方向付けるものであることから、その限りにおいて他の条例に優越する性格を持ち、他の条例がこれに誘導されるという関係に立つ。すなわち、県行政の中で環境施策推進の基本となる規範として位置付けられるものである。
 なお、環境基本条例の構成は、図1−1−6のとおりである。

図1−1−6 環境基本条例の構成

2 栃木県環境基本計画(改定計画)

(1)栃木県環境基本計画策定の趣旨等

  • 8年4月に施行された「栃木県環境基本条例」第10条の規定に基づき、11年3月に「栃木県環境基本計画」を策定した。
  • 計画策定の背景としては、自動車等による大気汚染や生活排水等による水質汚濁などの都市・生活型公害の発生や、廃棄物の量の増大、さらには都市化による平地林の減少などの環境問題に加え、地球温暖化オゾン層の破壊などの地球規模の環境問題が指摘されるなど、環境を取り巻く問題が、生活環境や自然環境といった分野を超えて広範多伎にわたってきたこと、環境保全に対する県民の関心が高まりつつあり、ゆとりと潤いのある快適で質の高い環境づくりが求められるようになりつつあったことなどが挙げられる。
  • このため、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄を基調とする社会経済のシステムや私たちのライフスタイルを見直し、環境への負荷の少ない循環型社会に変えていくことが不可欠であるとの認識に下、環境問題の変化に的確に対応した施策を総合的かつ計画的に推進することとしたものである。
  • 当該計画に基づき、環境の保全に関する諸施策を積極的に展開してきたところであるが、計画策定以降、地球温暖化への対応や循環型社会形成の必要性等が一層高まり、環境保全に関する各種法令の制定や改正がなされた。
  • また、県でも、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」の制定をはじめ、環境保全に関する個別計画、指針等を新たに策定するなど、環境保全対策の充実を図ってきた。
  • こうした状況の変化を踏まえ、本県の環境保全施策をより一層総合的かつ効果的に推進するため、18年3月に計画の見直しを行った。


(2)栃木県環境基本計画(改定計画)の概要

ア 計画の役割
 本計画は、環境保全に関する県の施策の基本となるものであり、環境の保全に関する基本目標と長期的な施策の方向等を示している。また、この計画は、県民・民間団体、事業者、行政(県及び市町村)の各主体がそれぞれの立場において環境保全に努め、行動を展開していくための指針となるものである。
イ 計画の対象
 大気環境、水環境、騒音、廃棄物等、県民の日常生活に直接結びつく「生活環境」、森林や動植物を中心とする「自然環境」、身近な緑や都市環境などの「快適環境」、地球温暖化オゾン層破壊など人類共通の課題である「地球環境」を対象としている。
ウ 計画の期間
 18年度から22年度までの5年間
エ 計画の目標
 「栃木県環境基本条例」の基本理念に基づき、健全で恵み豊かな環境を明日の世代に引き継ぐことのできる「環境にやさしい潤いのあるふるさと“とちぎ”」の実現に向けて、長期的視野に立った以下の4つの目標を設定している。
環境への負荷の少ない循環型の社会づくり
■人と自然が共生する潤いのある地域づくり
■地球環境の保全に貢献する社会づくり
■環境保全活動への積極的な参加
それぞれの目標を達成するための共通的基盤的施策も併せて推進する。(図1−1−7)
オ 重点プロジェクト
 計画においては、環境保全施策の中から総合的な取組が必要なもの、重要性・緊急性が高いと考えられるものを重点プロジェクトとして位置付けている。
地球温暖化防止プロジェクト
■水環境保全プロジェクト
環境マネジメントシステム推進プロジェクト
環境学習推進プロジェクト
■リサイクル社会とちぎプロジェクト
■野生生物保全プロジェクト
■豊かな「森と緑」の保全・創造プロジェクト


(3)栃木県環境基本計画(改定計画)の推進

ア 庁内の推進体制
 計画に盛り込まれた各種の施策を着実かつ効果的に推進するため、栃木県環境政策調整委員会を中心に、施策の総合調整や目標達成状況並びに具体的施策の実施状況の把握などを全庁的な連携のもとに実施する。
イ 進行管理
 毎年度、各部局の主要施策の実施状況や目標の達成状況をとりまとめ、栃木県環境政策調整委員会並びに栃木県環境審議会に報告し、併せて「環境の状況及び施策に関する報告書(環境白書)」を通じて公表する。なお、栃木県環境基本計画の進捗状況については、第3部第1章に記載する。
 計画の進捗状況に対する庁内の自己評価、県民等からの意見を参考に次年度の計画推進に向けた施策展開を図る。

図1−1−7 栃木県環境基本計画(改定計画)施策体系図


図1−1−8 環境行政の法的枠組のイメージ