U 人と自然が共生する潤いのある地域づくり

 私たちは、自然の中から生きるために必要な空気や水、食料などの物質的な恵みのみならず、安らぎや潤いなど精神的にも大きな恵みを受けています。
 この自然の恵みを将来にわたって受け続けるためには、私たちも自然の生態系を構成する一員であるという認識に立って、自然環境の微妙な均衡を損なわないよう、自然に対して適切に働きかけるとともに、賢く利用していく必要があります。
 県は、環境を支える森林づくりを進めるとともに、多様な自然環境や生物多様性を保全し、様々な自然とのふれあい活動を進めることなどにより、「人と自然が共生する潤いのある地域づくり」を目指します。

1 環境を支える森林づくり

1 森林の整備・保全の現状

1 本県の森林の概要

  • 本県の森林面積は、18年度末で約35万haで、県土の約55%を占めています。
  • 所有別では、国有林が約13万ha、民有林が約22万haとなっています。
  • 民有林のうち、スギ・ヒノキを中心とした人工林は約12万haとなっています。

県内所有別・人工天然林別森林面積の割合(18年度末)

2 森林の整備状況

  • 民有人工林のうち約5割が間伐を必要とする森林で、間伐の遅れにより、荒廃の危険性が高まっています。
  • 県内民有林において、5年間で2万haの間伐を実施しましたが、いまだに手の行き届かない森林が多く残されています。

3 森林の有する多面的機能

  • 森林は、土砂災害の防止、水源のかん養、木材の生産、保健、レクレーションの場など、多面的機能を有し、私たちの生活環境を守るという役割を担っています。
  • 特に、近年では、二酸化炭素を吸収・固定する働きから、地球環境の保全機能が国際的にも重要視されています。

4 保安林の指定

  • 水源かん養や土砂流出防備などの公益的機能の持続的かつ高度な発揮が求められている森林を保安林に指定しています。
  • 本県の森林のうち約18万haが保安林に指定されています。

5 適正な森林整備の推進

  • 長引く木材価格の低迷や生産コストの上昇により、林業採算性の低下、担い手の高齢化などの問題が生じています。
  • このため、間伐などの適正な施業が進みにくい状況になっており、森林の多面的機能の維持向上が困難な状況になっています。

6 森林を支える林業の振興

  • 森林の多面的な機能の発揮には、持続的な林業生産活動が不可欠ですが、林業採算性の悪化により、森林施業が安定的に行われにくい状況となっています。
  • このため、計画的かつ効率的な事業規模の拡大や森林施業コストの低減等による林業採算性の向上が課題となっています。


整備された森林

2 森林づくり対策

1 森林の公益的機能の向上

(1)間伐等森林整備の促進と多様な森林の育成

  • 森林所有者への支援や県・森林整備公社による整備により、約4,900haの間伐を含め、造林、下刈等りの森林整備を約7,000ha実施しました。
  • このうち、自然災害などにより公益的機能の低下した保安林や森林所有者による整備が困難な奥地の森林について、県及び森林整備公社が約1,400haの間伐や広葉樹の植樹等の森林整備を行いました。
  • 多様な森林の育成が重要であることから、18年度は、複層林を約100ha、広葉樹林を約680ha整備するなど、全体で約2,200haの森林整備を実施しました。

(2)県民参加の森づくりの推進

  • 森づくり体験講座等の体験活動を通して、森林の大切さについて意識の醸成を図りました。
  • ボランティアの相互交流などにより県民参加による森林整備活動の促進を図りました。

(3)とちぎの元気な森づくり県民税の導入に向けての取組

  • 県民協働の森づくりのあり方などについて検討するため、「県民協働森づくりに関する有識者会議」を開催しました。
  • 有識者会議からは「森林を県民共有の財産として次世代に引き継いでいくことが必要。そのための財源は県民に等しく負担いただく『とちぎの元気な森づくり県民税(仮称)』に求めるのが適当」との旨の提言をいただきました。
  • このため、税の導入のあり方や県民協働による森づくりの取組について検討を進めるとともに、説明会やシンポジウムの開催、パンフレットの配布、テレビ・ラジオ等での広報などにより、県民の理解促進を図りました。

(4)森林資源の循環利用の推進

  • 新規就業者の確保育成の支援や経営改善指導を行うほか、林道や作業道の整備を行いました。
  • 人工乾燥施設等の導入支援や「とちぎ木の県推進運動」の展開等により、高品質な県産材の安定供給と利用拡大に努めました。

2 森林の適正管理

(1)森林計画制度による森林管理の推進

  • 良好な自然環境の保全と森林の公益的機能の維持を図るため、18年度は、地域森林計画の一部変更などを行いました。
  • 計画的な森林整備を図るため、森林の分布や生育状況などの各種森林情報について、森林GISの活用による一元的な管理体制を構築し、森林の管理を行いました。

(2)保安林・林地開発許可制度による森林の保全

  • 公益的機能の高度発揮と森林の保全を推進するため、保安林等の指定拡大に努めました。
  • 秩序ある開発行為を促すため、林地開発許可制度の適正な運用を図りました。

(3)森林被害対策の推進

  • 病害虫被害を早期に発見し、適切に対処するため、市町や関係団体と連携し、松くい虫対策として、200haに薬剤散布したほか、3,800m3の伐倒駆除を行いました。
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