5章 ケーススタディ及び事例紹介

第1 ケーススタディ
 3.クリーンエネルギー自動車 (2)集団導入
 電気自動車及び天然ガス自動車を複数台一括して導入します。

a.電気自動車
  地方公共団体等の福祉事業の巡回用に小型の電気自動車を導入します。

対象とする新エネルギー等 クリーンエネルギー自動車
想定する導入対象 地方公共団体等の福祉事業での巡回用
導入車両の種類 電気自動車5台(2人乗り程度)+電力供給施設5施設
イニシャルコスト
 
車両本体価格:400万円/台
総費用 2,000万円(うち補助金750万円)
環境負荷削減効果   ・走行時に排ガスを発生しない。
・発電所で充電用の電気を作るときに発生する排出ガスは、既存の同型ガソリン車の排気ガスと比較してCO2が40〜50%、NOxが70〜80%減少する。
活用できる補助制度   <補助制度>
クリーンエネルギー自動車普及事業費
((財)日本電動車両協会 ほか)
地域新エネルギー等導入促進事業(NEDO
<優遇税制>
エネルギー需給構造改革投資促進税制(国税)
低公害車用燃料等供給設備に係る固定資産税・特別土地保有税の軽減(地方税)
自動車取得税の軽減措置(地方税)
導入に当たっての留意事項

 
・価格がガソリン車等と比べて高い。
・燃料供給設備の導入が必要
・航続距離がガソリン車の15〜30%である。
 電気自動車の航続距離は、ガソリン車の15〜30%程度と短い状況ですが、走行時に排ガスを排出しません。ここでは、地方自治体などでの導入を想定することとします。

1.導入システムの設定条件
・職員の巡回に使用するため、小型の電気自動車を5台導入する。
・電気自動車1台につき充電スタンドを1基設置する。
・寿命の長い新型電池(ニッケル水素電池やリチウムイオン電池)の車両を導入する。

 福祉事業の巡回用に使用することを考え、2人乗り程度の小型電気自動車を5台導入することを想定します。また、充電には5〜8時間を要するため、電気自動車1台につき充電スタンドを1基設置します。
 なお、大量に導入する場合や、地域ぐるみで導入を図る場合は、エコステーション(次ページコラム参照)を同時に設置することも考えられますが、ここではエコステーションの導入は想定しません。

●電気自動車のしくみ
 電気自動車と内燃機関自動車との大きな違いは、ガソリンや軽油を内燃機関で動力に変える代わりに、電気でモーターを回す点です。したがって、内燃機関、燃料タンク、排気管の代わりに、電動機、制御装置、電池を搭載しています。

●電池
 現在、電気自動車用の電池は鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が実用化されています。このうちニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった新型電池は、寿命・航続距離の両面で鉛電池に比べて性能が飛躍的に向上しました。

  エネルギー密度 寿命 備考
鉛電池 35Wh/kg 500サイクル 2年に1度の電池交換が必要
ニッケル水素電池 65Wh/kg 1000サイクル  
リチウムイオン電池 100Wh/kg 1200サイクル  

2.効果の算定
(1)環境負荷削減効果

・走行時の排ガス発生がない。
・CO2が40〜50%、NOxが70〜80%減少する。(発電所で充電用の電気をつくる際に発生する排ガスを、既存の同型ガソリン車の排気ガスと比較した場合)

 電気自動車は、走行時に排ガスが発生しません。また、充電用の電気をつくる際に発電所で発生する排ガスは、同型のガソリン車(ワンボックスタイプの小型貨物車)の排気ガスと比較して、CO2が40〜50%程度、NOxが70〜80%少ない状況となっています。

(2)経済性
 

・イニシャルコスト:2,000万円(車両5台+充電設備5台)
(うち補助金750万円)
・燃料費     :従来ガソリン車の1/3程度

 想定する2人乗りの電気自動車の車両価格は充電設備込みで約400万円となります。したがって、車両5台+充電設備5台では補助金を使用しない場合約2,000万円となります。
 補助金が、1台当たり約150万円期待できることから、実質負担額は1,250万円となります。なお、同型車のガソリン車を導入した場合は1台当たりおよそ100万円となるので、ガソリン車導入との差は約750万円となります。
 燃料費の面で見ると、深夜電力を使用すると電気代はガソリン代の1/3程度となります。従来電気自動車の蓄電池として用いられてきた鉛電池は約2年に1度電池交換をするため割高となっていましたが、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池などの新型電池は長寿命であることから、電池交換が必要ない状況に近づいてきました。

●支援制度について
 車両の取得と、エコステーションの設置において補助金を受けることができます。

支援制度 対象者 内容 実施主体
クリーンエネルギー自動車普及事業費



 


 





 

クリーンエネルギー自動車

 
限定せず









 
通常車両との価格差の1/2


 
(財)エコ・ステーショ 
   ン推進協会
(社)日本ガス協会
(財)日本電動車両協会
自家用天然ガス燃料供給設備 2/3以内
 
(社)日本ガス協会
 
エコステーション



 
定額(上限あり)
設置の場合、
充電スタンド:3000万円
天然ガススタンド:9000万円
メタノールスタンド:2000万円
(財)エコ・ステーション推進協会


 
地域新エネルギー等
導入促進事業


 
地方公共団体



 
地方自治体が策定した新エネルギー・省エネルギー促進計画について補助
導入費の1/2
(15台以上の集団導入)
NEDO



 
エネルギー需給構造
改革投資促進税制
(国税)
 
クリーンエネルギー自動車の取得、その燃料供給施設の設置に対して、いずれかの軽減措置を選択
  ・初年度30%の減価償却の特例
  ・基準取得価格の7%の特別税額控除
低公害車用燃料等供給設備に係る固定資産税・特別土地保有税の軽減(地方税) 低公害車に電力や燃料を供給する設備について、設置年度から3年間、固定資産税の課税標準額を2/3とする。
また、特別土地保有税が非課税となる。
 
自動車取得税の軽減措置(地方税)


 
自動車取得税を軽減
税率:
   電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車:2.7%
   ハイブリッド自動車(トラック、バス):2.7%
   ハイブリッド自動車(乗用車):2.2%
自動車税の軽減措置(地方税)  ※

 
自動車税を2年間軽減
軽減率:
   電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車:50%
   ハイブリッド自動車:25〜50%

※ 平成13年3月現在、平成14年4月実施を目指し国会で審議中。

●その他の車種の電気自動車
 その他の車種での電気自動車は次のようなものがあります。
 

車種
 
価格
(万円)
乗車定員
(人)
走行距離
(km)
軽自動車 290〜400 2〜4 110〜115
小型自動車1 495 5 215
小型自動車2 1,123 4 75
普通乗用車
 
月額約27万円
(リース)
4〜5
 
220〜230
 
小型貨物自動車 1,040 2〜5 100
普通貨物自動車 2,000 2 60
マイクロバス 2500 13 70

※1充填当たりの走行距離
クリーンエネルギー自動車導入普及促進ガイド(近畿通産局・NEDO関西事務所)をもとに作成

3.課題
 電気自動車は現状では割高なコストと航続距離が短いという短所があります。(このケースでとりあげた車両は、走行距離が115kmとなっています。)しかし、福祉事業のように地域内の巡回に使用する場合には航続距離が短くても問題とならないと言えます。


 


b.天然ガス自動車

 天然ガス自動車として、ごみ収集車への導入を行います。

対象とする新エネルギー等 クリーンエネルギー自動車
想定する導入対象・用途 地方公共団体の一般廃棄物収集
導入車両の種類 天然ガス自動車(パッカー車)5台+ガス供給施設5基
イニシャルコスト



 
車両本体価格:約750万円/台
車両改造費:約180万円/台
ガス供給施設:約230万円/基
付帯工事費(ガス、電気):約50万円/基
総費用:6,000万円(うち補助金1,400万円)
環境負荷削減効果




 
・メタンを主成分とするためSOxの発生はない。
・同型ディーゼル車よりCO2の排出量は20〜30%程度、NOxの排出量は60〜70%少ない
・走行時の排ガス中の浮遊粒子状物質(SPM)は非常に少ない
・黒煙の発生もない。
活用できる補助制度







 
<補助制度>
クリーンエネルギー自動車普及事業費
((社)日本ガス協会 ほか)
地域新エネルギー等導入促進事業(NEDO
<優遇税制>
自動車取得税の軽減措置(地方税)
エネルギー需給構造改革投資促進税制(国税)
低公害車用燃料等供給設備に係る固定資産税・特別土地保有税の軽減(地方税)
導入に当たっての留意事項

 
・本県においては都市ガスの供給エリアが限定されている。
・航続距離が比較的短い。

 天然ガス自動車は、既存のガソリンまたはディーゼルエンジンを代替するもので、ほとんどの車両に利用可能です。ここでは、天然ガス自動車をアピールすると共に実用的な用途に使用することを目的として、パッカー車(ごみ収集車)を充填設備と共に導入するケースを想定します。

1.導入システムの設定条件

・天然ガス自動車としてパッカー車(ごみ収集車)を5台導入する。
・天然ガス自動車1台につき天然ガス充填設備(小型充填機)を1基設置する。

 天然ガスパッカー車5台と、天然ガス充填設備5台を導入します。燃料供給設備については、短時間で充填できる急速充填設備がありますが、この設備は高圧ガスを扱い、設置のコストも高いことから、実用性を考えて、小型充填機を自動車1台につき1基設置します。
 小型充填機は昇圧供給装置といい、原則として天然ガス自動車と1対1で設置する燃料供給装置で、天然ガスを自動車の最高充填圧力まで昇圧し、自動車に供給する設備です。一般の家庭に引かれている天然ガス管に接続すれば、各家庭でも使用できます。充填には数時間を要しますが、利用できる急速充填所が近くにはない場合や、少数の天然ガス自動車を運用する事業者等に適しています。

●天然ガス自動車のしくみ
 天然ガス自動車は、既存のガソリンまたはディーゼルエンジンを代替するものです。天然ガスを燃料として使用することから燃料容器その他の改造が必要ですが、既存のほとんどの車種を代替することができます。

2.効果の算定
(1)環境負荷削減効果

・排ガスにSOxが含まれない。SPM(浮遊粒子状物質)も非常に少なく、黒煙も発生しない。
・CO2排出量が20〜30%程度、NOx排出量が60〜70%少ない(対同型のディーゼル車)

 天然ガスは硫黄やその他の不純物を含まないためSOx等が発生しません。また、メタンを主成分とすることから二酸化炭素の排出量も石油と比べて少なく、同型ディーゼル車の70〜80%程度であり、NOx排出量も同型ディーゼル車の30〜40%となっています。
 走行時の排ガス中のSPMは非常に少なく、黒煙も発生しません。

(2)経済性
 

・イニシャルコスト:6,000万円(車両5台+充填設備5台)
(うち補助金1,400万円)
・燃料費     :従来ガソリン車の2/3程度

 導入コストは、ベースとなる車両本体価格が約750万円、改造費が約180万円、天然ガス充填設備とその付帯工事が約280万円となっています。よって車両5台+充填設備5台では、約6,000万円となります。クリーンエネルギー自動車普及事業の補助金を受ける場合は、改造費の1/2、燃料供給設備の2/3が助成されます。
 補助額は、 ( 180 × 1/2 + 280 × 2/3 )× 5 = 1,400万円 となり、事業者の実質負担額は約4,600万円となります。つまり、天然ガス自動車を導入するための純増額は、ベース車両5台分の本体価格3,750万円を差し引いた約850万円となります。
 ランニングコストでは、定期的なガス容器の検査が必要ですが、燃料費はガソリン車の2/3程度と低コストとなっています。
 支援制度については、a.電気自動車と同じです。

3.課題
 海外では、ガソリンエンジンに簡単な改造を施し、ガソリン・天然ガス共用(切替式)エンジンとした自動車が既に膨大な数利用されていることから、技術的な課題はほぼ解決されています。
 本県においては、都市ガスの供給エリアが限られていることから、供給エリアの拡大が期待されます。


 

 
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