第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第4章 環境保全活動への積極的な参加

第2節 環境学習・普及啓発活動の推進

1 環境学習・普及啓発活動推進の背景

今日の環境問題を解決し、持続可能な社会を実現していくためには、県民一人ひとりが環境問題について正しく理解し、日常生活や事業活動において環境に配慮した行動を実践していくことが重要である。このため、家庭や学校、企業、地域等の場において、主体的に環境保全活動に取り組むことができるよう、県民への環境保全に関する情報提供を充実させるとともに、環境学習を推進する必要がある。
 15年7月に、「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が公布され、16年9月には同法に基づく基本方針が閣議決定されたところである。さらに、14年のヨハネスブルグサミットにおいて我が国が提案した「国連持続可能な開発のための教育の10年」が17年からスタートしたところであり、我が国においても18年3月には『わが国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画』を決定し、国民一人ひとりや各主体が参画し、環境保全を中心に、環境、経済、社会の総合的な発展について取り組むための指針や推進方策を示したところである。
 本県においては、13年3月に「環境学習推進指針」を策定し、13年度から15年度にかけて「環境学習プログラム」を作成するなど、学校や家庭、地域等における多様な環境学習の取組を推進してきた。
 その結果、学校における環境学習の取組は定着してきている。また、県や市町が実施する環境学習関連事業の数も年々増加しており、学校や地域において県民が環境学習に参加する機会は充実されてきている。今後は、環境学習で芽生えた関心を具体的な環境保全の取組につなげていく必要がある。

表2−4−2 環境に関する体験活動を実施している小・中学校の割合 (単位:%)
種別 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度
小学校 91.6 90.0 91.5 90.9 93.2
中学校 73.1 73.0 70.8 63.7 68.5

表2−4−3 県及び市町村における環境学習関連事業の実施状況
種別 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
実施事業数 204 205 213 238 269 329
延べ実施回数 366 498 743 867 1,172 1,702

2 環境学習・普及啓発活動の推進

12年度に策定した「栃木県環境学習推進指針」に基づき、「学習機会の提供」「学習情報の提供」「指導者の養成と人材の活用」「教材・学習プログラム等の作成と活用」という4つの基本方策に沿って、学校や地域等における環境学習を推進した。
 また、地球温暖化をはじめとする環境問題の解決に向け、環境学習を通して芽生えた関心を具体的な行動につなげ、多様な主体の協働による環境保全活動を促進するため、「栃木県環境学習・環境保全活動推進指針」を20年3月に策定した。

(1)環境教育・環境学習の充実

環境教育・環境学習の充実を図るため、子どもから大人まで幅広い年代を対象に、様々な機会を捉えて、環境に関する体験や学習を行うことのできる機会を提供した。

ア ジュニアエコ活動支援事業の実施
(ア)こどもエコ探検隊の実施
 子どもたちと保護者が、環境学習や環境保全活動の体験を通して楽しみながら環境への興味や関心を深める「こどもエコ探検隊」を夏休み期間中に実施した。
県北コース
開催場所:大田原市「なかがわ水遊園」
開催月日:8月4日(土)
参加者数:33名
県南コース
開催場所:栃木市「出流ふれあいの森」
開催月日:8月5日(日)
参加者数:40名
(イ)こどもエコクラブへの支援
 小・中学生が地域において自主的に環境保全活動を展開するこどもエコクラブは、全国的にも活動の広がりをみせている。19年度は、活動内容の充実を図るため、こどもエコクラブ交流会を行ったほか、クラブ活動の活性化を図るため、創意・工夫にあふれた活動を表彰した。また、各クラブの活動状況を記録した報告書を作成して、小・中学校ほか関係機関に配布し、エコクラブの活動を紹介した。
 19年度こどもエコクラブ
  登録数:42クラブ
  参加人数:1,380名
こどもエコクラブ交流会の実施
緑の少年団メンバーとの合同によるとちぎグリーンキャンプとして実施)
開催月日:19年7月28日(土) 参加者数:57名
こどもエコクラブエコロジカルあくしょん県コンテストの実施
開催月日:20年1月17日(月) 参加クラブ数:13クラブ
こどもエコクラブ活動報告書の作成
配布先:各市町、各小・中学校、各こどもエコクラブ等  作成部数:2,300部

イ 森林環境学習の実施
(ア)小中学校における森林・林業体験学習
  学校教育における森林環境教育の推進を図るため、小・中学校の総合的な学習の時間等において、林業関係者、学校及び県林務事務所が連携を図り、体験学習等を実施・支援した。(表2−4−4)

  開催場所:県内一円
  内容:「森林教室」「木工教室」「しいたけ種菌教室」等

表2−4−4 森林・林業体験学習の実施状況(19年度)
実施主体/対象 小学校 中学校 高等学校 一般 回数計 延べ参加者数(人)
13     3 16 504
市町村 2 1   7 10 514
学校 22 3 1   26 1,265
林業関係団体等 19     21 40 1,957
56 4 1 31 92 4,240

(イ)緑の少年団活動の支援
 緑を愛し、守り育てる心を養うことを目的として結成された緑の少年団を育成するため、森林での学習活動や地域の社会奉仕活動など様々な活動を支援した。
  • 緑の少年団活動支援事業
     緑の少年団の地域の特性・環境を活かした活動やみどりに関する体験活動をより積極的に展開するため、緑の少年団の活動や活動装備品の提供を支援した。
     緑の少年団結成数:192団(19年度)
     団員数:39,218人(19年度)
  • とちぎグリーンキャンプ
     県内緑の少年団こどもエコクラブ相互の交流を深め、森林での学習等により緑の少年団等の育成を図るため、とちぎグリーンキャンプを開催した。
     開催場所:栃木県総合教育センター(宇都宮市)
     開催日:7月28日(土)
     参加者数:57名
     内  容:活動発表、水土保全機能の実験、体験交流活動
(ウ)県民参加による林業体験
 県民が森林とのふれあいや森林づくりを体験することにより、森林の大切さを実感するためのフィールドとして設置した「みんなの森」において、一般公募による森林づくりを実施した。
 開催場所:みんなの森(矢板市県民の森)
 内  容:下刈り、間伐ち、植栽  
 参加者:3回、143人
(エ)生涯学習施設における森林環境学習
 栃木県の森林・林業について理解し、森林づくりのための自主的な活動を行う仲間づくりの充実を図るため、シルバー大学校において、森林環境学習を実施した。
 研修名:「栃木県の森林・林業について」
 開催日:12〜3月(4回)
 参加者:240人
ウ 自然観察会等の開催

自然とふれあうことで自然への理解を深めることのできる自然観察会等を県立日光自然博物館や塩原温泉ビジターセンター、長峰ビジターセンターなどで開催した。
 また、県や市町等が主催する自然観察会等について、ホームページ等を通じて情報を提供した。

エ 施設を活用した学習機会の提供
(ア)県消費生活センター
 一般消費者が講座を通して身近な環境問題に関心を持ち、日頃の消費行動が環境に配慮したものとなるようにセミナー等を実施した。
 消費生活リーダー養成講座:3講座実施
 ・自分で出来る環境対策
 ・循環型社会について
 ・紙のリサイクルと消費者の役割
(イ)県保健環境センター
 来所者及び関係団体等を対象に、各種の講演会や施設の見学等を行うとともに、「環境学習ライブラリー」による図書・ビデオ等の貸出や環境学習の場に講師を派遣するなどして、自主的な環境学習に対する支援を行った。
 また、楽しみながら環境問題などに興味・関心をもってもらうよう施設の公開デーを開催して、講演会や環境に係る実験等の企画を実施した。
(ウ)その他の施設
 県立博物館、とちぎ花センター、なかがわ水遊園、県民の森、日光自然博物館、都市公園、青少年教育施設等において、体験学習や講座等を実施した。

(2)環境教育・環境学習の推進体制の整備

ア 人材の育成・活用
(ア)環境学習指導者研修事業の実施
教育現場における効果的な環境教育の推進を支援するため、教員等を対象とした研修を実施した。
実施機関:栃木県総合教育センター
研修名:「環境学習プログラム研修」参加者:26名
内  容:講話、プログラム演習等の実技研修
(イ)とちぎエコリーダーの養成
 学校や地域等における環境学習の取組を促進するため、県と県教育委員会が共同で作成した環境学習プログラム「明日をつくる子どもたちの環境学習」の内容に沿った指導を行うことのできる「とちぎエコリーダー」の養成・認定を行っている。
 19年度は、下記のとおり、養成研修を実施した。
 研修日数:5日間  受講者数:30名
(ウ)自然ふれあい活動指導者の養成・紹介
 県と市町で構成する栃木県自然ふれあい活動推進協議会において、自然ふれあい活動指導者養成講座を実施し、指導者を養成するほか、同講座の修了者を自然ふれあい活動指導者として登録し、学校や市町が主催する自然観察会等に紹介した。
イ 教材等の作成・活用推進及び学習情報の提供
(ア)パワーポイント教材の提供
 栃木県の環境の状況や様々な環境問題に関する現状と問題点等を解説したパワーポイント用の教材「とちぎの環境教室」を作成し、広く県民等がダウンロードして使用できるようインターネットのホームページ「とちぎの環境」内に掲載している。
(イ)環境資料アーカイブ(書庫)の設置
 県民が自由に環境に関する情報資源を活用できる環境を整えるため、県が策定した環境に関する計画や指針等を電子情報として、同ホームページ内に設けた環境資料アーカイブ(書庫)のコーナーにおいて提供しており、19年度は、「平成19年度環境の状況及び施策に関する報告書」及び「平成19年度とちぎの環境」を追加掲載した。
(ウ)森林環境教育に関する情報提供
 栃木県の森林・林業・自然環境の理解を深めるため、「とちぎの森林・林業・自然環境(副読本)」「林業関係統計資料」「森林に親しむための体験プログラム集」をインターネットホームページ「とちぎレインボーネット(http://www.tochigi-edu.ed.jp/rainbow-net/infomation/)」に掲載している。
ウ 栃木県環境学習・環境保全活動推進指針の策定
(ア)栃木県新環境学習推進指針策定懇談会の開催
委員:13名(学識経験者、市町村関係者、学校教育関係者、環境団体関係者、環境学習施設関係者、経済団体関係者)
会議:4回開催
(イ)各種調査等の実施
  • 環境学習・環境保全活動に対する意識について
    対象:一般県民2,000人 回収率:62.3%
  • 学校における環境学習等の実施状況調査
    対象:県内の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校689校 回収率:100%
  • 活動団体・事業者との意見交換
    活動団体:5団体 事業者:5団体
(ウ)指針の概要
  • 環境学習・環境保全活動の推進に係る基本的な考え方
    環境学習−あらゆる場において、対象となる人の年齢等に応じて環境学習を進める。
        「親しむ」−「知る」−「行動する」
    環境保全活動−日常生活等における環境負荷を認識し、自主的に環境保全活動に取り組む。
        「点からはじめる」−「線につなげる」−「面にひろげる」
  • 環境学習・環境保全活動の推進に係る目標
    ○自ら学び、自ら行動する“人づくり”
    ○学習から実践につなげる“きっかけやしくみづくり”
    ○多様な主体の“協働によるネットワークづくり”

(3)普及啓発活動の推進

ア 環境保全活動に関する普及啓発活動の実施
(ア)広報活動の実施
 県民の環境保全意識を高めるため、テレビ、ラジオなど各種メディアを通した広報活動を実施するとともに、環境についてわかりやすく説明した情報誌「とちぎエコ通信」を発行し、県内小・中・高等学校、公民館及び図書館等の県民利用施設等に配布した。
 ○環境情報誌「とちぎエコ通信」(6月及び12月発行)
   発行部数:各15,000部
   配布先:金融機関、医療機関、公民館、学校等
(イ)環境関連イベント等の実施
 環境の日を含む6月は「環境月間」とされ、環境の保全を推進するための運動が全国的に行われている。本県でも県民の環境への興味、関心を喚起するため、市町や関係団体の協力を得て、環境展、とちぎの環境美化県民運動など環境月間関連事業を実施した。
 また、イベント等を通して県民の環境への興味、関心を喚起するため、県、宇都宮市及び環境保全団体等で組織する栃木県クリーンアップフェア実行委員会において次のイベントを開催した。

a 環境展
  開催場所:渡良瀬運動公園(藤岡町)
  開催月日:6月9日(土)・10日(日)
  来場者:約40,000人
  内  容:環境保全等に関する各種パネルの展示等
b クリーンアップフェア2007
  開催場所:栃木県子ども総合科学館(宇都宮市)
  開催月日:10月13日(土)〜10月14日(日)
  来場者:約11,000人
  内  容:環境保全等に関する展示、体験、ゲーム、ショー等
イ 環境に関する情報の提供

本県の環境の現状と環境保全施策について、「平成19年度環境の状況及び施策に関する報告書(環境 白書)」により県民に公表した。
 また、環境に関する情報を県民に適時提供できるようホームページ「とちぎの環境」の充実に努めた。