第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第4章 環境保全活動への積極的な参加

第1節 自主的な環境保全活動の促進

1 環境に配慮したライフスタイルの確立

近年、くらしの豊かさや便利さを追求するあまり、大量に物やエネルギーを消費し、廃棄するといったライフスタイルを続けてきた結果、最終処分場のひっ迫や地球温暖化などの深刻な環境問題を引き起こしている。これらの環境問題を解決し、私たちの社会が持続的に発展していくためには、すべての県民が日常生活や事業活動により環境への負荷を与えている事実を認識し、廃棄物の発生抑制や資源の有効利用、省エネルギーの実践に積極的に取り組み、環境への負荷の少ない社会を築いていくことが大切である。このため、「とちの環県民会議」等の環境団体との連携・協力の下、各種普及啓発活動を推進し、県民総ぐるみによる環境保全に向けた実践活動を促進する必要がある。

2 事業活動における環境保全活動の促進

(1) 環境マネジメントの啓発

企業が環境に関する方針や目標等を自ら設定し、これらの達成に向けて自主的に取り組む、いわゆる「環境管理マネジメントシステム」は、今日の環境問題を解決していく上で大変有効な手法である。

8年9月には、その国際的な統一規格としてISO14000シリ−ズ(環境マネジメントシステム及び環境監査)が規格化された。また、16年11月にはISO14001の改正が行われ、環境への配慮に対する要求事項がより明確化された。

さらに環境省では8年より、中小事業者等の幅広い事業者が自主的に「環境への関わりに気づき、目標を持ち、行動することができる」簡易な方法を提供する目的で、環境活動評価プログラム(エコアクション21)を策定し、その普及を進めてきた。また、16年度には、エコアクション21の仕組みの見直しを行い、新たな環境経営に対応するため認証登録制度に活用できるガイドラインへと改訂された。これらの普及を図るため、17年度は以下の事業を実施した。

ISO14000シリーズ支援事業

県内の企業や市町村にISO14001の普及を図るとともに認証取得を支援するため、ISO14001シリーズの規格内容や実施例に関するセミナー(4回シリーズ)を開催した。

イ ISO14001認証取得相談窓口の設置

事業者や市町村のISO14001認証取得に向けた取組を促進するため、県保健環境センターにISO14001認証取得に係る相談窓口を設置した。

ウ 中小事業者への環境マネジメントシステム構築促進事業

中小事業者への環境マネジメントシステムの普及を図るため、エコアクション21の説明会を3会場で実施した。

(2) 環境保全団体への助成等

産業界における環境保全推進活動を行っている(社)栃木県産業環境管理協会を育成するため、その実施事業に対して助成を行っている。

また、中小企業がISO14001の認証を取得するための経費について、環境保全資金による融資制度を設けている。

3 環境保全型農業の推進

(1) 環境保全型農業の状況

農業生産の向上に、化学肥料や化学農薬の果たした役割は大きいが、一方でこれらの資材への過度の依存による環境への影響が心配されている。

また、消費者の安全・安心な農産物を求める声が高まる中で、環境保全に対する意識が強まっている。

こうしたことから、農業生産を安定させながら、化学肥料・化学農薬の使用量を減らし、環境と調和した将来的にも持続可能な「環境保全型農業」の取組を推進している。

17年度末現在、環境保全型農業推進方針を策定した市町村数は、31市町村(旧市町村)であり、堆肥等を利用した土づくりと化学肥料、化学農薬の低減を一体的に行う農業生産方式を導入し、環境に配慮した農業に取り組む生産者(エコファーマー)は、18年3月末現在5,895名が認定されている。

(2) 環境保全型農業の推進

6年3月に策定した「栃木県環境保全型農業推進基本方針」に基づき、次の4項目を柱とした環境と調和のとれた農業を積極的に推進している。

また、環境保全型農業の普及啓発を図るため、生産者・農業団体等の取組の支援、消費者に対するPRを実施している。

ア 県推進指導事業
(ア) エコファーマーの育成、土壌診断の実施、技術指導、啓発資料等による普及啓発

堆肥等を活用した土づくりと化学肥料、化学農薬の使用低減を一体的に行う農業生産方式を導入する生産者(エコファーマー)を育成している。土壌診断の実施や技術指導による農業生産方式の導入支援を実施している。また、啓発資料の作成や広報活動を通して普及啓発を行っている。

(イ) 農薬・化学肥料使用低減の推進

性フェロモン剤の利用による効率的防除や土壌診断に基づく適正施肥等を推進するとともに、作物病害虫の生物的防除法の開発、耐病性品種の開発等の試験研究に取り組んでいる。

(ウ) 消費者交流事業の開催等

県民の日(6月)、農業試験場公開デー(9月)、ふるさと栃木フェア(10月)等において、環境にやさしい資材、パネルの展示等を実施するなど、消費者・生産者双方の意識高揚と相互理解を促進している。

また、農業者と消費者を交えたシンポジウムを開催し、環境保全型農業や食の安全等についての理解を促進している。

イ 市町村等推進事業
(ア) 地域に適した環境保全型農業技術の導入実証等実践活動の強化
(イ) 家畜排泄物や生ごみ等の地域循環システムの構築の支援
ウ 農業団体推進事業
(ア) 環境保全型農業の普及啓発等
(イ) 堆肥利用定着のための活動支援
エ 堆肥の流通・利用促進

畜産部門と耕種部門の連携の下、堆肥の流通・利用の促進を図るため、県関係機関、市町村、農協、堆肥センター等を構成員とする「栃木県堆肥利用促進協議会」を設立し、堆肥の生産技術の改善及び品質向上、堆肥の流通・利用の促進、耕種農家のニーズの把握、堆肥の広域的な需給調整等の活動を行っている。

オ 畜産経営環境保全対策の推進

畜産経営による環境汚染問題は、経営の存続や畜産業の発展に重大な影響を与えることから、家畜ふん尿の適切な処理・利用により環境汚染を未然に防止し、畜産経営の健全な発展を図るため、「環境保全型畜産確立基本方針」に沿って、次のような畜産経営における環境対策の推進に努めている。

カ 畜産経営環境保全対策の指導

農業振興事務所ごとに県関係機関、市町村、農協等の関係団体を構成員とする「地方協議会」を開催し、次のような指導等を行っている。

キ 環境の保全に対する助成等
(ア) 資源リサイクル畜産環境整備事業(国庫:公共)、バイオマス利活用フロンティア整備事業(国庫:非公共)、畜産環境整備リース事業

適正な家畜ふん尿の処理・利用を推進するために、畜産農家が組織化し、又は畜産農家と耕種農家が連携して施設・機械等を整備するため各種事業を実施した。(表2−4−1)

表2−4−1 畜産環境対策の施設、機械整備に対する事業実施状況
区  分  資源リサイクル
畜産環境整備事業
(国庫:公共)
バイオマス利活用
フロンティア整備事業
(国庫:非公共)
畜産環境整備
リース事業
(特別緊急対策)
実施数(件数) 1市
(1)
2市町
(6)
8市町
(19)
(イ) 農業近代化資金の融資

畜産経営による環境汚染防止を推進するため、家畜ふん尿処理施設や機械の整備に対し、農業近代化資金の融資を実施している。(表2−4−2)

    
表2−4−2 農業近代化資金(畜産関係公害防止機械・施設)の融資状況
年 度 件  数 金 額(千円) 年 度 件  数 金 額(千円)
1078 288,500 14 40 184,420
11 66 212,560 15 54 281,380
12 92 483,850 16 50 511,750
13 85 407,790 17 11 63,620
(3) 環境と調和のとれた生産技術の推進

化学農薬の使用を最小限に抑える総合的病害虫・雑草管理(IPM)を推進するため、総合的防除技術の開発や現地実証により、本県の実情を踏まえた環境にやさしい総合防除マニュアルを策定し、その普及を図る。

また、土壌診断に基づく施肥や肥効調節型肥料の使用など、化学肥料の低減に繋がる適切な施肥技術の普及定着を図る。

4 行政の率先行動の推進

(1) 県庁の取組

ISO14001規格を参考として策定した「栃木県庁環境保全率先実行計画」に基づき、県の事務事業の実施に伴う環境負荷の低減を図るため、環境保全活動(省エネルギー・省資源、廃棄物の減量等)を実施した。また、7月に策定した「栃木県グリーン調達推進方針」に基づき、グリーン購入の強化を図った。

17年3月には、17年度を初年度とする栃木県庁環境保全率先実行計画〈二期計画〉を策定した。

(2) 県保健環境センターの取組

県庁におけるモデルケースとして県保健環境センターにおいて((財)栃木県環境技術協会及び(財)栃木県保健衛生事業団岡本水質食品検査所を含む)、12年10月27日に環境に関する国際規格であるISO14001の認証を取得し継続的な環境保全活動を積極的に推進している。(登録番号:JSAE282)

同センターでは、保健衛生及び環境保全に係る試験検査等の事業活動において、省エネルギー、省資源、廃棄物の適正管理・リサイクルの推進及び化学物質の適正管理の徹底などの環境保全活動に優先的に取り組むとともに、環境保全に関する調査研究、県民や事業者を対象とした環境保全への関心を深めるための事業を積極的に推進している。

15年10月27日に第1回登録更新を行い「登録継続」の承認を受けている。

17年度は、17年10月6日、7日に第1−2回 定期維持審査を受審し、また、ISO14001の2004年度改定に対応し、「環境マニュアル」の改正を行った。

18年度は、第2回更新審査を受審し登録更新する予定である。

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